炎のゴブレット編
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サクラは自身の身支度を整えると、再びベッドに体を倒した。スネイプは言葉通りさっさと仕事部屋へと戻って作業をしている。弱ったところを、ここぞとばかりに嫌がらせをしてくる。さすが陰険教師め、と内心悪態をついておく。しかし、あの男、腕はいいのだ。軟膏のおかげか、歩くたびに悲鳴を上げていたからだは、随分と軽くなった。今日一日泊まって、明日ゆっくりすれば自室に戻れる。禁じられた呪文をこれほど回復させてしまう能力は、感服する。
手持ちぶさたなまま、ベッドで寝そべっていれば自然とまぶたが落ちてくる。それに従って眠りに入るところで、仕事部屋の扉が開く音がした。しかし、サクラはそのまま瞳を閉じたまま、眠ることにした。わざわざ、声をかけたところでまた嫌みが返ってくるのならば夢見が悪くなりそうだ。残念ながら、けが人ということもあり、スネイプの嫌みにこたえてやれるほど体力は残っていない。
スネイプの足音がベッドを抜けて、自身が休むのであろう拡張した寝室へと向かっていく。向こうも大人しく休むらしい。ほっと、安心していたところで、再び、足音がこちらへと向かってきた。
サクラとしては何事か、と確認したいところであるが、今更目を開けるのも癪だ。そのまま寝入ってやろうとしていると、額にスネイプの手のひらが静かに乗せられた。じんわりとした熱が額と瞳の上に広がっていく。そして、穏やかな声が詩を朗読するかのように、朗々と呪文を紡いでいく。一編の詩を読み聞かせるような穏やかな声に、手のひらの体温に、自然と体から力が抜けていく。普段のスネイプからは想像もできない穏やかな雰囲気に戸惑うも、体は正直に安らぎを享受し、深い眠りへと誘われる。
…ああ、心地良い。
いつまでも、この安らぎの中にいたい、と思わせる。サクラは、そのまま夢の中へと沈んでいった。
目覚めて、一日が始まれば、スネイプは相変わらず嫌みたらしかった。口は悪いが、看病自体は全うしてくれ、夕方にはサクラはベッドから立ち上がって動くことも出来るようになっていた。夕食からは食堂で食べられることになり、一度自室へ着替えをしに戻ることにする。自室の前までくると、ドアのそばに、花束が置かれていた。
「…ガーベラ。」
丁寧にラッピングされたオレンジ色のガーベラが横たわっていた。この花を見て、思い出されるのはグレーの瞳をしたあの青年だ。しかし、今回は手紙は添えられていなかった。何となく感じる違和感に首をかしげる。しかし、考えたところで答えが出るはずもなく、花束を自室に飾り付け、着替えを済ませると大広間へと急いだ。
道すがら、フレッドとジョージとすれ違った。二人はサクラの姿を見つけると、お互いに顔を見合わせ、すぐさま駆け寄ってきた。
「「サクラさん!!」」
二人同時にサクラの両手を握ると、顔を近づけた。
「サクラさん無事!?」
「スネイプのところにいて大丈夫だった?」
「…ええ、なんともないわよ。」
サクラの返答に、ほっとしたような表情をする双子の様子に、本気で心配させていたのだと分かった。
「あのときは送ってくれてありがとう。助かったわ。」
そう言うと、二人とも嬉しそうに笑う。
「まさか酔ってただけじゃなくて、食あたりにまでなっちゃったって聞いたときは本当に心配したよ。」
「スネイプが看病してるって聞いたときはもっと心配したけどね。」
「…食あたり?…というかその話は一体誰から聞いたの?」
食あたりうんぬんは教師陣が適当に話を合わせてくれたのだろうが、看病については一体どこからもれたのか。…医務室にいないからと言っても、まさかスネイプの部屋で寝ているなどと誰が想像できようか。サクラの問いに双子は親切に答えてくれる。
「病気の話はマクゴナガル先生から聞いたな。」
「看病の話はセドリックから聞いたぜ。」
と、フレッド、ジョージが順に説明してくれる。
「そうだったのね…。お恥ずかしい話だから、あんまり言わないでくださいっていったのに。」
セドリックから…?困惑するも、ここで矢継ぎ早に質問して、あらぬ誤解を生じても損だ。適当に恥じらいを見せておくことにする。
そういえば、そろそろ第一の課題が始まるころだ。サクラが寝ていた間になにか変化はあっただろうか。予想外に闇が動き出したことで、流れが変わっていなければいいが。色々な噂話が多くの人を通じて双子の元に入ってくるはずだ。
「そういえば、今週末は第一の課題よね。選手たちはどうしているの?」
