炎のゴブレット編
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「夜中に女性に詰め寄るなんて変な噂が立ったらどうするんですか。」
部屋に招き入れたスネイプに嫌みの一つを言ってやる。スネイプはぴくりと青筋を浮かせてこちらを睨み付けた。
「くだらん話はいい。貴様が今回の件を知っていて黙っていたことを聞いているのだ。なぜ我が輩に一言の断りも無い?ポッターを代表選手にするなど、どういうつもりだ?」
「私が選んだわけではありません。」
「貴様…!!」
スネイプは一気に距離をつめた。その勢いにサクラは後ずさりした。しかし、小さい部屋だ。すぐに壁に行き当たり、そのままサクラは壁に背中を預け、スネイプは鼻先が擦れ合いそうなほど、怒りをあらわにした顔を近づけた。
「こういう事態を回避するのが貴様の役目だろう!」
スネイプの怒りはもっともだ。ハリーが四番目の代表選手に選ばれることをサクラは知っていた。しかし、それについて何の手も打たなかった。
「お言葉ですが、私がダンブルドアから仰せつかった仕事はハリーのお守り役ではありませんよ。」
サクラは落ち着いた声でそう言った。スネイプはサクラの落ち着き払った様子に今まで怒りに支配されていた頭に冷静さをわずかに取り戻した。不機嫌そうな表情はそのままでサクラを見つめる。こちらをまっすぐ見つめる視線とぶつかった。スネイプは今までのサクラからは感じられなかった意志の強さを感じた。何かを決めたような表情だった。
「私はハリーだけでは救えないものに手を伸ばしているのです。今回の事態を止めることはデメリットの方が大きい。」
「だから我が輩には教えなかったと?」
スネイプの口からついて出たのは、デメリットの詳細でも、サクラの計画への問いでもなかった。自身としても、そのような言葉が出てきたことに内心驚いたが、顔には出さなかった。自身の不愉快さの理由が、たかがこの女に蔑ろにされたことなどと、スネイプ本人も認めたくは無かった。
「あなたは本当にハリーがやったと思っているんですか?」
「あの男の息子だ。目立ちたいだけの有名人気取りの―」
続きを言うのを遮ってサクラは大きなため息をついた。
「だから言わなかったんですよ。…あの子はジェームズじゃない。冷静に考えてみてください。たとえあの子が上級生に頼んだとして、ゴブレットはホグワーツから一人しか選ばない。4人目が選ばれるということはゴブレットの契約を改ざんし、四校目があると錯覚させなくてはならない。それほどの技量が生徒にありますか?」
サクラの言葉でスネイプはようやく、まともな思考を巡らせることができた。今まで怒りに支配されていた頭では、そんな簡単なことでさえ考えようとはしていなかったようだ。
「…内通者がいるのか。」
あの時代では当たり前にあったスパイ活動が始まったということは、ウォルデモートが本格的に動き出したということを意味する。
スネイプの言葉にサクラは頷いた。
「カルカロフか?」
あのとき、ムーディとこの女の言った言葉にあり得ないことだと、嘲笑ったのはあの男だ。ムーディをおとしめて、違う理由に皆の気持ちを引きたかったのだろうか。この女が4人目の代表選手を知っていたのなら、それを入れた人物も知っているはずだ。そう思って、問うと、サクラは首を横に振った。
「ですが、彼を疑っているというポーズはしておいた方がいいでしょう。『彼』に怪しまれないように。」
「彼…?」
疑問符を浮かべるスネイプに、今度はサクラが近づいた。
「…気をつけてください。どこに敵がいるか分かりませんよ。」
その言葉にスネイプは目を見開いた。
「まさか…」
再び詰め寄ろうとするスネイプから、ひらりと体をかわしてサクラは扉の方へ体を寄せた。
「クラウチ氏については調査が必要です。彼がどちら側か、先ほど種はまいておきましたので、協力をお願いする事もあるかもしれません。」
「…あの陰気な男か。」
クラウチもスネイプには言われたくないだろう、と内心思ったが口に出さないでおく。
「どちらにせよ、スネイプ先生が動かれるとまずいことには代わりありません。今日のところはこれくらいでお引き取りください。」
