炎のゴブレット編
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「焦りすぎると怪しいと思われるわよ。」
そう言うと、ハリーはぴたりと動きを止めた。いかにも『怪しいこと』をしていました、と表明しているようなものだが、あえて指摘しないでおこう。この時期に手紙を送るとなると、・・・シリウスだったろうか。この時期からハリーはウォルデモートとの結びつきが強くなってきていたはずだ。それを相談する相手とすれば、学友のロンとハーマイオニー、そして名付け親のシリウスである。先ほど飛び立っていった真っ白なフクロウは、彼に宛てたものだろう。
「この時間に送らなくてはならないくらい重要なものなの?」
しばらく沈黙が流れる。ハリーは何と答えたらよいのか思案していたが、ちいさく頷いた。
「・・・親戚の家でトラブルがあったみたいで、心配になっていてもたってもいられなくなってしまったんです。規則違反なのは分かっています。でも・・・お願いします。減点はしないで。」
『親戚』が誰をさすのか分かりきってはいるが、ハリーにとっては友人と校長しか知り得ないシリウスは無実で今は手紙を送り合う仲という、秘密の情報が、まさかスクイブのサクラに流れているとは思いもしないだろう。だから、ハリーの言葉を額面通り受け取って、反応するより他にない。
「きっと、寮監の先生に見つかったら減点よね。」
「・・・そんな。」
まるでこの世の終わりのような顔をしているハリーに、あの寮監が自寮でもないのに虐めたくなるのも分かる気がする。ハリーはサクラの次の言葉を見守るように、こちらを見つめる。
「でも、私には減点をする権限はないの。だから安心して。」
そういうと、分かりやすいくらい、ほっとため息をついた。
「ありがとうございます、ヒナタさん…。」
「お礼を言われるようなことじゃないわよ。ただ、一つ忠告するけど、隠し事をするなら表情も気をつけないと。あのスリザリンの寮監は目ざといわよ。」
ストーリーの中で、ハリーはよくスネイプのお小言に付き合わされていた。今のように素直すぎるのは、格好の餌食だろう。サクラでさえ、加虐心をくすぐられたのだ。あの男からすれば、過去のわだかまりもあり、余計に虐めたくなるだろうことは想像できる。老婆心から余計なお節介かもしれないが、今後ハリーの負担が少しでも減るならば、言われる小言が少ないのに超したことはない。
ハリーはサクラの言葉にどう反応してよいのか分からず、曖昧に相づちをうった。サクラの方も、反応を期待していたわけでもなかったため、それだけ告げると、くるりと踵をかえした。
「それじゃ、私は部屋に戻るわ。おやすみなさい。」
「は、はい。おやすみなさい。」
それから数日、ハリーに目立った行動はなかった。他の生徒と同様に授業を受け、放課後の時間を使う。仕事の合間に学友と移動教室に向かう姿を見ても、落ち込んでいたり、反対に明るすぎたりというようなこともなかった。サクラとしてはあの夜以降、接触はなるべく避けているため、遠くから見ているだけである。しかし、ひとつだけ今までと違うことがあった。ハリーとよく目が合うようになり、軽く会釈をされるようになってしまったのだ。
これまで、管理人の一人であるサクラを視界に入れようとする者はほとんどいなかった。元々、仕事内容は生徒が授業で教室に詰め込まれているときに行っていたし、図書館の作業も、生徒が授業でいない時間にすることがほとんどであった。ただ、授業の合間に生徒が廊下を移動するときくらいに接触があるくらいで、それもほとんど話しかけられることもない。
