炎のゴブレット編
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
大広間へと向かう道は降り続く雪が吹き込み、廊下の石畳の道には、粉砂糖をまぶしたように雪が広がっていた。今日の生徒たちは部屋でプレゼントを開けたり、今夜の準備と忙しいことだろう。おかげでパーティの設営がはかどるというものだ。サクラはいつもの作業服に厚手のセーターを身につけ、防寒も万全だ。広間ではすでに屋敷僕たちが準備を始めている。サクラとフィルチも会場での設営に加わる。寮ごとに置かれていたテーブルは撤去し、10人がけの丸テーブルをいくつも準備していく。雪の降る日に額に汗をかきながら会場にツタの花綱を壁一面に飾っていく。魔法が使える屋敷僕たちはひとふりでテーブルのセッティングや天井の景色を変えている。こういうときほど魔法が使えるのは便利なのに…と内心不満が出てくるのは仕方ないだろう。魔法のない世界で生きていたサクラでさえそう思うのだ。この世界で生きてきたフィルチは何度そう思ったのだろう。脚立に乗りながら二人で花綱を飾り付けながら、ふとフィルチの横顔をうかがった。
「なんだ。」
居心地悪そうにフィルチがこちらをぎろりと睨んだ。
「これだけの量があると大変ですよね。」
「今年は特別だ。…それに特別手当がでるらしいからな。」
フィルチはにやり、と口元を上げて、脚立の下でこちらを見上げているミセスノリスの方をみた。どうやらその手当でミセスノリスにプレゼントを買ってあげるらしい。まれに見るフィルチの笑顔にこちらも口元がほころんだ。
「ミセスノリスも楽しみだね。」
そう言って話しかけるもミセスノリスはしっぽをふって主人の周りを歩き始めた。塩対応なのも彼女らしい。
「それで、お前はどうするんだ。」
「私ですか?」
考えてもいなかった。何か欲しいものがあるわけでもないし、突然の臨時収入に使い道が思い浮かばない。
「…マクゴナガル先生にプレゼントを頂きましたから、お返しを用意しますかね。」
そう言うサクラにフィルチはやれやれと頭をふった。
午後には全ての準備が整い、職員らも自らのパーティの準備に自室へと戻っていった。サクラやハグリッドなどの職員もパーティの参加者だ。形ばかりの参加で、ほとんどは生徒の管理や来賓へのもてなしになるであろう。それでもパーティと聞くとサクラの胸は躍った。初めての英国式のクリスマスパーティだ。心躍らないわけがない。サクラも自室に戻り、シャワーを浴びると、用意したドレスに身を包んだ。なめらかな生地が素肌を滑る。心地よい肌触りにうっとりし、鏡台の前に座ると、パーティ用に化粧を施した。星をちりばめたようなドレスに合わせてアイシャドウもゴールドを基調としたものにする。瞬きするたびにマットなゴールドのアイシャドウが見える。そこにネイビーのアイラインで引き締める。チークは軽く、肌を引き立てる程度にする。唇はゴールドのツヤが入ったローズ系のリップで華やかに仕上げる。マクゴナガルとリーマスからもらったプレゼントを身に纏い、髪をまとめ上げれば完成だ。
生徒たちよりも一足早く準備をして校長室へと向かう。来賓のクラウチ氏とバグマン氏を迎えるためだ。今回は校長室でダンブルドアと共に出迎えた後、大広前へ案内する。いつもの合言葉を唱えて校長室に入る。中にはまだダンブルドア一人だけだ。彼も今日のパーティのためにいつもの落ち着いたローブの色ではなく、爽やかな色のローブに身を包んでいた。サクラが入ってきたことに気がつくと、ダンブルドアはこちらを振り向いた。
「おお、サクラ。これは美しいのう。」
「ありがとうございます、ダンブルドア校長。先生のおかげで素敵なドレスを着ることが出来ます。」
「おいぼれに出来るのは機会を作ることだけじゃよ。」
「実はそのときに、リーマスさんに私の方からもお願いをさせて頂きました。校長先生のお耳にも入っていると思いますが。」
「一日貼り付けとはさすがに儂も言えなんだが、それをやる価値があるということかの。」
「それで、経過の方は…?」
