白銀の世界で
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この時代に来てからというもの、男たちに何度も暴力的で押さえつけられてきた。現代では全くない訳ではないし、職場でも一通りのあしらい方は心得ているつもりだ。無意識であれ、女を自分より下に見て仕事をふる男がまだいるのが現実だ。だから、それに負けないために仕事のスキルも磨いてきたし、軽くいなす受け答えもしてきた。世の女は皆そうだろう。そうしなければ現代でもやっていけないからだ。だが、この時代はそれを凌駕する男の絶対的な力というものを肌で、この身で感じるのだ。
自身を陵辱した男たちの冷たい目、嘲るような顔が思い出される。隣で思い切り腕をつかんでいるこの男も、きっと。じっとりと汗ばむ手のひらが服の上からも伝わってくるようで不快だ。女将の前に連れて行くときも、ものとしか扱われない様子に腹立たしかった。
「女将!この女、連れて行くぞ。」
女将への承諾はあってないようなものだ。女将が慌てて「お待ちください・・・!!」と止めても、その声は全く聞こえないようで、ずんずんと2階への階段を上っていく。男は勝手知ったるように、2階へ上がると、廊下を進んでいく。閉められている襖の奥からは物音や声が漏れている。腕は相変わらず捕まれたままで、抜け出すこともできず、男の歩幅に合わせてついて行くしかない。男は襖の開いている部屋を見つけるとそこへと入っていく。
「4半刻か。」
ちらりと、布団の脇に置かれている線香をみて、男がいった。店のシステムは分からないが、きっと線香の長さが一人の時間なのだろう。それを確認する理性は残っているということか。
男が、ぱしん、と思い切り襖を閉めた。そして、思い切り抱きしめられると、同時に顔が近づいてくる。
喰われる
覆い被さるようにするこの男の鬼気迫る雰囲気から、その言葉が脳裏に浮かんだ。
「やめてください!!」
男の顔を押さえながら、必死で身をよじった。
「我慢できん!」
「私は遊女ではありません!」
そう言うと、男の力が弱まった。そこで部屋を飛び出した。階段を駆け下りると、女将もちょうど追いかけて来てくれたところであった。
さくらの必死な表情をみて、女将は裏へ引っ込むように告げ、先の男のところへと話をつけにいってくれた。
さくらはしばらく裏で一息つくことにした。裏口の人気のないところでしゃがみ込んだ。寒空の下、灰色の空を見上げて気持ちを落ち着ける。
あれくらいで済んでよかった。早鐘を打つ心臓を沈めるため、自分に言い聞かせた。落ち着いたら、裏方の仕事に戻ろう。せっかくの働き口だ。旅には何かと物入りだ。気持ちを切り替えなくては。
ざ、と近くで地面を踏む音がする。誰かがこちらに来ている。
普段より過敏になった感覚で、すぐさま音のする方へと目を向けた。そちらには白髪の初老の男がいた。背筋を伸ばして歩く様に、見た目の年齢とのギャップを感じる。
「具合が悪いのか?」
こちらにやってきた男は、そう言ってさくらの前にしゃがみ込んだ。鋭い目であるが、心配をしてくれているのは本当のようで、窺うような視線である。
「いえ、少し休んでいただけで・・・ご心配ありがとうございます。」
見ず知らずの人に迷惑をかけるわけにもいかない。すぐに立ち上がって、ほほえんで見せた。
「・・・そうか。つかぬこと尋ねるが、大柄の背広の男は見かけなかったか?」
先ほどの男がすぐに頭に浮かんだ。
「うちのお客様で、今もお二階にいらっしゃるかと。」
それを聞くと、男はやはりな、とつぶやいた。
あれと知り合いなのか。目の前の男とは年齢も雰囲気も全てが違う。
「迷惑をかけていないといいが。少し邪魔する。」
そう言いながら勝手知ったるように勝手口から足を踏み入れられた。
「お待ちください、表からご案内させていただきますので・・・。」
本音を言えば、あの男の元に舞い戻るのは不本意ではある。しかし、仕事となれば話は別だ。今はこの店の一員である。私情をはさんで仕事をないがしろにしたくはない。
さあ、こちらへ。と案内すれば男は素直に着いてきてくれた。
