炎のゴブレット編
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頭の中がとろけそうな感覚に、そのまま身を任せようと思った。セドリックの唇が、あたたかな舌が優しく分け入ってくる。ケーキの甘さだろうか。その吐息さえ甘く感じられる。熱を持った瞳が投げかけられる。セドリックの指が、背中をなぞった。しびれるような感覚に、サクラは小さく息を吐いた。
「…っサクラさん」
甘い呼び声に自身の腕をセドリックの首に回そうとした。それと同じくしてセドリックの手がサクラの腰をなでた。
「…ぁだめ、」
甘いしびれから逃れるように、セドリックの手をつかんだ。
「なぜ……?」
浅い呼吸をするセドリックがサクラの顔を窺うように見つめ、問うた。セドリックの余裕の無い表情に、一瞬胸が高鳴るも、表情には出さないようにする。
「…私、どうかしてるわ。ごめんなさい、」
サクラはそういうとソファから立ち上がった。セドリックに背を向けるようにして、言葉を続けた。
「お互い、弱ってたのよ。大人がそれにつけ込んじゃだめね。今日のことは忘れ…」
「つけ込んだのは僕の方だよ。」
後ろを向いたままのサクラの腕を掴んで、こちらへ向けさせた。
「不安そうなあなたを放っておけなかった。…好きな人がつらそうなとき、力になりたいって思うものだろ?」
サクラの腕をつかむ力は優しい。セドリックはこちらをのぞきこみながら言った。…これではどちらが年上なのか分かったものではない。なだめるような、穏やかな声は本気でサクラを思っているようだった。しかし、それに流されていいような間柄では無いのだ。…自分の役目を忘れるな、と頭の中で何度か唱えた。そして、こちらを見つめるセドリックと目を合わせた。
「心配してくれてありがとう。でも、今は私の心配より、自分の事よ。」
自身の腕を掴むセドリックの手をゆっくり引きはがした。それにあらがうでもなく、セドリックは大人しく従った。
「応援しているわ。がんばって。」
そう言ってサクラは一歩距離を置いた。暗に拒絶しているのだと、行動で示したのだ。セドリックは一瞬、傷ついたような表情をみせた。そんな顔をみて心が痛まない訳がない。しかし、この場で流れに身を任せてしまうのはお互いのためによくない。ここは大人であるサクラから引くべきだ。だが、これ以上セドリックの顔を直視することが出来ない。サクラはそのまま部屋をあとにした。
部屋に戻ると、サクラは自身のベッドに倒れ込んだ。…なにをやっているのだろう。自分の意志の弱さに自然とため息がこぼれた。彼を助けるためにこの気持ちは邪魔でしかない。恋愛感情は状況判断能力を鈍らせる。ウォルデモートを相手にして、少しの隙でさえ、命取りだ。胸に残るあたたかさをかき消すように現在の状況を頭の中で整理する。
まずは、校内に潜むクラウチjr、そしてバーティ・クラウチだ。ムーディでいる間、最後までハリーに手を出さずにいるクラウチjr。下手に手を出して計画に勘づいていると気付かれてしまっては、策を練り直すに違いない。こちらに利があるのは、どうやって動くのか『知っている』ことだ。あの男を出し抜くには、最後までカードは残しておくのが最善だろう。
そして、クラウチ氏は自身の息子を屋敷に匿っていたはずだ。でなければ、アズカバンから脱走するなど、不可能に近い。彼には特に目を配らねば。彼を見張れば、ウォルデモートやピーター・ペティグリューに繋がるものが見つけられるかも知れない。こちらは動くことができそうだ。大切なのはこの情報を、いつ、誰に伝えるか。現段階で、ダンブルドアらは近々ヴォルデモートが復活するであろうと予測しているだろう。そして、以前スネイプに話した校内に潜む敵の話はダンブルドアにも伝わっているはずだ。あの男が重要な話をダンブルドアにしないわけが無い。しかし、それだけでは、ムーディ=クラウチjrの図式には到達できまい。彼らのしっぽをつかませるためには校外での調査が必要だ。こちらはダンブルドアに頼るものだろう。彼の知能と情報力があれば、クラウチ氏の不審な点は線へと繋がって行くに違いない。そして、クラウチjrの生存の可能性を考えれば、きっとサクラの話が繋がってくる。『誰に成り代わったか』ある程度予測は立てられる。
