アズカバンの囚人編
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図書室でのあいさつはフィルチの時と同様、簡単に済んだ。仕事については昼食が終わってから色々と教えます、とのことだった。掃除をして埃が気になるため、一度部屋に戻り、シャワーを浴びなおし、大広間へと向かった。仕事のため仕方がないが、食事するにもはばかられると思うのは日本人の性なのだろう。クローゼットの中にはすでにいくつかの衣類と靴が用意されており、落ち着いた色のスカートとブラウスに着替えておいた。昼食時であれば、ダンブルドアに会えるかもしれない。洋服の件、屋敷しもべのこともお礼をいわなくては。
広間を見渡すとほとんど教職員だけの朝に比べて人が多く、活気のある様子だ。丁度、生徒たちも授業が終わったところなのだろう。教師テーブルも比較的多くの人が座っていた。
大広間のドアから職員用のテーブルへと移動しようとすると、目の前に人影が現れた。サクラの目線には赤いネクタイが何本か見える。見上げると赤毛の双子が行く手をふさいでいた。
「あら、こんにちは。」
サクラは何でもないように挨拶をした。相手はニコニコと人好きのする笑みを浮かべて答えた。
「「こんにちは!」」
「僕は、フレッド・ウィーズリー。」
「僕は、ジョージ・ウィーズリー。」
「あなたとお話するのを心待ちにしていたんです。」
「もしかして今日から新しくみえた先生ですか?」
後ろにしっぽがみえてきそうな二人の様子に若干後ずさりしながらも、作り笑いで答える。
「いいえ、私は用務員。フィルチさんと同じく学校の管理を任されているの。」
この年頃の子だからなのか、お国柄の違いか彼らとの距離が近く感じる。しかも、長身の二人の圧迫感と、目から感じる熱気が余計に距離を取りたくなるのかもしれないが。
「用務員…。」
「しかも、フィルチと同じ…。」
しかし、用務員というワードに少し、熱気が下がったようだ。もしかしたら、闇の魔術の教授だと期待されたのかもしれない。リーマスが辞めたのは、たしかその日のうちに知れ渡っていた。今はすでに午後だ。耳の早い二人ならば、その情報をつかんでいるだろう。そして、後釜が誰になるのかも話し合ったに違いない。あの魔法薬学教授が闇の魔術への希望を持っていることは周知の事実。そうならずに済むと期待させたのだろう。
「ごめんなさい、ご期待のお返事ではなかったかしら?」
「これはレディの前で失礼!あなたに授業を教えていただけたらどんなに幸せかと思っていましたが」
「そのきれいな御手で我々の学び舎を磨いてくださると思うと、どれほど幸せか!」
フレッドかジョージがサクラの手をまるでお姫様のようにすくい上げ、キスをする形をとる。一瞬で手の甲に口元が近づき、反射的にサクラの体が硬くなった。このような風習があるとは知っていたが、まさかこうも自然に、しかも知らない相手にということが衝撃的だ。短くリップ音とともに、一瞬あたたかくやわらかな感触がする。それに「フレッドだけ姫へ触れるなんてずるいぞ!」と双子の片方が口を尖らせた。
ジョージのほうが反対の手をとり、同じようにひざまずいた。
「このような場所で立ち話とは、ずいぶん暇を持て余していらっしゃるようで。」
背後からひどく甘いそれでいてとげのある声で話しかけられた。昨日からよく聞きなれた声である。
「姫とそれに付き従う騎士とでも言うのかね。…しかし、ずいぶんと質素な姫君ですな。」
振り向けばそれは悪い笑顔のスネイプが立っていた。
朝から会えば嫌味を言うところが実際に自分に降りかかってくると、かわいい性格とは微塵も思えない。映画や小説での彼を、傍観者としてみるのとでは雲泥の差だ。作品内では嫌われ役となり、今もウィーズリー兄弟が苦虫を嚙み潰したような顔をしていて、現実で目の当たりにすると双子の気持ちはいくらか理解できた。
「あら、スネイプ先生。私のこと『姫』だなんて。レディとして扱ってくださるなんて嬉しいですわ。」
あえてニッコリと微笑みかけて見せる。社会人ならば嫌いな相手だろうが綺麗な微笑みでお返ししてやろうではないか。まさか、笑顔が返ってくるとは思ってもみなかったのか、スネイプの片眉が上がった。
「少年にひざまずかれて鼻の下をのばす輩が男性とは思いますまい。」
「…っ誰が鼻の下を伸ばしてたですって?」
「ああ、失礼。もともとそのようなお顔立ちでしたな。せいぜいちやほやされるのも今だけだ。存分に楽しんでおくといい。」
ふん、と鼻で笑い、スネイプは教師用の食卓へと去っていった。
「嫌味を言っていくのはいつものことです。気にすることじゃないですよ。」
先ほど手にキスをしようとしていた方、ジョージが慰めてくれる。
「それに、スネイプは姫の美しさと親しみやすさに妬んでるんですよ。実際、姫と話したいと言ってる生徒は多いですよ。」
フレッドは悪戯な笑みとウインクをしてみせた。
