第二章 ~松陽~(83P)
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「部外者のお前が……アイツの何を知ってんだ?」
そこに、いつもの気の抜けた表情をした銀時はいない。真紅の瞳には冷たく鋭い光が宿り、目を合わせただけでも貫かれそうな恐ろしさだ。
「俺が知らない柚希をお前は知ってるってのか?」
「な……んの事、だよ……俺は昨日の話から……」
「昨日? やっぱお前が柚希に何か言ったんだな。アイツがあんな風に泣いた原因はお前……ッ!」
銀時の言葉と同時にパァンッ! と竹刀の音が響く。目にも留まらぬ速さで打ち下ろされた銀時の竹刀は、かろうじて高杉の竹刀で受け止められていた。
これまでとは比べ物にならない強さでビリビリと手が痺れる感覚に、高杉が驚愕する。
「まさかここまで……」
そう口にした時にはもう、次の一撃が高杉の横っ腹に食い込んでいた。
「ぐ……ッ」
吹っ飛ばされ転がる高杉を、容赦なく銀時が追い詰める。その剣幕は凄まじく、道場にいた子供達は目を見開いて固まったまま声を出す事も出来ずにいた。
何度も振り下ろされる竹刀を死に物狂いで受け止めていた高杉も、次第に防御が間に合わなくなりいくつもの痣が生まれていく。そして、銀時の竹刀が高杉の頭部に襲いかかろうとした瞬間――。
ヒュッ!
風を切る音と、カシャンと何かが落ちる音が聞こえた。
「落ち着きなさい、銀時」
優しくも厳しい声音にハッとした一同が目にしたのは、いつの間にか銀時と高杉の間に立った松陽と、彼によって半分が切り落とされた銀時の竹刀だった。
我を忘れ、短くなった竹刀を今度は松陽に向けて構え直す銀時を、もう一度呼ぶ。
「銀時、落ち着いて下さい!……柚希は大丈夫ですから」
そう言って松陽は銀時の持つ竹刀にそっと手を伸ばすと、断面に触れながら様子を伺った。
まるで威嚇する猫が逆立てた毛のような殺気が、次第に落ち着いてくる。
「……松陽……先生……」
「全くもう、君って人は」
困ったように笑いながら、手で触れていた竹刀を取り上げた松陽は、もう片方の手を銀時の頭に伸ばす。そして――。
「修行が足りませんね、銀時」
「ヘブぉっ!」
お約束なのか、またも松陽のげんこつで床にめり込む銀時。昨日よりも少し深く沈んだのは、松陽の怒りの表れだろうか。
「ここまで顕著に現れると、必要不可欠どころの騒ぎじゃありませんよねぇ。あの子はもっと自分の存在価値を分かって欲しいものですよ」
小さくブツブツとボヤきながら高杉の元へと向かう松陽の真意は、誰の知るところでもない。
「やれやれ、今日はまた一段と傷が増えてしまいましたね。大丈夫ですか?」
そう言って昨日と同じ体勢で高杉の横に座った松陽は、軽く怪我の状態を確認すると苦笑いを見せた。
そこに、いつもの気の抜けた表情をした銀時はいない。真紅の瞳には冷たく鋭い光が宿り、目を合わせただけでも貫かれそうな恐ろしさだ。
「俺が知らない柚希をお前は知ってるってのか?」
「な……んの事、だよ……俺は昨日の話から……」
「昨日? やっぱお前が柚希に何か言ったんだな。アイツがあんな風に泣いた原因はお前……ッ!」
銀時の言葉と同時にパァンッ! と竹刀の音が響く。目にも留まらぬ速さで打ち下ろされた銀時の竹刀は、かろうじて高杉の竹刀で受け止められていた。
これまでとは比べ物にならない強さでビリビリと手が痺れる感覚に、高杉が驚愕する。
「まさかここまで……」
そう口にした時にはもう、次の一撃が高杉の横っ腹に食い込んでいた。
「ぐ……ッ」
吹っ飛ばされ転がる高杉を、容赦なく銀時が追い詰める。その剣幕は凄まじく、道場にいた子供達は目を見開いて固まったまま声を出す事も出来ずにいた。
何度も振り下ろされる竹刀を死に物狂いで受け止めていた高杉も、次第に防御が間に合わなくなりいくつもの痣が生まれていく。そして、銀時の竹刀が高杉の頭部に襲いかかろうとした瞬間――。
ヒュッ!
風を切る音と、カシャンと何かが落ちる音が聞こえた。
「落ち着きなさい、銀時」
優しくも厳しい声音にハッとした一同が目にしたのは、いつの間にか銀時と高杉の間に立った松陽と、彼によって半分が切り落とされた銀時の竹刀だった。
我を忘れ、短くなった竹刀を今度は松陽に向けて構え直す銀時を、もう一度呼ぶ。
「銀時、落ち着いて下さい!……柚希は大丈夫ですから」
そう言って松陽は銀時の持つ竹刀にそっと手を伸ばすと、断面に触れながら様子を伺った。
まるで威嚇する猫が逆立てた毛のような殺気が、次第に落ち着いてくる。
「……松陽……先生……」
「全くもう、君って人は」
困ったように笑いながら、手で触れていた竹刀を取り上げた松陽は、もう片方の手を銀時の頭に伸ばす。そして――。
「修行が足りませんね、銀時」
「ヘブぉっ!」
お約束なのか、またも松陽のげんこつで床にめり込む銀時。昨日よりも少し深く沈んだのは、松陽の怒りの表れだろうか。
「ここまで顕著に現れると、必要不可欠どころの騒ぎじゃありませんよねぇ。あの子はもっと自分の存在価値を分かって欲しいものですよ」
小さくブツブツとボヤきながら高杉の元へと向かう松陽の真意は、誰の知るところでもない。
「やれやれ、今日はまた一段と傷が増えてしまいましたね。大丈夫ですか?」
そう言って昨日と同じ体勢で高杉の横に座った松陽は、軽く怪我の状態を確認すると苦笑いを見せた。