そして、第三の課題。ポートキーにすり替えられ、墓地へと移動させられる。そのとき、最初の一撃でセドリックは殺されてしまうのだ。…ならば、その攻撃を防ぐか移動させないようにすればいい。そのようなことを話せるのは、……やはりダンブルドアだろう。しかし、万一の時ハリーのそばで守ってもらわねば、そちらも気がかりである。となると…、
「…スネイプ先生はなあ。」
スパイとして仕事をこなしてきた彼に、信頼を寄せることが出来れば良いのだが。なんと言っても、出会った頃から信用されている気がしない。きっとある程度証拠が揃ってこなければ、協力を得るのは難しいだろう。あの開会式の日、彼に敵の存在を匂わせた。そして、不本意ではあるが今回のサクラが受けた被害。あと一つ、決定的な証拠が出てこれば、動かざるを得まい。明日の課題でクラウチ氏はやってくる。そこが、証拠を集める絶好のチャンスだ。
明日の動きを考えれば、セドリックのことは頭の隅に追いやることが出来た。サクラはそのまま目を閉じ、明日へと備えた。
翌朝、禁じられた森にはテントが張られ、会場作りが行われていた。サクラもその手伝いに回っていた。マグルの自分に出来ることは審査員席を整えたり、湯茶の準備をしたりと細々した作業だ。しかし、それも疑わしいクラウチ氏に近づくことが出来る絶好の機会だ。不審な動きがあればいつでも気付ける。
「はかどっているかね。」
テーブルの準備をしていると後ろか声がかかった。見ると、ダンブルドアがいつもの柔和そうな顔で立っていた。
「この間は大変だったようじゃな。体調の方はどうかな。」
「スネイプ先生の薬がよく効いたようで、回復しました。」
「それはよかった。」
言葉とは裏腹にダンブルドアの瞳はこちらを窺っているようだ。
「今日は予定通り、狂いはありません。ですが…」
サクラは言葉を切って周りに視線を向けた。そして、ダンブルドアに念を押すように視線を向けると、ダンブルドアは杖を一振りした。
「しばらくは辺りに聴こえまい。して、サクラ何をするつもりかね」
「まずはダンブルドア先生にお願いが。クラウチ氏について調べていただきたいのです。」
「前回も彼を気にしておったな。何があるというのか…儂も魔法省に顔を出してあるが不審な点はなかったよ。少々体調が優れないという以外はいたって真面目だそうだ。」
言わずもがな、ダンブルドアはすでに手を回していたのか。
「先生ならばクラウチ氏に気付かれずに調査なさっていると思いますが、ゆくゆくは証拠が必要です。誰の差金か分からないように彼の身辺を洗う者が必要でしょう。この大会が終わるまでに形にしなければ…。」
「君には全て分かっているようだ。」
全て教えてしまえば楽になる。しかし、安易にはなして展開が変わってしまったら?犠牲にならずとも過ごせた人が被害に遭ったら?そう思うと、必要以上に干渉できない。そして、何より今回は人の生死が関わっている。セドリックを助けるためにはイレギュラーは少しでも減らしておきたい。さらに言えばこちらの優位になるネタが増えれば御の字だ。クラウチ氏についても、深入りしすぎてこちらのしっぽを掴まれてはお仕舞いだ。
「今後に関わりますので、これ以上は…。」
「そうじゃな…無粋なことを聞いてしまった。ではシリウスとルーピンに話をしよう。もしかしたら彼らの『鼻がきく』かもしれんからの。」
アイスブルーの瞳がいたずらっぽく光った。
