第二章 ~松陽~(83P)
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「俺と同世代であれだけの試合を見せてくれる奴はいなかったから、面白かった」
「そうですか。では個々の戦いぶりについては?」
「個々と言われても……柚希って奴は相手の動きを的確に読み取って素早く対応できるのが強みのようだけど、非力に感じた。あの埋もれてる奴は……」
「埋もれてる奴って何だよ!」と未だ床から抜け出せずもがいている銀時は突っ込んだが、それを拾おうとするものは誰一人おらず流されてしまい、高杉も話を続ける。
「俺と試合ってた時もそうだけど、型にはまらない我流っていうか、実践慣れしてる感じがする。昨日の試合の後に、説教垂れながらアンタが言ってた『生きるための強さ』ってのがこれなんだろうな」
「ふむ……なるほど。ではどちらが強いと思いました?」
「今の所甲乙はつけ難いけど、敢えて言うなら攻めの戦いはアイツで、守りは柚希が優位だと思う」
――この子はよく見ている。
そう感心しながら松陽は大きく頷いた。
出会った頃に比べて格段に成長した二人だが、時と共に個々の特性もはっきりしてくる。高杉の言うように、ここ最近は剣の技術や力の種類によって差が出てき始めているのを松陽も感じていた。
「つまりは引き分けって事かよ。くそっ、面白くねェ」
高杉の言葉が不満だったらしく、銀時が不機嫌そうに言う。
「何よ。どうしても勝敗をはっきりさせたいんだったら、今ここで一本取ってあげようか?」
「ふざけんな。この状況じゃ俺が戦えねェだろうが! っていうかまずは俺をここから出せ!」
「やなこった。親父様からお許しが出るまではそのままでいなさいよ」
「くっ……!」
悔しそうに睨みつけてくる銀時にベーッと舌を出して見せた柚希は、高杉の前に立って手を伸ばした。
「とりあえずこれで今日の道場破りは閉店でしょ? あっちで傷の手当てをするからおいでよ」
そう言って高杉の腕を掴んで立たせ、強引に道場の隅へと引っ張っていく。
拒否をする間も与えられずに戸惑いながら松陽を見れば、笑顔でヒラヒラと手を振るばかりだ。
「こんな傷、大した事ねェからこのまま……」
「血が出てるところもあるでしょ。手当したら帰って良いから、ほら、さっさと来る!」
柚希の手を振り払う事も出来ず、薬箱の置かれている場所まで引きずって行かれた高杉だったが、思いもよらぬ程に的確な処置を受ける。痛みが少なく丁寧で迅速な処置は、自分とさして年の変わらぬ子供とは思えぬ手際の良さで、高杉も舌を巻いた。
「……アンタ、実は医者の娘か何かか?」
「どうして? 違うよ。ただ必要だったから覚えただけ」
「すげェな。必要だからって簡単に覚えられる事じゃねェだろ。アンタには剣術よりこういうのが向いてんだろうな」
高杉の言葉に、包帯を巻いていた柚希の手が止まる。じっと高杉を見つめる柚希だったが、「何だよ」と睨み返してくる目に嘘は無い事が分かると、少し困ったような笑みを見せた。
「剣術より医術……かぁ。そうかもしれないね。でもそんな風に言うって事は、君も気付いてたんだ」
再び手を動かし、器用に高杉の怪我の処置をしながら言う。
「銀時が私に対しても力を加減してたって事。本人に自覚があるかは分からないけどさ」
「はい、おしまい」と高杉の手を軽く包帯の上からポンポンと叩いた柚希だったが、何故かそのまま動こうとはしない。しかも触れている手は小さく震えており、高杉は訳の分からぬまま柚希に尋ねた。
「そうですか。では個々の戦いぶりについては?」
「個々と言われても……柚希って奴は相手の動きを的確に読み取って素早く対応できるのが強みのようだけど、非力に感じた。あの埋もれてる奴は……」
「埋もれてる奴って何だよ!」と未だ床から抜け出せずもがいている銀時は突っ込んだが、それを拾おうとするものは誰一人おらず流されてしまい、高杉も話を続ける。
「俺と試合ってた時もそうだけど、型にはまらない我流っていうか、実践慣れしてる感じがする。昨日の試合の後に、説教垂れながらアンタが言ってた『生きるための強さ』ってのがこれなんだろうな」
「ふむ……なるほど。ではどちらが強いと思いました?」
「今の所甲乙はつけ難いけど、敢えて言うなら攻めの戦いはアイツで、守りは柚希が優位だと思う」
――この子はよく見ている。
そう感心しながら松陽は大きく頷いた。
出会った頃に比べて格段に成長した二人だが、時と共に個々の特性もはっきりしてくる。高杉の言うように、ここ最近は剣の技術や力の種類によって差が出てき始めているのを松陽も感じていた。
「つまりは引き分けって事かよ。くそっ、面白くねェ」
高杉の言葉が不満だったらしく、銀時が不機嫌そうに言う。
「何よ。どうしても勝敗をはっきりさせたいんだったら、今ここで一本取ってあげようか?」
「ふざけんな。この状況じゃ俺が戦えねェだろうが! っていうかまずは俺をここから出せ!」
「やなこった。親父様からお許しが出るまではそのままでいなさいよ」
「くっ……!」
悔しそうに睨みつけてくる銀時にベーッと舌を出して見せた柚希は、高杉の前に立って手を伸ばした。
「とりあえずこれで今日の道場破りは閉店でしょ? あっちで傷の手当てをするからおいでよ」
そう言って高杉の腕を掴んで立たせ、強引に道場の隅へと引っ張っていく。
拒否をする間も与えられずに戸惑いながら松陽を見れば、笑顔でヒラヒラと手を振るばかりだ。
「こんな傷、大した事ねェからこのまま……」
「血が出てるところもあるでしょ。手当したら帰って良いから、ほら、さっさと来る!」
柚希の手を振り払う事も出来ず、薬箱の置かれている場所まで引きずって行かれた高杉だったが、思いもよらぬ程に的確な処置を受ける。痛みが少なく丁寧で迅速な処置は、自分とさして年の変わらぬ子供とは思えぬ手際の良さで、高杉も舌を巻いた。
「……アンタ、実は医者の娘か何かか?」
「どうして? 違うよ。ただ必要だったから覚えただけ」
「すげェな。必要だからって簡単に覚えられる事じゃねェだろ。アンタには剣術よりこういうのが向いてんだろうな」
高杉の言葉に、包帯を巻いていた柚希の手が止まる。じっと高杉を見つめる柚希だったが、「何だよ」と睨み返してくる目に嘘は無い事が分かると、少し困ったような笑みを見せた。
「剣術より医術……かぁ。そうかもしれないね。でもそんな風に言うって事は、君も気付いてたんだ」
再び手を動かし、器用に高杉の怪我の処置をしながら言う。
「銀時が私に対しても力を加減してたって事。本人に自覚があるかは分からないけどさ」
「はい、おしまい」と高杉の手を軽く包帯の上からポンポンと叩いた柚希だったが、何故かそのまま動こうとはしない。しかも触れている手は小さく震えており、高杉は訳の分からぬまま柚希に尋ねた。