炎のゴブレット編
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
第一の課題が終わり、一息つくかと思いきや、職員たちはクリスマスダンスパーティの準備に追われていた。特に、屋敷僕や管理人、ハグリッドは食材の手配や装飾の調達など、準備することが山ほどあった。しかも、通常の業務に加えてだ。昼休みや終業時間は押していき、自由時間は必然的に少なくなっていった。屋敷僕にとっては働くことが喜びであり、嬉々としていた。サクラとしても、セドリックとの一件があり、仕事を理由に顔を合わせずともよいことに安堵していた。忙しく動き回っていれば、話しかけられることもないし、食事の時間がずれれば会うこともない。
クリスマスまで数週間となったところで、ハグリッドが森から巨大なもみの木を運び出した。雪化粧をされたもみの木をハグリッドが一人で引きずってくる。その度に積もっていた雪が払い落とされ、ハグリッドの通った後には幾何学模様の雪の跡が残っていた。いよいよ、クリスマスが間近であるという感じがしてくる。今日はサクラもフリットウィックや妖精たちと飾り付けの手伝いだ。フリットウィックが授業の間にオーナメントは用意して机に並べてある。あとは、手の届く範囲を飾り付けて、仕上げは妖精を使いながらフリットウィックがしていくという流れだ。
「おお、こりゃキレーな飾りだな。」
ハグリッドはもみの木を大広間の前方に立てると、こちらの装飾をみて、目を輝かせた。
「これ全部、新品みてえにきらきらしてるな。」
机に並べられた丸いオーナメントは金、赤が大広間の灯りに照らされてきらきらと輝いている。一年に一度、しかも物置に入れられていたオーナメントは煤にまみれて放置されていた。サクラは、それをひとつひとつ手作業で磨いていったのだ。しかも巨大オーナメント。テニスボールほどの大きさからバスケットボールほどの大きさのものまで大小さまざま。どれだけ時間がかかったことか。
「全部磨くのは苦労したのよ。でも、そんな風に嬉しそうにしてもらえるなら頑張った甲斐があったわね。」
「こりゃすげえ。みんなも喜ぶ。」
「早速飾り付けましょうか。」
そう言って、サクラがオーナメントに手を伸ばしたところで、ハグリッドは申し訳なさそうな表情になった。
「ハグリッド、どうしたの?」
「すまねえ…一緒に飾り付けをするはずだったんだが、別の仕事が入っちまった。すぐ行かねえと。」
ハグリッドとは飾り付けまで一緒にするはずだった。しかし、クリスマスに加えて他校へのもてなしもある。何かイレギュラーな事が入ったのかもしれない。
「いいのよ、こっちは後からフリットウィック先生もいらっしゃるから心配しないで。それより、急ぎの仕事なんでしょう?」
そう言うとハグリッドはすぐに切り替えて「こっちは任せた」とサクラの肩をぽん、とたたいて大広間を後にした。残ったのはサクラ一人だ。妖精たちも授業後、先生とやってくる予定だ。それまでは一人でゆっくり準備でもしようか、と飾り付けを始めた。
始めれば、一人でも楽しく作業が進んでいった。やり始めると凝ってきてしまうもので、物置から脚立を調達してきて、ツリーの上部まで一通り終わらせてしまった。冬であるのに額に汗をかきながら飾り付けたツリーを下から見上げてみる。圧巻だ。輝くオーナメントでツリーがより一層華やかに見えた。あとは、リボンがけや最後の微調整だ。そのあたりは魔法の方が良いだろう。達成感に、自然とサクラの表情にも笑みがこぼれた。使い終わった脚立を肩に掲げて大広間をでる。生徒たちが授業が終わって廊下にちらほら見える。そんな時間まで飾り付けに夢中になっていたのか…。久しぶりに楽しんでいたからか、時間の感覚がなくなっていたようだ。セドリックに遭遇してしまう前に退散しよう、と足早に歩を進めたところだった。
「おっと…!!」
目の前には男子生徒の胸元があった。それに驚いて、脚立を持つバランスが崩れた。そのまま後ろへ倒れそうになったところで、誰かの胸にあたった。
