第二章 ~松陽~(83P)
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「勝負あったー!」
「すげーすげー! 兄ちゃんの勝ちだ~!」
そこにはしっかりと竹刀を握って立つ銀時と、膝をついた柚希。どちらが勝ったかは誰が見ても明らかだ。
すると子供たちが一斉に、勝者である銀時の元へと駆け寄る。
「兄ちゃんカッコよかったよ!」
「うんうん、最後のパァンってやつ、ビックリした」
目を輝かせて取り囲んでくる子供たちの勢いに、銀時は慌てた。
「え? いや、ちょっ、お前ら距離近過ぎ!」
もみくちゃにされ、子供たちの輪から逃げ出す事も出来ない銀時はおたおたするばかりだ。そもそもこんなにたくさんの子供と関わったことが無い。どうすれば良いのかも分からず、銀時は助けを求めようと柚希を呼んだ。
「おい柚希、助け……」
ところがその言葉は、最後まで言えずに飲み込まれる。
銀時の視線の先には柚希がこちらを見て立っているのだが、その表情は柚希と出会ってから一度も見たことのない物だったから。
口角は上がっているのに、今にも泣きそうな瞳は銀時の胸を締め付けた。
「柚希……?」
銀時に呼ばれてハッと気付いた柚希は小さく頭を振る。そして肩を竦めながらやれやれといった顔をして見せると、銀時に向かって叫んだ。
「丁度良いわ。子供たちの勧誘は宜しくね〜。私は大人と話をするから」
「はァ!? 何で俺が?」
「その為に来たんでしょ。頑張れ!」
手をヒラヒラと振って大人たちのいる方へと向かう柚希を呼び止めようとした銀時だったが、すぐに無駄だと察して諦める。
「こうなる事を分かってて、わざと負けやがったな」
最後の一撃を繰り出した時、柚希がわざと竹刀から手を離したのには気付いていた。
何でこんな事をしたかと思っていたが、子どもたちが勝者に群がる事を予測していたのだろう。そうなれば、必然的に役割が決まるというわけだ。
自分が代わると言ってみたところで柚希は聞き入れはしまい。実際代わったところで柚希程に口が立つわけでは無い事も分かってはいる。
「ったく、とことん面倒くせェや」
ガシガシと後頭部を掻いた銀時は、自分を取り囲んでいる子供達に向かって言った。
「お前らもやってみるか?」
「まぁ予想通りだねー」
帰り道。
先程集まっていた何処ぞの親からもらった麩菓子をボリボリと齧りながら、柚希がボヤく。同じく麩菓子を齧る銀時は、無言のままチラチラと柚希を見ていた。
「興味はあれど、正体の知れぬ輩の懐には飛び込めぬ、と。そりゃそうだよねぇ」
半分ほど食べ終えた所で柚希は水筒の水を飲み、ため息を吐く。分かってはいた事だが、少しは期待をしていただけに残念な気持ちが募っていた。
「子どもたちはやりたいって言ってくれてたのにね。大人をその気にさせるには時間がかかりそうだわ。今回は寺子屋が出来るっていう宣伝が出来ただけでも良しとするしかないかなぁ。あ、シロもお水飲む?」
コクリと頷いた銀時に水筒を渡した柚希は、うーんと伸びをしながら空を仰ぐ。ふと見れば木に小鳥が止まっている事に気付き、麩菓子を砕いて手の平に乗せてみると、人慣れしているのかすぐに啄みにやって来た。
「ふふ、可愛い。ねぇ、シロもやってみない?」
麩菓子を追加しながら柚希は言ったが、銀時の返事は無い。不思議に思い銀時を見ると、その顔はとても不機嫌そうだった。
「すげーすげー! 兄ちゃんの勝ちだ~!」
そこにはしっかりと竹刀を握って立つ銀時と、膝をついた柚希。どちらが勝ったかは誰が見ても明らかだ。
すると子供たちが一斉に、勝者である銀時の元へと駆け寄る。
「兄ちゃんカッコよかったよ!」
「うんうん、最後のパァンってやつ、ビックリした」
目を輝かせて取り囲んでくる子供たちの勢いに、銀時は慌てた。
「え? いや、ちょっ、お前ら距離近過ぎ!」
もみくちゃにされ、子供たちの輪から逃げ出す事も出来ない銀時はおたおたするばかりだ。そもそもこんなにたくさんの子供と関わったことが無い。どうすれば良いのかも分からず、銀時は助けを求めようと柚希を呼んだ。
「おい柚希、助け……」
ところがその言葉は、最後まで言えずに飲み込まれる。
銀時の視線の先には柚希がこちらを見て立っているのだが、その表情は柚希と出会ってから一度も見たことのない物だったから。
口角は上がっているのに、今にも泣きそうな瞳は銀時の胸を締め付けた。
「柚希……?」
銀時に呼ばれてハッと気付いた柚希は小さく頭を振る。そして肩を竦めながらやれやれといった顔をして見せると、銀時に向かって叫んだ。
「丁度良いわ。子供たちの勧誘は宜しくね〜。私は大人と話をするから」
「はァ!? 何で俺が?」
「その為に来たんでしょ。頑張れ!」
手をヒラヒラと振って大人たちのいる方へと向かう柚希を呼び止めようとした銀時だったが、すぐに無駄だと察して諦める。
「こうなる事を分かってて、わざと負けやがったな」
最後の一撃を繰り出した時、柚希がわざと竹刀から手を離したのには気付いていた。
何でこんな事をしたかと思っていたが、子どもたちが勝者に群がる事を予測していたのだろう。そうなれば、必然的に役割が決まるというわけだ。
自分が代わると言ってみたところで柚希は聞き入れはしまい。実際代わったところで柚希程に口が立つわけでは無い事も分かってはいる。
「ったく、とことん面倒くせェや」
ガシガシと後頭部を掻いた銀時は、自分を取り囲んでいる子供達に向かって言った。
「お前らもやってみるか?」
「まぁ予想通りだねー」
帰り道。
先程集まっていた何処ぞの親からもらった麩菓子をボリボリと齧りながら、柚希がボヤく。同じく麩菓子を齧る銀時は、無言のままチラチラと柚希を見ていた。
「興味はあれど、正体の知れぬ輩の懐には飛び込めぬ、と。そりゃそうだよねぇ」
半分ほど食べ終えた所で柚希は水筒の水を飲み、ため息を吐く。分かってはいた事だが、少しは期待をしていただけに残念な気持ちが募っていた。
「子どもたちはやりたいって言ってくれてたのにね。大人をその気にさせるには時間がかかりそうだわ。今回は寺子屋が出来るっていう宣伝が出来ただけでも良しとするしかないかなぁ。あ、シロもお水飲む?」
コクリと頷いた銀時に水筒を渡した柚希は、うーんと伸びをしながら空を仰ぐ。ふと見れば木に小鳥が止まっている事に気付き、麩菓子を砕いて手の平に乗せてみると、人慣れしているのかすぐに啄みにやって来た。
「ふふ、可愛い。ねぇ、シロもやってみない?」
麩菓子を追加しながら柚希は言ったが、銀時の返事は無い。不思議に思い銀時を見ると、その顔はとても不機嫌そうだった。