第二章 ~松陽~(83P)
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そして翌日。
銀時の言葉通り、道場破りの少年はやってくる。
「今日こそはお前に勝つからな!」
「始め」の合図もそこそこに、少年の叫びと共に上段から振り下ろされた竹刀は、銀時に軽く受け流される。だがそれは計算の内だったのか、すぐに少年は体を回転させながら横薙ぎに払った。
寸での所でかわした銀時が突きで応戦すると、少年も突きで返してくる。お互いの体をかすめた竹刀は次の瞬間手元に引き寄せられ、各々の得意とする型に収まった。だがまたすぐに二人は相手への一歩を踏み出す。
子供同士の試合とは思えぬ戦いぶりは、大人顔負けだ。
「やっぱこの二人が戦うとすげぇや!」
「昨日は銀時が勝ったけど、ひょっとして今日はアイツが勝てるかも?」
周りの者たちは自分の稽古も忘れて二人の試合に見入っている。
それは柚希も同じで、誰よりも真剣に二人の戦いを見つめていた。
「シロが嬉しそうにしてたわけだ。あんなに動ける子は今までいなかったもんね。悔しいけど、私もワクワクしちゃうわ」
今の所見た限りでは、間違いなく銀時が優勢だ。激しい打ち合いを繰り広げてはいるものの、未だ銀時にはかなりの余裕があるようで、挑発するように口角を上げながら戦っている。
反面、少年の方は全力で向かってきていた。
しかしこのまま打ち合いを続けていても埒はあかない。
やがて頃合いと思ったのか銀時の表情が変わり、纏う空気が鋭くなった。
「遊びは終い、な」
「――っ!」
少年が銀時から向けられた鋭い気に息を飲んだ瞬間、パァン! と大きく竹刀がぶつかる音が響く。体重を乗せた銀時の『胴』は少年の体を弾き飛ばしていた。
「それまで!」
道場の端で静かに見守っていた松陽が合図を出す。それを聞いた銀時はふぅっと息を吐くと、またいつもの気怠い表情で少年を見た。
「まだまだ修行が足んねーよ」
「……くそっ!」
心底悔しそうな少年は、銀時を睨みつける。だが腹部の衝撃が大きかったのか立ち上がれず、腹の部分を押さえて座ったままだ。
「ちょっとシ……銀時。あんた手加減しなかったわけ?」
少年のダメージが思ったより大きい事に気付いた柚希は、慌てて少年の元へと駆け寄った。
「君、大丈夫? 動けそう?」
「……アンタ誰だよ。昨日はいなかったよな」
胡散臭そうに柚希を見ながら少年が言う。その喋り方がほんの少し銀時に似ているような気がして、柚希は小さく笑いながら答えた。
「私は柚希。この寺子屋の経営者である吉田松陽の娘的存在であり、会計方であり、食事係であり、医療担当であり、今君が戦っていた銀時の姉……いや、ボスだな」
「ボスって何だよ!」
自己紹介を始めた柚希を見ていた銀時だったが、聞き捨てならない言葉に思わず反応する。
「剣術の腕ならもうとっくに俺の方が上じゃねェか。どっちかってェとボスはおれだろ!」
「な~に言ってんのよ。普段私が手を抜いてあげてるってのが分かんないの?」
「よ~し、言ったな。そんじゃ今ここで本気を見せてみろっての」
「上等じゃない。覚悟しなさいよ! それじゃあえ~っと……君!」
置き去りにされていた少年は唖然としながら二人を見ていたが、突然柚希に声をかけられてビクリと体を震わせた。
銀時の言葉通り、道場破りの少年はやってくる。
「今日こそはお前に勝つからな!」
「始め」の合図もそこそこに、少年の叫びと共に上段から振り下ろされた竹刀は、銀時に軽く受け流される。だがそれは計算の内だったのか、すぐに少年は体を回転させながら横薙ぎに払った。
寸での所でかわした銀時が突きで応戦すると、少年も突きで返してくる。お互いの体をかすめた竹刀は次の瞬間手元に引き寄せられ、各々の得意とする型に収まった。だがまたすぐに二人は相手への一歩を踏み出す。
子供同士の試合とは思えぬ戦いぶりは、大人顔負けだ。
「やっぱこの二人が戦うとすげぇや!」
「昨日は銀時が勝ったけど、ひょっとして今日はアイツが勝てるかも?」
周りの者たちは自分の稽古も忘れて二人の試合に見入っている。
それは柚希も同じで、誰よりも真剣に二人の戦いを見つめていた。
「シロが嬉しそうにしてたわけだ。あんなに動ける子は今までいなかったもんね。悔しいけど、私もワクワクしちゃうわ」
今の所見た限りでは、間違いなく銀時が優勢だ。激しい打ち合いを繰り広げてはいるものの、未だ銀時にはかなりの余裕があるようで、挑発するように口角を上げながら戦っている。
反面、少年の方は全力で向かってきていた。
しかしこのまま打ち合いを続けていても埒はあかない。
やがて頃合いと思ったのか銀時の表情が変わり、纏う空気が鋭くなった。
「遊びは終い、な」
「――っ!」
少年が銀時から向けられた鋭い気に息を飲んだ瞬間、パァン! と大きく竹刀がぶつかる音が響く。体重を乗せた銀時の『胴』は少年の体を弾き飛ばしていた。
「それまで!」
道場の端で静かに見守っていた松陽が合図を出す。それを聞いた銀時はふぅっと息を吐くと、またいつもの気怠い表情で少年を見た。
「まだまだ修行が足んねーよ」
「……くそっ!」
心底悔しそうな少年は、銀時を睨みつける。だが腹部の衝撃が大きかったのか立ち上がれず、腹の部分を押さえて座ったままだ。
「ちょっとシ……銀時。あんた手加減しなかったわけ?」
少年のダメージが思ったより大きい事に気付いた柚希は、慌てて少年の元へと駆け寄った。
「君、大丈夫? 動けそう?」
「……アンタ誰だよ。昨日はいなかったよな」
胡散臭そうに柚希を見ながら少年が言う。その喋り方がほんの少し銀時に似ているような気がして、柚希は小さく笑いながら答えた。
「私は柚希。この寺子屋の経営者である吉田松陽の娘的存在であり、会計方であり、食事係であり、医療担当であり、今君が戦っていた銀時の姉……いや、ボスだな」
「ボスって何だよ!」
自己紹介を始めた柚希を見ていた銀時だったが、聞き捨てならない言葉に思わず反応する。
「剣術の腕ならもうとっくに俺の方が上じゃねェか。どっちかってェとボスはおれだろ!」
「な~に言ってんのよ。普段私が手を抜いてあげてるってのが分かんないの?」
「よ~し、言ったな。そんじゃ今ここで本気を見せてみろっての」
「上等じゃない。覚悟しなさいよ! それじゃあえ~っと……君!」
置き去りにされていた少年は唖然としながら二人を見ていたが、突然柚希に声をかけられてビクリと体を震わせた。