白銀の世界で
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明朝、熱い相撲大会が終了すると、男たちは冷静さを取り戻したのか、恥ずかしそうにいそいそと服を着始めた。谷垣は今だ眠っており、声をかけても目覚めない。ラッコ鍋の影響を一番受けてしまったのだろう。無理に起こすこともないだろうと、皆でアシリパを探しに出かけた。薄紫の空と藍色の海から淡く朝日が差し込んでくる。静かな波の音を聞きながら海岸を歩いた。白石は相変わらず「腹減ったなあ~」とぼやきながら眠気まなこを擦っている。隣ではキロランケが朝の一服をくゆらせている。さくらは男たちの様子を横目に、穏やかな波を見つめ、自身の気持ちも落ち着いてくるように思えた。すると、隣に杉元が並んだ。
「さくらさん…体調はどう?」
心配そうに杉元がこちらをのぞき込んだ。久しぶりに目があった。嬉しいと思う反面、昨夜の尾形との事が脳裏をかすめた。
「外の空気を吸ったら落ち着いてきました。」
にこり、と笑いかけると杉元はほっとしたような顔になった。杉元は純粋にさくらを心配してくれている。昨夜はさくら自身も誘惑に負けそうになるなか、さりげなく身を守ってくれた。あの夜の男たちの目をみれば、杉元自身もつらい状況であったことは容易に想像がつく。しかし、男たちの視線から隠すようにその背にかばってくれた。
「昨日は…ありがとうございました。」
杉元に小声で言うと、「うん?」と首をかしげた。そして少し考えると、顔を赤らめた。
「…昨日はみんな変だったし、俺達もさくらさんも何もなくてよかったよ。」
頬をかきながら杉元が言った。
これまでの旅路もそうだった。彼はいつも誰かのために動く。さくらや仲間たちのために身を挺してきた。全員が生き残るために、体を張ってくれていたのだ。それができたのは、強靱な肉体と精神力が今まで彼を生かしてくれたからだ。そんな彼の目の前で、さくらは自身を熊の餌食にしようと、生きることを諦める選択をしたのだ。さくらも生存欲求は人並みにあるつもりだ。でなければ、ここまで厳しい道のりを共に歩んでは来なかった。しかし、あの絶望的な状況で、この人のためならばという気持ちと同時に、自分よがりな気持ちも少なからずあった。
杉元が心ならずもさくらを憎からく思ってくれているのは気付いている。それが杉元の故郷にある女性に比べれば小さな思いであろうと…。最愛の人と共に在りたいと思う。二人が生きる道を歩んでいたい。しかし、それが叶わないならば。ここで彼の命の糧となっていくのも幸せなのではないか、と。
愛するが故に守りたいと思う。ただ、その気持ちがあればよいのか。そう問われれば否だろう。そして、あのときの自分は彼よりも自身の欲に傾いていたのではないか……。
朝焼けが一段と輝いて、海面を眩しく照らし始めた。金色に輝く景色に白石が感嘆の声を上げると、皆が海の方へ視線を向けた。黒い影を背負い男たちがまばゆい景色に目を細めている。皆の視線が前方に釘付けになり、その背を前に、さくらは杉元の指先に自身の指を少し重ねた。肉厚の指先がそれに反応してぴくりと動いた。
「……さくらさん?」
不思議そうな表情で、しかし周りに気を遣ってか小声でさくらに問いかけた。さくらはそれに笑みを返した。
「…次は夏に来ましょう。海水浴、きっと楽しいですよ。」
そういうと、指先が大きな手に包まれた。そして、杉元も楽しそうに笑顔になった。朝焼けが後ろから杉元の笑顔を眩しく照らしている。
自分でもずるいと思う。なんて自分勝手なのだろうと。しかし、心の中で自分自身に言い訳を連ねていく。理性や倫理観だけでは押さえられないこともあるのだ。ただ、愛しい人に触れたい。その笑顔を自分だけのものにしたい。そんな気持ちを全て捨ててしまえるほど、さくらの心は簡単にできていない。