サクラは先ほど、双子に暑苦しいと内心邪険に扱って申し訳なかったと思った。そして、マクゴナガルはじめ、この世界で優しい存在が身近にいることは心強いと感じた。
「ありがとう。でも先生を呼び捨てはいけないわ。そして私は姫じゃなくて、ヒナタよ。」
「「はーい、サクラさん!」」
双子の人好きのする笑顔にいくらかいやされたサクラだった。
広間を見渡すとほとんど教職員だけの朝に比べて人が多く、活気のある様子だ。丁度、生徒たちも授業が終わったところなのだろう。教師テーブルも比較的多くの人が座っていた。
大広間のドアから職員用のテーブルへと移動しようとすると、目の前に人影が現れた。サクラの目線には赤いネクタイが何本か見える。見上げると赤毛の双子が行く手をふさいでいた。
「あら、こんにちは。」
サクラは何でもないように挨拶をした。相手はニコニコと人好きのする笑みを浮かべて答えた。
「「こんにちは!」」
「僕は、フレッド・ウィーズリー。」
「僕は、ジョージ・ウィーズリー。」
「あなたとお話するのを心待ちにしていたんです。」
「もしかして今日から新しくみえた先生ですか?」
後ろにしっぽがみえてきそうな二人の様子に若干後ずさりしながらも、作り笑いで答える。
「いいえ、私は用務員。フィルチさんと同じく学校の管理を任されているの。」
この年頃の子だからなのか、お国柄の違いか彼らとの距離が近く感じる。しかも、長身の二人の圧迫感と、目から感じる熱気が余計に距離を取りたくなるのかもしれないが。
「用務員…。」
「しかも、フィルチと同じ…。」
しかし、用務員というワードに少し、熱気が下がったようだ。もしかしたら、闇の魔術の教授だと期待されたのかもしれない。リーマスが辞めたのは、たしかその日のうちに知れ渡っていた。今はすでに午後だ。耳の早い二人ならば、その情報をつかんでいるだろう。そして、後釜が誰になるのかも話し合ったに違いない。あの魔法薬学教授が闇の魔術への希望を持っていることは周知の事実。そうならずに済むと期待させたのだろう。
「ごめんなさい、ご期待のお返事ではなかったかしら?」
「これはレディの前で失礼!あなたに授業を教えていただけたらどんなに幸せかと思っていましたが」
「そのきれいな御手で我々の学び舎を磨いてくださると思うと、どれほど幸せか!」
フレッドかジョージがサクラの手をまるでお姫様のようにすくい上げ、キスをする形をとる。一瞬で手の甲に口元が近づき、反射的にサクラの体が硬くなった。このような風習があるとは知っていたが、まさかこうも自然に、しかも知らない相手にということが衝撃的だ。短くリップ音とともに、一瞬あたたかくやわらかな感触がする。それに「フレッドだけ姫へ触れるなんてずるいぞ!」と双子の片方が口を尖らせた。
ジョージのほうが反対の手をとり、同じようにひざまずいた。
「このような場所で立ち話とは、ずいぶん暇を持て余していらっしゃるようで。」
背後からひどく甘いそれでいてとげのある声で話しかけられた。昨日からよく聞きなれた声である。
「姫とそれに付き従う騎士とでも言うのかね。…しかし、ずいぶんと質素な姫君ですな。」
振り向けばそれは悪い笑顔のスネイプが立っていた。
朝から会えば嫌味を言うところが実際に自分に降りかかってくると、かわいい性格とは微塵も思えない。映画や小説での彼を、傍観者としてみるのとでは雲泥の差だ。作品内では嫌われ役となり、今もウィーズリー兄弟が苦虫を嚙み潰したような顔をしていて、現実で目の当たりにすると双子の気持ちはいくらか理解できた。
「あら、スネイプ先生。私のこと『姫』だなんて。レディとして扱ってくださるなんて嬉しいですわ。」
あえてニッコリと微笑みかけて見せる。社会人ならば嫌いな相手だろうが綺麗な微笑みでお返ししてやろうではないか。まさか、笑顔が返ってくるとは思ってもみなかったのか、スネイプの片眉が上がった。
「少年にひざまずかれて鼻の下をのばす輩が男性とは思いますまい。」
「…っ誰が鼻の下を伸ばしてたですって?」
「ああ、失礼。もともとそのようなお顔立ちでしたな。せいぜいちやほやされるのも今だけだ。存分に楽しんでおくといい。」
ふん、と鼻で笑い、スネイプは教師用の食卓へと去っていった。
「嫌味を言っていくのはいつものことです。気にすることじゃないですよ。」
先ほど手にキスをしようとしていた方、ジョージが慰めてくれる。
「それに、スネイプは姫の美しさと親しみやすさに妬んでるんですよ。実際、姫と話したいと言ってる生徒は多いですよ。」
フレッドは悪戯な笑みとウインクをしてみせた。
サクラは先ほど、双子に暑苦しいと内心邪険に扱って申し訳なかったと思った。そして、マクゴナガルはじめ、この世界で優しい存在が身近にいることは心強いと感じた。
「ありがとう。でも先生を呼び捨てはいけないわ。そして私は姫じゃなくて、ヒナタよ。」
「「はーい、サクラさん!」」
双子の人好きのする笑顔にいくらかいやされたサクラだった。