「順調そのものじゃよ。今日のパーティにも参加される。して、お主の言っていた内部の者は接触してくるかの?」
ダンブルドアに直接話した覚えはないが、きっとスネイプだろう。
「そちらについてはクラウチ氏を見ていればおのずと分かってくるのでは無いかと思います。下手に動いて勘づかれると厄介ですよ。」
「…近しい者に内通者がいるようじゃな。」
ダンブルドアの瞳がきらりと光った。サクラの言葉から導き出した答えに否定をせず、ダンブルドアの瞳を見つめた。それに是ととらえたらしく、ダンブルドアは満足そうな表情を浮かべた。
「来賓のエスコート頼んだぞ、サクラ。」
「かしこまりました。」
ダンブルドアに一礼したところで、校長室の暖炉に炎が立ち上った。そこから現れた二人の人物をみて、ダンブルドアとサクラは一瞬、目を見合わせた。一人は鮮やかな紫に大きな星を散らしたローブを着込んだバグマン氏。そしてもう一人は落ち着いたネイビーに金糸で縁取られたローブを着込んだパーシー ウィーズリーだった。…なぜ彼がここに?その言葉を飲み込んでローテーブルの紅茶をセッティングし始めた。隣では出迎えたダンブルドアが朗らかに挨拶をしている。
「ようこそお越しくださった。」
「今夜はお招き頂きありがとうございます。いやあ、楽しみですよ。ハリーはどんな子とパートナーなのか、あのハーマイオニー女史ですかな。」
いつもの楽しそうな口ぶりでバグマンが話した。
「儂もダンスが楽しみじゃよ。なんたって数十年…いや半世紀ぶりやもしれん。……して、今日はバグマン氏はご欠席かな?」
「ええ、今日は私が代理として参りました。」
パーシーは誇らしげに言った。ダンブルドアはその様子に微笑んだ。
「我が校の卒業生がこれほど早く昇進するとは嬉しい限りじゃ。君は監督生時代も熱心に仕事をしていた。それが魔法省で認められたと思うと誇らしい。」
「ありがとうございます、ダンブルドア校長先生。」
パーシーは褒められて、はにかみながらお礼をいった。こうして誰かに認めてもらえるというのは嬉しいものだ。それが母校の校長、そして魔法界でも実力を認められている者なのだ。喜びもひとしおだろう。ダンブルドアに促されて二人は来賓用のソファに腰掛けた。ローテーブルにはサクラが用意したティーセットが並べられている。二人に順番に紅茶をついでいき、最後にダンブルドアに次に回ると、三人はティーカップを傾け、一口含んだ。
話を切り出したのはパーシーからだった。
「クラウチ氏については残念ながら体調がよくないのです。『ご心配おかけして申し訳ない。代理の者に今回は一任する。楽しいクリスマスを。』と伝言を預かってきました。」
「そうじゃったか…。大事ないといいんじゃが。」
「ワールドカップ以来、クラウチ氏は働き過ぎて調子がおかしいのです。しかもスキーターといういやな記者がうるさく嗅ぎ回っていますし、―本当に、お気の毒です。手紙には、クラウチ氏は今静かにクリスマスを過ごすことにする、とおっしゃっていました。当然の権利ですよ―」
このままではパーシーの独壇場になってしまう。サクラは紅茶のおかわりを注ぎながら言葉をかぶせた。
「信頼できる方にお任せできてクラウチ氏も安心ですわ。ダンブルドア校長…そろそろ生徒が集まる時間です。」
「今年は多くの生徒がパーティを心待ちにしておっての。大広間が混まないうちに案内しよう。」
ダンブルドアはまだ準備が残っているため、後ほど大広間で合流することになった。もともとはダンブルドアと案内するはずであった。しかし、不足の事態が起きた。監視役のリーマスに事情をきくのだろう。サクラはそちらが気になりながらも、二人を大広間まで案内した。パーシーにとっては見知った道ではあると思うが、来賓である手前、サクラが少し先を歩いた。道中ではすでに着飾った生徒たちが待ち合わせのためにうろうろとしていたり、大広間へと向かっているものが見えた。大広間の大きな扉の前までくると多くの生徒たちでひしめき合っていた。サクラはその脇を通り、別の入り口から二人を案内した。二人を来賓用のテーブルまでエスコートし、「ただいまより生徒が入場します。しばらくご歓談ください。」と、入り口へと向かった。フィルチが片側に立ち、すでに待機している。そして、サクラが来ると、タイミングを見計らって二人で扉を開けた。
