炎のゴブレット編
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相変わらず学校内ではセドリックを応援するバッヂをつける生徒もいたが、それでハリーに突っかかるような者はせいぜいスリザリンの特定の数人だけであった。ハーマイオニーのことがあって以来、あれから数週間は大きな事件もなく、ハリーもサクラもすごすことが出来ていた。しかし、日刊予言者新聞が発刊されると、話題はまたもやハリーで持ちきりになった。
「悲劇の少年ハリー」そして「彼に寄り添う才色兼備の少女、ハーマイオニー」過分な誇張が入っていることは学校中の生徒が分かっている。だからこそ、祭り上げられることを面白く思わない者も出てくる。そして、情報に踊らされる者も…。
サクラが学校中の清掃をしているときや図書館での業務に携わっている間、あの三人組を見かける事が全くなくなった。ロンにとっては今までためてきた不満やコンプレックスが原因であるし、ハリーは周りの好奇の目にさらされ、余裕を無くしている。この状態でハーマイオニーも仲を取り持とうとしても、二人の気持ちがかわらなければ解決には向かわないだろう。
午後の図書館ではハリーとハーマイオニーが勉強をしている姿をみることが多くなった。ここならば、大声で嫌みを言われたり、ひそひそ声で陰口を言われることも無い。そんなことをすれば、マダム ピンスに睨まれること必至だ。本棚の整理をしながら、今日も二人がなにやら課題に取り組んでいるのを横目で見た。ムーディにゴブレットの件を糾弾されて以来、ハリーとは挨拶程度の会話でさえすることがなくなってしまった。疑心暗鬼のハリーにとってはささいな疑惑でさえ――それが例え不可能に近くとも、信じずには居られないのだろう。それに、しばらくはハーマイオニーの知識が手助けとなるのだ。下手に刺激しても仕方が無いので、自ら関わりに行くこともしないでいる。しかし、テーブルや椅子の整頓をしているところで、後ろから声をかけられた。
「ハーマイオニー。どうしたの?何かさがし物?」
図書館で声をかけることなどほとんど無い彼女だ。何かあったのだろうか。
「いいえ、本の場所は全部把握しているもの。そうじゃないんです。前にお見舞いに来てくださったのにお礼も言えないままだったから…。あの、サツマイモのスイーツおいしかったです。ありがとうございます。」
実はハーマイオニーが歯呪いをかけられ、ハグリットと様子を見に行った後、サクラはもう一度ハーマイオニーのお見舞いに訪れていたのだ。あいにくハーマイオニーは眠っていたので、置き手紙と一緒にサツマイモのモンブランを作って置いておいたのだ。サツマイモはふかしていたし、後は厨房を借りて、夕食のデザートになっていた、手頃なカップケーキに、ホイップとペースとしたサツマイモを絞り出して飾り付けしただけのものだ。男たちのいざこざに巻き込まれたハーマイオニーが不憫に思われ、少しでも元気を出してほしいと作った物だった。
「たいしたものじゃないわ。あなたを元気づけられたらって思っただけよ。」
そう言うと、普段は気丈に振る舞っている彼女も瞳のはしを潤ませている。
「サクラさん…私、どうしたらいいか。」
こんな風に弱音をはくなんて、相当参っているのだろう。サクラはハーマイオニーの肩に手を置いた。
「…あの坊やたちが早く大人になってくれればあなたの苦労も減るのにね。ほんと、困ったお坊ちゃまたちね。」
そういうと、ハーマイオニーはくすり、と笑った。
「お坊ちゃまなんて…あの二人には似合いませんよ。」
「たしかに、わんぱく坊主の方がお似合いね。」
サクラがウインクを投げると、ハーマイオニーの表情に笑顔が戻ってきた。
「ハーマイオニー。あなたたちなら、きっと大丈夫、乗り越えられる。こんなことで絆は途切れたりしないわ。本当にどうでもいいのなら、わざわざ意地なんて張らないもの。二人を信じて。…だけど、今のハリーはロンを気遣う余裕はないわ。酷なことを言うけど、今はハリーに力を貸してあげて、あなたの知識や支えが必要よ。ロンとは時が来れば必ず和解できるから。」
そこまで言うと、ハーマイオニーは真剣な表情でサクラを見つめた。
「サクラさんはハリーを疑っていないのですね?」
「あなたの友人が優しくて勇敢なことは、あなた自身をみていれば分かるもの。」
