第二章 ~松陽~(83P)
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松陽が自室に戻ると、そこには既に柚希の姿があった。
お茶とお菓子までも準備されており、腰を据えて話す必要がある事を理解していたようだ。
「柚希は本当によく気が回る子ですね。……回りすぎるくらいですが」
少し悲し気な笑みを見せた松陽は、柚希を正面にして座った。
「さて、少し話をしましょうか」
お茶を手にした松陽が言うと、柚希もコクリと頷く。だが、柚希は俯いて座ったまま何も話そうとはしない。
「貴女が心にため込んでいる物を吐き出すのは、難しいですか?」
「そういう訳じゃないんだけど……」
目を合わせようとせず、複雑な表情で畳を見つめる柚希。心の内が言葉にならないのか、それとも言葉にしたくないのか。
暫くの間松陽は柚希からの言葉を待っていたが、それはただ沈黙の時を過ごすだけにしかならなかった。
そしてきっかり五分が過ぎた頃。
「では、私から話をしましょうかね」
切り出したのは松陽だった。
「銀時の事、剣の腕の事、そして先ほどの高杉くんの言葉。今貴女を悩ませているのはこの三つが主でしょう。一つずつ解決していくとしますか」
「別に解決だなんて、そんな御大層な問題じゃないよ。……ちょっと落ち込んだだけだもん」
「落ち込んだままはよくありませんよ。貴女はいつだって自分一人で何とかしようとしますが、時には誰かに甘えたって良いんです」
そっと手を伸ばし、柚希の頭を撫でる。膝の上に置かれていた小さな手がギュッと拳を握るのを見た松陽は、その手の上に自分の手を重ねた。
「私は決して出来た大人ではありませんが、こうして貴女の手を包み込める程度の器はあります。貴女にしか見えていない物は分からなくても、貴女が目にしていない物を見ているかもしれません。だから話してみませんか? 言葉にする事で気付ける事もありますよ」
「親父様……」
「それに私も父親代わりとして、それらしい事をしたいです」
「何それ、自分の勝手な希望じゃない」
「だってそう思うんですもん」
柚希が顔を上げれば、にっこりと優しい笑みを浮かべている松陽。どんな時でも変わらぬ自分への愛情は、柚希の心に柔らかな風を送り込んだようだ。
大きく息を吸い、何かを決心するかのようにふうっと吐き出した柚希は、ぽつぽつと語りだした。
「さっきシロと試合をした時、違和感を覚えたの。一撃目の突きを流そうとした時の重さが、今まで感じた事の無い程に重かったんだ。その後何度か鍔迫り合いを繰り返したけど、徐々にシロの力が弱まっていって……それで気付いたんだよね。シロは私に手加減をし始めてるって」
悔しそうに言う柚希の手が、更に強く握りしめられる。松陽はその手を優しくポンポンと叩きながら、静かに続きを待った。
お茶とお菓子までも準備されており、腰を据えて話す必要がある事を理解していたようだ。
「柚希は本当によく気が回る子ですね。……回りすぎるくらいですが」
少し悲し気な笑みを見せた松陽は、柚希を正面にして座った。
「さて、少し話をしましょうか」
お茶を手にした松陽が言うと、柚希もコクリと頷く。だが、柚希は俯いて座ったまま何も話そうとはしない。
「貴女が心にため込んでいる物を吐き出すのは、難しいですか?」
「そういう訳じゃないんだけど……」
目を合わせようとせず、複雑な表情で畳を見つめる柚希。心の内が言葉にならないのか、それとも言葉にしたくないのか。
暫くの間松陽は柚希からの言葉を待っていたが、それはただ沈黙の時を過ごすだけにしかならなかった。
そしてきっかり五分が過ぎた頃。
「では、私から話をしましょうかね」
切り出したのは松陽だった。
「銀時の事、剣の腕の事、そして先ほどの高杉くんの言葉。今貴女を悩ませているのはこの三つが主でしょう。一つずつ解決していくとしますか」
「別に解決だなんて、そんな御大層な問題じゃないよ。……ちょっと落ち込んだだけだもん」
「落ち込んだままはよくありませんよ。貴女はいつだって自分一人で何とかしようとしますが、時には誰かに甘えたって良いんです」
そっと手を伸ばし、柚希の頭を撫でる。膝の上に置かれていた小さな手がギュッと拳を握るのを見た松陽は、その手の上に自分の手を重ねた。
「私は決して出来た大人ではありませんが、こうして貴女の手を包み込める程度の器はあります。貴女にしか見えていない物は分からなくても、貴女が目にしていない物を見ているかもしれません。だから話してみませんか? 言葉にする事で気付ける事もありますよ」
「親父様……」
「それに私も父親代わりとして、それらしい事をしたいです」
「何それ、自分の勝手な希望じゃない」
「だってそう思うんですもん」
柚希が顔を上げれば、にっこりと優しい笑みを浮かべている松陽。どんな時でも変わらぬ自分への愛情は、柚希の心に柔らかな風を送り込んだようだ。
大きく息を吸い、何かを決心するかのようにふうっと吐き出した柚希は、ぽつぽつと語りだした。
「さっきシロと試合をした時、違和感を覚えたの。一撃目の突きを流そうとした時の重さが、今まで感じた事の無い程に重かったんだ。その後何度か鍔迫り合いを繰り返したけど、徐々にシロの力が弱まっていって……それで気付いたんだよね。シロは私に手加減をし始めてるって」
悔しそうに言う柚希の手が、更に強く握りしめられる。松陽はその手を優しくポンポンと叩きながら、静かに続きを待った。