扉が開くと、押し寄せた波のように大勢の生徒たちが流れ込んできた。色とりどりのドレスと上質なローブやタキシード。いつもより大人びた姿の生徒たちに、サクラはまじまじとその様子をみていた。その中にフレッドとジョージの姿をみつける。シンプルなスーツだが長身の二人がさらにすらっと見え、素敵だ。その隣には同じようにすらっとした女の子がエスコートされていた。二人とも相手を見つけることが出来たようだ。こちらの視線に気付いたらしい双子は、ウインクで返してくる。さすがに今日はサクラ話しかけるのはパートナーに失礼だと思ったようだ。サクラもそれに微笑み返した。この人の波に乗ってカルカロフやマダムマクシーム、そしてホグワーツの職員たちも入場した。生徒が全員着席すると、フィルチとサクラも用意されている席についた。同じテーブルのハグリッドは鮮やかな若草色の毛皮のスーツに身を包んでいた。そして、サクラの姿をみると「おお!」と歓声を上げた。
「うっつくしい!ええドレスだな!お前さんに似合っとる!」
「ありがとうハグリッド。あなたもすてきよ。」
そう言って笑い合っていると、再び大広間の扉が開かれた。
代表選手たちがパートナーを引き連れて、列をなして入場し始めた。初めにフラーとそのパートナー、そして次はクラムとハーマイオニー。落ち着いたピンクのドレスが彼女の愛らしさと知的さを引き出している。あの美しい少女がハーマイオニーだと気がついた面々は唖然としたように目と口を大きく開いて固まっていた。…ロンの方も同じような表情でハーマイオニーを見つめている。ファンであるクラムではなく、ハーマイオニーから目が離せないでいるようだ。そして、次にセドリックとチョウが入場した。黒の重厚なローブとシルバーの蝶ネクタイ。ただそれだけの装いがセドリックの魅力をよくあらわしていた。本当に美しいものには余計な装飾など必要ないのだ。彼の笑顔が隣にいるチョウに向けられている。シルバーに金の刺繍が浮かび上がるように施されているドレスがよく似合っている。エキゾチックな魅力が中華風のドレスでさらに増しているようだった。
まさに、美男美女だ。入り込む余地すらないほど完璧な。
サクラの表情がわずかに曇った。しかし、周りにいる者たちは代表選手たちに視線を向けているため気付かない。ただ、スネイプは隣のテーブルから、ちらりとその様子を窺いみると、何事も無かったかのように再び広間の中央へと目を向けた。
「なんだ。」
居心地悪そうにフィルチがこちらをぎろりと睨んだ。
「これだけの量があると大変ですよね。」
「今年は特別だ。…それに特別手当がでるらしいからな。」
フィルチはにやり、と口元を上げて、脚立の下でこちらを見上げているミセスノリスの方をみた。どうやらその手当でミセスノリスにプレゼントを買ってあげるらしい。まれに見るフィルチの笑顔にこちらも口元がほころんだ。
「ミセスノリスも楽しみだね。」
そう言って話しかけるもミセスノリスはしっぽをふって主人の周りを歩き始めた。塩対応なのも彼女らしい。
「それで、お前はどうするんだ。」
「私ですか?」
考えてもいなかった。何か欲しいものがあるわけでもないし、突然の臨時収入に使い道が思い浮かばない。
「…マクゴナガル先生にプレゼントを頂きましたから、お返しを用意しますかね。」
そう言うサクラにフィルチはやれやれと頭をふった。
午後には全ての準備が整い、職員らも自らのパーティの準備に自室へと戻っていった。サクラやハグリッドなどの職員もパーティの参加者だ。形ばかりの参加で、ほとんどは生徒の管理や来賓へのもてなしになるであろう。それでもパーティと聞くとサクラの胸は躍った。初めての英国式のクリスマスパーティだ。心躍らないわけがない。サクラも自室に戻り、シャワーを浴びると、用意したドレスに身を包んだ。なめらかな生地が素肌を滑る。心地よい肌触りにうっとりし、鏡台の前に座ると、パーティ用に化粧を施した。星をちりばめたようなドレスに合わせてアイシャドウもゴールドを基調としたものにする。瞬きするたびにマットなゴールドのアイシャドウが見える。そこにネイビーのアイラインで引き締める。チークは軽く、肌を引き立てる程度にする。唇はゴールドのツヤが入ったローズ系のリップで華やかに仕上げる。マクゴナガルとリーマスからもらったプレゼントを身に纏い、髪をまとめ上げれば完成だ。
