炎のゴブレット編
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ボーバトンとダームストラングを迎え入れるための準備は着々と進んでいった。屋敷僕妖精だけでなく、教師陣、管理人、例に漏れずサクラも前日まで準備に追われていた。そんな中でもスネイプとの本のやりとりは続いており、教授の空き時間を狙って数分程度の問題を出題されたり、質問をしたりという時間を過ごしていた。
前夜は食堂の飾り付けにフリットウィック、マクゴナガルがかり出され、屋敷僕たちと装飾に取りかかっていた。いつもの食堂が華やかに彩られ、いよいよこの時が来たのだと、いう気持ちになった。
当日の朝は、学校中が浮き足立っていた。道行く生徒たちは今日の2校のことについてや、選手決めについて色々な議論を交わしていた。一大イベントに浮き足出すのも無理はない。サクラとて、2校の登場は知っているものの、目の前でその光景が見られると思うと、今からそわそわしてしまう。
午前中は学校中の掃除をフィルチや屋敷僕たちと協力して行い、いつもより隅々まで磨き上げた。それが終わるとさすがに体の節々に疲労がたまってくる。一息ついて、すこし遅めの昼食をとるために食堂へ向かった。食堂に着くと、生徒はまばらで、隅の方には赤毛の二人の姿が見られた。
…きっとどうやって選手に名乗りを上げるか算段しているのだろう。
物語の中でも二人がどうにかして炎のゴブレットに名前を入れようと四苦八苦していたと書かれていたし、悪巧みをしているに違いない。こういう事には首を突っ込まない方がいいと判断し、そのまま職員席へと向かう。しかし、近くを通り過ぎたところで、二人に呼び止められてしまった。
「やあ!麗しの姫君。ご機嫌いかがかな?」
すっと立ち上がり、サクラの目の前に立ちはだかる。双子はまるで騎士のようにサクラの手の甲に口づけを落とす。
「すこぶる元気よ。あなたたちもご機嫌そうね。」
ここで、文句の一つでもいって話が長引くと、余計なことに巻き込まれそうだと察して、サクラはあたりさわりのない返答をした。しかし、それに二人は大げさに大きなため息をついた。
「はあ…あいにく僕たちの機嫌はそんなによくないんだ。」
「困り事があってね…。」
わざとらしく眉間に皺を寄せて眉をハの字にする演技付きだ。なんとしてもサクラを話題に引き入れたいらしい。
「そうなのね…かわいそうに。」
同じように残念そうな表情を向けると双子は、してやったりと顔を見合わせた。
「「だったら僕らに協りょ…」」
「でも、私ではあなたたちの問題を解決できそうにないわ。では、ごきげんよう。」
そう言って、双子の間をすり抜けようと歩を進めたが両腕をとらえられた。
「そう言わずに協力してくれよ。」
「俺たちはただ、三校対抗試合の選手決めの仕方を聞きたいだけさ。」
「ちょっとだけヒントがほしいんだ。」
「俺たちもサクラさんに協力した仲だろ?」
フレッドとジョージが耳元で交互にささやく。人もまばらとはいえ、恥ずかしい体制である。一刻も早く抜け出したい。だが、ここで二人に炎のゴブレットのことを教えてしまうのは、得策とは思えない。それに、ダンブルドアには全職員、箝口令が敷かれている。
「ごめんなさい、私からは話せないの。」
そういっても、不服そうな二人は、まだあきらめきれないらしく腕から手が離れない。これは、力業で振り払うしかないか、と考えたところだった。
「女性に対して不躾よ。」
鋭い声がして、そちらを見るとハーマイオニーが腕を組んで立っていた。
「まだ諦めてないのね。知っていてもヒナタさんは答えられないわよ。直前まで秘密にするようダンブルドア校長に指示されているんだもの。」
なぜ知っているの…?と口をでかかったときに「ホグワーツの歴史に載ってたわ。」といって、双子の近くにある分厚い本を手に補足した。どうやらこれを取りに来て、たまたま声をかけてくれたらしい。
「そうなの、だからフレッド、ジョージごめんなさいね。」
いつもよりしおらしく謝ると二人とも、仕方なさそうに手を離した。
「ありがとう…えっと」
「ハーマイオニー・グレンジャーです。」