「いいねー!!さくらちゃんも水着着るの-?!」
耳ざとい白石が話しに乗って、こちらに目を向けた。それをきっかけにさくらはするり、と手を引いた。
束の間の幸せだとしても、それだけで十分なのだ。
全てを望むのは、過分だと分かっている。いつかの別れまでは、ただ、次の季節を共に在りたい。その小さな願いが叶うのなら。指先の体温を、この海の美しさを、…この思いを大切に仕舞って生きていこう。指に残る杉元のぬくもりを閉じ込めるようにさくらは両手を胸に抱きしめた。
しばらく浜を歩いていると、たき火の煙が上がっているのがみえる。そこにアシリパと谷垣、インカラマッの姿があった。その姿に気がつき、白石が声を上げた。
「あ!いたいた!アシリパちゃん。」
「よかった……無事だったか。」
杉元はアシリパの姿を見つけると安堵したように息を吐いた。しかし、アシリパの様子がいつもと違っている。さくらは内心不思議に思っていると、アシリパは鋭い視線をこちらに向けた。何かを見透かすような視線が突き刺さるようだ。それはキロランケの法へと向けられた。
「キロランケニシパが私の父を殺したのか?」
突然の発言に、その場にいた者たちが息をのんだ。そして、名指しされたキロランケへと視線を向けると、本人は困惑した表情でいた。
「俺が?なんだよいきなり……」
本当に分からない、という表情のキロランケ。すると、インカラマッが懐から一枚の紙を取り出した。
「……証拠は、馬券に付いた指紋です。」
インカラマッの言葉に一同が疑問の声を上げた。インカラマッはさらに言葉を続けた。
「指紋はそれぞれ模様が異なるため、外国ではすでに数年前から犯罪捜査に利用されています。私は苫小牧の競技場で男性方の指紋を採取し照合を依頼したところ、キロランケさんの指紋が、数年前にある場所で採取されたものと一致しました。」
インカラマッの説明は、まるで指紋による犯罪捜査を知らない者にも分かるように話しているようだった。杉元や白石の様子から察するに、この時代にはまだ普及していない技術らしい。
ならば、なぜその特別な技術を占い師であるインカラマッが知っているのか。そして、指紋を照合することができるのか。疑問に思っているものの、その疑問を口に出すほどの確信があるわけではない。インカラマッの続きに耳を傾ける。
「その場所は、アシリパちゃんのお父様が殺害された現場です。」
インカラマッに続き、アシリパが言葉を続けた。
「遺品のマキリの刃に指紋が付いていたそうだ。父とは何年も会っていないと言っていたよな?」
鋭い視線をそのままにアシリパはキロランケを見つめた。
「おいおい、俺が犯人なら監獄にいるのっぺらぼうは何者だよ?」
キロランケはなおも困惑した様子だ。ただ、アシリパの問いには答えない。……演技なのか、本当に無実なのか。もともとキロランケとアシリパの父はロシア人である。縁あってアイヌで暮らし、所帯を持っているが、それは偶然なのか、あるいは目的があってやってきたのか。……その目的がアイヌの金塊だとしたら?彼らが築いてきた家庭は、一族との繋がりはただの手段でしかなかったのだろうか。
さくらはアシリパの様子を窺った。今は、父親の敵を知りたいという気持ちで動いているのだろうが、さくらの考えたことはきっとアシリパも思い至ってしまうだろう。それだけ聡い子であるし、冷静に物事をみる力もある。しかし、だからといって傷つかないわけではない。この少女が真実にたどり着いたとき、それは果たして幸せといえるのだろうか……。
