白銀の世界で
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3月。
暦の上では春であるが、北海道の3月は春にはほど遠い。
友人の誘いで初めての北海道旅行。「雪解けしているから大丈夫!」という友人の言葉を信じて動きやすいヒール低めのブーツで来たのは大きな間違いであった。町中といえども、道は雪に覆われており、ブーツのつま先は雪によって色が変わり、中まで水分を感じる。
人に頼って、きちんと天気予報をみてこない自分も悪いのだが、前日まで残業続き、日付が変わってから慌てて荷物をまとめたため、取りあえず旅行中に必要なものがあれば後は現地調達で!と半ば投げやりに身支度をしていたさくらに天気予報にまで意識を向ける余裕はなかった。
「うう”・・・寒い。」
「そりゃ、まだ北海道は冬だからねー。」
のんきに返答する友人に、じと、っとした視線を向ける。
「もう雪解けの頃なんじゃなかったの?」
「雪解けしはじめる頃っていうだけで、まだまだ冬よー。」
「完全に油断した。私もスノーブーツ履いてこればよかった・・・」
「さくらの格好にスノーブーツって何だか・・・バランスがね。小樽はまだ雪も少ないし、宿に着いたら乾かそ!」
ポジティブで自分の主張を言い合えるところはお互い話しやすくてつきあいが長くなるひとつである。友人が言葉を濁したのは、さくらがチェスターコートにタイトなスカート、リブニットとレディライクな服装をしているのが要因だろう。色味だけは華やかだが、基本はオフィスファッションを合わせつつのため、ボリュームのあるブーツはバランスが悪く見えるだろう。
対して友人はスポーティなアウターにニット帽と完全防備である。普段から活動的な服装であるため、わざわざ北海道だからと用意したわけでないのは分かっている。しかし、こうも足先がじんじんしてくると弱音を吐きたくなるのは人情というものだろう。
しばらく歩くと、目的のホテルが見えた。
西洋風建築のホテルは歴史的に由緒のある建造物をリノベーションしたもので、外観は重厚感のある、時代を感じさせるクラシカルな様相だ。中に入ると高い天井から照明が心地よい光源でホールを照らしている。暖炉からぱちぱちと、木のはぜる音、年月を感じさせる大理石の階段に目を奪われた。
「さくらいくよ!」
さきにフロントでチェックインを済ませてくれた友人に呼ばれ、慌ててスタッフの案内に続いた。スタッフが部屋につくまでにホテルの簡単な歴史を話してくれ、部屋まで案内してくれる。明治創業のホテルで、もともとは外国の要人の宿泊施設だったらしい。どうりで外観や設備が古いながらも西洋風なのだと納得する。
部屋に荷物を置き、一息つく。夕食までまだ、少し時間がある。さくらはソファーにもたれて、ふぅーと息を吐いた。
「仕事大変そうだよね。ちゃんと寝れてる?」
友人は気遣わしげにこちらをのぞき込む。
「昨日は久々に4時間寝れた。」
その言葉に友人が「ブラック企業め!殺す気か!」と声を荒げた。この旅行に誘ってくれたのも、私の慰安旅行を兼ねてくれているのだろう。いつも、しんどくなる頃にこうして気晴らしにへ旅行連れ立ってくれるのは彼女の優しいところだ。
「そしたらご飯まで寝てなよ。私は館内を巡ってくる!」
「ごめん、そうする。」
重たくなってきたまぶたに抗うのをやめ、目を閉じる。
ドアの閉まる音とともに、さくらが意識を手放した。
暦の上では春であるが、北海道の3月は春にはほど遠い。
友人の誘いで初めての北海道旅行。「雪解けしているから大丈夫!」という友人の言葉を信じて動きやすいヒール低めのブーツで来たのは大きな間違いであった。町中といえども、道は雪に覆われており、ブーツのつま先は雪によって色が変わり、中まで水分を感じる。
人に頼って、きちんと天気予報をみてこない自分も悪いのだが、前日まで残業続き、日付が変わってから慌てて荷物をまとめたため、取りあえず旅行中に必要なものがあれば後は現地調達で!と半ば投げやりに身支度をしていたさくらに天気予報にまで意識を向ける余裕はなかった。
「うう”・・・寒い。」
「そりゃ、まだ北海道は冬だからねー。」
のんきに返答する友人に、じと、っとした視線を向ける。
「もう雪解けの頃なんじゃなかったの?」
「雪解けしはじめる頃っていうだけで、まだまだ冬よー。」
「完全に油断した。私もスノーブーツ履いてこればよかった・・・」
「さくらの格好にスノーブーツって何だか・・・バランスがね。小樽はまだ雪も少ないし、宿に着いたら乾かそ!」
ポジティブで自分の主張を言い合えるところはお互い話しやすくてつきあいが長くなるひとつである。友人が言葉を濁したのは、さくらがチェスターコートにタイトなスカート、リブニットとレディライクな服装をしているのが要因だろう。色味だけは華やかだが、基本はオフィスファッションを合わせつつのため、ボリュームのあるブーツはバランスが悪く見えるだろう。
対して友人はスポーティなアウターにニット帽と完全防備である。普段から活動的な服装であるため、わざわざ北海道だからと用意したわけでないのは分かっている。しかし、こうも足先がじんじんしてくると弱音を吐きたくなるのは人情というものだろう。
しばらく歩くと、目的のホテルが見えた。
西洋風建築のホテルは歴史的に由緒のある建造物をリノベーションしたもので、外観は重厚感のある、時代を感じさせるクラシカルな様相だ。中に入ると高い天井から照明が心地よい光源でホールを照らしている。暖炉からぱちぱちと、木のはぜる音、年月を感じさせる大理石の階段に目を奪われた。
「さくらいくよ!」
さきにフロントでチェックインを済ませてくれた友人に呼ばれ、慌ててスタッフの案内に続いた。スタッフが部屋につくまでにホテルの簡単な歴史を話してくれ、部屋まで案内してくれる。明治創業のホテルで、もともとは外国の要人の宿泊施設だったらしい。どうりで外観や設備が古いながらも西洋風なのだと納得する。
部屋に荷物を置き、一息つく。夕食までまだ、少し時間がある。さくらはソファーにもたれて、ふぅーと息を吐いた。
「仕事大変そうだよね。ちゃんと寝れてる?」
友人は気遣わしげにこちらをのぞき込む。
「昨日は久々に4時間寝れた。」
その言葉に友人が「ブラック企業め!殺す気か!」と声を荒げた。この旅行に誘ってくれたのも、私の慰安旅行を兼ねてくれているのだろう。いつも、しんどくなる頃にこうして気晴らしにへ旅行連れ立ってくれるのは彼女の優しいところだ。
「そしたらご飯まで寝てなよ。私は館内を巡ってくる!」
「ごめん、そうする。」
重たくなってきたまぶたに抗うのをやめ、目を閉じる。
ドアの閉まる音とともに、さくらが意識を手放した。
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