第二章 ~松陽~(83P)
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「高杉くんと試合をしている時も手加減はしてたよ。でもそれとは違って……何て言うか、高杉くんはこれからも切磋琢磨しながら一緒に強くなれる相手として見てるけど、私はもうその土俵にはいないんだろうなぁって感じたんだ」
「銀時に置いて行かれたような気になっているという事ですね」
「……そうかもしれない。今までは私の方が強くて、いつだってシロを守れる存在でありたいと思ってたんだけど……ひょっとしたら守るどころか守られる方になっちゃってるのかもって気付いたら凄くショックで」
「そんな風に考えるのっておかしい?」と言って松陽を見る柚希の瞳は、潤み始めている。きっと様々な感情が胸の内を渦巻いているのだろう。その事を感じ取った松陽は首を横に振ってみせた。
「いいえ。おかしくなんかありませんよ。むしろ当然の感情でしょう」
「親父様は大人だから別として、今までそれなりに戦えたのは私しかいなかったから、シロは無意識に私の実力に合わせてたんだろうなぁ。それが高杉君に会った事で、本来の実力に気付いたのかも」
「それはそれで悪い事では無いのですよ。出会った当初はただ闇雲に敵を殺す事しか考えていなかったあの子が、相手を見定めて動けるようになったというのは大きな成長です。その事に一役も二役も買ったのは紛れもなく柚希、貴女ですからね」
「だとしても……」
一旦視線を落とした柚希だったが、再び松陽と合わせた目には、寂しい心が映し出されていた。
「今の私はもう、シロの足枷でしかないよ」
「そんな事はありません。柚希は銀時にとって必要不可欠な存在です」
「……家族としてはそう思ってくれるかもしれないけど、剣術ではもう無理だってのは分かってるよ。親父様だってそう思ってるんでしょ? 生徒たちの中ではそれなりでも、シロや高杉くんと肩を並べる実力は無い。多分きっと彼らは、突出した才能の持ち主なんだろうな。……悔しいから、アイツらの前では絶対言ってやんないけど」
肩を竦めて苦笑いを見せる柚希の眦には、うっすらと涙が溜まっている。だが松陽は敢えてその事に触れようとはしなかった。
何故なら柚希が自分の心と戦っている事を理解していたから。
それが最終的にどんな結果をもたらそうとも、必ず受け止めてやろうと松陽は決めていた。
「ねぇ、親父様」
「はい?」
「正直に聞かせてね。私は今の修業を続けて意味があると思う?」
「意味はありますよ。もちろん続けていれば今よりもっと強くはなれます」
「シロと同じか、それ以上には?」
「貴女と銀時では、強さの種類が違います。高杉くんの言葉は的確でしたよ」
「……そっか。やっぱそうだよね」
嘘やごまかしのない松陽の返答に、大きくため息を吐く柚希。自分の中にある認めたくない部分に太鼓判を押されるのは、やはり辛かった。
だからと言って、落ち込んだままその場に立ち止まっていては、ますます置いてきぼりになるのは目に見えている。
ならばどうすれば良いか。
その場で柚希が出した答えは、松陽が想像もしていなかった物だった。
「銀時に置いて行かれたような気になっているという事ですね」
「……そうかもしれない。今までは私の方が強くて、いつだってシロを守れる存在でありたいと思ってたんだけど……ひょっとしたら守るどころか守られる方になっちゃってるのかもって気付いたら凄くショックで」
「そんな風に考えるのっておかしい?」と言って松陽を見る柚希の瞳は、潤み始めている。きっと様々な感情が胸の内を渦巻いているのだろう。その事を感じ取った松陽は首を横に振ってみせた。
「いいえ。おかしくなんかありませんよ。むしろ当然の感情でしょう」
「親父様は大人だから別として、今までそれなりに戦えたのは私しかいなかったから、シロは無意識に私の実力に合わせてたんだろうなぁ。それが高杉君に会った事で、本来の実力に気付いたのかも」
「それはそれで悪い事では無いのですよ。出会った当初はただ闇雲に敵を殺す事しか考えていなかったあの子が、相手を見定めて動けるようになったというのは大きな成長です。その事に一役も二役も買ったのは紛れもなく柚希、貴女ですからね」
「だとしても……」
一旦視線を落とした柚希だったが、再び松陽と合わせた目には、寂しい心が映し出されていた。
「今の私はもう、シロの足枷でしかないよ」
「そんな事はありません。柚希は銀時にとって必要不可欠な存在です」
「……家族としてはそう思ってくれるかもしれないけど、剣術ではもう無理だってのは分かってるよ。親父様だってそう思ってるんでしょ? 生徒たちの中ではそれなりでも、シロや高杉くんと肩を並べる実力は無い。多分きっと彼らは、突出した才能の持ち主なんだろうな。……悔しいから、アイツらの前では絶対言ってやんないけど」
肩を竦めて苦笑いを見せる柚希の眦には、うっすらと涙が溜まっている。だが松陽は敢えてその事に触れようとはしなかった。
何故なら柚希が自分の心と戦っている事を理解していたから。
それが最終的にどんな結果をもたらそうとも、必ず受け止めてやろうと松陽は決めていた。
「ねぇ、親父様」
「はい?」
「正直に聞かせてね。私は今の修業を続けて意味があると思う?」
「意味はありますよ。もちろん続けていれば今よりもっと強くはなれます」
「シロと同じか、それ以上には?」
「貴女と銀時では、強さの種類が違います。高杉くんの言葉は的確でしたよ」
「……そっか。やっぱそうだよね」
嘘やごまかしのない松陽の返答に、大きくため息を吐く柚希。自分の中にある認めたくない部分に太鼓判を押されるのは、やはり辛かった。
だからと言って、落ち込んだままその場に立ち止まっていては、ますます置いてきぼりになるのは目に見えている。
ならばどうすれば良いか。
その場で柚希が出した答えは、松陽が想像もしていなかった物だった。