第二章 ~松陽~(83P)
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「おい、どうしだんだよ。処置は終わったんだろ?」
「……うん、そうだね……君はこうしてこれからもずっと銀時とやりあって、傷付いて。でも立ち上がって強くなっていくんだろうね」
「はァ? 何言ってんだアンタ」
「でも私は――」
「治療は終わりましたか、柚希」
何かを言いかけた柚希の言葉を遮るように現れたのは、松陽。ポンと柚希の頭に手を置いて優しく頭を撫でると、何故か小さな声で「柚希はこの後私の部屋にいらっしゃい」と囁いた。そして生徒たちに向けて言う。
「では、今日の稽古はこれでお終いにしましょう。片付けが終わりましたら、各々気を付けて帰って下さいね」
「はーい」
松陽の言葉に、子供たちが和気あいあいと片付けを始めれば、柚希も立ち上がって道場を出て行く。
「あ……おい、さっき何か言いかけてたんじゃねェのかよ」
柚希の急な態度の変化が気になって思わず声をかけた高杉だったが、何故かそれに答えたのは松陽だ。
「大丈夫ですよ。私が話を聞いておきますから。あの子を心配してくれてありがとうございます」
「いや、別に俺は……」
「明日にはきっと元気になってますからね。ええ、明日には」
「明日ですよ~」とダメ押しのように言いつつ、柚希を追うようにそそくさとその場を立ち去る松陽。あまりに慌ただしい展開に、高杉は呆気にとられながら後ろ姿を見送る事しか出来ない。
「何だよその含みのある言い方は。……まァ俺にはどうでも良い事だけど」
そう言った高杉は、未だに床に埋もれたままの銀時をチラリと見る。そして小さくため息を吐くと銀時の後ろに回り込み、その体を引き上げてやった。
「やっと出られたぜ……ったく、薄情な奴らばっかりだよな。あ、でも礼は言わねーからな。元々はお前が悪ィんだしよ」
「礼なんていらねェよ。それよか一つ聞かせろ天パ」
「天パって何だよ! テメェがストレートだからってバカにして……」
「あの女と試合う時、手ェ抜いたのか?」
最後の言葉は、銀時にしか聞こえない程の小さな声で発せられた物。ハッとしたように高杉を見た銀時は、彼が何を言いたいかに気付いたのかチッと舌打ちをした。
「……別に手なんて抜いちゃいねェよ。柚希が強いのはお前も見て分かんだろ。だから戦い方を変えてるだけだ」
面倒くさそうに頭の後ろを掻きながらも、問いに答える銀時。その意味を察した高杉は、呆れたような顔をしながら言った。
「んっとにどいつもこいつも……ここにはおかしな奴しかいねェんだな」
「何だよ、それ」
「さァな。テメェで考えろ。俺はもう帰る」
「待てよ、中途半端じゃ気持ち悪ィだろうが。一人で勝手に納得してんじゃねェよ!」
「テメェとあの女の事なんて、俺には関係ねェよ。じゃァな」
「あ、おい!」
銀時が止めるのも聞かず、高杉はさっさと道場を出て行く。
結局一人残されてしまった銀時は、モヤモヤを抱えたまま蚊帳の外に放り出されたような形になってしまった。
「……わけ分かんねーよ。あのガキと話してから柚希はおかしいし、先生も柚希を気にしてるようだったし。……くそッ、調子狂うぜ」
「……うん、そうだね……君はこうしてこれからもずっと銀時とやりあって、傷付いて。でも立ち上がって強くなっていくんだろうね」
「はァ? 何言ってんだアンタ」
「でも私は――」
「治療は終わりましたか、柚希」
何かを言いかけた柚希の言葉を遮るように現れたのは、松陽。ポンと柚希の頭に手を置いて優しく頭を撫でると、何故か小さな声で「柚希はこの後私の部屋にいらっしゃい」と囁いた。そして生徒たちに向けて言う。
「では、今日の稽古はこれでお終いにしましょう。片付けが終わりましたら、各々気を付けて帰って下さいね」
「はーい」
松陽の言葉に、子供たちが和気あいあいと片付けを始めれば、柚希も立ち上がって道場を出て行く。
「あ……おい、さっき何か言いかけてたんじゃねェのかよ」
柚希の急な態度の変化が気になって思わず声をかけた高杉だったが、何故かそれに答えたのは松陽だ。
「大丈夫ですよ。私が話を聞いておきますから。あの子を心配してくれてありがとうございます」
「いや、別に俺は……」
「明日にはきっと元気になってますからね。ええ、明日には」
「明日ですよ~」とダメ押しのように言いつつ、柚希を追うようにそそくさとその場を立ち去る松陽。あまりに慌ただしい展開に、高杉は呆気にとられながら後ろ姿を見送る事しか出来ない。
「何だよその含みのある言い方は。……まァ俺にはどうでも良い事だけど」
そう言った高杉は、未だに床に埋もれたままの銀時をチラリと見る。そして小さくため息を吐くと銀時の後ろに回り込み、その体を引き上げてやった。
「やっと出られたぜ……ったく、薄情な奴らばっかりだよな。あ、でも礼は言わねーからな。元々はお前が悪ィんだしよ」
「礼なんていらねェよ。それよか一つ聞かせろ天パ」
「天パって何だよ! テメェがストレートだからってバカにして……」
「あの女と試合う時、手ェ抜いたのか?」
最後の言葉は、銀時にしか聞こえない程の小さな声で発せられた物。ハッとしたように高杉を見た銀時は、彼が何を言いたいかに気付いたのかチッと舌打ちをした。
「……別に手なんて抜いちゃいねェよ。柚希が強いのはお前も見て分かんだろ。だから戦い方を変えてるだけだ」
面倒くさそうに頭の後ろを掻きながらも、問いに答える銀時。その意味を察した高杉は、呆れたような顔をしながら言った。
「んっとにどいつもこいつも……ここにはおかしな奴しかいねェんだな」
「何だよ、それ」
「さァな。テメェで考えろ。俺はもう帰る」
「待てよ、中途半端じゃ気持ち悪ィだろうが。一人で勝手に納得してんじゃねェよ!」
「テメェとあの女の事なんて、俺には関係ねェよ。じゃァな」
「あ、おい!」
銀時が止めるのも聞かず、高杉はさっさと道場を出て行く。
結局一人残されてしまった銀時は、モヤモヤを抱えたまま蚊帳の外に放り出されたような形になってしまった。
「……わけ分かんねーよ。あのガキと話してから柚希はおかしいし、先生も柚希を気にしてるようだったし。……くそッ、調子狂うぜ」