ハーマイオニーの胸に光る『S.P.E.W』バッジを指していった。自身の活動の賛同者が表れたこともあり、頬を上気させている。そこでハーマイオニーが言葉を継ごうとしたところで、カウンターのほうからマダムピンスの咳払いが聞こえた。ここまで大目に見ていてくれたのだろう。サクラもハーマイオニーも小さく笑い合って、その場を離れた。
ハーマイオニーが席まで戻る前にハリーが慌てて近寄ってきた。
「大丈夫?あの人に何か言われなかった?」
心配そうな様子のハリーにハーマイオニーはため息をついた。
「サクラさんが何かしたと思ったの?」
「だって、あの人は――」
そうしてハリーは代表選手が選ばれたあの夜の話をした。ハリーの口ぶりからサクラを疑っていることがうかがえた。
「それで、サクラさんが、誰かの協力を得て、あなたを狙っているって?ハリー。今までサクラさんに傷つけられたことがある?代表選手たちの話し合いの場でサクラさんはあなたを責めたの?」
ハリーは今までのことを反芻してみる。親しいわけでは無いが、笑顔で挨拶を交わしてくれたし、就寝時間に内緒でシリウスに手紙を送ったときも、寮監に告げずにいてくれた。…それにあの場でハリーがゴブレットに入れたなどとサクラは一言も口にしなかった。
「…ううん。ないよ。でも、」
だが、あのムーディが疑っていたのだ。不安はぬぐいきれない。そう思い、ハーマイオニーになおも言い募ろうとしたところで、ハーマイオニーが声を重ねた。
「サクラさんはあなたを信じているのよ。さっきも私たちのことを思って勇気づけてくれたわ。あなたの「力になってほしい。」って。」
ハリーにとってハーマイオニーから聞かされた内容は少なからず驚かされた。サクラとは親しい間柄なわけではない。けれども、自身を信じてくれる数少ない人物だったのだ。何も言えずにいると、ハーマイオニーは分かるほど大きなため息をついて、席を立った。
「信じられないあなたの気持ちも分かるわ。でも、疑うだけでは何も見えてこないものよ。もっと広い心を持たなくちゃ。」
「まるでトレローニー先生みたいだね。」
「私はお茶の『出がらし』で未来はよまないわ。」
さっさと荷物をまとめ始めるハーマイオニーは、「もう行きましょう。」とハリーを促した。
「もう行くの?」
「ええ、『ハンサム』な彼に夢中の人たちのおかげで気が散るのよ。ウォンキー・フェイントとかなんとかいうのが出来ない人だったら、みんな見向きもしないのに。」
ハリーは『ウロンスキー・フェイント』だよ。と訂正するものの、唇をかんだ。これを聞いたらロンはどんな顔をするかと思うと、また胸がずきんと痛んだのだ。
「悲劇の少年ハリー」そして「彼に寄り添う才色兼備の少女、ハーマイオニー」過分な誇張が入っていることは学校中の生徒が分かっている。だからこそ、祭り上げられることを面白く思わない者も出てくる。そして、情報に踊らされる者も…。
サクラが学校中の清掃をしているときや図書館での業務に携わっている間、あの三人組を見かける事が全くなくなった。ロンにとっては今までためてきた不満やコンプレックスが原因であるし、ハリーは周りの好奇の目にさらされ、余裕を無くしている。この状態でハーマイオニーも仲を取り持とうとしても、二人の気持ちがかわらなければ解決には向かわないだろう。
午後の図書館ではハリーとハーマイオニーが勉強をしている姿をみることが多くなった。ここならば、大声で嫌みを言われたり、ひそひそ声で陰口を言われることも無い。そんなことをすれば、マダム ピンスに睨まれること必至だ。本棚の整理をしながら、今日も二人がなにやら課題に取り組んでいるのを横目で見た。ムーディにゴブレットの件を糾弾されて以来、ハリーとは挨拶程度の会話でさえすることがなくなってしまった。疑心暗鬼のハリーにとってはささいな疑惑でさえ――それが例え不可能に近くとも、信じずには居られないのだろう。それに、しばらくはハーマイオニーの知識が手助けとなるのだ。下手に刺激しても仕方が無いので、自ら関わりに行くこともしないでいる。しかし、テーブルや椅子の整頓をしているところで、後ろから声をかけられた。
「ハーマイオニー。どうしたの?何かさがし物?」
図書館で声をかけることなどほとんど無い彼女だ。何かあったのだろうか。
「いいえ、本の場所は全部把握しているもの。そうじゃないんです。前にお見舞いに来てくださったのにお礼も言えないままだったから…。あの、サツマイモのスイーツおいしかったです。ありがとうございます。」