「サクラ・ヒナタです。ハーマイオニー助かったわ。」
サクラの言葉にハーマイオニーはうれしそうにはにかんだ。年相応の純粋な笑顔に心が癒やされる。毎日のようにあの嫌みな教授と顔を合わせていると、ハーマイオニーの笑顔は日々の癒やしになりそうだ。
「午後の授業もあるでしょう。みんな早く移動した方がいいわ。」
時間をみると、午後の授業まであとわずかだ。3人とも急いで、食堂を出て行った。
それを見送って、ようやく自身の席についた。
「はあ…」
自然とため息が出てしまう。午前中の仕事より、双子をあしらう方が疲れてしまった気がする。料理に手をつけるまえに、温かい紅茶でほっと一息ついた。いつも思うが、毎食事で用意される紅茶はいつでも最適な温度で、香り立つものが用意されている。元の世界ではサクラも紅茶は色々な種類を選んだり、煎れたりしていたが、ここの屋敷僕たちがいれる紅茶は格別だ。凝り固まった心も和らげるようで、食事のときの密かな楽しみでもある。
紅茶で一息入れているところで、隣の椅子がひかれ、スネイプが腰掛けた。
「このような時間に食事とは珍しいな。」
隣に座ったスネイプは普段ならサクラは午後の業務に出かけている時間だろう、と思いいぶかしそうな表情を向けた。
「午前中の作業が長引きまして、いつもより遅くなってしまいました。そういう先生も、今日は遅い昼食なんですね。」
「ネビルがまた大釜を爆発させて、その処理でな。」
忌々しそうにベーコンを皿に乱暴に置きながらスネイプが答えた。
「この大事な日に限って我輩の仕事を増やすとは。」
スネイプの様子から、相当のことをやらかしたのだろうことは察せられた。夕方からの最終準備で教師陣は手が離せない事に加え、スネイプはこれからもう一時間授業をしなければならない。教室をそのまま放置しておくこともできなかったのだろう。
「お疲れ様です…。」
サクラはその現場を想像するだけで、少しスネイプに同情した。
「やけに素直だな。」
「先生には後々、協力していただくことがあると思いますので、今のうちに…ね。」
サクラの何か含んだような言い方に、スネイプはぴくりと反応した。
「何を企んでいる。」
「まだなにも。」
サクラ自身が動かずとも、ハリーにとって不都合なことは数えるほどしかない。そのうちのいくつかにスネイプは関係してくるが、せいぜい『えら昆布』入手の際に手助けが必要であれば、スネイプをそそのかす程度のことだ。
しかし、サクラの心の内でいつも決めきれない事については、スネイプの知恵を借りる状況も想定される。セドリックのことだ。未だに彼の命と引き替えに物語が進んで行くことに気持ちの整理がつかないままだ。心優しい青年が命を落とすことを分かっていながら、何もしないという選択にサクラは踏み切れないでいた。
「まだ話す気にならないのか。」
あの薬品庫での事で、スネイプには禁じられた呪文がどこかで使われることは知られている。しかし、その中でも命を奪う呪文がウォルデモートによって使用され、生徒が命を落とすことまでは伝えていない。きっと話せば、セドリックは選手候補から外される可能性が高くなる。しかし、それでは話の流れが変わり、いつハリーに敵の手が伸びるのか予想がつかなくなってしまう…。セドリックを心配しながらも理性ではセドリックを駒にするような思考をする自身の頭に嫌気がさした。
なにも言わないサクラにスネイプは何か言う訳でもなく、しばらく、二人でもくもくと昼食を進めた。スネイプが手早く食事を終え、席を立ったところで、思い出したようにサクラに声をかけた。
「ダンブルドアから貴様の部屋にドレスを届けたそうだ。今夜の集まりで着るようにと。」
思いもしない言葉にサクラは首をかしげた。
「なぜドレスを?2校を迎え入れるだけですよね。」
「魔法省からも来賓があるのだ。そのみすぼらしい服で出られては困るのだろう。」
「みすぼらしいですって…?」
その物言いに、言い返したくなるも、今の自分の服を見返すとそうも言えなかった。ほこりで煤けた作業服がみすぼらしくないわけがない…。
「分かりました。ご連絡ありがとうございます。」
