第一章 ~再会~(49P)
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「もう良いから、さっさと話をしなさいよ! のらりくらりと時間を延ばされるのって大っ嫌いなの!」
口をへの字に結んで銀時を睨む柚希。だがその顔は怒りに加えて先ほどの恥ずかしさも残っているようで、恐ろしさは微塵も感じられない。
そんな柚希をしばらく見つめていた銀時だったが、やがてフッと小さく笑うと言った。
「そんじゃ、お望み通り結論から。銀さんは柚希のせいで傷付いちゃったので、傷が治るまで話したくありませーん」
「はぁ!? 何よそれ。傷付いてんのは私! あんたのどこに傷が付いてるっての?」
「いやぁ、俺の心にとんでもなく深い傷を作ってくれたのは柚希でしょうが」
「じゃあその傷とやらを見せてみなさいよ!」
「いやん、柚希ちゃんったらえっちぃ」
「キモイわっ!」
まともな話ができず、柚希のイライラは増すばかり。このままでは不毛な会話が続くだけで、何も進展はないだろう。
なんとか落ち着こうと怒りで震える体を必死に抑えつつ、柚希は忘れかけていた手の中のプリンを口に運んだ。先ほど銀時に不意打ちで口に入れられた時は味わう暇もなかったが、改めて食べてみると妙な懐かしさを覚える。
――プリンって、こんな味だったっけ。
思い返せば、昔食べた事があった気がするような……。あれはいつの事だったか。そう遠い昔では無いはずなのに、柚希は何故か思い出すことができなかった。
――まただ……やっぱり私の何かがおかしい……。
「柚希?」
意識が飛んでしまっている柚希を、銀時が心配そうに覗き込む。その顔に冷たい視線を返しつつもプリンを食べながら、柚希は思考を巡らせていた。
――この男と、今後も追ってくるであろう春雨。混乱している私の記憶と、今私が置かれている状況。全てを鑑みてまずやらなきゃいけない事は何?
「もしもーし、柚希さーん。姫ちゃーん。銀さんの声、聞こえてるー?」
顔の前で手をひらひら動かしながら、気の抜けたような声で話しかけてくる銀時の目を、柚希は初めて意志を持って見つめる。その真剣な眼差しに、銀時は思わず後ずさった。
「ちょっと、いきなり何ですか。俺の顔に何かついてる? それとも見とれちゃってるのかなー?」
ふざけた態度を取りながらも焦りを隠せない銀時をじっと見つめ、その瞳の奥を読む。そこから導き出したものが、柚希の今後の指針になるであろうと信じて。
「柚希……?」
「傷が治るまで、あんたの話は聞けないのよね?」
「ああそうだな」
「その傷ってのは、あんたの心の? それとも私の?」
「……どっちも、だな」
「そう」
銀時の答えは、柚希の心を決めさせたのだろう。ふっと小さく息を吐くと、目を瞑る。再び銀時と合わせた眼差しには、強い意志が宿っていた。
口をへの字に結んで銀時を睨む柚希。だがその顔は怒りに加えて先ほどの恥ずかしさも残っているようで、恐ろしさは微塵も感じられない。
そんな柚希をしばらく見つめていた銀時だったが、やがてフッと小さく笑うと言った。
「そんじゃ、お望み通り結論から。銀さんは柚希のせいで傷付いちゃったので、傷が治るまで話したくありませーん」
「はぁ!? 何よそれ。傷付いてんのは私! あんたのどこに傷が付いてるっての?」
「いやぁ、俺の心にとんでもなく深い傷を作ってくれたのは柚希でしょうが」
「じゃあその傷とやらを見せてみなさいよ!」
「いやん、柚希ちゃんったらえっちぃ」
「キモイわっ!」
まともな話ができず、柚希のイライラは増すばかり。このままでは不毛な会話が続くだけで、何も進展はないだろう。
なんとか落ち着こうと怒りで震える体を必死に抑えつつ、柚希は忘れかけていた手の中のプリンを口に運んだ。先ほど銀時に不意打ちで口に入れられた時は味わう暇もなかったが、改めて食べてみると妙な懐かしさを覚える。
――プリンって、こんな味だったっけ。
思い返せば、昔食べた事があった気がするような……。あれはいつの事だったか。そう遠い昔では無いはずなのに、柚希は何故か思い出すことができなかった。
――まただ……やっぱり私の何かがおかしい……。
「柚希?」
意識が飛んでしまっている柚希を、銀時が心配そうに覗き込む。その顔に冷たい視線を返しつつもプリンを食べながら、柚希は思考を巡らせていた。
――この男と、今後も追ってくるであろう春雨。混乱している私の記憶と、今私が置かれている状況。全てを鑑みてまずやらなきゃいけない事は何?
「もしもーし、柚希さーん。姫ちゃーん。銀さんの声、聞こえてるー?」
顔の前で手をひらひら動かしながら、気の抜けたような声で話しかけてくる銀時の目を、柚希は初めて意志を持って見つめる。その真剣な眼差しに、銀時は思わず後ずさった。
「ちょっと、いきなり何ですか。俺の顔に何かついてる? それとも見とれちゃってるのかなー?」
ふざけた態度を取りながらも焦りを隠せない銀時をじっと見つめ、その瞳の奥を読む。そこから導き出したものが、柚希の今後の指針になるであろうと信じて。
「柚希……?」
「傷が治るまで、あんたの話は聞けないのよね?」
「ああそうだな」
「その傷ってのは、あんたの心の? それとも私の?」
「……どっちも、だな」
「そう」
銀時の答えは、柚希の心を決めさせたのだろう。ふっと小さく息を吐くと、目を瞑る。再び銀時と合わせた眼差しには、強い意志が宿っていた。