星降る夜に
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学園長先生からの突然の呼び出しでさくらは学園長の庵へと来ていた。初めてこの世界に来て以来、久しぶりの訪問に緊張する。中には学園長先生とヘムヘム、そしてあの主人公の三人組が座っていた。
「学園長先生、お呼びでしょうか。」
そう言って、障子を開けると、学園長先生が答えた。
「さくらよく来たの。実は折り入ってお主に頼みがあるんじゃ。」
こちらへ、と示されたの三人の隣で、大人しくそれに従った。三人の顔はよく知っている。幼い頃に見ていた『乱太郎、きり丸、しんべえ』だ。しかし、三人の方は不思議そうにこちらをみていた。学園長先生も気がついたのか、さくらの紹介をしてくれた。
「乱太郎、きり丸、しんべえ。お主らも学園で姿はみたことがあるじゃろう。新しい事務員の日向 さくらさんじゃ。」
学園長先生からの紹介で最初に乱太郎が自己紹介を始めた。
「はじめまして、一年は組の猪名寺乱太郎です。」
「同じく一年は組のきり丸です。」
「僕も同じく一年は組の福富しんべえです。」
三人とも元気のよい挨拶をしてくれた。子供たちの様子にさくらも笑顔で挨拶をした。
「はじめまして、事務員の日向 さくらです。よろしくね。」
全員の自己紹介が終わると学園長先生から話があった。何でも、兵庫水軍へ魚をもらいに言って欲しいというものだ。
「人手があるといいんじゃが…生徒は実習や教員も仕事で動けんのじゃ。乱太郎、きり丸、しんべえは何度も通った道だから心配はない。付き添いにさくらついて行ってくれるか。」
状況を聞けば、その魚も食堂のメニューのひとつらしい。しんべえはそれを聞くと俄然やる気になったらしく、「お任せください!このしんべえ、お役目立派に果たして見せましょう!」と決め顔で答えていた。さくらも子供三人に全校分の魚を運ばせるのは酷だと思い、二つ返事で了承した。しかし、怪しまれている存在で、外に出ても良いものだろうか。三人がいる前では聞くことが出来ず、そのまま出発をしてしまった。
道中、三人から学校での話、学園の外で起こった大冒険の話を色々聞かせてもらった。やはり、主人公なだけあり、すごい経験をしている。山賊や詐欺師をこらしめたり、忍者は戦うだけでない術もやくさんあるのだ。彼らの話を聞いていると、今まで忍者と聞いてイメージしていたものが変わりそうだ。
「三人ともすごいわね。私が守ってもらうことになりそう。」
「お代は安くしておきますよ~。」
ときり丸が銭に目を変えながら答えた。それにみんなで笑いながら、海まで目指していった。三人の話を聞いていると時間を過ぎるのも早く感じる。もう、目的の海まで到着してしまった。磯の香りと波の音が聞こえてくる。森を抜けるとそこには広大な海が広がっていた。きらきらと光る水面と、木造の大きな船では男たちが忙しく動いていた。三人はその船の元へと走って行く。さくらもそれについて走って行った。
兵庫第三協栄丸さんが三人の姿に気がつくと、すぐに用意してくれていたらしい台車に大量の魚を持ってきてくれた。山盛りに積まれた魚たちをみて、やはりさくらも付いてきてよかったと思った。子供だけでは運べそうにない量だ。女一人でも大人がいるのといないのとでは彼らの負担も違うだろう。頂いた台車の中身を早速四人で引いていく。魚は鮮度が命だ。この時代、冷やすものもないため、急いで忍術学園に戻らなくては。三人の中でも一番張り切っているしんべいを引き手にして残りの三人で左右、後ろを固めて進む。途中、坂道もあるため、後方のさくらは額に汗を浮かべながら台車を押していった。
「今日は何事もなく帰れそうだね。」
ほっとしたように乱太郎が言った。行きで聞いていた話だと、出かける先々でトラブルに巻き込まれる三人だ。こうして普通に道中歩けるのは珍しいのだろう。
「乱太郎、そういうこといってると山賊に出会ったりするんだぜ。」
「またまたあ~。きりちゃん、それこそ……」