「せいぜい、服に着られないようにするんだな。」
いつものように、ふんと鼻をならしてローブを翻していった。内心、あなたもいつも同じような服で代わり映えしないわよ。と言ってやりたかったが、そういう前にスネイプは足早に食堂を後にしていった。
前夜は食堂の飾り付けにフリットウィック、マクゴナガルがかり出され、屋敷僕たちと装飾に取りかかっていた。いつもの食堂が華やかに彩られ、いよいよこの時が来たのだと、いう気持ちになった。
当日の朝は、学校中が浮き足立っていた。道行く生徒たちは今日の2校のことについてや、選手決めについて色々な議論を交わしていた。一大イベントに浮き足出すのも無理はない。サクラとて、2校の登場は知っているものの、目の前でその光景が見られると思うと、今からそわそわしてしまう。
午前中は学校中の掃除をフィルチや屋敷僕たちと協力して行い、いつもより隅々まで磨き上げた。それが終わるとさすがに体の節々に疲労がたまってくる。一息ついて、すこし遅めの昼食をとるために食堂へ向かった。食堂に着くと、生徒はまばらで、隅の方には赤毛の二人の姿が見られた。
…きっとどうやって選手に名乗りを上げるか算段しているのだろう。
物語の中でも二人がどうにかして炎のゴブレットに名前を入れようと四苦八苦していたと書かれていたし、悪巧みをしているに違いない。こういう事には首を突っ込まない方がいいと判断し、そのまま職員席へと向かう。しかし、近くを通り過ぎたところで、二人に呼び止められてしまった。
「やあ!麗しの姫君。ご機嫌いかがかな?」
すっと立ち上がり、サクラの目の前に立ちはだかる。双子はまるで騎士のようにサクラの手の甲に口づけを落とす。
「すこぶる元気よ。あなたたちもご機嫌そうね。」
ここで、文句の一つでもいって話が長引くと、余計なことに巻き込まれそうだと察して、サクラはあたりさわりのない返答をした。しかし、それに二人は大げさに大きなため息をついた。
「はあ…あいにく僕たちの機嫌はそんなによくないんだ。」
「困り事があってね…。」
わざとらしく眉間に皺を寄せて眉をハの字にする演技付きだ。なんとしてもサクラを話題に引き入れたいらしい。
「そうなのね…かわいそうに。」
同じように残念そうな表情を向けると双子は、してやったりと顔を見合わせた。
「「だったら僕らに協りょ…」」
「でも、私ではあなたたちの問題を解決できそうにないわ。では、ごきげんよう。」
そう言って、双子の間をすり抜けようと歩を進めたが両腕をとらえられた。
「そう言わずに協力してくれよ。」
「俺たちはただ、三校対抗試合の選手決めの仕方を聞きたいだけさ。」
「ちょっとだけヒントがほしいんだ。」
「俺たちもサクラさんに協力した仲だろ?」
フレッドとジョージが耳元で交互にささやく。人もまばらとはいえ、恥ずかしい体制である。一刻も早く抜け出したい。だが、ここで二人に炎のゴブレットのことを教えてしまうのは、得策とは思えない。それに、ダンブルドアには全職員、箝口令が敷かれている。
「ごめんなさい、私からは話せないの。」
そういっても、不服そうな二人は、まだあきらめきれないらしく腕から手が離れない。これは、力業で振り払うしかないか、と考えたところだった。
「女性に対して不躾よ。」
鋭い声がして、そちらを見るとハーマイオニーが腕を組んで立っていた。
「まだ諦めてないのね。知っていてもヒナタさんは答えられないわよ。直前まで秘密にするようダンブルドア校長に指示されているんだもの。」
なぜ知っているの…?と口をでかかったときに「ホグワーツの歴史に載ってたわ。」といって、双子の近くにある分厚い本を手に補足した。どうやらこれを取りに来て、たまたま声をかけてくれたらしい。
「そうなの、だからフレッド、ジョージごめんなさいね。」
いつもよりしおらしく謝ると二人とも、仕方なさそうに手を離した。
「ありがとう…えっと」
「ハーマイオニー・グレンジャーです。」
「サクラ・ヒナタです。ハーマイオニー助かったわ。」
サクラの言葉にハーマイオニーはうれしそうにはにかんだ。年相応の純粋な笑顔に心が癒やされる。毎日のようにあの嫌みな教授と顔を合わせていると、ハーマイオニーの笑顔は日々の癒やしになりそうだ。