「危ないよサクラさん。」
見れば前後に同じ顔がのぞいている。
「フレッド…ジョージ。」
「なんか久しぶりに会う気がするね。」
「そんなに急いでどこへいくのさ。」
前後に長身の双子に囲まれ、落ち着かない。
「クリスマスの準備で職員は大忙しなのよ。あなたたちも試験の勉強で忙しいと思うけど。」
休み明けはいくつかの授業でテストがあると聞く。準備する生徒たちもいるだろう。…この双子が真面目に勉強する姿は想像も出来ないが。社交辞令程度で話しておく。すると、案の定、渋い顔をして顔を見合わせる二人。
「そんなことよりも、今は学校中がダンスパーティーの相手探しで持ちきりさ!」
「真面目に授業聞いているやつなんていないぜ。」
フレッド、ジョージが言葉を続けた。その言葉でダンスパーティのことを思い出す。その日は夜の八時から十二時まで立食のダンスパーティだ。会場の準備に夕方はさらに忙しくなるな、と頭の中で算段をつけはじめる。すると、フレッドがサクラから脚立をさっと取り上げた。
「仕事のこと考えてるのかい?たまには息抜きも必要だと思うよ。サクラさん、真面目に仕事しすぎだし。」
「そんなこともないわよ。厨房でお菓子もらってきたり、休憩はとってるし。」
そう言うとジョージが目を輝かせた。
「我が同士よ!」そう言って、サクラの肩を掴んだ。
「いやあ奇遇だ。サクラさんも常連だったとは。」
嬉しそうに話しながら、歩き出したのは厨房の方だ。フレッドもその隣でサクラを挟みながら歩いて行く。非常にまずい。なぜなら、厨房の近くにはハッフルパフ寮があるのだ。最も気まずい人物と会う確率が飛躍的に上がってしまう。サクラは早口で言い訳を述べた。
「ごめんなさい、まだし仕事が残ってるのよ。」
「生徒と交流するのも立派な仕事さ。」
隣でフレッドがウインクする。
「そうそう!仕事だよ、し、ご、と!」
ジョージもそう言いながらわくわくしている。これはサクラをだしに厨房でつまみ食いがしたいだけではないか。と勘ぐりそうになる。しかし、二人の毒気のない笑顔を前にすると、無理矢理断るのも忍びなく思えてくる。そのまま、双子とともに厨房に入ると、相変わらず忙しそうな屋敷僕たちの様子だ。それにも関わらず、双子がくると、嬉々としたように様々なお菓子や飲み物を出してもてなしてくれる。…サクラとの対応の違いに若干の不公平感を感じたが、生徒と職員、しかもスクイブでは対応の差があるのかも知れない。ハーマイオニーが屋敷僕も意識改革に熱心に力を入れ始めたところだ。新しい価値観をもつのはきっとドビーくらいなのだろう。マルフォイ家をはじめ、旧家では未だに純血への強いセレブリティがある。その思想はきっとこの世界の根底にも根付いているのだろう。なんだか良い気分ではないが、そのまま両手一杯のお菓子と飲み物を持って、厨房を引き上げると、またもや大広間へと戻ってきた。授業後とあって、夕食前の大広間は人もまばらだ。他寮生と勉強をしたい者や、チェスをしたり、おしゃべりをしたり、と図書室に比べると自由な時間を過ごしていた。双子は、グリフィンドールがいつも使うテーブルにサクラを招いた。
もらってきた焼き菓子やクッキー、フルーツ、ジュースなど広げられ一足早いパーティのような様相だ。しかし、そこにある大半は双子の胃の中へ入っていった。二人の食べっぷりを見ながら、さすが若い男子高生は食欲が違う、と驚きの表情をしながらも見つめていた。二人の間に座るようにさせられていたサクラは真ん中で紅茶をのみながら、フレッドにすすめられた焼き菓子を頬張り、ジョージが手渡すフルーツタルトにも手をつける。そうしながら、二人は第一の課題後のグリフィンドールの様子について話してくれた。ハリーの活躍で大盛り上がり、ロンとハリーの仲も修復出来たようで、兄としても嬉しそうだ。それからセドリックの怪我の具合も、すぐに回復して飛行術の授業ではすでにいつものプレーを見せているらしい。それを聞いたサクラは内心安堵した。軽傷とはいえ心配していたのだ。回復したようでよかった。