乱太郎の言葉が途中で途切れた。
「ほ、ほんとうに山賊に出会っちゃった…。」
しんべいの言葉に道の少し前を見ると、山賊が三人、待ち構えていた。
「おうおう、これはまた活きの良い魚を持ってるじゃねえか。」
「大人しく、そいつをよこしな。」
まるで見本とでもいうような山賊のせりふだ。おまけに薄汚い着物に刃こぼれした刀を携えている。黄色い歯をみせてにやにやしながら男たちが近づいてくる。まだ男たちと距離がある。その間にさくらは小声で三人に声をかけた。
「乱太郎、きり丸、しんべえ。まだ疲れてないわね?思いっきり走れる?」
心配そうに三人がこちらを見た。
「しんべえ、怖いかも知れないけど勢いよく走って。勢いに押されて山賊はよけるはず。そうすれば山賊は道の端に飛び込む。今日のご飯のためよ。できる?」
「はい…!この魚は絶対に学園に届けます!」
「きり丸、この魚を届けられたら、あとでお駄賃あげる。しんべえが疲れて走れなくなったら代わりに引き手に回ってくれる?」
「お駄賃!!」
「乱太郎、学園にもどったらすぐに先生たちに事情を説明して。」
「はい、でもどうして…?さくらさんも一緒に戻りますよね?」
「私が合図したら思い切り走るのよ。」
乱太郎の質問には答えず、さくらは台車の前に回った。そして、山賊にゆっくり近づいていく。
「何をこそこそしゃべってたんだ?」
「ねえ、お兄さんたち。魚なんかより、あたしの方が金になるんじゃない?」
さくらの言葉に山賊たちは顔を見合わせた。
「どういうこった?」
リーダーらしき男が質問した。
「見ての通り、雑魚ばっかりの粗悪品さ。売ったところでいつも二束三文。それより、あたしを郭に連れて行った方が何倍にもなるよ。」
「ほほう…。だが、子供三人、置いていくっていうのか?」
三人のうちの一人がそういった。さくらは、はあ、と分かりやすいため息をついた。
「だからだよ。子供三人抱えて亭主まで養って…。いい加減この生活も飽き飽きしてたんだよ。郭なら三食白いまんまが食えるんだろう?山賊に連れて行かれたと言えば亭主も納得するさ。そういうことで頼むよと、この子たちに話していたところだよ。」
「そりゃ、話が早いってもんだ。」
へへ、っと下卑た笑いをして男たちがさくらの方へと向かってきた。さくらも自然に道の端の方に誘導しながら歩いて行く。
「売るにしても、どれ程の器量か確かめねえとな。」
リーダーの男がさくらの腕に手をかけた。
「しんべえ!走って!!」
大声で叫ぶと、台車は勢いよく進み出た。しんべいの勢いに押されて下っ端の山賊は驚いて道の端に尻餅をついた。横切っていく台車に山賊があっけにとられている間にさくらは腕を掴んでいた山賊のリーダーの股の間を思い切り蹴り上げた。男が悶絶している間に、さくらは来た道を戻り、駆けだした。
海までは走ればすぐだ。四人で台車を押しながら山賊から逃げるより、おとりになって、反対方向へ逃げれば時間稼ぎになる。それに、リーダー格の男に一発食らわせたのだ。女に馬鹿にされたとあっては、ああいう手合いは三人で追いかけてくるに違いない。子供たちを危険な目に遭わせたくない。ならば、と考えたのがこの作戦だった。三人には嫌なことを聞かせてしまったが、無事で学園に帰すことができればそれでいい。迷っている時間などなかった。彼らを助けなくては、と初めに思った。だから、我が身を省みる余裕もなく、行動に移してしまった。振り返ると、案の定、男たちは鬼のような形相でさくらを追ってきていた。
「この野郎!!」
「まてクソ女!!」
「ただじゃおかねえ!!」
罵詈雑言をわめきながら男たちが追ってくる。その迫力に恐怖で足から力が抜けそうになる。しかし、ここで止まれば、最悪殺される。思い切り腕を振りながら、海の方へと走る。自分の挑発がやりすぎだったのだろうか、と半ば後悔しながら、涙目になりながら必死で足を動かした。男たちの怒号がだんだんと近づいてくる。
「……っう」
背中に感じた衝撃で、さくらは前のめりに倒れ込んだ。
「手間かけさせやがって」