昼を過ぎると、いよいよ第一の課題が開始された。会場にはすでに多くの生徒たちがひしめき合っている。サクラは来賓も見えるということで、いつもの作業服ではなく落ち着いたワンピースにジャケットを羽織り、審査員席の教師陣、クラウチ氏、バグマン氏に紅茶を振る舞っているところであった。マダム マクシームにも同じ大きさでよかったのか不安に思ったが、妖艶な微笑みでお礼を言われ、どきどきしつつもこれでよかったのだと安心した。相変わらずバグマン氏は子供のようにそわそわしながら、試合が始まるのを待っている。その隣でクラウチ氏は青白い顔で会場を見つめていた。…以前よりも体調が悪そうだ。ヴォルデモートと接触して、何か補給でもさせているのだろうか。生気のない様子が不気味でもある。
会場には青みがかったグレーのドラゴンが用意された。テントの幕からセドリックが現れた。緊張の面持ちではあるが、冷静に状況を観察している。サクラの手のひらに汗がじんわりと広がる。ここで勝利を掴むと分かっていても不安でたまらなかった。セドリックが会場にある岩をレトリバーに変えた。動くものに反応したドラゴンはレトリバーを追いかける。その隙にセドリックが巣へと近づく。会場全体が緊張し、事態を見守っている。ドラゴンはレトリバーに夢中でセドリックには気付いていないようだ。そして、そのままセドリックが巣の中へ入り、卵を掴んだ。会場が歓声に沸いたその瞬間、ドラゴンがセドリックの方を見た。瞬間、口から火を噴き出しセドリックを襲った。サクラは思わず短く悲鳴を上げた。セドリックは体に直撃を避けたものの、顔に炎を受けてしまった。ドラゴンはすぐに拘束されて、セドリックはそのまま医務室へと運ばれていった。このまま医務室へと足を運びたい。セドリックの容態が気になった。……しかし、自身にその資格がないこと、そして役目を放棄するべきではないと己を叱咤した。
その後、3人の選手は全員が卵を奪うことに成功した。そのときにも会場は熱狂し、かなりの盛り上がりをみせた。審査員の中でも、実況を務めていたバグマン氏は1番楽しんでいたに違いない。バグマン氏は、全ての選手がテントに戻ると、その興奮のままテントへと突っ込んでいった。他の審査員となっていた校長たちも自校の生徒を称えるためテントへと向かう。しかし、クラウチ氏だけは、テントへとよらず、禁じられた森の奥へと入っていった。その姿をみると、サクラも同じく森へと足を進めた。
「…っサクラさん」
甘い呼び声に自身の腕をセドリックの首に回そうとした。それと同じくしてセドリックの手がサクラの腰をなでた。
「…ぁだめ、」
甘いしびれから逃れるように、セドリックの手をつかんだ。
「なぜ……?」
浅い呼吸をするセドリックがサクラの顔を窺うように見つめ、問うた。セドリックの余裕の無い表情に、一瞬胸が高鳴るも、表情には出さないようにする。
「…私、どうかしてるわ。ごめんなさい、」
サクラはそういうとソファから立ち上がった。セドリックに背を向けるようにして、言葉を続けた。
「お互い、弱ってたのよ。大人がそれにつけ込んじゃだめね。今日のことは忘れ…」
「つけ込んだのは僕の方だよ。」
後ろを向いたままのサクラの腕を掴んで、こちらへ向けさせた。
「不安そうなあなたを放っておけなかった。…好きな人がつらそうなとき、力になりたいって思うものだろ?」
サクラの腕をつかむ力は優しい。セドリックはこちらをのぞきこみながら言った。…これではどちらが年上なのか分かったものではない。なだめるような、穏やかな声は本気でサクラを思っているようだった。しかし、それに流されていいような間柄では無いのだ。…自分の役目を忘れるな、と頭の中で何度か唱えた。そして、こちらを見つめるセドリックと目を合わせた。
「心配してくれてありがとう。でも、今は私の心配より、自分の事よ。」
自身の腕を掴むセドリックの手をゆっくり引きはがした。それにあらがうでもなく、セドリックは大人しく従った。
「応援しているわ。がんばって。」
