炎のゴブレット編
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クラウチ氏は迷いなく森の奥へと進んでいく。どこへ行けば良いのか、はっきり分かっているような迷いの無い足取りだ。誰かと会うのだろうか?それとも目的の場所があるのだろうか?一人になる時をねらって行動をしている時点で怪しいのは明らかだ。やはり、この男も闇に関わっているのだろうか。…脇役だと思って、原作ではあまり気にしない登場人物だった。そのため、彼が何を目的としているのか分からないのが悔しい。…しかし、この日の最も人が多いときの森で一体何をするつもりか。人の目がある場所では足がつきやすいのではないだろうか。考えてもクラウチ氏の意図はつかめない。このまま気付かれない距離を保って様子を窺うしか無い。
「何をこそこそしている?」
男の声に、サクラの心臓が縮み上がった。全身の血の気が引いていくような感覚になり、体をこわばらせた。恐る恐る振り返ってみると、そこに現れたのはスネイプだった。一気に緊張が解け、口から大きなため息をついた。
「びっくりさせないでくださいよ。」
そう言うと、スネイプは不満そうに眉をひそめた。
「お前がクラウチを追っているのがみえた。あいつに何かあるのか?」
「何かあるか確認しに行くんですよ。」
スネイプから視線をクラウチ氏の方へと戻した。だいぶ距離は離れてしまった。かろうじて確認できた姿が、一瞬で姿を消した。
「……おかげで仕事が『はかどり』ますね。手伝っていただけます?」
サクラが恨みがましい視線をスネイプに向けた。対してスネイプの方はばつが悪そうに、視線をあさっての方向へ向けた。
「…初めからそのつもりだ。」
スネイプのいやに素直な口ぶりにサクラは一瞬耳を疑った。こういう事態になれば、クラウチと##サウラ##の関係を怪しんでくるのかと思っていたのに予想外の返答だ。スネイプにとってサクラという存在は得体の知れない警戒すべきものではなかっただろうか。…初めて会ったのもこの森の中だった。あのときは、ただ敵をみるような目だったスネイプが今や協力を申し出ている。その変化に驚きが隠せず、口を開いたまま凝視してしまう。
「…何を寝ぼけた顔をしている。我が輩の顔を見てもクラウチの行方は出てこないと思うが。」
怪訝そうなスネイプの表情で、はっとして表情を引き締めた。
「そうでした。では、行きましょう。」
会場の喧噪とは違い、森の中は鳥の鳴き声や風の音が聞こえてくる。先ほどまで近くでドラゴンが戦っていたとは思えないような穏やかな空気が流れている。とりあえず、クラウチ氏が進んでいった方向へと進んでいく。周囲を窺いながら進んでいくが、あたりは枯れ木ばかりである。めぼしい人影は見つからない。
「どこへいったんでしょう?」
隣で杖を構えながら歩いているスネイプに問いかけた。
「森の奥は野生生物もいるから、わざわざ危険を冒して深くまでは向かうまい。」
ホグワーツといっても森の中は安全とは限らない。巨大蜘蛛もいれば、縄張りをもつケンタウロスの一団もいる。普通に考えれば近くにいるだろう。しかし、スネイプと共に捜索を続けるも一向にクラウチ氏の姿は見つからなかった。これ以上時間をかけても仕方が無いだろう…。小説のように物事はうまくいかないようだ。スネイプにもクラウチ氏の怪しい行動を見せることができただけよしとしなければ。
「スネイプ先生。今日は引き上げましょう。」
サクラがそう言うとスネイプは杖をしまった。
「ダンブルドアに忌々しい駄犬どもを調査に向かわせるよう言ったそうだな。」
「話が早いですね。ええ、そちらで何かつかめればいいですね。」
「…何を焦っている?」
スネイプは『企んでいる』ではなく、あえてそう言った。
「これまで動こうともしなかったが、最近は活動的ではないか。近々なにか起こるのか…でなければ貴様が動くはずがない。」
「…どういう意味です?」
「自身の危険も顧みずに正義を貫くような清廉潔白な人物だとでも?」
スネイプの言葉にはサクラを嘲笑するような色が見て取れた。嫌な言い方にサクラは眉を寄せるも、スネイプの言葉はまさにその通りだった。セドリックを助けたい。その思いは、前途有望な青年を救いたい、という清い心だけでは説明のできない感情が入り交じっているのは確かだった。
「ハッフルパフの監督生と親密なようで。しかし、あまり仲が良いのも考えものですな。近頃は新聞記者もうろついている。変な記事を書かれないように気をつけたまえ。」