そして、ジョージが、にやりと意味深に笑ってサクラの方を見た。明らかにまずいことを言うつもりだ、と分かる。
「それで、サクラさんはダンスパーティの相手は決めた?」
ジョージの言葉にフレッドも興味津々というように身を乗り出してサクラの様子を窺った。それにサクラは、大きくため息をついた。
「私は職員よ?運営側に回ってるわよ。」
サクラの返答に二人はあからさまに落胆に色を見せた。
「俺たちの姫はダンスはご所望じゃないそうだぜ、兄弟。」
「ああ、非常に残念だ。エスコートするのを夢見てたんだが。」
目を覆って悲しむポーズをとる二人。
「普通は男女ベアでしょう。同年代で探しなさい。ちなみにマクゴナガル先生もその日は監督側だからお誘いしても無理よ。」
そう言うと、二人して「うげー」と声を上げた。そこまで嫌がらなくてもいいじゃないか、自分の寮監だろう…。フレッドがすぐに切り替えて、話を続ける。
「すでに上位候補は相応の奴とくっついてるんだよな…。」
「あのチョウもすでに相手が決まってるし。俺たちも早いところ声かけないとな。」
ジョージがそう言った。
「…チョウって、チョウ チャンのこと?」
「レイブンクローのマドンナさ。すでにセドリックと約束してるらしいよ。」
「さすが学校のヒーローは相手も相応だよなあ。」
二人がしみじみと言っているそばで、サクラは気を紛らわすように紅茶を飲み干した。表情を変えてはいけない。聡い二人だ、これ以上いて悟られる前に、自然に去ろう。にこり、と愛想の良い笑顔をつくる。
「あなたたちもきっと声をかけたらすぐよ。」
『がんばって』っと笑顔で続けようとしたところで、大広間に1羽のふくろうが飛んできた。その足から落ちた手紙はサクラの目の前にやってきた。この世界に来て、初めての手紙だ。両側の二人も、誰宛かと封筒をのぞき込んだ。
「リーマス J ルーピン…」
不思議そうな顔をしている双子と同じくサクラも首をかしげた。
「サクラさん、ルーピンと知り合いなの?」
「まさか……付き合ってる?!」
と、ジョージが騒ぎ始めたのを、目で制する。
「一度、学校で挨拶しただけよ。さあ、私も仕事に戻るわ。誘ってくれてありがとうね。」
そう言って、二人に笑いかけると、まんざらでもないように嬉しそうに笑いかえしてくれた。
「進展したら教えてね!」
「近況報告待ってるよ!」
そう言って茶化す双子に軽く手を振ると、大広間をあとにした。
クリスマスまで数週間となったところで、ハグリッドが森から巨大なもみの木を運び出した。雪化粧をされたもみの木をハグリッドが一人で引きずってくる。その度に積もっていた雪が払い落とされ、ハグリッドの通った後には幾何学模様の雪の跡が残っていた。いよいよ、クリスマスが間近であるという感じがしてくる。今日はサクラもフリットウィックや妖精たちと飾り付けの手伝いだ。フリットウィックが授業の間にオーナメントは用意して机に並べてある。あとは、手の届く範囲を飾り付けて、仕上げは妖精を使いながらフリットウィックがしていくという流れだ。
「おお、こりゃキレーな飾りだな。」
ハグリッドはもみの木を大広間の前方に立てると、こちらの装飾をみて、目を輝かせた。
「これ全部、新品みてえにきらきらしてるな。」
机に並べられた丸いオーナメントは金、赤が大広間の灯りに照らされてきらきらと輝いている。一年に一度、しかも物置に入れられていたオーナメントは煤にまみれて放置されていた。サクラは、それをひとつひとつ手作業で磨いていったのだ。しかも巨大オーナメント。テニスボールほどの大きさからバスケットボールほどの大きさのものまで大小さまざま。どれだけ時間がかかったことか。
「全部磨くのは苦労したのよ。でも、そんな風に嬉しそうにしてもらえるなら頑張った甲斐があったわね。」
「こりゃすげえ。みんなも喜ぶ。」
「早速飾り付けましょうか。」
そう言って、サクラがオーナメントに手を伸ばしたところで、ハグリッドは申し訳なさそうな表情になった。
「ハグリッド、どうしたの?」