生徒たちよりも一足早く準備をして校長室へと向かう。来賓のクラウチ氏とバグマン氏を迎えるためだ。今回は校長室でダンブルドアと共に出迎えた後、大広前へ案内する。いつもの合言葉を唱えて校長室に入る。中にはまだダンブルドア一人だけだ。彼も今日のパーティのためにいつもの落ち着いたローブの色ではなく、爽やかな色のローブに身を包んでいた。サクラが入ってきたことに気がつくと、ダンブルドアはこちらを振り向いた。
「おお、サクラ。これは美しいのう。」
「ありがとうございます、ダンブルドア校長。先生のおかげで素敵なドレスを着ることが出来ます。」
「おいぼれに出来るのは機会を作ることだけじゃよ。」
「実はそのときに、リーマスさんに私の方からもお願いをさせて頂きました。校長先生のお耳にも入っていると思いますが。」
「一日貼り付けとはさすがに儂も言えなんだが、それをやる価値があるということかの。」
「それで、経過の方は…?」
「順調そのものじゃよ。今日のパーティにも参加される。して、お主の言っていた内部の者は接触してくるかの?」
ダンブルドアに直接話した覚えはないが、きっとスネイプだろう。
「そちらについてはクラウチ氏を見ていればおのずと分かってくるのでは無いかと思います。下手に動いて勘づかれると厄介ですよ。」
「…近しい者に内通者がいるようじゃな。」
ダンブルドアの瞳がきらりと光った。サクラの言葉から導き出した答えに否定をせず、ダンブルドアの瞳を見つめた。それに是ととらえたらしく、ダンブルドアは満足そうな表情を浮かべた。
「来賓のエスコート頼んだぞ、サクラ。」
「かしこまりました。」
ダンブルドアに一礼したところで、校長室の暖炉に炎が立ち上った。そこから現れた二人の人物をみて、ダンブルドアとサクラは一瞬、目を見合わせた。一人は鮮やかな紫に大きな星を散らしたローブを着込んだバグマン氏。そしてもう一人は落ち着いたネイビーに金糸で縁取られたローブを着込んだパーシー ウィーズリーだった。…なぜ彼がここに?その言葉を飲み込んでローテーブルの紅茶をセッティングし始めた。隣では出迎えたダンブルドアが朗らかに挨拶をしている。
「ようこそお越しくださった。」
「今夜はお招き頂きありがとうございます。いやあ、楽しみですよ。ハリーはどんな子とパートナーなのか、あのハーマイオニー女史ですかな。」
いつもの楽しそうな口ぶりでバグマンが話した。
「儂もダンスが楽しみじゃよ。なんたって数十年…いや半世紀ぶりやもしれん。……して、今日はバグマン氏はご欠席かな?」
「ええ、今日は私が代理として参りました。」
パーシーは誇らしげに言った。ダンブルドアはその様子に微笑んだ。
「我が校の卒業生がこれほど早く昇進するとは嬉しい限りじゃ。君は監督生時代も熱心に仕事をしていた。それが魔法省で認められたと思うと誇らしい。」
「ありがとうございます、ダンブルドア校長先生。」
パーシーは褒められて、はにかみながらお礼をいった。こうして誰かに認めてもらえるというのは嬉しいものだ。それが母校の校長、そして魔法界でも実力を認められている者なのだ。喜びもひとしおだろう。ダンブルドアに促されて二人は来賓用のソファに腰掛けた。ローテーブルにはサクラが用意したティーセットが並べられている。二人に順番に紅茶をついでいき、最後にダンブルドアに次に回ると、三人はティーカップを傾け、一口含んだ。
話を切り出したのはパーシーからだった。
「クラウチ氏については残念ながら体調がよくないのです。『ご心配おかけして申し訳ない。代理の者に今回は一任する。楽しいクリスマスを。』と伝言を預かってきました。」