サクラは愛想笑いを貼り付けてスネイプの方へ笑いかけた。これ以上話せば展開に支障が出てしまうかもしれない。ある程度スネイプを納得させるお土産を持たせてやらなければ、素直に帰ったりはしないだろう。だから、すぐに彼がたどり着くであろう簡単な真実だけを教えて、満足させたのだ。これでしばらく、問い詰められることは無いだろう、とサクラは高をくくって、ドアノブに手をかけた。しかし、その手の上から一回り大きなスネイプの手が重ねられ、ドアを開くことを阻まれた。不思議に思って見上げると、すぐそばにスネイプの顔があった。部屋へ促したときと同じように不愉快そうな顔でサクラを見下ろしていた。
「貴様のその態度が気に入らん。」
今まで散々悩んで、もがいていたくせに、さっさと一人で決めてしまうのだ。薬品庫での苦しげな表情が思い出される。最近では、何かを必死にたぐり寄せようと、我が輩の部屋に教えを請うて来ていた。頼みの綱のように思われていたのではないかと、心の奥底ではそう感じていたのだ。それが、ゴブレットの審査が始まれば、我が輩ではなくダンブルドアへ。一人でこそこそと細工をして、「お前は関係ないのだ」とでもいうように手近な秘密を握らせて、さっさと追い出そうとするのか。
「涼しい顔をして、貴様だけ勝手に前に進んでいくというのか。」
胸の中に渦巻くどす黒い感情がスネイプを突き動かした。こちらを見上げるサクラの顎を持ち上げ、そのまま唇を重ねた。サクラは驚いたように大きく目を見開いている。しかし、とっさのことで動くことができないのか、体は固まったままだ。それを幸いとスネイプは口づけを深めていく。
柔らかな弾力のある唇に吸い付き、己の舌を口内へ侵入させると、暖かな舌にからませた。苦しそうな息づかいにかまわず、口内を犯していく。
我が輩にすがればいいのだ。
苦しみ、悩み、助けをもとめれば許してやろう。
ようやく動くことができるようになったのか、腕をばたつかせて、拒否の姿勢をとるサクラに、スネイプはさっと拘束をといた。
「いい夜を。」
スネイプは、そう言い残して部屋を後にした。サクラはドアが閉まると同時に床へとへたりこんだ。混乱した頭の中で、去り際のスネイプが脳裏に焼き付いた。その表情が、穏やかな声音が、まるで同意の上で行われたかのようで。それに嫌悪しながらも心臓が大きく脈を打っている自身の歪さにもさらに混乱した。
「なにが…いい夜よ。」
履いていたハイヒールを片方脱ぐと、思い切り壁に投げつけた。それは壊れるでもなく床に落ちた。多少壊れれば、少しは気が紛れたのかもしれないが、余計に苛立ち、もう片方のハイヒールを乱暴に脱ぐと、サクラはベッドに飛び込んだ。
部屋に招き入れたスネイプに嫌みの一つを言ってやる。スネイプはぴくりと青筋を浮かせてこちらを睨み付けた。
「くだらん話はいい。貴様が今回の件を知っていて黙っていたことを聞いているのだ。なぜ我が輩に一言の断りも無い?ポッターを代表選手にするなど、どういうつもりだ?」
「私が選んだわけではありません。」
「貴様…!!」
スネイプは一気に距離をつめた。その勢いにサクラは後ずさりした。しかし、小さい部屋だ。すぐに壁に行き当たり、そのままサクラは壁に背中を預け、スネイプは鼻先が擦れ合いそうなほど、怒りをあらわにした顔を近づけた。
「こういう事態を回避するのが貴様の役目だろう!」
スネイプの怒りはもっともだ。ハリーが四番目の代表選手に選ばれることをサクラは知っていた。しかし、それについて何の手も打たなかった。
「お言葉ですが、私がダンブルドアから仰せつかった仕事はハリーのお守り役ではありませんよ。」
サクラは落ち着いた声でそう言った。スネイプはサクラの落ち着き払った様子に今まで怒りに支配されていた頭に冷静さをわずかに取り戻した。不機嫌そうな表情はそのままでサクラを見つめる。こちらをまっすぐ見つめる視線とぶつかった。スネイプは今までのサクラからは感じられなかった意志の強さを感じた。何かを決めたような表情だった。
「私はハリーだけでは救えないものに手を伸ばしているのです。今回の事態を止めることはデメリットの方が大きい。」
「だから我が輩には教えなかったと?」
スネイプの口からついて出たのは、デメリットの詳細でも、サクラの計画への問いでもなかった。自身としても、そのような言葉が出てきたことに内心驚いたが、顔には出さなかった。自身の不愉快さの理由が、たかがこの女に蔑ろにされたことなどと、スネイプ本人も認めたくは無かった。
「あなたは本当にハリーがやったと思っているんですか?」
「あの男の息子だ。目立ちたいだけの有名人気取りの―」
続きを言うのを遮ってサクラは大きなため息をついた。