山賊のリーダーが、後ろ髪を引っ張ってさくらを上向きにさせた。
「売るのはやめだ。犯してぶっ殺してやる。」
ぎらぎらと光る男たちの目がさくらを見下ろしていた。
「学園長先生、お呼びでしょうか。」
そう言って、障子を開けると、学園長先生が答えた。
「さくらよく来たの。実は折り入ってお主に頼みがあるんじゃ。」
こちらへ、と示されたの三人の隣で、大人しくそれに従った。三人の顔はよく知っている。幼い頃に見ていた『乱太郎、きり丸、しんべえ』だ。しかし、三人の方は不思議そうにこちらをみていた。学園長先生も気がついたのか、さくらの紹介をしてくれた。
「乱太郎、きり丸、しんべえ。お主らも学園で姿はみたことがあるじゃろう。新しい事務員の日向 さくらさんじゃ。」
学園長先生からの紹介で最初に乱太郎が自己紹介を始めた。
「はじめまして、一年は組の猪名寺乱太郎です。」
「同じく一年は組のきり丸です。」
「僕も同じく一年は組の福富しんべえです。」
三人とも元気のよい挨拶をしてくれた。子供たちの様子にさくらも笑顔で挨拶をした。
「はじめまして、事務員の日向 さくらです。よろしくね。」
全員の自己紹介が終わると学園長先生から話があった。何でも、兵庫水軍へ魚をもらいに言って欲しいというものだ。
「人手があるといいんじゃが…生徒は実習や教員も仕事で動けんのじゃ。乱太郎、きり丸、しんべえは何度も通った道だから心配はない。付き添いにさくらついて行ってくれるか。」
状況を聞けば、その魚も食堂のメニューのひとつらしい。しんべえはそれを聞くと俄然やる気になったらしく、「お任せください!このしんべえ、お役目立派に果たして見せましょう!」と決め顔で答えていた。さくらも子供三人に全校分の魚を運ばせるのは酷だと思い、二つ返事で了承した。しかし、怪しまれている存在で、外に出ても良いものだろうか。三人がいる前では聞くことが出来ず、そのまま出発をしてしまった。
道中、三人から学校での話、学園の外で起こった大冒険の話を色々聞かせてもらった。やはり、主人公なだけあり、すごい経験をしている。山賊や詐欺師をこらしめたり、忍者は戦うだけでない術もやくさんあるのだ。彼らの話を聞いていると、今まで忍者と聞いてイメージしていたものが変わりそうだ。
「三人ともすごいわね。私が守ってもらうことになりそう。」
「お代は安くしておきますよ~。」
ときり丸が銭に目を変えながら答えた。それにみんなで笑いながら、海まで目指していった。三人の話を聞いていると時間を過ぎるのも早く感じる。もう、目的の海まで到着してしまった。磯の香りと波の音が聞こえてくる。森を抜けるとそこには広大な海が広がっていた。きらきらと光る水面と、木造の大きな船では男たちが忙しく動いていた。三人はその船の元へと走って行く。さくらもそれについて走って行った。
兵庫第三協栄丸さんが三人の姿に気がつくと、すぐに用意してくれていたらしい台車に大量の魚を持ってきてくれた。山盛りに積まれた魚たちをみて、やはりさくらも付いてきてよかったと思った。子供だけでは運べそうにない量だ。女一人でも大人がいるのといないのとでは彼らの負担も違うだろう。頂いた台車の中身を早速四人で引いていく。魚は鮮度が命だ。この時代、冷やすものもないため、急いで忍術学園に戻らなくては。三人の中でも一番張り切っているしんべいを引き手にして残りの三人で左右、後ろを固めて進む。途中、坂道もあるため、後方のさくらは額に汗を浮かべながら台車を押していった。
「今日は何事もなく帰れそうだね。」
ほっとしたように乱太郎が言った。行きで聞いていた話だと、出かける先々でトラブルに巻き込まれる三人だ。こうして普通に道中歩けるのは珍しいのだろう。
「乱太郎、そういうこといってると山賊に出会ったりするんだぜ。」
「またまたあ~。きりちゃん、それこそ……」
乱太郎の言葉が途中で途切れた。
「ほ、ほんとうに山賊に出会っちゃった…。」
しんべいの言葉に道の少し前を見ると、山賊が三人、待ち構えていた。