そう言ってサクラは一歩距離を置いた。暗に拒絶しているのだと、行動で示したのだ。セドリックは一瞬、傷ついたような表情をみせた。そんな顔をみて心が痛まない訳がない。しかし、この場で流れに身を任せてしまうのはお互いのためによくない。ここは大人であるサクラから引くべきだ。だが、これ以上セドリックの顔を直視することが出来ない。サクラはそのまま部屋をあとにした。
部屋に戻ると、サクラは自身のベッドに倒れ込んだ。…なにをやっているのだろう。自分の意志の弱さに自然とため息がこぼれた。彼を助けるためにこの気持ちは邪魔でしかない。恋愛感情は状況判断能力を鈍らせる。ウォルデモートを相手にして、少しの隙でさえ、命取りだ。胸に残るあたたかさをかき消すように現在の状況を頭の中で整理する。
まずは、校内に潜むクラウチjr、そしてバーティ・クラウチだ。ムーディでいる間、最後までハリーに手を出さずにいるクラウチjr。下手に手を出して計画に勘づいていると気付かれてしまっては、策を練り直すに違いない。こちらに利があるのは、どうやって動くのか『知っている』ことだ。あの男を出し抜くには、最後までカードは残しておくのが最善だろう。
そして、クラウチ氏は自身の息子を屋敷に匿っていたはずだ。でなければ、アズカバンから脱走するなど、不可能に近い。彼には特に目を配らねば。彼を見張れば、ウォルデモートやピーター・ペティグリューに繋がるものが見つけられるかも知れない。こちらは動くことができそうだ。大切なのはこの情報を、いつ、誰に伝えるか。現段階で、ダンブルドアらは近々ヴォルデモートが復活するであろうと予測しているだろう。そして、以前スネイプに話した校内に潜む敵の話はダンブルドアにも伝わっているはずだ。あの男が重要な話をダンブルドアにしないわけが無い。しかし、それだけでは、ムーディ=クラウチjrの図式には到達できまい。彼らのしっぽをつかませるためには校外での調査が必要だ。こちらはダンブルドアに頼るものだろう。彼の知能と情報力があれば、クラウチ氏の不審な点は線へと繋がって行くに違いない。そして、クラウチjrの生存の可能性を考えれば、きっとサクラの話が繋がってくる。『誰に成り代わったか』ある程度予測は立てられる。
そして、第三の課題。ポートキーにすり替えられ、墓地へと移動させられる。そのとき、最初の一撃でセドリックは殺されてしまうのだ。…ならば、その攻撃を防ぐか移動させないようにすればいい。そのようなことを話せるのは、……やはりダンブルドアだろう。しかし、万一の時ハリーのそばで守ってもらわねば、そちらも気がかりである。となると…、
「…スネイプ先生はなあ。」
スパイとして仕事をこなしてきた彼に、信頼を寄せることが出来れば良いのだが。なんと言っても、出会った頃から信用されている気がしない。きっとある程度証拠が揃ってこなければ、協力を得るのは難しいだろう。あの開会式の日、彼に敵の存在を匂わせた。そして、不本意ではあるが今回のサクラが受けた被害。あと一つ、決定的な証拠が出てこれば、動かざるを得まい。明日の課題でクラウチ氏はやってくる。そこが、証拠を集める絶好のチャンスだ。
明日の動きを考えれば、セドリックのことは頭の隅に追いやることが出来た。サクラはそのまま目を閉じ、明日へと備えた。
翌朝、禁じられた森にはテントが張られ、会場作りが行われていた。サクラもその手伝いに回っていた。マグルの自分に出来ることは審査員席を整えたり、湯茶の準備をしたりと細々した作業だ。しかし、それも疑わしいクラウチ氏に近づくことが出来る絶好の機会だ。不審な動きがあればいつでも気付ける。
「はかどっているかね。」
テーブルの準備をしていると後ろか声がかかった。見ると、ダンブルドアがいつもの柔和そうな顔で立っていた。
「この間は大変だったようじゃな。体調の方はどうかな。」
「スネイプ先生の薬がよく効いたようで、回復しました。」
「それはよかった。」
言葉とは裏腹にダンブルドアの瞳はこちらを窺っているようだ。
「今日は予定通り、狂いはありません。ですが…」