さくらが思考を巡らせている間にも三人の問答は進んでいく。インカラマッはキロランケの様子を鼻で笑った。どうやら、キロランケの様子を演技だと思っているらしい。
「極東ロシアの独立資金にアイヌの金塊を持ち出そうとしたあなたのお仲間の誰かでは?」
指紋という物証があれば、キロランケを追い詰める事が出来る。インカラマッが強気でいるのも頷ける。本当にキロランケが犯人だとして、この状態でどうやって自白に持ち込むつもりなのだろうか。
「ちょっと待った。」
突然、横から尾形が声を上げた。驚いてそちらをみると、インカラマッに銃を向けている。
「この女、鶴見中尉と通じてるぞ。」
「よせ、何を根拠に…!!」
すぐさま谷垣が背にインカラマッをかばった。躊躇のない行動に尾形がにやにやしながら二人を見た。
「谷垣源治郎~。色仕掛けで丸め込まれたのか?殺害現場の遺留品を回収したのは鶴見中尉だ。つまり、鶴見中尉だけが指紋の記録を持っている。」
その言葉に、谷垣や他の一同もぎょっとした顔になる。……もし鶴見のスパイとして共に行動していたのだとしたら。そう考えると、さあっと血の気が引いた。しかし、インカラマッは悪びれる様子もなく答えた。
「鶴見中尉を利用しただけです。」
「………っ」
「たいした女だよな?谷垣よ……」
誰が仲間で誰が敵なのか。目的が様々な者たちが寄り集まった集団なのだと、再認識させられる。尾形が引き金を引けば、微妙な均衡が一気に崩れてしまうような、そんな危うさを感じる。すると、キロランケが尾形の構えていた銃を片手で下げさせた。
「俺の指紋と一致したなんて鶴見中尉の情報を信じるのか?殺し合えば鶴見中尉の思うつぼだ。この状況がやつの狙いだろ?」
渦中の人物であるはずが、さきほどとは打って変わり、落ち着いた様子で皆に問いかけた。確かにキロランケの言うことは一理ある。この男の行動で場の空気が一気に変わったのは否めない。それをキロランケも感じ取っているのか、さらに畳みかけた。
「アシリパ…父親がのっぺらぼうじゃないと信じたい気持ちは分かる。でも、あんな暗号を仕掛けられる男がこの世に何人もいるはずない。アシリパだってあの父親ならやりかねないと…そう思っているんだろ?」
キロランケの言葉にアシリパは言葉に詰まった。
「さくらさん…体調はどう?」
心配そうに杉元がこちらをのぞき込んだ。久しぶりに目があった。嬉しいと思う反面、昨夜の尾形との事が脳裏をかすめた。
「外の空気を吸ったら落ち着いてきました。」
にこり、と笑いかけると杉元はほっとしたような顔になった。杉元は純粋にさくらを心配してくれている。昨夜はさくら自身も誘惑に負けそうになるなか、さりげなく身を守ってくれた。あの夜の男たちの目をみれば、杉元自身もつらい状況であったことは容易に想像がつく。しかし、男たちの視線から隠すようにその背にかばってくれた。
「昨日は…ありがとうございました。」
杉元に小声で言うと、「うん?」と首をかしげた。そして少し考えると、顔を赤らめた。
「…昨日はみんな変だったし、俺達もさくらさんも何もなくてよかったよ。」
頬をかきながら杉元が言った。
これまでの旅路もそうだった。彼はいつも誰かのために動く。さくらや仲間たちのために身を挺してきた。全員が生き残るために、体を張ってくれていたのだ。それができたのは、強靱な肉体と精神力が今まで彼を生かしてくれたからだ。そんな彼の目の前で、さくらは自身を熊の餌食にしようと、生きることを諦める選択をしたのだ。さくらも生存欲求は人並みにあるつもりだ。でなければ、ここまで厳しい道のりを共に歩んでは来なかった。しかし、あの絶望的な状況で、この人のためならばという気持ちと同時に、自分よがりな気持ちも少なからずあった。