「午後の授業もあるでしょう。みんな早く移動した方がいいわ。」
時間をみると、午後の授業まであとわずかだ。3人とも急いで、食堂を出て行った。
それを見送って、ようやく自身の席についた。
「はあ…」
自然とため息が出てしまう。午前中の仕事より、双子をあしらう方が疲れてしまった気がする。料理に手をつけるまえに、温かい紅茶でほっと一息ついた。いつも思うが、毎食事で用意される紅茶はいつでも最適な温度で、香り立つものが用意されている。元の世界ではサクラも紅茶は色々な種類を選んだり、煎れたりしていたが、ここの屋敷僕たちがいれる紅茶は格別だ。凝り固まった心も和らげるようで、食事のときの密かな楽しみでもある。
紅茶で一息入れているところで、隣の椅子がひかれ、スネイプが腰掛けた。
「このような時間に食事とは珍しいな。」
隣に座ったスネイプは普段ならサクラは午後の業務に出かけている時間だろう、と思いいぶかしそうな表情を向けた。
「午前中の作業が長引きまして、いつもより遅くなってしまいました。そういう先生も、今日は遅い昼食なんですね。」
「ネビルがまた大釜を爆発させて、その処理でな。」
忌々しそうにベーコンを皿に乱暴に置きながらスネイプが答えた。
「この大事な日に限って我輩の仕事を増やすとは。」
スネイプの様子から、相当のことをやらかしたのだろうことは察せられた。夕方からの最終準備で教師陣は手が離せない事に加え、スネイプはこれからもう一時間授業をしなければならない。教室をそのまま放置しておくこともできなかったのだろう。
「お疲れ様です…。」
サクラはその現場を想像するだけで、少しスネイプに同情した。
「やけに素直だな。」
「先生には後々、協力していただくことがあると思いますので、今のうちに…ね。」
サクラの何か含んだような言い方に、スネイプはぴくりと反応した。
「何を企んでいる。」
「まだなにも。」
サクラ自身が動かずとも、ハリーにとって不都合なことは数えるほどしかない。そのうちのいくつかにスネイプは関係してくるが、せいぜい『えら昆布』入手の際に手助けが必要であれば、スネイプをそそのかす程度のことだ。
しかし、サクラの心の内でいつも決めきれない事については、スネイプの知恵を借りる状況も想定される。セドリックのことだ。未だに彼の命と引き替えに物語が進んで行くことに気持ちの整理がつかないままだ。心優しい青年が命を落とすことを分かっていながら、何もしないという選択にサクラは踏み切れないでいた。
「まだ話す気にならないのか。」
あの薬品庫での事で、スネイプには禁じられた呪文がどこかで使われることは知られている。しかし、その中でも命を奪う呪文がウォルデモートによって使用され、生徒が命を落とすことまでは伝えていない。きっと話せば、セドリックは選手候補から外される可能性が高くなる。しかし、それでは話の流れが変わり、いつハリーに敵の手が伸びるのか予想がつかなくなってしまう…。セドリックを心配しながらも理性ではセドリックを駒にするような思考をする自身の頭に嫌気がさした。
なにも言わないサクラにスネイプは何か言う訳でもなく、しばらく、二人でもくもくと昼食を進めた。スネイプが手早く食事を終え、席を立ったところで、思い出したようにサクラに声をかけた。
「ダンブルドアから貴様の部屋にドレスを届けたそうだ。今夜の集まりで着るようにと。」
思いもしない言葉にサクラは首をかしげた。
「なぜドレスを?2校を迎え入れるだけですよね。」
「魔法省からも来賓があるのだ。そのみすぼらしい服で出られては困るのだろう。」
「みすぼらしいですって…?」
その物言いに、言い返したくなるも、今の自分の服を見返すとそうも言えなかった。ほこりで煤けた作業服がみすぼらしくないわけがない…。
「分かりました。ご連絡ありがとうございます。」
「せいぜい、服に着られないようにするんだな。」
いつものように、ふんと鼻をならしてローブを翻していった。内心、あなたもいつも同じような服で代わり映えしないわよ。と言ってやりたかったが、そういう前にスネイプは足早に食堂を後にしていった。