「おうおう、これはまた活きの良い魚を持ってるじゃねえか。」
「大人しく、そいつをよこしな。」
まるで見本とでもいうような山賊のせりふだ。おまけに薄汚い着物に刃こぼれした刀を携えている。黄色い歯をみせてにやにやしながら男たちが近づいてくる。まだ男たちと距離がある。その間にさくらは小声で三人に声をかけた。
「乱太郎、きり丸、しんべえ。まだ疲れてないわね?思いっきり走れる?」
心配そうに三人がこちらを見た。
「しんべえ、怖いかも知れないけど勢いよく走って。勢いに押されて山賊はよけるはず。そうすれば山賊は道の端に飛び込む。今日のご飯のためよ。できる?」
「はい…!この魚は絶対に学園に届けます!」
「きり丸、この魚を届けられたら、あとでお駄賃あげる。しんべえが疲れて走れなくなったら代わりに引き手に回ってくれる?」
「お駄賃!!」
「乱太郎、学園にもどったらすぐに先生たちに事情を説明して。」
「はい、でもどうして…?さくらさんも一緒に戻りますよね?」
「私が合図したら思い切り走るのよ。」
乱太郎の質問には答えず、さくらは台車の前に回った。そして、山賊にゆっくり近づいていく。
「何をこそこそしゃべってたんだ?」
「ねえ、お兄さんたち。魚なんかより、あたしの方が金になるんじゃない?」
さくらの言葉に山賊たちは顔を見合わせた。
「どういうこった?」
リーダーらしき男が質問した。
「見ての通り、雑魚ばっかりの粗悪品さ。売ったところでいつも二束三文。それより、あたしを郭に連れて行った方が何倍にもなるよ。」
「ほほう…。だが、子供三人、置いていくっていうのか?」
三人のうちの一人がそういった。さくらは、はあ、と分かりやすいため息をついた。
「だからだよ。子供三人抱えて亭主まで養って…。いい加減この生活も飽き飽きしてたんだよ。郭なら三食白いまんまが食えるんだろう?山賊に連れて行かれたと言えば亭主も納得するさ。そういうことで頼むよと、この子たちに話していたところだよ。」
「そりゃ、話が早いってもんだ。」
へへ、っと下卑た笑いをして男たちがさくらの方へと向かってきた。さくらも自然に道の端の方に誘導しながら歩いて行く。
「売るにしても、どれ程の器量か確かめねえとな。」
リーダーの男がさくらの腕に手をかけた。
「しんべえ!走って!!」
大声で叫ぶと、台車は勢いよく進み出た。しんべいの勢いに押されて下っ端の山賊は驚いて道の端に尻餅をついた。横切っていく台車に山賊があっけにとられている間にさくらは腕を掴んでいた山賊のリーダーの股の間を思い切り蹴り上げた。男が悶絶している間に、さくらは来た道を戻り、駆けだした。
海までは走ればすぐだ。四人で台車を押しながら山賊から逃げるより、おとりになって、反対方向へ逃げれば時間稼ぎになる。それに、リーダー格の男に一発食らわせたのだ。女に馬鹿にされたとあっては、ああいう手合いは三人で追いかけてくるに違いない。子供たちを危険な目に遭わせたくない。ならば、と考えたのがこの作戦だった。三人には嫌なことを聞かせてしまったが、無事で学園に帰すことができればそれでいい。迷っている時間などなかった。彼らを助けなくては、と初めに思った。だから、我が身を省みる余裕もなく、行動に移してしまった。振り返ると、案の定、男たちは鬼のような形相でさくらを追ってきていた。
「この野郎!!」
「まてクソ女!!」
「ただじゃおかねえ!!」
罵詈雑言をわめきながら男たちが追ってくる。その迫力に恐怖で足から力が抜けそうになる。しかし、ここで止まれば、最悪殺される。思い切り腕を振りながら、海の方へと走る。自分の挑発がやりすぎだったのだろうか、と半ば後悔しながら、涙目になりながら必死で足を動かした。男たちの怒号がだんだんと近づいてくる。
「……っう」
背中に感じた衝撃で、さくらは前のめりに倒れ込んだ。
「手間かけさせやがって」
山賊のリーダーが、後ろ髪を引っ張ってさくらを上向きにさせた。
「売るのはやめだ。犯してぶっ殺してやる。」
ぎらぎらと光る男たちの目がさくらを見下ろしていた。