第一章 ~再会~(49P)
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柚希は逃げていた。
もう自分がどちらを向いているのかも分からないが、ただひたすら、自分に向けられる殺気から逃れようと走り続けていた。
捕まれば、そこにあるのは無限の地獄。もう二度とあの場所から抜け出す事は出来ないだろう。これが最初で最後のチャンスなのだ。
手の中の扇子を強く握りしめながら、
「絶対に……逃げ切ってみせる」
そう小さく呟いた柚希は、息の整わない体に鞭を打ちつつ走り続けた。
細い路地を何度も曲がっていると、不意に明るい大通りへとぶつかった。夜だというのに、まるで昼間のように明るいネオンが眩しくて、思わず目を瞬かせる。
「ここは一体?」
慌てて光から隠れるように路地の奥へと戻ろうとするも、後ろからは容赦ない追っ手の気配が感じられ、戻る事は許されない事に気付く。
「こんな人通りの多い場所に出てしまうなんて……」
仕方なく人ごみの合間を縫いながら走ったが、その先に柚希が隠れられそうな場所は見つからない。
――自分以外の者を巻き込むわけには……
そうは思っていても、追っ手にそのような気遣いなどあるはずもなく。案の定、逃げ続ける柚希を捕えるためにと、追っ手の者たちが通行人に手を出し始めた。
「いい加減諦めろ、柚希! お前は俺たちから逃れる事なんざできねぇんだよ。そろそろ鬼ごっこも飽きたしな。これ以上逃げるってんなら、すれ違う人間どもを皆殺しにしながら追いかけてやるぜ」
「うわあっ!」
追っ手の男が声高に叫ぶと同時に上がった悲鳴は、柚希の足を止めるに十分だった。
「やめて!」
振り向いた先には、数人の男たち。それらは全て春雨の配下である天人だ。そんな輩がこれ見よがしに武器を振り回し、周りの者たちに危害を加えようとしている。しかもまだ後ろから複数の者たちが合流せんと走ってくる気配もあった。
「どこまでもしつこい奴らね」
唇を噛み締めた柚希は一つ大きく息を吸うと、手にしていた扇子を広げながらゆっくりと振り上げる。
「そんなに構って欲しいなら……相手になってやるわよ!」
そう言うと、柚希は勢いよく扇子を振り下ろした。それに合わせて天人たちへといくつもの鉛の玉が放たれ、寸分違わず眉間へと突き刺さる。
「ぐわぁっ!」
悲鳴が上がり、そこにいた全ての天人が倒れると、シュルシュルと音を立てながら鉛の玉は柚希の元へと戻った。パチンと扇子を閉じて倒れた天人たちを確認した柚希は、先ほど天人に襲われた町人へと駆け寄る。突き飛ばされはしたが擦り傷だけだった事に安心すると、
「巻き込んでしまって申し訳ない」
と頭を下げた。
「巻き込みついでに教えて。ここは何処なの?」
「か、かぶき町だよ」
「かぶき町……そうか、ここがかぶき町なんだ」
改めて見上げれば、空に浮かぶ満月すら霞むほどのネオンの数々。その輝きを眩しそうに目を細めながら見つめていた柚希だったが、次の瞬間、目の前の町人を思い切り突き飛ばす。と同時に自らの体は大きく吹き飛び、壁に激突していた。
もう自分がどちらを向いているのかも分からないが、ただひたすら、自分に向けられる殺気から逃れようと走り続けていた。
捕まれば、そこにあるのは無限の地獄。もう二度とあの場所から抜け出す事は出来ないだろう。これが最初で最後のチャンスなのだ。
手の中の扇子を強く握りしめながら、
「絶対に……逃げ切ってみせる」
そう小さく呟いた柚希は、息の整わない体に鞭を打ちつつ走り続けた。
細い路地を何度も曲がっていると、不意に明るい大通りへとぶつかった。夜だというのに、まるで昼間のように明るいネオンが眩しくて、思わず目を瞬かせる。
「ここは一体?」
慌てて光から隠れるように路地の奥へと戻ろうとするも、後ろからは容赦ない追っ手の気配が感じられ、戻る事は許されない事に気付く。
「こんな人通りの多い場所に出てしまうなんて……」
仕方なく人ごみの合間を縫いながら走ったが、その先に柚希が隠れられそうな場所は見つからない。
――自分以外の者を巻き込むわけには……
そうは思っていても、追っ手にそのような気遣いなどあるはずもなく。案の定、逃げ続ける柚希を捕えるためにと、追っ手の者たちが通行人に手を出し始めた。
「いい加減諦めろ、柚希! お前は俺たちから逃れる事なんざできねぇんだよ。そろそろ鬼ごっこも飽きたしな。これ以上逃げるってんなら、すれ違う人間どもを皆殺しにしながら追いかけてやるぜ」
「うわあっ!」
追っ手の男が声高に叫ぶと同時に上がった悲鳴は、柚希の足を止めるに十分だった。
「やめて!」
振り向いた先には、数人の男たち。それらは全て春雨の配下である天人だ。そんな輩がこれ見よがしに武器を振り回し、周りの者たちに危害を加えようとしている。しかもまだ後ろから複数の者たちが合流せんと走ってくる気配もあった。
「どこまでもしつこい奴らね」
唇を噛み締めた柚希は一つ大きく息を吸うと、手にしていた扇子を広げながらゆっくりと振り上げる。
「そんなに構って欲しいなら……相手になってやるわよ!」
そう言うと、柚希は勢いよく扇子を振り下ろした。それに合わせて天人たちへといくつもの鉛の玉が放たれ、寸分違わず眉間へと突き刺さる。
「ぐわぁっ!」
悲鳴が上がり、そこにいた全ての天人が倒れると、シュルシュルと音を立てながら鉛の玉は柚希の元へと戻った。パチンと扇子を閉じて倒れた天人たちを確認した柚希は、先ほど天人に襲われた町人へと駆け寄る。突き飛ばされはしたが擦り傷だけだった事に安心すると、
「巻き込んでしまって申し訳ない」
と頭を下げた。
「巻き込みついでに教えて。ここは何処なの?」
「か、かぶき町だよ」
「かぶき町……そうか、ここがかぶき町なんだ」
改めて見上げれば、空に浮かぶ満月すら霞むほどのネオンの数々。その輝きを眩しそうに目を細めながら見つめていた柚希だったが、次の瞬間、目の前の町人を思い切り突き飛ばす。と同時に自らの体は大きく吹き飛び、壁に激突していた。
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