杉元が心ならずもさくらを憎からく思ってくれているのは気付いている。それが杉元の故郷にある女性に比べれば小さな思いであろうと…。最愛の人と共に在りたいと思う。二人が生きる道を歩んでいたい。しかし、それが叶わないならば。ここで彼の命の糧となっていくのも幸せなのではないか、と。
愛するが故に守りたいと思う。ただ、その気持ちがあればよいのか。そう問われれば否だろう。そして、あのときの自分は彼よりも自身の欲に傾いていたのではないか……。
朝焼けが一段と輝いて、海面を眩しく照らし始めた。金色に輝く景色に白石が感嘆の声を上げると、皆が海の方へ視線を向けた。黒い影を背負い男たちがまばゆい景色に目を細めている。皆の視線が前方に釘付けになり、その背を前に、さくらは杉元の指先に自身の指を少し重ねた。肉厚の指先がそれに反応してぴくりと動いた。
「……さくらさん?」
不思議そうな表情で、しかし周りに気を遣ってか小声でさくらに問いかけた。さくらはそれに笑みを返した。
「…次は夏に来ましょう。海水浴、きっと楽しいですよ。」
そういうと、指先が大きな手に包まれた。そして、杉元も楽しそうに笑顔になった。朝焼けが後ろから杉元の笑顔を眩しく照らしている。
自分でもずるいと思う。なんて自分勝手なのだろうと。しかし、心の中で自分自身に言い訳を連ねていく。理性や倫理観だけでは押さえられないこともあるのだ。ただ、愛しい人に触れたい。その笑顔を自分だけのものにしたい。そんな気持ちを全て捨ててしまえるほど、さくらの心は簡単にできていない。
「いいねー!!さくらちゃんも水着着るの-?!」
耳ざとい白石が話しに乗って、こちらに目を向けた。それをきっかけにさくらはするり、と手を引いた。
束の間の幸せだとしても、それだけで十分なのだ。
全てを望むのは、過分だと分かっている。いつかの別れまでは、ただ、次の季節を共に在りたい。その小さな願いが叶うのなら。指先の体温を、この海の美しさを、…この思いを大切に仕舞って生きていこう。指に残る杉元のぬくもりを閉じ込めるようにさくらは両手を胸に抱きしめた。
しばらく浜を歩いていると、たき火の煙が上がっているのがみえる。そこにアシリパと谷垣、インカラマッの姿があった。その姿に気がつき、白石が声を上げた。
「あ!いたいた!アシリパちゃん。」
「よかった……無事だったか。」
杉元はアシリパの姿を見つけると安堵したように息を吐いた。しかし、アシリパの様子がいつもと違っている。さくらは内心不思議に思っていると、アシリパは鋭い視線をこちらに向けた。何かを見透かすような視線が突き刺さるようだ。それはキロランケの法へと向けられた。
「キロランケニシパが私の父を殺したのか?」
突然の発言に、その場にいた者たちが息をのんだ。そして、名指しされたキロランケへと視線を向けると、本人は困惑した表情でいた。
「俺が?なんだよいきなり……」
本当に分からない、という表情のキロランケ。すると、インカラマッが懐から一枚の紙を取り出した。
「……証拠は、馬券に付いた指紋です。」
インカラマッの言葉に一同が疑問の声を上げた。インカラマッはさらに言葉を続けた。
「指紋はそれぞれ模様が異なるため、外国ではすでに数年前から犯罪捜査に利用されています。私は苫小牧の競技場で男性方の指紋を採取し照合を依頼したところ、キロランケさんの指紋が、数年前にある場所で採取されたものと一致しました。」
インカラマッの説明は、まるで指紋による犯罪捜査を知らない者にも分かるように話しているようだった。杉元や白石の様子から察するに、この時代にはまだ普及していない技術らしい。