「お?サクラさんも気になるんだ。」
フレッドが、面白そうに言う。
「これだけ大きな大会ですもの。私も楽しみにしてるのよ。それで、みんな課題に向けて準備してたりするの?」
楽しそうな雰囲気を『見せ』て、双子を見上げる。サクラの素直な様子に双子の口元は心なしか緩んでいる。たまには女の武器くらい使わねば。それで情報が引き出せるなら安いものだ。特に、ハリーについてはどこまで準備できているのか知っておきたい。必要とあればハーマイオニーを介して助言しなければならないのだ。サクラの打算などつゆ知らず、ジョージが説明を始めた。
「みんな図書館にこもって、調べ物したりしてるぜ。」
「ビクトール・クラムは毎日トレーニングしてるし。」
「美少女フラーは相変わらずつんけんして相手にされないし。」
「セドリックは、ファンに囲まれてお忙しそうだし。」
二人で、交互に説明し、セドリックの話まですると、思い切り不愉快そうに鼻を鳴らした。そして、思い出したかのようにフレッドが声を上げた。
「そういや、ハリーが夜中に談話室で呪文の練習してたぜ。」
「あの才女の『ハーマイオニー女史』とね。」
にやり、と双子の顔が面白そうに笑顔をつくった。年頃の子たちにとって恋愛話ほど楽しいものはないのだろう。…だが、呪文の練習をしている。ということは、答えを導き出せているようだ。内心、ほっと胸をなで下ろす。
「ハリー頑張ってるのね。…次の課題が楽しみね。それじゃ、私は夕食頂いてくるわね。」
ごきげんよう、と軽く手を振って双子と別れる。すると、ジョージが間髪入れず、声を上げた。
「本当にスネイプに看病された『だけ』なの?サクラさん」
面白半分、心配半分といった様子だ。噂好きではあるが、元来二人とも優しい子たちだ。サクラの身を案じてくれているのだろう。それにサクラはなんてことないように答えた。
「…吐き戻してる女の子を見て、どきどきすると思う?」
吐いていたわけでは無い。断じて違うが、変な噂が広まって好奇の目で見られるよりは、だめな大人だと思われた方が都合が良い。サクラの言葉に双子は顔を見合わせると、『ご愁傷様です』とでも言うように肩を落として残念そうな顔をした。
「サクラさん、真面目そうで意外なところあるよね。」
「本当に、体は大事にしなよ。」
まさか、常識人らしいことをこの双子に言われるとは思いもしなかった。否定するわけにもいかず、「ありがとう、」と返すのが精々だった。マクゴナガルには、恩もあるが、もう少しいい言い訳がなかったのだろうか、と思わずにはいられなかった。
手持ちぶさたなまま、ベッドで寝そべっていれば自然とまぶたが落ちてくる。それに従って眠りに入るところで、仕事部屋の扉が開く音がした。しかし、サクラはそのまま瞳を閉じたまま、眠ることにした。わざわざ、声をかけたところでまた嫌みが返ってくるのならば夢見が悪くなりそうだ。残念ながら、けが人ということもあり、スネイプの嫌みにこたえてやれるほど体力は残っていない。
スネイプの足音がベッドを抜けて、自身が休むのであろう拡張した寝室へと向かっていく。向こうも大人しく休むらしい。ほっと、安心していたところで、再び、足音がこちらへと向かってきた。
サクラとしては何事か、と確認したいところであるが、今更目を開けるのも癪だ。そのまま寝入ってやろうとしていると、額にスネイプの手のひらが静かに乗せられた。じんわりとした熱が額と瞳の上に広がっていく。そして、穏やかな声が詩を朗読するかのように、朗々と呪文を紡いでいく。一編の詩を読み聞かせるような穏やかな声に、手のひらの体温に、自然と体から力が抜けていく。普段のスネイプからは想像もできない穏やかな雰囲気に戸惑うも、体は正直に安らぎを享受し、深い眠りへと誘われる。
…ああ、心地良い。
いつまでも、この安らぎの中にいたい、と思わせる。サクラは、そのまま夢の中へと沈んでいった。
目覚めて、一日が始まれば、スネイプは相変わらず嫌みたらしかった。口は悪いが、看病自体は全うしてくれ、夕方にはサクラはベッドから立ち上がって動くことも出来るようになっていた。夕食からは食堂で食べられることになり、一度自室へ着替えをしに戻ることにする。自室の前までくると、ドアのそばに、花束が置かれていた。
「…ガーベラ。」
丁寧にラッピングされたオレンジ色のガーベラが横たわっていた。この花を見て、思い出されるのはグレーの瞳をしたあの青年だ。しかし、今回は手紙は添えられていなかった。何となく感じる違和感に首をかしげる。しかし、考えたところで答えが出るはずもなく、花束を自室に飾り付け、着替えを済ませると大広間へと急いだ。
