白銀の世界で
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
街から戻ってきた白石は新しい情報をつかんできた。
最近、ニシン漁の漁場でヤン衆が殺されていること。その犯人は刺青人皮を彫った囚人の辺見である可能性が高いこと。
狩りから戻った杉元、アシリパ、そしてさくらはその話を神妙な顔で聞いていた。
「間違いないとなぜ分かる?」
杉元の疑問は最もだった。漁場での相次いでの殺人が辺見である確たる証拠は今のところなさそうだ。それに白石は答えた。
「死体の背中には文字が刻まれていたのさ。」
「…ひょっとしてその文字は「目」じゃないか。」
杉元の問いかけに白石が頷いた。杉元とアシリパは山中でみた、「目」の書かれた死体があったことを白石とサクラに告げた。身近に殺人犯の魔の手が迫っていること。そして、近くの漁場にはアシリパの叔父が居ると分かり、さらに恐怖が募った。全員一致で辺見を追い、アシリパの叔父の安全を確認しようという算段となった。
簡単に荷物をまとめ、フチやオソマ、村の皆々に礼を言って出発をした。さくらは別れ際、フチに薬草数種類と、薬を煎じる簡単な道具を譲り受けることができた。村で休んでいる間、さくらはフチから色々な薬について熱心に教えを請うていた。それが、認められたようでうれしかった。
杉元、アシリパを先頭にして出発する。白石とさくらはその後を追うかたちでついていった。さくらは杉元とアシリパのある程度距離がついたところで白石のほうへ視線を向けた。のんきに口笛さえしながら歩いている。さくらは二人だけにしか聞こえない声で白石に問いかけた。
「街で探していた人が見つかったんですか?」
白石がぴくり、と反応した。
先ほどの白石の情報はかなり有力な情報だ。それも刺青人皮に関わるピンポイントの。街を歩き回って聞き込みをしたからといって、これほど重要な内容が知らされるとは考えにくい。さくらは小屋で白石の話を聞きながら疑わしく思っていた。
きっと、皆にはいっていない情報がある。話の出所を明確にしないあたりに、それが窺えた。
「なに言ってんのさくらちゃん。」
あくまでしらを切るつもりらしい。
「わざわざリュウを連れて行ったのには、そういう理由があるんじゃないかと思ったんですが。」
鼻のきく猟犬を連れて行ったのだ。何かを探していたのだろうと思われる。しかも、リュウを連れて帰ってきたところでの、有力情報だ。すこし考えれば、白石が探していたのは「人」であったのだと見当がつく。
しかし、白石は動揺を見せたのは最初だけで、いつも通りの飄々とした様子で、さくらの質問をかわしていく。
「リュウは護衛だよー。第7師団も控えてるだろうし、安全のために連れてっただけ。疑り深いなあ。」
ぐすん、と鳴きまねをしておどけてみせる。
つかめない男だ。
「そういう性格なのはご存じでしょう?」
二人で杉元とアシリパを待っていたあの夜に。言わずとも言外の意味をくんでくれたらしく、白石は、大きくため息をついた。
「…相変わらず、そこのガードは堅いなあ。」
「さくらさん、大丈夫?」
距離があいたさくらと白石を心配して、杉元が振り返って、様子を確認した。それに、足早で追いつき、さくらは「ええ、心配ありません。山の植物がめずらしくて、つい。」と、答えた。その後ろで、白石がこめかみから一筋、冷や汗を流していたことには、誰も気がつかなかった。
ニシン漁の漁場につくと、早速、男が声をかけてきた。
「アシリパ!」
「アチャポ!」
そういって親しそうにしているところをみると、アシリパの叔父はこの人なのだろう。ひとまず無事であることに安堵した。しかし、アチャポは焦ったように言葉を継げた。
「お前たちいいときに来てくれた!早くこっちへ!」
その言葉に一同、疑問に思ったが、アチャポによると、鯨の引き揚げに加勢してほしいということだった。男手が必要らしい。そこで、一同は作業に加わることになった。船は2艘に分かれていた。白石とこぎ手、アシリパと杉元、アチャポは船に乗り込んだ。人数的にさくらは浜でしばらく待ちながら、聞き込みをすることになった。ただ、この時間は皆、漁へと出かけているようで人の姿がみえない。人影が見えるまで、仕方なしに、3人の漁の様子を眺めることにした。
船は海岸を進んでいく。沖の方で大きな陰がみえると、杉元が振りかぶり、それに槍が打ち込まれた。見事命中し、鯨は勢いよく暴れ、泳ぎ回る。とてつもないスピードで振り回される船に心配になる。この極寒で振り落とされたら…。その心配が現実になろうとしていた。
2艘はなんと、ニシン漁をしている多数の船の方へ突っ込んでいった。何艘かの船が大きく揺られ、誰か海へと落ちた。
杉元とアチャポは海へと投げ出された男を、船に引き上げた。
「引っ張り上げるぞ!」
「頑張れ!しっかり掴まれ!」
二人に引き上げられた男は、全身が冷え切り、息も絶え絶えだ。
「ありがとう、ありがとう…海に落ちて死ぬなんて、こんな死に方絶対にいやだ。」