唯一、セドリックやウィーズリーの双子が姿を見つけると、挨拶をしてくれたり、2、3言葉を交わすくらいである。もちろん教師陣とは薬草園の手伝いや諸々で話す機会はある。ただ、下手なことを言って、自身の素性がばれる危険もあるため、仕事の話がメインであるし、生徒と必要以上に関わることもないのである。その方が、ハリーや疑わしい人物の動向も探れるというのもひとつである。だから、ここでハリーと親交を深めるのは、敵陣営に存在を認知されることに他ならない。その分、物語の展開が変わるリスク、また自身の命の危険が一気に跳ね上がる。
あの夜、よけいな老婆心を抱いて忠告なんてするのではなかった…。今更ながら、自分の軽率さに後悔した。
「ため息なんてついてどうしちゃったのー?」
「俺たちでよければ、相談のるぜ?」
中庭の手入れをしているところで赤毛の二人が顔をのぞき込んできた。…会う度、距離が近いのはお国柄ということで目をつぶろう。
「ご親切にどうも。」
面倒なのが来たな…。内心、思っていることは表情にでているだろう。再び、雑草を引き抜くべく、視線をもとに戻した。授業の合間の時間だ、しばらく適当に相手をすれば、去って行くだろう。片手間に話をしようと、作業を再開する。しかし、双子はそんなサクラの思惑などおかまいなしで、話し始める。
「姫はご機嫌斜めなようだ。」
「スネイプと喧嘩でもしたの?」
「「あ!痴話げんかってやつだ!」」
「・・・は?」
『痴話げんか』と、想像しなかったワードが出てきたことで、作業の手がとまった。その様子に一瞬ニンマリした双子は、サクラが振り向いた瞬間、心配そうな顔を作った。
「「恋愛のお悩みなら我らフレッド・ジョージにお任せあれ!」」
予想外の展開にサクラは開いた口がふさがらなかった。
この双子は一体なにを言っているのか。なにから訂正すればいいのか、言葉につまってしまう。
「…私と誰が痴話げんか?一体なんの冗談かしら?」
「だから、スネイプ先生とだよ。」
「毎晩、地下室で秘密の逢瀬をしてるってもっぱらの噂になってるよ。」
ニヤニヤと顔を見合わせる双子の様子や、周りの学生たちも気づかれないように耳をそばだたせているのに、苛立ちが募るが、気持ちを落ち着ける。ここで声を荒げても面白がるだけだ。冷静に、冷静に…。
「まず、私とスネイプ先生はそんな関係ではないです。毎晩、地下室に通っているのは本を借りているだけ。」
「でも、スリザリンの奴らがそう言ってたぜ?なあ、ジョージも聞いたよな。」
「というか他の寮の生徒も噂してるよな。」
「それなら、聞くけど、あなたたち…私とスネイプ先生が恋人同士に見える?」
「「全然。」」
「…はあ。こんなデマを流した人、よっぽど怖いもの知らずね。」
あえて、大きな声で反応しておく。さっきから面白そうにこちらを窺う学生たちにも聞こえるように。
「まあいいわ。…二人ともありがとう。」
「「お安いご用ですよ、姫。」」
仰々しく、手を前にお辞儀する姿は様になっていていかにも英国紳士という雰囲気だ。耳ざといこと二人が、こうして火消しをしてくれるとは思いもしなかったが、そんな噂が流れていることすら知らなかった自分に不安になった。
「フレッド、ジョージ。頼みがあるのだけど。」
「姫の頼みとあらば、なんなりと。」
たぶんフレッドの方がひざまずいた。
「俺たちでお役に立てるならば。」
次にジョージがひざまずいた。未だに見分けるのが難しいが、こういうのを初めにするのはフレッドである気がする。
「どんな小さな噂でもいいから私に教えてもらえないかしら。今回みたいなことがあると、ね。やっぱりスクイブって差別されてるの。変なことに巻き込まれることも多いし。あなたたちが騎士として守ってくれるなら心強いのだけど…」
普段の自分であれば、こんな体かかゆくなるようなセリフは言わないのだが、若者二人を乗せるためだ。二人を窺うように見上げる。双子は、思いもしない反応だったのか、一瞬、息をつまらせた。こうして頼られるのは悪い気はしないのだろう。二人は「「まかせてくれ!」」と息巻いて胸をたたいた。
