第二章 ~松陽~(83P)
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「さて、と」
松陽の姿が見えなくなり、大きなため息を吐いた柚希はもう一度座り直す。
喋り続けていたためにカラカラになってしまった喉を潤すため、未だ口を付けていなかったお茶を一気に呷った。
「我ながら、思い切った選択をしちゃったかもなぁ。……でもこれで良かったんだよね、きっと。本当にダメだったら親父様が止めてくれるだろうし」
空になった湯飲みを見つめながら、ポツリと呟く。
やがて視界がゆらりと揺れ、パタパタと水滴が湯飲みの底にたまり始めれば、堪え切れなくなった嗚咽が漏れた。
「ふ……っく……」
どんな時でも銀時より強く、前を行く存在でいたかったのに。
誰よりも銀時の側にいて、一緒に歩み続けたかったのに。
それが自分の実力不足で叶わなくなったという現実が、幼い柚希の心を抉る。
「悔しい……」
湯飲みを握り締めた柚希の手はよほど強い力が入っているのか、白くなっていた。
「悔しいよぉ……っ」
松陽の部屋で一人、しゃくりあげながら泣く柚希に手を差し伸べる者はいない。既に生徒たちも引き上げているはずだ。
それが分かっているからこそ柚希は今ここで、心の内にある物を出し切るかのように泣き続けた。涙が枯れる頃にはいつもの自分に戻るんだと、自らの心に言い聞かせながら。
そんな柚希をこっそりと伺っていたのは銀時だ。
道場で柚希の様子がおかしいと気付いていた銀時は、松陽に呼び出されていた事を気にして部屋の近くまで来ていた。
タイミングよく部屋から出て来た松陽に声をかけるのを止められ、柚希からは見えない場所でどうしたものかと迷っていると、聞こえて来た嗚咽。
人間とはこんなに悲しい泣き方ができてしまうのかと、銀時は胸を締め付けられた。
だが、側に行ってやることはできない。
「シロに……置いて行かれたくなかった……っ」
聞こえて来た自分の名は、銀時を戸惑わせる。
「俺は柚希を置いてったりなんかしねェよ。今までも、これからだってずっと……」
そう目の間で言ってやれば、柚希は安心するのだろうか。
自分が今出来る事は何なのかが分からず、柚希が泣き止むまで銀時は、ただその場で悲しい声を聞いている事しか出来なかった。
松陽の姿が見えなくなり、大きなため息を吐いた柚希はもう一度座り直す。
喋り続けていたためにカラカラになってしまった喉を潤すため、未だ口を付けていなかったお茶を一気に呷った。
「我ながら、思い切った選択をしちゃったかもなぁ。……でもこれで良かったんだよね、きっと。本当にダメだったら親父様が止めてくれるだろうし」
空になった湯飲みを見つめながら、ポツリと呟く。
やがて視界がゆらりと揺れ、パタパタと水滴が湯飲みの底にたまり始めれば、堪え切れなくなった嗚咽が漏れた。
「ふ……っく……」
どんな時でも銀時より強く、前を行く存在でいたかったのに。
誰よりも銀時の側にいて、一緒に歩み続けたかったのに。
それが自分の実力不足で叶わなくなったという現実が、幼い柚希の心を抉る。
「悔しい……」
湯飲みを握り締めた柚希の手はよほど強い力が入っているのか、白くなっていた。
「悔しいよぉ……っ」
松陽の部屋で一人、しゃくりあげながら泣く柚希に手を差し伸べる者はいない。既に生徒たちも引き上げているはずだ。
それが分かっているからこそ柚希は今ここで、心の内にある物を出し切るかのように泣き続けた。涙が枯れる頃にはいつもの自分に戻るんだと、自らの心に言い聞かせながら。
そんな柚希をこっそりと伺っていたのは銀時だ。
道場で柚希の様子がおかしいと気付いていた銀時は、松陽に呼び出されていた事を気にして部屋の近くまで来ていた。
タイミングよく部屋から出て来た松陽に声をかけるのを止められ、柚希からは見えない場所でどうしたものかと迷っていると、聞こえて来た嗚咽。
人間とはこんなに悲しい泣き方ができてしまうのかと、銀時は胸を締め付けられた。
だが、側に行ってやることはできない。
「シロに……置いて行かれたくなかった……っ」
聞こえて来た自分の名は、銀時を戸惑わせる。
「俺は柚希を置いてったりなんかしねェよ。今までも、これからだってずっと……」
そう目の間で言ってやれば、柚希は安心するのだろうか。
自分が今出来る事は何なのかが分からず、柚希が泣き止むまで銀時は、ただその場で悲しい声を聞いている事しか出来なかった。