ならば、なぜその特別な技術を占い師であるインカラマッが知っているのか。そして、指紋を照合することができるのか。疑問に思っているものの、その疑問を口に出すほどの確信があるわけではない。インカラマッの続きに耳を傾ける。
「その場所は、アシリパちゃんのお父様が殺害された現場です。」
インカラマッに続き、アシリパが言葉を続けた。
「遺品のマキリの刃に指紋が付いていたそうだ。父とは何年も会っていないと言っていたよな?」
鋭い視線をそのままにアシリパはキロランケを見つめた。
「おいおい、俺が犯人なら監獄にいるのっぺらぼうは何者だよ?」
キロランケはなおも困惑した様子だ。ただ、アシリパの問いには答えない。……演技なのか、本当に無実なのか。もともとキロランケとアシリパの父はロシア人である。縁あってアイヌで暮らし、所帯を持っているが、それは偶然なのか、あるいは目的があってやってきたのか。……その目的がアイヌの金塊だとしたら?彼らが築いてきた家庭は、一族との繋がりはただの手段でしかなかったのだろうか。
さくらはアシリパの様子を窺った。今は、父親の敵を知りたいという気持ちで動いているのだろうが、さくらの考えたことはきっとアシリパも思い至ってしまうだろう。それだけ聡い子であるし、冷静に物事をみる力もある。しかし、だからといって傷つかないわけではない。この少女が真実にたどり着いたとき、それは果たして幸せといえるのだろうか……。
さくらが思考を巡らせている間にも三人の問答は進んでいく。インカラマッはキロランケの様子を鼻で笑った。どうやら、キロランケの様子を演技だと思っているらしい。
「極東ロシアの独立資金にアイヌの金塊を持ち出そうとしたあなたのお仲間の誰かでは?」
指紋という物証があれば、キロランケを追い詰める事が出来る。インカラマッが強気でいるのも頷ける。本当にキロランケが犯人だとして、この状態でどうやって自白に持ち込むつもりなのだろうか。
「ちょっと待った。」
突然、横から尾形が声を上げた。驚いてそちらをみると、インカラマッに銃を向けている。
「この女、鶴見中尉と通じてるぞ。」
「よせ、何を根拠に…!!」
すぐさま谷垣が背にインカラマッをかばった。躊躇のない行動に尾形がにやにやしながら二人を見た。
「谷垣源治郎~。色仕掛けで丸め込まれたのか?殺害現場の遺留品を回収したのは鶴見中尉だ。つまり、鶴見中尉だけが指紋の記録を持っている。」
その言葉に、谷垣や他の一同もぎょっとした顔になる。……もし鶴見のスパイとして共に行動していたのだとしたら。そう考えると、さあっと血の気が引いた。しかし、インカラマッは悪びれる様子もなく答えた。
「鶴見中尉を利用しただけです。」
「………っ」
「たいした女だよな?谷垣よ……」
誰が仲間で誰が敵なのか。目的が様々な者たちが寄り集まった集団なのだと、再認識させられる。尾形が引き金を引けば、微妙な均衡が一気に崩れてしまうような、そんな危うさを感じる。すると、キロランケが尾形の構えていた銃を片手で下げさせた。
「俺の指紋と一致したなんて鶴見中尉の情報を信じるのか?殺し合えば鶴見中尉の思うつぼだ。この状況がやつの狙いだろ?」
渦中の人物であるはずが、さきほどとは打って変わり、落ち着いた様子で皆に問いかけた。確かにキロランケの言うことは一理ある。この男の行動で場の空気が一気に変わったのは否めない。それをキロランケも感じ取っているのか、さらに畳みかけた。
「アシリパ…父親がのっぺらぼうじゃないと信じたい気持ちは分かる。でも、あんな暗号を仕掛けられる男がこの世に何人もいるはずない。アシリパだってあの父親ならやりかねないと…そう思っているんだろ?」
キロランケの言葉にアシリパは言葉に詰まった。