そう言うと、ハリーはぴたりと動きを止めた。いかにも『怪しいこと』をしていました、と表明しているようなものだが、あえて指摘しないでおこう。この時期に手紙を送るとなると、・・・シリウスだったろうか。この時期からハリーはウォルデモートとの結びつきが強くなってきていたはずだ。それを相談する相手とすれば、学友のロンとハーマイオニー、そして名付け親のシリウスである。先ほど飛び立っていった真っ白なフクロウは、彼に宛てたものだろう。
「この時間に送らなくてはならないくらい重要なものなの?」
しばらく沈黙が流れる。ハリーは何と答えたらよいのか思案していたが、ちいさく頷いた。
「・・・親戚の家でトラブルがあったみたいで、心配になっていてもたってもいられなくなってしまったんです。規則違反なのは分かっています。でも・・・お願いします。減点はしないで。」
『親戚』が誰をさすのか分かりきってはいるが、ハリーにとっては友人と校長しか知り得ないシリウスは無実で今は手紙を送り合う仲という、秘密の情報が、まさかスクイブのサクラに流れているとは思いもしないだろう。だから、ハリーの言葉を額面通り受け取って、反応するより他にない。
「きっと、寮監の先生に見つかったら減点よね。」
「・・・そんな。」
まるでこの世の終わりのような顔をしているハリーに、あの寮監が自寮でもないのに虐めたくなるのも分かる気がする。ハリーはサクラの次の言葉を見守るように、こちらを見つめる。
「でも、私には減点をする権限はないの。だから安心して。」
そういうと、分かりやすいくらい、ほっとため息をついた。
「ありがとうございます、ヒナタさん…。」
「お礼を言われるようなことじゃないわよ。ただ、一つ忠告するけど、隠し事をするなら表情も気をつけないと。あのスリザリンの寮監は目ざといわよ。」
ストーリーの中で、ハリーはよくスネイプのお小言に付き合わされていた。今のように素直すぎるのは、格好の餌食だろう。サクラでさえ、加虐心をくすぐられたのだ。あの男からすれば、過去のわだかまりもあり、余計に虐めたくなるだろうことは想像できる。老婆心から余計なお節介かもしれないが、今後ハリーの負担が少しでも減るならば、言われる小言が少ないのに超したことはない。
ハリーはサクラの言葉にどう反応してよいのか分からず、曖昧に相づちをうった。サクラの方も、反応を期待していたわけでもなかったため、それだけ告げると、くるりと踵をかえした。
「それじゃ、私は部屋に戻るわ。おやすみなさい。」
「は、はい。おやすみなさい。」
それから数日、ハリーに目立った行動はなかった。他の生徒と同様に授業を受け、放課後の時間を使う。仕事の合間に学友と移動教室に向かう姿を見ても、落ち込んでいたり、反対に明るすぎたりというようなこともなかった。サクラとしてはあの夜以降、接触はなるべく避けているため、遠くから見ているだけである。しかし、ひとつだけ今までと違うことがあった。ハリーとよく目が合うようになり、軽く会釈をされるようになってしまったのだ。
これまで、管理人の一人であるサクラを視界に入れようとする者はほとんどいなかった。元々、仕事内容は生徒が授業で教室に詰め込まれているときに行っていたし、図書館の作業も、生徒が授業でいない時間にすることがほとんどであった。ただ、授業の合間に生徒が廊下を移動するときくらいに接触があるくらいで、それもほとんど話しかけられることもない。