男は杉元たちに震える唇を動かしながら感謝の言葉を述べた。
「こんなつまらない死に方…」
最近、ニシン漁の漁場でヤン衆が殺されていること。その犯人は刺青人皮を彫った囚人の辺見である可能性が高いこと。
狩りから戻った杉元、アシリパ、そしてさくらはその話を神妙な顔で聞いていた。
「間違いないとなぜ分かる?」
杉元の疑問は最もだった。漁場での相次いでの殺人が辺見である確たる証拠は今のところなさそうだ。それに白石は答えた。
「死体の背中には文字が刻まれていたのさ。」
「…ひょっとしてその文字は「目」じゃないか。」
杉元の問いかけに白石が頷いた。杉元とアシリパは山中でみた、「目」の書かれた死体があったことを白石とサクラに告げた。身近に殺人犯の魔の手が迫っていること。そして、近くの漁場にはアシリパの叔父が居ると分かり、さらに恐怖が募った。全員一致で辺見を追い、アシリパの叔父の安全を確認しようという算段となった。
簡単に荷物をまとめ、フチやオソマ、村の皆々に礼を言って出発をした。さくらは別れ際、フチに薬草数種類と、薬を煎じる簡単な道具を譲り受けることができた。村で休んでいる間、さくらはフチから色々な薬について熱心に教えを請うていた。それが、認められたようでうれしかった。
杉元、アシリパを先頭にして出発する。白石とさくらはその後を追うかたちでついていった。さくらは杉元とアシリパのある程度距離がついたところで白石のほうへ視線を向けた。のんきに口笛さえしながら歩いている。さくらは二人だけにしか聞こえない声で白石に問いかけた。
「街で探していた人が見つかったんですか?」
白石がぴくり、と反応した。
先ほどの白石の情報はかなり有力な情報だ。それも刺青人皮に関わるピンポイントの。街を歩き回って聞き込みをしたからといって、これほど重要な内容が知らされるとは考えにくい。さくらは小屋で白石の話を聞きながら疑わしく思っていた。
きっと、皆にはいっていない情報がある。話の出所を明確にしないあたりに、それが窺えた。
「なに言ってんのさくらちゃん。」
あくまでしらを切るつもりらしい。
「わざわざリュウを連れて行ったのには、そういう理由があるんじゃないかと思ったんですが。」
鼻のきく猟犬を連れて行ったのだ。何かを探していたのだろうと思われる。しかも、リュウを連れて帰ってきたところでの、有力情報だ。すこし考えれば、白石が探していたのは「人」であったのだと見当がつく。
しかし、白石は動揺を見せたのは最初だけで、いつも通りの飄々とした様子で、さくらの質問をかわしていく。
「リュウは護衛だよー。第7師団も控えてるだろうし、安全のために連れてっただけ。疑り深いなあ。」
ぐすん、と鳴きまねをしておどけてみせる。
つかめない男だ。
「そういう性格なのはご存じでしょう?」
二人で杉元とアシリパを待っていたあの夜に。言わずとも言外の意味をくんでくれたらしく、白石は、大きくため息をついた。
「…相変わらず、そこのガードは堅いなあ。」
「さくらさん、大丈夫?」
距離があいたさくらと白石を心配して、杉元が振り返って、様子を確認した。それに、足早で追いつき、さくらは「ええ、心配ありません。山の植物がめずらしくて、つい。」と、答えた。その後ろで、白石がこめかみから一筋、冷や汗を流していたことには、誰も気がつかなかった。
ニシン漁の漁場につくと、早速、男が声をかけてきた。
「アシリパ!」
「アチャポ!」
そういって親しそうにしているところをみると、アシリパの叔父はこの人なのだろう。ひとまず無事であることに安堵した。しかし、アチャポは焦ったように言葉を継げた。
「お前たちいいときに来てくれた!早くこっちへ!」
その言葉に一同、疑問に思ったが、アチャポによると、鯨の引き揚げに加勢してほしいということだった。男手が必要らしい。そこで、一同は作業に加わることになった。船は2艘に分かれていた。白石とこぎ手、アシリパと杉元、アチャポは船に乗り込んだ。人数的にさくらは浜でしばらく待ちながら、聞き込みをすることになった。ただ、この時間は皆、漁へと出かけているようで人の姿がみえない。人影が見えるまで、仕方なしに、3人の漁の様子を眺めることにした。
船は海岸を進んでいく。沖の方で大きな陰がみえると、杉元が振りかぶり、それに槍が打ち込まれた。見事命中し、鯨は勢いよく暴れ、泳ぎ回る。とてつもないスピードで振り回される船に心配になる。この極寒で振り落とされたら…。その心配が現実になろうとしていた。
2艘はなんと、ニシン漁をしている多数の船の方へ突っ込んでいった。何艘かの船が大きく揺られ、誰か海へと落ちた。
杉元とアチャポは海へと投げ出された男を、船に引き上げた。
「引っ張り上げるぞ!」
「頑張れ!しっかり掴まれ!」
二人に引き上げられた男は、全身が冷え切り、息も絶え絶えだ。
「ありがとう、ありがとう…海に落ちて死ぬなんて、こんな死に方絶対にいやだ。」
男は杉元たちに震える唇を動かしながら感謝の言葉を述べた。
「こんなつまらない死に方…」