サクラは言葉を切って周りに視線を向けた。そして、ダンブルドアに念を押すように視線を向けると、ダンブルドアは杖を一振りした。
「しばらくは辺りに聴こえまい。して、サクラ何をするつもりかね」
「まずはダンブルドア先生にお願いが。クラウチ氏について調べていただきたいのです。」
「前回も彼を気にしておったな。何があるというのか…儂も魔法省に顔を出してあるが不審な点はなかったよ。少々体調が優れないという以外はいたって真面目だそうだ。」
言わずもがな、ダンブルドアはすでに手を回していたのか。
「先生ならばクラウチ氏に気付かれずに調査なさっていると思いますが、ゆくゆくは証拠が必要です。誰の差金か分からないように彼の身辺を洗う者が必要でしょう。この大会が終わるまでに形にしなければ…。」
「君には全て分かっているようだ。」
全て教えてしまえば楽になる。しかし、安易にはなして展開が変わってしまったら?犠牲にならずとも過ごせた人が被害に遭ったら?そう思うと、必要以上に干渉できない。そして、何より今回は人の生死が関わっている。セドリックを助けるためにはイレギュラーは少しでも減らしておきたい。さらに言えばこちらの優位になるネタが増えれば御の字だ。クラウチ氏についても、深入りしすぎてこちらのしっぽを掴まれてはお仕舞いだ。
「今後に関わりますので、これ以上は…。」
「そうじゃな…無粋なことを聞いてしまった。ではシリウスとルーピンに話をしよう。もしかしたら彼らの『鼻がきく』かもしれんからの。」
アイスブルーの瞳がいたずらっぽく光った。
昼を過ぎると、いよいよ第一の課題が開始された。会場にはすでに多くの生徒たちがひしめき合っている。サクラは来賓も見えるということで、いつもの作業服ではなく落ち着いたワンピースにジャケットを羽織り、審査員席の教師陣、クラウチ氏、バグマン氏に紅茶を振る舞っているところであった。マダム マクシームにも同じ大きさでよかったのか不安に思ったが、妖艶な微笑みでお礼を言われ、どきどきしつつもこれでよかったのだと安心した。相変わらずバグマン氏は子供のようにそわそわしながら、試合が始まるのを待っている。その隣でクラウチ氏は青白い顔で会場を見つめていた。…以前よりも体調が悪そうだ。ヴォルデモートと接触して、何か補給でもさせているのだろうか。生気のない様子が不気味でもある。
会場には青みがかったグレーのドラゴンが用意された。テントの幕からセドリックが現れた。緊張の面持ちではあるが、冷静に状況を観察している。サクラの手のひらに汗がじんわりと広がる。ここで勝利を掴むと分かっていても不安でたまらなかった。セドリックが会場にある岩をレトリバーに変えた。動くものに反応したドラゴンはレトリバーを追いかける。その隙にセドリックが巣へと近づく。会場全体が緊張し、事態を見守っている。ドラゴンはレトリバーに夢中でセドリックには気付いていないようだ。そして、そのままセドリックが巣の中へ入り、卵を掴んだ。会場が歓声に沸いたその瞬間、ドラゴンがセドリックの方を見た。瞬間、口から火を噴き出しセドリックを襲った。サクラは思わず短く悲鳴を上げた。セドリックは体に直撃を避けたものの、顔に炎を受けてしまった。ドラゴンはすぐに拘束されて、セドリックはそのまま医務室へと運ばれていった。このまま医務室へと足を運びたい。セドリックの容態が気になった。……しかし、自身にその資格がないこと、そして役目を放棄するべきではないと己を叱咤した。
その後、3人の選手は全員が卵を奪うことに成功した。そのときにも会場は熱狂し、かなりの盛り上がりをみせた。審査員の中でも、実況を務めていたバグマン氏は1番楽しんでいたに違いない。バグマン氏は、全ての選手がテントに戻ると、その興奮のままテントへと突っ込んでいった。他の審査員となっていた校長たちも自校の生徒を称えるためテントへと向かう。しかし、クラウチ氏だけは、テントへとよらず、禁じられた森の奥へと入っていった。その姿をみると、サクラも同じく森へと足を進めた。