唯一、セドリックやウィーズリーの双子が姿を見つけると、挨拶をしてくれたり、2、3言葉を交わすくらいである。もちろん教師陣とは薬草園の手伝いや諸々で話す機会はある。ただ、下手なことを言って、自身の素性がばれる危険もあるため、仕事の話がメインであるし、生徒と必要以上に関わることもないのである。その方が、ハリーや疑わしい人物の動向も探れるというのもひとつである。だから、ここでハリーと親交を深めるのは、敵陣営に存在を認知されることに他ならない。その分、物語の展開が変わるリスク、また自身の命の危険が一気に跳ね上がる。
あの夜、よけいな老婆心を抱いて忠告なんてするのではなかった…。今更ながら、自分の軽率さに後悔した。
「ため息なんてついてどうしちゃったのー?」
「俺たちでよければ、相談のるぜ?」
中庭の手入れをしているところで赤毛の二人が顔をのぞき込んできた。…会う度、距離が近いのはお国柄ということで目をつぶろう。
「ご親切にどうも。」
面倒なのが来たな…。内心、思っていることは表情にでているだろう。再び、雑草を引き抜くべく、視線をもとに戻した。授業の合間の時間だ、しばらく適当に相手をすれば、去って行くだろう。片手間に話をしようと、作業を再開する。しかし、双子はそんなサクラの思惑などおかまいなしで、話し始める。
「姫はご機嫌斜めなようだ。」
「スネイプと喧嘩でもしたの?」
「「あ!痴話げんかってやつだ!」」
「・・・は?」
『痴話げんか』と、想像しなかったワードが出てきたことで、作業の手がとまった。その様子に一瞬ニンマリした双子は、サクラが振り向いた瞬間、心配そうな顔を作った。
「「恋愛のお悩みなら我らフレッド・ジョージにお任せあれ!」」
予想外の展開にサクラは開いた口がふさがらなかった。
この双子は一体なにを言っているのか。なにから訂正すればいいのか、言葉につまってしまう。
「…私と誰が痴話げんか?一体なんの冗談かしら?」
「だから、スネイプ先生とだよ。」
「毎晩、地下室で秘密の逢瀬をしてるってもっぱらの噂になってるよ。」
ニヤニヤと顔を見合わせる双子の様子や、周りの学生たちも気づかれないように耳をそばだたせているのに、苛立ちが募るが、気持ちを落ち着ける。ここで声を荒げても面白がるだけだ。冷静に、冷静に…。
「まず、私とスネイプ先生はそんな関係ではないです。毎晩、地下室に通っているのは本を借りているだけ。」
「でも、スリザリンの奴らがそう言ってたぜ?なあ、ジョージも聞いたよな。」
「というか他の寮の生徒も噂してるよな。」
「それなら、聞くけど、あなたたち…私とスネイプ先生が恋人同士に見える?」
「「全然。」」
「…はあ。こんなデマを流した人、よっぽど怖いもの知らずね。」
あえて、大きな声で反応しておく。さっきから面白そうにこちらを窺う学生たちにも聞こえるように。
「まあいいわ。…二人ともありがとう。」
「「お安いご用ですよ、姫。」」
仰々しく、手を前にお辞儀する姿は様になっていていかにも英国紳士という雰囲気だ。耳ざといこと二人が、こうして火消しをしてくれるとは思いもしなかったが、そんな噂が流れていることすら知らなかった自分に不安になった。
「フレッド、ジョージ。頼みがあるのだけど。」
「姫の頼みとあらば、なんなりと。」
たぶんフレッドの方がひざまずいた。
「俺たちでお役に立てるならば。」
次にジョージがひざまずいた。未だに見分けるのが難しいが、こういうのを初めにするのはフレッドである気がする。
「どんな小さな噂でもいいから私に教えてもらえないかしら。今回みたいなことがあると、ね。やっぱりスクイブって差別されてるの。変なことに巻き込まれることも多いし。あなたたちが騎士として守ってくれるなら心強いのだけど…」
普段の自分であれば、こんな体かかゆくなるようなセリフは言わないのだが、若者二人を乗せるためだ。二人を窺うように見上げる。双子は、思いもしない反応だったのか、一瞬、息をつまらせた。こうして頼られるのは悪い気はしないのだろう。二人は「「まかせてくれ!」」と息巻いて胸をたたいた。