「すまねえ…一緒に飾り付けをするはずだったんだが、別の仕事が入っちまった。すぐ行かねえと。」
ハグリッドとは飾り付けまで一緒にするはずだった。しかし、クリスマスに加えて他校へのもてなしもある。何かイレギュラーな事が入ったのかもしれない。
「いいのよ、こっちは後からフリットウィック先生もいらっしゃるから心配しないで。それより、急ぎの仕事なんでしょう?」
そう言うとハグリッドはすぐに切り替えて「こっちは任せた」とサクラの肩をぽん、とたたいて大広間を後にした。残ったのはサクラ一人だ。妖精たちも授業後、先生とやってくる予定だ。それまでは一人でゆっくり準備でもしようか、と飾り付けを始めた。
始めれば、一人でも楽しく作業が進んでいった。やり始めると凝ってきてしまうもので、物置から脚立を調達してきて、ツリーの上部まで一通り終わらせてしまった。冬であるのに額に汗をかきながら飾り付けたツリーを下から見上げてみる。圧巻だ。輝くオーナメントでツリーがより一層華やかに見えた。あとは、リボンがけや最後の微調整だ。そのあたりは魔法の方が良いだろう。達成感に、自然とサクラの表情にも笑みがこぼれた。使い終わった脚立を肩に掲げて大広間をでる。生徒たちが授業が終わって廊下にちらほら見える。そんな時間まで飾り付けに夢中になっていたのか…。久しぶりに楽しんでいたからか、時間の感覚がなくなっていたようだ。セドリックに遭遇してしまう前に退散しよう、と足早に歩を進めたところだった。
「おっと…!!」
目の前には男子生徒の胸元があった。それに驚いて、脚立を持つバランスが崩れた。そのまま後ろへ倒れそうになったところで、誰かの胸にあたった。
「危ないよサクラさん。」
見れば前後に同じ顔がのぞいている。
「フレッド…ジョージ。」
「なんか久しぶりに会う気がするね。」
「そんなに急いでどこへいくのさ。」
前後に長身の双子に囲まれ、落ち着かない。
「クリスマスの準備で職員は大忙しなのよ。あなたたちも試験の勉強で忙しいと思うけど。」
休み明けはいくつかの授業でテストがあると聞く。準備する生徒たちもいるだろう。…この双子が真面目に勉強する姿は想像も出来ないが。社交辞令程度で話しておく。すると、案の定、渋い顔をして顔を見合わせる二人。
「そんなことよりも、今は学校中がダンスパーティーの相手探しで持ちきりさ!」
「真面目に授業聞いているやつなんていないぜ。」
フレッド、ジョージが言葉を続けた。その言葉でダンスパーティのことを思い出す。その日は夜の八時から十二時まで立食のダンスパーティだ。会場の準備に夕方はさらに忙しくなるな、と頭の中で算段をつけはじめる。すると、フレッドがサクラから脚立をさっと取り上げた。
「仕事のこと考えてるのかい?たまには息抜きも必要だと思うよ。サクラさん、真面目に仕事しすぎだし。」
「そんなこともないわよ。厨房でお菓子もらってきたり、休憩はとってるし。」
そう言うとジョージが目を輝かせた。
「我が同士よ!」そう言って、サクラの肩を掴んだ。
「いやあ奇遇だ。サクラさんも常連だったとは。」
嬉しそうに話しながら、歩き出したのは厨房の方だ。フレッドもその隣でサクラを挟みながら歩いて行く。非常にまずい。なぜなら、厨房の近くにはハッフルパフ寮があるのだ。最も気まずい人物と会う確率が飛躍的に上がってしまう。サクラは早口で言い訳を述べた。
「ごめんなさい、まだし仕事が残ってるのよ。」
「生徒と交流するのも立派な仕事さ。」
隣でフレッドがウインクする。
「そうそう!仕事だよ、し、ご、と!」