サクラの反論がないのを良いことにスネイプはなおも畳みかけた。
「今回の課題は怪我をする程度だっただろう。それをこの世の終わりのような顔で見つめていては邪推もされよう。まさか『あの生徒』のために魔法省を嗅ぎ回っているのか?ヒントでも与えようと?」
「…そんなこと」
ふん、とスネイプは鼻で笑った。
「ばからしい。付き合っていられん。」
そういうとスネイプは踵を返した。はなからサクラの弁解など聞く余地もないとでもいうように背を向けたのだ。その姿にサクラは拳を握りしめた。色恋沙汰だと馬鹿にされ、何の反論もできないことに憤りを感じた。「命を助けたい。」声高に叫びたくとも、それだけではない自分にも気付いているからだ。言いようのない感情を言葉にすることもできず、サクラはスネイプの後ろ姿を見つめるより無かった。
一方、スネイプは自身の中に巣くう感情を抑えることで必死だった。今回の大会が始まってから、サクラは行動的になった。今までは毎日の業務と書籍にあたるばかりであった。それに、生徒たちにも目立たぬよう、口数もそれほど多くは無い。教職員とはよくやっているらしいが、『普通』の管理人としての仕事を全うしているだけだった。しかし、それが今回をきっかけに大きく変わったのだ。ゴブレットについて、多くの校長たちの前で発言したり、ホグズミードでの一件など、明らかに以前とは違う。それが、何を、誰をきっかけに変わったのか。考えてみれば、あの青年の顔が思い浮かんだ。優等生で人当たりも良い、セドリック・ティゴリー。奴の話を出せば、サクラの表情がすぐに変わった。
思いを寄せている。いや、互いに思い合っている。
すぐに察しがいった。だから、貴様は動くのだろう?清廉潔白な人物などいないのだ。誰もが己のため、思う者のためにと、自身の利のために動くのだ。リリーを思う我が輩も同じくこの身を捧げたように…。
「ばからしい。付き合っていられん。」
そう思わねば、平静を保つことができそうにない。この女に惹かれている自分にも向けた言葉だった。能力もないマグルを、自分が、…そんなばかげたことがあるはずが無い。我が輩の人生は全てリリーに捧げたのだ。愛する彼女の瞳を見続けるために。彼女の愛した者を守るために。それだけがこの人生で生きる価値があるものだ。
しばらく歩いて冷静さを取り戻してくる。スネイプは禁じられた森から抜け出し、会場となっていたテントの脇を通り過ぎた。そこでふと何かを気配を感じた。気配のもとを探ろうとテントをのぞき込んだ。しかし、中はもぬけの殻だ。感覚が過敏になっているのかも知れない。そう思い直し、スネイプは校内へと足を進めた。テントの影は二人分。
「インペリオ」
服従の呪文をかける男の声は誰にも聞こえなかった。
「何をこそこそしている?」
男の声に、サクラの心臓が縮み上がった。全身の血の気が引いていくような感覚になり、体をこわばらせた。恐る恐る振り返ってみると、そこに現れたのはスネイプだった。一気に緊張が解け、口から大きなため息をついた。
「びっくりさせないでくださいよ。」
そう言うと、スネイプは不満そうに眉をひそめた。
「お前がクラウチを追っているのがみえた。あいつに何かあるのか?」
「何かあるか確認しに行くんですよ。」
スネイプから視線をクラウチ氏の方へと戻した。だいぶ距離は離れてしまった。かろうじて確認できた姿が、一瞬で姿を消した。
「……おかげで仕事が『はかどり』ますね。手伝っていただけます?」
サクラが恨みがましい視線をスネイプに向けた。対してスネイプの方はばつが悪そうに、視線をあさっての方向へ向けた。
「…初めからそのつもりだ。」
スネイプのいやに素直な口ぶりにサクラは一瞬耳を疑った。こういう事態になれば、クラウチと##サウラ##の関係を怪しんでくるのかと思っていたのに予想外の返答だ。スネイプにとってサクラという存在は得体の知れない警戒すべきものではなかっただろうか。…初めて会ったのもこの森の中だった。あのときは、ただ敵をみるような目だったスネイプが今や協力を申し出ている。その変化に驚きが隠せず、口を開いたまま凝視してしまう。
「…何を寝ぼけた顔をしている。我が輩の顔を見てもクラウチの行方は出てこないと思うが。」
怪訝そうなスネイプの表情で、はっとして表情を引き締めた。
「そうでした。では、行きましょう。」
会場の喧噪とは違い、森の中は鳥の鳴き声や風の音が聞こえてくる。先ほどまで近くでドラゴンが戦っていたとは思えないような穏やかな空気が流れている。とりあえず、クラウチ氏が進んでいった方向へと進んでいく。周囲を窺いながら進んでいくが、あたりは枯れ木ばかりである。めぼしい人影は見つからない。