道すがら、フレッドとジョージとすれ違った。二人はサクラの姿を見つけると、お互いに顔を見合わせ、すぐさま駆け寄ってきた。
「「サクラさん!!」」
二人同時にサクラの両手を握ると、顔を近づけた。
「サクラさん無事!?」
「スネイプのところにいて大丈夫だった?」
「…ええ、なんともないわよ。」
サクラの返答に、ほっとしたような表情をする双子の様子に、本気で心配させていたのだと分かった。
「あのときは送ってくれてありがとう。助かったわ。」
そう言うと、二人とも嬉しそうに笑う。
「まさか酔ってただけじゃなくて、食あたりにまでなっちゃったって聞いたときは本当に心配したよ。」
「スネイプが看病してるって聞いたときはもっと心配したけどね。」
「…食あたり?…というかその話は一体誰から聞いたの?」
食あたりうんぬんは教師陣が適当に話を合わせてくれたのだろうが、看病については一体どこからもれたのか。…医務室にいないからと言っても、まさかスネイプの部屋で寝ているなどと誰が想像できようか。サクラの問いに双子は親切に答えてくれる。
「病気の話はマクゴナガル先生から聞いたな。」
「看病の話はセドリックから聞いたぜ。」
と、フレッド、ジョージが順に説明してくれる。
「そうだったのね…。お恥ずかしい話だから、あんまり言わないでくださいっていったのに。」
セドリックから…?困惑するも、ここで矢継ぎ早に質問して、あらぬ誤解を生じても損だ。適当に恥じらいを見せておくことにする。
そういえば、そろそろ第一の課題が始まるころだ。サクラが寝ていた間になにか変化はあっただろうか。予想外に闇が動き出したことで、流れが変わっていなければいいが。色々な噂話が多くの人を通じて双子の元に入ってくるはずだ。
「そういえば、今週末は第一の課題よね。選手たちはどうしているの?」
「お?サクラさんも気になるんだ。」
フレッドが、面白そうに言う。
「これだけ大きな大会ですもの。私も楽しみにしてるのよ。それで、みんな課題に向けて準備してたりするの?」
楽しそうな雰囲気を『見せ』て、双子を見上げる。サクラの素直な様子に双子の口元は心なしか緩んでいる。たまには女の武器くらい使わねば。それで情報が引き出せるなら安いものだ。特に、ハリーについてはどこまで準備できているのか知っておきたい。必要とあればハーマイオニーを介して助言しなければならないのだ。サクラの打算などつゆ知らず、ジョージが説明を始めた。
「みんな図書館にこもって、調べ物したりしてるぜ。」
「ビクトール・クラムは毎日トレーニングしてるし。」
「美少女フラーは相変わらずつんけんして相手にされないし。」
「セドリックは、ファンに囲まれてお忙しそうだし。」
二人で、交互に説明し、セドリックの話まですると、思い切り不愉快そうに鼻を鳴らした。そして、思い出したかのようにフレッドが声を上げた。
「そういや、ハリーが夜中に談話室で呪文の練習してたぜ。」
「あの才女の『ハーマイオニー女史』とね。」
にやり、と双子の顔が面白そうに笑顔をつくった。年頃の子たちにとって恋愛話ほど楽しいものはないのだろう。…だが、呪文の練習をしている。ということは、答えを導き出せているようだ。内心、ほっと胸をなで下ろす。
「ハリー頑張ってるのね。…次の課題が楽しみね。それじゃ、私は夕食頂いてくるわね。」
ごきげんよう、と軽く手を振って双子と別れる。すると、ジョージが間髪入れず、声を上げた。
「本当にスネイプに看病された『だけ』なの?サクラさん」
面白半分、心配半分といった様子だ。噂好きではあるが、元来二人とも優しい子たちだ。サクラの身を案じてくれているのだろう。それにサクラはなんてことないように答えた。
「…吐き戻してる女の子を見て、どきどきすると思う?」
吐いていたわけでは無い。断じて違うが、変な噂が広まって好奇の目で見られるよりは、だめな大人だと思われた方が都合が良い。サクラの言葉に双子は顔を見合わせると、『ご愁傷様です』とでも言うように肩を落として残念そうな顔をした。
「サクラさん、真面目そうで意外なところあるよね。」
「本当に、体は大事にしなよ。」
まさか、常識人らしいことをこの双子に言われるとは思いもしなかった。否定するわけにもいかず、「ありがとう、」と返すのが精々だった。マクゴナガルには、恩もあるが、もう少しいい言い訳がなかったのだろうか、と思わずにはいられなかった。