第二章 ~松陽~(83P)
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一方その頃、松下村塾では。
「ま~た来たのかよ……」
今日も又懲りる事無く、高杉が道場破りに来ていた。
「昨日あれだけあっさりとやられてんだから、せめて少しでも修行してから来いってんだよ」
そう面倒くさそうに言う銀時に、無言のまま竹刀を向ける高杉。これは何を言っても無駄かと判断した銀時は、仕方なさそうに高杉の正面に立った。
「付き合ってやるから、少しは骨のあるトコを見せやがれ」
銀時が構えれば、誰からの合図も無く試合は始まる。
上段からの構えで銀時に突進してきた高杉の竹刀を、敢えて正面から受けると、お互い後ろへと飛び下がった。数回面の打ち合いが続き、流れを変えようと銀時が横薙ぎに払う。高杉の胴をかすめながら一文字を描いた竹刀を上から叩きつけた高杉は、渾身の力で銀時の動きを止めた。
肩がぶつかるほどの距離での力比べになり、次はどう動こうかと銀時が思考を巡らせていると、不意に高杉が小さい声で言った。
「……あの女は?」
「は?」
「柚希って女だよ」
まさか試合の最中に柚希の名が出るとは思わなかった銀時は、思わず目を見開く。だがすぐにニヤリとした笑みを浮かべて言った。
「何、お前やっぱアイツが気になってるわけ? ひょっとしてマジで惚れちまったってか」
「ちげェよ! 昨日お前ンとこの先生サマとやらが、意味ありげに『明日云々』を連呼してやがったから、道場破りのついでに聞いといてやろうと思っただけだ」
「ついで、ねェ」
キシシと声を出しながら笑う銀時が腹立たしく、この場でぶん殴りたくなった高杉だったが、そこはグッと我慢をする。代わりに真剣な眼差しで銀時を睨み付けると、今度は舌打ちが返ってきた。
「チッ……どいつもこいつも過保護だよなァ。心配いらねーよ。柚希は今日から働きに出てるぜ」
「はァ? 奉公に出たって事か?」
「そうなんじゃねェの? 俺も詳しい事は知らねーよ。ただ、柚希が自分で決めた事らしいぜ」
「奉公先は?」
「すぐ近くの診療所」
「……そういう事か……」
銀時の言葉から何かを察したのか、高杉が小さく頷く。その訳知り顔を見た銀時は次の瞬間、自分でも驚くほどに体がカァッと熱くなるのを感じた。
「何だよ……そういう事って」
「……ッ」
ボソリと聞こえた声が、背筋を凍らせるほどの怒気を含んでいる事に気付き、高杉は咄嗟に銀時から離れる。竹刀を構え直して対峙するも、その切っ先は小さく震えていた。
「ま~た来たのかよ……」
今日も又懲りる事無く、高杉が道場破りに来ていた。
「昨日あれだけあっさりとやられてんだから、せめて少しでも修行してから来いってんだよ」
そう面倒くさそうに言う銀時に、無言のまま竹刀を向ける高杉。これは何を言っても無駄かと判断した銀時は、仕方なさそうに高杉の正面に立った。
「付き合ってやるから、少しは骨のあるトコを見せやがれ」
銀時が構えれば、誰からの合図も無く試合は始まる。
上段からの構えで銀時に突進してきた高杉の竹刀を、敢えて正面から受けると、お互い後ろへと飛び下がった。数回面の打ち合いが続き、流れを変えようと銀時が横薙ぎに払う。高杉の胴をかすめながら一文字を描いた竹刀を上から叩きつけた高杉は、渾身の力で銀時の動きを止めた。
肩がぶつかるほどの距離での力比べになり、次はどう動こうかと銀時が思考を巡らせていると、不意に高杉が小さい声で言った。
「……あの女は?」
「は?」
「柚希って女だよ」
まさか試合の最中に柚希の名が出るとは思わなかった銀時は、思わず目を見開く。だがすぐにニヤリとした笑みを浮かべて言った。
「何、お前やっぱアイツが気になってるわけ? ひょっとしてマジで惚れちまったってか」
「ちげェよ! 昨日お前ンとこの先生サマとやらが、意味ありげに『明日云々』を連呼してやがったから、道場破りのついでに聞いといてやろうと思っただけだ」
「ついで、ねェ」
キシシと声を出しながら笑う銀時が腹立たしく、この場でぶん殴りたくなった高杉だったが、そこはグッと我慢をする。代わりに真剣な眼差しで銀時を睨み付けると、今度は舌打ちが返ってきた。
「チッ……どいつもこいつも過保護だよなァ。心配いらねーよ。柚希は今日から働きに出てるぜ」
「はァ? 奉公に出たって事か?」
「そうなんじゃねェの? 俺も詳しい事は知らねーよ。ただ、柚希が自分で決めた事らしいぜ」
「奉公先は?」
「すぐ近くの診療所」
「……そういう事か……」
銀時の言葉から何かを察したのか、高杉が小さく頷く。その訳知り顔を見た銀時は次の瞬間、自分でも驚くほどに体がカァッと熱くなるのを感じた。
「何だよ……そういう事って」
「……ッ」
ボソリと聞こえた声が、背筋を凍らせるほどの怒気を含んでいる事に気付き、高杉は咄嗟に銀時から離れる。竹刀を構え直して対峙するも、その切っ先は小さく震えていた。