「どこへいったんでしょう?」
隣で杖を構えながら歩いているスネイプに問いかけた。
「森の奥は野生生物もいるから、わざわざ危険を冒して深くまでは向かうまい。」
ホグワーツといっても森の中は安全とは限らない。巨大蜘蛛もいれば、縄張りをもつケンタウロスの一団もいる。普通に考えれば近くにいるだろう。しかし、スネイプと共に捜索を続けるも一向にクラウチ氏の姿は見つからなかった。これ以上時間をかけても仕方が無いだろう…。小説のように物事はうまくいかないようだ。スネイプにもクラウチ氏の怪しい行動を見せることができただけよしとしなければ。
「スネイプ先生。今日は引き上げましょう。」
サクラがそう言うとスネイプは杖をしまった。
「ダンブルドアに忌々しい駄犬どもを調査に向かわせるよう言ったそうだな。」
「話が早いですね。ええ、そちらで何かつかめればいいですね。」
「…何を焦っている?」
スネイプは『企んでいる』ではなく、あえてそう言った。
「これまで動こうともしなかったが、最近は活動的ではないか。近々なにか起こるのか…でなければ貴様が動くはずがない。」
「…どういう意味です?」
「自身の危険も顧みずに正義を貫くような清廉潔白な人物だとでも?」
スネイプの言葉にはサクラを嘲笑するような色が見て取れた。嫌な言い方にサクラは眉を寄せるも、スネイプの言葉はまさにその通りだった。セドリックを助けたい。その思いは、前途有望な青年を救いたい、という清い心だけでは説明のできない感情が入り交じっているのは確かだった。
「ハッフルパフの監督生と親密なようで。しかし、あまり仲が良いのも考えものですな。近頃は新聞記者もうろついている。変な記事を書かれないように気をつけたまえ。」
サクラの反論がないのを良いことにスネイプはなおも畳みかけた。
「今回の課題は怪我をする程度だっただろう。それをこの世の終わりのような顔で見つめていては邪推もされよう。まさか『あの生徒』のために魔法省を嗅ぎ回っているのか?ヒントでも与えようと?」
「…そんなこと」
ふん、とスネイプは鼻で笑った。
「ばからしい。付き合っていられん。」
そういうとスネイプは踵を返した。はなからサクラの弁解など聞く余地もないとでもいうように背を向けたのだ。その姿にサクラは拳を握りしめた。色恋沙汰だと馬鹿にされ、何の反論もできないことに憤りを感じた。「命を助けたい。」声高に叫びたくとも、それだけではない自分にも気付いているからだ。言いようのない感情を言葉にすることもできず、サクラはスネイプの後ろ姿を見つめるより無かった。
一方、スネイプは自身の中に巣くう感情を抑えることで必死だった。今回の大会が始まってから、サクラは行動的になった。今までは毎日の業務と書籍にあたるばかりであった。それに、生徒たちにも目立たぬよう、口数もそれほど多くは無い。教職員とはよくやっているらしいが、『普通』の管理人としての仕事を全うしているだけだった。しかし、それが今回をきっかけに大きく変わったのだ。ゴブレットについて、多くの校長たちの前で発言したり、ホグズミードでの一件など、明らかに以前とは違う。それが、何を、誰をきっかけに変わったのか。考えてみれば、あの青年の顔が思い浮かんだ。優等生で人当たりも良い、セドリック・ティゴリー。奴の話を出せば、サクラの表情がすぐに変わった。
思いを寄せている。いや、互いに思い合っている。
すぐに察しがいった。だから、貴様は動くのだろう?清廉潔白な人物などいないのだ。誰もが己のため、思う者のためにと、自身の利のために動くのだ。リリーを思う我が輩も同じくこの身を捧げたように…。
「ばからしい。付き合っていられん。」
そう思わねば、平静を保つことができそうにない。この女に惹かれている自分にも向けた言葉だった。能力もないマグルを、自分が、…そんなばかげたことがあるはずが無い。我が輩の人生は全てリリーに捧げたのだ。愛する彼女の瞳を見続けるために。彼女の愛した者を守るために。それだけがこの人生で生きる価値があるものだ。
しばらく歩いて冷静さを取り戻してくる。スネイプは禁じられた森から抜け出し、会場となっていたテントの脇を通り過ぎた。そこでふと何かを気配を感じた。気配のもとを探ろうとテントをのぞき込んだ。しかし、中はもぬけの殻だ。感覚が過敏になっているのかも知れない。そう思い直し、スネイプは校内へと足を進めた。テントの影は二人分。
「インペリオ」
服従の呪文をかける男の声は誰にも聞こえなかった。