表から客を引いてきたのに女将は一瞬驚いたような顔をしたが、そこは客商売。にこやかな笑みを浮かべながら、男を出迎える。そこで、事情を話すと、女将はまだ件の客は上にいること。しばらくここで待っていてほしいという旨を伝えた。男も、それにいやな顔せず、席に着くと食事を注文し始めた。
さくらは男から注文を受けると、すぐ裏に引っ込んで、そちらの手伝いに回った。
自身を陵辱した男たちの冷たい目、嘲るような顔が思い出される。隣で思い切り腕をつかんでいるこの男も、きっと。じっとりと汗ばむ手のひらが服の上からも伝わってくるようで不快だ。女将の前に連れて行くときも、ものとしか扱われない様子に腹立たしかった。
「女将!この女、連れて行くぞ。」
女将への承諾はあってないようなものだ。女将が慌てて「お待ちください・・・!!」と止めても、その声は全く聞こえないようで、ずんずんと2階への階段を上っていく。男は勝手知ったるように、2階へ上がると、廊下を進んでいく。閉められている襖の奥からは物音や声が漏れている。腕は相変わらず捕まれたままで、抜け出すこともできず、男の歩幅に合わせてついて行くしかない。男は襖の開いている部屋を見つけるとそこへと入っていく。
「4半刻か。」
ちらりと、布団の脇に置かれている線香をみて、男がいった。店のシステムは分からないが、きっと線香の長さが一人の時間なのだろう。それを確認する理性は残っているということか。
男が、ぱしん、と思い切り襖を閉めた。そして、思い切り抱きしめられると、同時に顔が近づいてくる。
喰われる
覆い被さるようにするこの男の鬼気迫る雰囲気から、その言葉が脳裏に浮かんだ。
「やめてください!!」
男の顔を押さえながら、必死で身をよじった。
「我慢できん!」
「私は遊女ではありません!」
そう言うと、男の力が弱まった。そこで部屋を飛び出した。階段を駆け下りると、女将もちょうど追いかけて来てくれたところであった。
さくらの必死な表情をみて、女将は裏へ引っ込むように告げ、先の男のところへと話をつけにいってくれた。
さくらはしばらく裏で一息つくことにした。裏口の人気のないところでしゃがみ込んだ。寒空の下、灰色の空を見上げて気持ちを落ち着ける。
あれくらいで済んでよかった。早鐘を打つ心臓を沈めるため、自分に言い聞かせた。落ち着いたら、裏方の仕事に戻ろう。せっかくの働き口だ。旅には何かと物入りだ。気持ちを切り替えなくては。
ざ、と近くで地面を踏む音がする。誰かがこちらに来ている。
普段より過敏になった感覚で、すぐさま音のする方へと目を向けた。そちらには白髪の初老の男がいた。背筋を伸ばして歩く様に、見た目の年齢とのギャップを感じる。
「具合が悪いのか?」
こちらにやってきた男は、そう言ってさくらの前にしゃがみ込んだ。鋭い目であるが、心配をしてくれているのは本当のようで、窺うような視線である。
「いえ、少し休んでいただけで・・・ご心配ありがとうございます。」
見ず知らずの人に迷惑をかけるわけにもいかない。すぐに立ち上がって、ほほえんで見せた。
「・・・そうか。つかぬこと尋ねるが、大柄の背広の男は見かけなかったか?」
先ほどの男がすぐに頭に浮かんだ。
「うちのお客様で、今もお二階にいらっしゃるかと。」
それを聞くと、男はやはりな、とつぶやいた。
あれと知り合いなのか。目の前の男とは年齢も雰囲気も全てが違う。
「迷惑をかけていないといいが。少し邪魔する。」
そう言いながら勝手知ったるように勝手口から足を踏み入れられた。
「お待ちください、表からご案内させていただきますので・・・。」
本音を言えば、あの男の元に舞い戻るのは不本意ではある。しかし、仕事となれば話は別だ。今はこの店の一員である。私情をはさんで仕事をないがしろにしたくはない。
さあ、こちらへ。と案内すれば男は素直に着いてきてくれた。
表から客を引いてきたのに女将は一瞬驚いたような顔をしたが、そこは客商売。にこやかな笑みを浮かべながら、男を出迎える。そこで、事情を話すと、女将はまだ件の客は上にいること。しばらくここで待っていてほしいという旨を伝えた。男も、それにいやな顔せず、席に着くと食事を注文し始めた。
さくらは男から注文を受けると、すぐ裏に引っ込んで、そちらの手伝いに回った。