ジョージもそう言いながらわくわくしている。これはサクラをだしに厨房でつまみ食いがしたいだけではないか。と勘ぐりそうになる。しかし、二人の毒気のない笑顔を前にすると、無理矢理断るのも忍びなく思えてくる。そのまま、双子とともに厨房に入ると、相変わらず忙しそうな屋敷僕たちの様子だ。それにも関わらず、双子がくると、嬉々としたように様々なお菓子や飲み物を出してもてなしてくれる。…サクラとの対応の違いに若干の不公平感を感じたが、生徒と職員、しかもスクイブでは対応の差があるのかも知れない。ハーマイオニーが屋敷僕も意識改革に熱心に力を入れ始めたところだ。新しい価値観をもつのはきっとドビーくらいなのだろう。マルフォイ家をはじめ、旧家では未だに純血への強いセレブリティがある。その思想はきっとこの世界の根底にも根付いているのだろう。なんだか良い気分ではないが、そのまま両手一杯のお菓子と飲み物を持って、厨房を引き上げると、またもや大広間へと戻ってきた。授業後とあって、夕食前の大広間は人もまばらだ。他寮生と勉強をしたい者や、チェスをしたり、おしゃべりをしたり、と図書室に比べると自由な時間を過ごしていた。双子は、グリフィンドールがいつも使うテーブルにサクラを招いた。
もらってきた焼き菓子やクッキー、フルーツ、ジュースなど広げられ一足早いパーティのような様相だ。しかし、そこにある大半は双子の胃の中へ入っていった。二人の食べっぷりを見ながら、さすが若い男子高生は食欲が違う、と驚きの表情をしながらも見つめていた。二人の間に座るようにさせられていたサクラは真ん中で紅茶をのみながら、フレッドにすすめられた焼き菓子を頬張り、ジョージが手渡すフルーツタルトにも手をつける。そうしながら、二人は第一の課題後のグリフィンドールの様子について話してくれた。ハリーの活躍で大盛り上がり、ロンとハリーの仲も修復出来たようで、兄としても嬉しそうだ。それからセドリックの怪我の具合も、すぐに回復して飛行術の授業ではすでにいつものプレーを見せているらしい。それを聞いたサクラは内心安堵した。軽傷とはいえ心配していたのだ。回復したようでよかった。
そして、ジョージが、にやりと意味深に笑ってサクラの方を見た。明らかにまずいことを言うつもりだ、と分かる。
「それで、サクラさんはダンスパーティの相手は決めた?」
ジョージの言葉にフレッドも興味津々というように身を乗り出してサクラの様子を窺った。それにサクラは、大きくため息をついた。
「私は職員よ?運営側に回ってるわよ。」
サクラの返答に二人はあからさまに落胆に色を見せた。
「俺たちの姫はダンスはご所望じゃないそうだぜ、兄弟。」
「ああ、非常に残念だ。エスコートするのを夢見てたんだが。」
目を覆って悲しむポーズをとる二人。
「普通は男女ベアでしょう。同年代で探しなさい。ちなみにマクゴナガル先生もその日は監督側だからお誘いしても無理よ。」
そう言うと、二人して「うげー」と声を上げた。そこまで嫌がらなくてもいいじゃないか、自分の寮監だろう…。フレッドがすぐに切り替えて、話を続ける。
「すでに上位候補は相応の奴とくっついてるんだよな…。」
「あのチョウもすでに相手が決まってるし。俺たちも早いところ声かけないとな。」
ジョージがそう言った。
「…チョウって、チョウ チャンのこと?」
「レイブンクローのマドンナさ。すでにセドリックと約束してるらしいよ。」
「さすが学校のヒーローは相手も相応だよなあ。」
二人がしみじみと言っているそばで、サクラは気を紛らわすように紅茶を飲み干した。表情を変えてはいけない。聡い二人だ、これ以上いて悟られる前に、自然に去ろう。にこり、と愛想の良い笑顔をつくる。
「あなたたちもきっと声をかけたらすぐよ。」
『がんばって』っと笑顔で続けようとしたところで、大広間に1羽のふくろうが飛んできた。その足から落ちた手紙はサクラの目の前にやってきた。この世界に来て、初めての手紙だ。両側の二人も、誰宛かと封筒をのぞき込んだ。
「リーマス J ルーピン…」
不思議そうな顔をしている双子と同じくサクラも首をかしげた。
「サクラさん、ルーピンと知り合いなの?」
「まさか……付き合ってる?!」
と、ジョージが騒ぎ始めたのを、目で制する。
「一度、学校で挨拶しただけよ。さあ、私も仕事に戻るわ。誘ってくれてありがとうね。」
そう言って、二人に笑いかけると、まんざらでもないように嬉しそうに笑いかえしてくれた。
「進展したら教えてね!」
「近況報告待ってるよ!」
そう言って茶化す双子に軽く手を振ると、大広間をあとにした。