「だから言わなかったんですよ。…あの子はジェームズじゃない。冷静に考えてみてください。たとえあの子が上級生に頼んだとして、ゴブレットはホグワーツから一人しか選ばない。4人目が選ばれるということはゴブレットの契約を改ざんし、四校目があると錯覚させなくてはならない。それほどの技量が生徒にありますか?」
サクラの言葉でスネイプはようやく、まともな思考を巡らせることができた。今まで怒りに支配されていた頭では、そんな簡単なことでさえ考えようとはしていなかったようだ。
「…内通者がいるのか。」
あの時代では当たり前にあったスパイ活動が始まったということは、ウォルデモートが本格的に動き出したということを意味する。
スネイプの言葉にサクラは頷いた。
「カルカロフか?」
あのとき、ムーディとこの女の言った言葉にあり得ないことだと、嘲笑ったのはあの男だ。ムーディをおとしめて、違う理由に皆の気持ちを引きたかったのだろうか。この女が4人目の代表選手を知っていたのなら、それを入れた人物も知っているはずだ。そう思って、問うと、サクラは首を横に振った。
「ですが、彼を疑っているというポーズはしておいた方がいいでしょう。『彼』に怪しまれないように。」
「彼…?」
疑問符を浮かべるスネイプに、今度はサクラが近づいた。
「…気をつけてください。どこに敵がいるか分かりませんよ。」
その言葉にスネイプは目を見開いた。
「まさか…」
再び詰め寄ろうとするスネイプから、ひらりと体をかわしてサクラは扉の方へ体を寄せた。
「クラウチ氏については調査が必要です。彼がどちら側か、先ほど種はまいておきましたので、協力をお願いする事もあるかもしれません。」
「…あの陰気な男か。」
クラウチもスネイプには言われたくないだろう、と内心思ったが口に出さないでおく。
「どちらにせよ、スネイプ先生が動かれるとまずいことには代わりありません。今日のところはこれくらいでお引き取りください。」
サクラは愛想笑いを貼り付けてスネイプの方へ笑いかけた。これ以上話せば展開に支障が出てしまうかもしれない。ある程度スネイプを納得させるお土産を持たせてやらなければ、素直に帰ったりはしないだろう。だから、すぐに彼がたどり着くであろう簡単な真実だけを教えて、満足させたのだ。これでしばらく、問い詰められることは無いだろう、とサクラは高をくくって、ドアノブに手をかけた。しかし、その手の上から一回り大きなスネイプの手が重ねられ、ドアを開くことを阻まれた。不思議に思って見上げると、すぐそばにスネイプの顔があった。部屋へ促したときと同じように不愉快そうな顔でサクラを見下ろしていた。
「貴様のその態度が気に入らん。」
今まで散々悩んで、もがいていたくせに、さっさと一人で決めてしまうのだ。薬品庫での苦しげな表情が思い出される。最近では、何かを必死にたぐり寄せようと、我が輩の部屋に教えを請うて来ていた。頼みの綱のように思われていたのではないかと、心の奥底ではそう感じていたのだ。それが、ゴブレットの審査が始まれば、我が輩ではなくダンブルドアへ。一人でこそこそと細工をして、「お前は関係ないのだ」とでもいうように手近な秘密を握らせて、さっさと追い出そうとするのか。
「涼しい顔をして、貴様だけ勝手に前に進んでいくというのか。」
胸の中に渦巻くどす黒い感情がスネイプを突き動かした。こちらを見上げるサクラの顎を持ち上げ、そのまま唇を重ねた。サクラは驚いたように大きく目を見開いている。しかし、とっさのことで動くことができないのか、体は固まったままだ。それを幸いとスネイプは口づけを深めていく。
柔らかな弾力のある唇に吸い付き、己の舌を口内へ侵入させると、暖かな舌にからませた。苦しそうな息づかいにかまわず、口内を犯していく。
我が輩にすがればいいのだ。
苦しみ、悩み、助けをもとめれば許してやろう。
ようやく動くことができるようになったのか、腕をばたつかせて、拒否の姿勢をとるサクラに、スネイプはさっと拘束をといた。
「いい夜を。」
スネイプは、そう言い残して部屋を後にした。サクラはドアが閉まると同時に床へとへたりこんだ。混乱した頭の中で、去り際のスネイプが脳裏に焼き付いた。その表情が、穏やかな声音が、まるで同意の上で行われたかのようで。それに嫌悪しながらも心臓が大きく脈を打っている自身の歪さにもさらに混乱した。
「なにが…いい夜よ。」
履いていたハイヒールを片方脱ぐと、思い切り壁に投げつけた。それは壊れるでもなく床に落ちた。多少壊れれば、少しは気が紛れたのかもしれないが、余計に苛立ち、もう片方のハイヒールを乱暴に脱ぐと、サクラはベッドに飛び込んだ。