「そうじゃったか…。大事ないといいんじゃが。」
「ワールドカップ以来、クラウチ氏は働き過ぎて調子がおかしいのです。しかもスキーターといういやな記者がうるさく嗅ぎ回っていますし、―本当に、お気の毒です。手紙には、クラウチ氏は今静かにクリスマスを過ごすことにする、とおっしゃっていました。当然の権利ですよ―」
このままではパーシーの独壇場になってしまう。サクラは紅茶のおかわりを注ぎながら言葉をかぶせた。
「信頼できる方にお任せできてクラウチ氏も安心ですわ。ダンブルドア校長…そろそろ生徒が集まる時間です。」
「今年は多くの生徒がパーティを心待ちにしておっての。大広間が混まないうちに案内しよう。」
ダンブルドアはまだ準備が残っているため、後ほど大広間で合流することになった。もともとはダンブルドアと案内するはずであった。しかし、不足の事態が起きた。監視役のリーマスに事情をきくのだろう。サクラはそちらが気になりながらも、二人を大広間まで案内した。パーシーにとっては見知った道ではあると思うが、来賓である手前、サクラが少し先を歩いた。道中ではすでに着飾った生徒たちが待ち合わせのためにうろうろとしていたり、大広間へと向かっているものが見えた。大広間の大きな扉の前までくると多くの生徒たちでひしめき合っていた。サクラはその脇を通り、別の入り口から二人を案内した。二人を来賓用のテーブルまでエスコートし、「ただいまより生徒が入場します。しばらくご歓談ください。」と、入り口へと向かった。フィルチが片側に立ち、すでに待機している。そして、サクラが来ると、タイミングを見計らって二人で扉を開けた。
扉が開くと、押し寄せた波のように大勢の生徒たちが流れ込んできた。色とりどりのドレスと上質なローブやタキシード。いつもより大人びた姿の生徒たちに、サクラはまじまじとその様子をみていた。その中にフレッドとジョージの姿をみつける。シンプルなスーツだが長身の二人がさらにすらっと見え、素敵だ。その隣には同じようにすらっとした女の子がエスコートされていた。二人とも相手を見つけることが出来たようだ。こちらの視線に気付いたらしい双子は、ウインクで返してくる。さすがに今日はサクラ話しかけるのはパートナーに失礼だと思ったようだ。サクラもそれに微笑み返した。この人の波に乗ってカルカロフやマダムマクシーム、そしてホグワーツの職員たちも入場した。生徒が全員着席すると、フィルチとサクラも用意されている席についた。同じテーブルのハグリッドは鮮やかな若草色の毛皮のスーツに身を包んでいた。そして、サクラの姿をみると「おお!」と歓声を上げた。
「うっつくしい!ええドレスだな!お前さんに似合っとる!」
「ありがとうハグリッド。あなたもすてきよ。」
そう言って笑い合っていると、再び大広間の扉が開かれた。
代表選手たちがパートナーを引き連れて、列をなして入場し始めた。初めにフラーとそのパートナー、そして次はクラムとハーマイオニー。落ち着いたピンクのドレスが彼女の愛らしさと知的さを引き出している。あの美しい少女がハーマイオニーだと気がついた面々は唖然としたように目と口を大きく開いて固まっていた。…ロンの方も同じような表情でハーマイオニーを見つめている。ファンであるクラムではなく、ハーマイオニーから目が離せないでいるようだ。そして、次にセドリックとチョウが入場した。黒の重厚なローブとシルバーの蝶ネクタイ。ただそれだけの装いがセドリックの魅力をよくあらわしていた。本当に美しいものには余計な装飾など必要ないのだ。彼の笑顔が隣にいるチョウに向けられている。シルバーに金の刺繍が浮かび上がるように施されているドレスがよく似合っている。エキゾチックな魅力が中華風のドレスでさらに増しているようだった。
まさに、美男美女だ。入り込む余地すらないほど完璧な。
サクラの表情がわずかに曇った。しかし、周りにいる者たちは代表選手たちに視線を向けているため気付かない。ただ、スネイプは隣のテーブルから、ちらりとその様子を窺いみると、何事も無かったかのように再び広間の中央へと目を向けた。