実はハーマイオニーが歯呪いをかけられ、ハグリットと様子を見に行った後、サクラはもう一度ハーマイオニーのお見舞いに訪れていたのだ。あいにくハーマイオニーは眠っていたので、置き手紙と一緒にサツマイモのモンブランを作って置いておいたのだ。サツマイモはふかしていたし、後は厨房を借りて、夕食のデザートになっていた、手頃なカップケーキに、ホイップとペースとしたサツマイモを絞り出して飾り付けしただけのものだ。男たちのいざこざに巻き込まれたハーマイオニーが不憫に思われ、少しでも元気を出してほしいと作った物だった。
「たいしたものじゃないわ。あなたを元気づけられたらって思っただけよ。」
そう言うと、普段は気丈に振る舞っている彼女も瞳のはしを潤ませている。
「サクラさん…私、どうしたらいいか。」
こんな風に弱音をはくなんて、相当参っているのだろう。サクラはハーマイオニーの肩に手を置いた。
「…あの坊やたちが早く大人になってくれればあなたの苦労も減るのにね。ほんと、困ったお坊ちゃまたちね。」
そういうと、ハーマイオニーはくすり、と笑った。
「お坊ちゃまなんて…あの二人には似合いませんよ。」
「たしかに、わんぱく坊主の方がお似合いね。」
サクラがウインクを投げると、ハーマイオニーの表情に笑顔が戻ってきた。
「ハーマイオニー。あなたたちなら、きっと大丈夫、乗り越えられる。こんなことで絆は途切れたりしないわ。本当にどうでもいいのなら、わざわざ意地なんて張らないもの。二人を信じて。…だけど、今のハリーはロンを気遣う余裕はないわ。酷なことを言うけど、今はハリーに力を貸してあげて、あなたの知識や支えが必要よ。ロンとは時が来れば必ず和解できるから。」
そこまで言うと、ハーマイオニーは真剣な表情でサクラを見つめた。
「サクラさんはハリーを疑っていないのですね?」
「あなたの友人が優しくて勇敢なことは、あなた自身をみていれば分かるもの。」
ハーマイオニーの胸に光る『S.P.E.W』バッジを指していった。自身の活動の賛同者が表れたこともあり、頬を上気させている。そこでハーマイオニーが言葉を継ごうとしたところで、カウンターのほうからマダムピンスの咳払いが聞こえた。ここまで大目に見ていてくれたのだろう。サクラもハーマイオニーも小さく笑い合って、その場を離れた。
ハーマイオニーが席まで戻る前にハリーが慌てて近寄ってきた。
「大丈夫?あの人に何か言われなかった?」
心配そうな様子のハリーにハーマイオニーはため息をついた。
「サクラさんが何かしたと思ったの?」
「だって、あの人は――」
そうしてハリーは代表選手が選ばれたあの夜の話をした。ハリーの口ぶりからサクラを疑っていることがうかがえた。
「それで、サクラさんが、誰かの協力を得て、あなたを狙っているって?ハリー。今までサクラさんに傷つけられたことがある?代表選手たちの話し合いの場でサクラさんはあなたを責めたの?」
ハリーは今までのことを反芻してみる。親しいわけでは無いが、笑顔で挨拶を交わしてくれたし、就寝時間に内緒でシリウスに手紙を送ったときも、寮監に告げずにいてくれた。…それにあの場でハリーがゴブレットに入れたなどとサクラは一言も口にしなかった。
「…ううん。ないよ。でも、」
だが、あのムーディが疑っていたのだ。不安はぬぐいきれない。そう思い、ハーマイオニーになおも言い募ろうとしたところで、ハーマイオニーが声を重ねた。
「サクラさんはあなたを信じているのよ。さっきも私たちのことを思って勇気づけてくれたわ。あなたの「力になってほしい。」って。」
ハリーにとってハーマイオニーから聞かされた内容は少なからず驚かされた。サクラとは親しい間柄なわけではない。けれども、自身を信じてくれる数少ない人物だったのだ。何も言えずにいると、ハーマイオニーは分かるほど大きなため息をついて、席を立った。
「信じられないあなたの気持ちも分かるわ。でも、疑うだけでは何も見えてこないものよ。もっと広い心を持たなくちゃ。」
「まるでトレローニー先生みたいだね。」
「私はお茶の『出がらし』で未来はよまないわ。」
さっさと荷物をまとめ始めるハーマイオニーは、「もう行きましょう。」とハリーを促した。
「もう行くの?」
「ええ、『ハンサム』な彼に夢中の人たちのおかげで気が散るのよ。ウォンキー・フェイントとかなんとかいうのが出来ない人だったら、みんな見向きもしないのに。」
ハリーは『ウロンスキー・フェイント』だよ。と訂正するものの、唇をかんだ。これを聞いたらロンはどんな顔をするかと思うと、また胸がずきんと痛んだのだ。