炎のゴブレット編
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
注意
セドリックの同級生が出てきますが、年齢については創作です。御了承の上、お進みください。
新学期までの一週間はあっという間だった。日々の業務に加えて、一大イベントの準備も行っていた。サクラが行うのは2校の使用する部屋や備品など細々したものであった。教師陣は授業準備に加えて、であるからこちらも忙しくしていた。スネイプに「用意するものがあれば」と言われていたものの、魔法についてはずぶの素人であるサクラがその言葉に甘えることはなかった。その代わり、休憩の合間にマダムピンスの了解を得て閲覧禁止の図書を読みあさる日々だった。自分のようなものに閲覧禁止の図書を見せてくれるとは、マダムの信頼に少しうれしくなった。
新学期当日はバケツをひっくり返したような雨であった。この土砂降りで生徒たちは濡れ鼠で登校していた。広間では生徒たちで賑わっており、同じく床も光を反射するのではないかというほどてかてかと濡れていた。サクラは生徒たちが滑らないようにと床を磨き上げていたが、いかんせん、拭いてはそこを生徒たちが通り濡れていく。これでは埒があかないと、大きなため息をついたところで女子生徒の悲鳴が聞こえた。
見ると、ピーブスが生徒めがけて水爆弾を投げているところだった。今まで、遠目に何度か見たことはあったが、ここまで至近距離で見るのは初めてだ。ピーブスは基本的に生徒を対象にいたずらをしているため、サクラの勤務中にわざわざいたずらをしてダンブルドアを怒らせるリスクより、お手軽な相手を選んでいるのだろう。広間を飛び回りながら水爆弾を投げつけ、生徒たちは大混乱だ。サクラはなすすべもなく立ち尽くしていると、頭上に水爆弾が飛んできた。無差別のいたずらに偶然飛んできたのだろうが、このままではずぶ濡れだ。サクラせめて背中だけ濡れる方が後々処理が楽だ、と背を向けた。
ばしゃん
と音がしたが、サクラの体は少しも濡れていない。どういうことだろうと振り返ると、セドリックが代わりに被害にあったようだった。とっさにかばってくれたのだろう。自分より頭二つは高いその髪を水でしたたらせていた。水もしたたるいい男とはこのことだろう。濡れた髪をかき上げ、セドリックは心配そうにこちらを見ている。覆い被さるような体勢で、余計セドリックの熱を感じてしまいそうだ。
「濡れなかったかい?」
「ええ、あなたのおかげで私はなんともないわ。でも、セドリック。これから新学期なのにずぶ濡れにしてしまってごめんなさい。」
そう謝るとセドリックは、むっと唇をとがらせた。年相応の仕草に少し毒気が抜かれた。
「謝られるより、『ありがとう』のほうがうれしいな。」
「ありがとう。セドリック。」
サクラの言葉にセドリックはうれしそうにはにかんだ。母性本能を刺激されるというのは、このことだろう。年甲斐もなく、胸がきゅんとした。
サクラは持っていたハンカチをセドリックに渡した。
「これ、よかったら使って。あまり、効果はないかもしれないけど・・・。」
上半身がずぶ濡れでは大きなタオルの方がいいのだが、手持ちはこのハンカチだけだ。申し訳程度で濡れた顔は拭けるだろう。セドリックはきらきらと目を輝かせて、サクラからそっとハンカチを受け取った。さわやかな青年が、つぶやくように「ありがとう。」と言うのに少し違和感は感じたが、サクラは彼の表情から悪い感情ではないと感じ、それ以上は考えなかった。
その間にマクゴナガルがやってきて、事態を収束させた。
そろそろ、時間だ。サクラはセドリックと一緒に大広間に入った。
今回は5列ある机の一つで、教師と生徒が向き合うようにして座っていた。サクラが適当な席に腰を下ろすと、セドリックは自然な流れでサクラの向かいに座った。席に座る頃にはセドリックの濡れた制服はぱりっとしたシャツとローブに変化していた。サクラが歩いている間に自分で乾かしたのだろう。7年生でも無言呪文ができるとは、さすがだ。
「ハンカチなんて・・・私、魔法を使うって考えがなかったわ。恥ずかしいことしてしまったわ・・・。」
「僕はサクラさんの気持ちがうれしいんだ。あなたの優しさが感じられる。」
そういって、渡したハンカチを優しくなでる指に目が向く。まるで大切な宝物のように扱うのが、自分のハンカチだというのが無性に恥ずかしい。違う意味で顔が赤くなってきた。
「今度は、管理人さんを君の魅力で堕としてるのかい?」
セドリックの隣に、同じ学年くらいのハッフルパフ生が座った。この青年も清潔感のある髪型と制服の着こなしだ。セドリックが優しげな青年であるのと対照的に、クールな貴公子という感じだ。一見して家柄の良さが見て取れる。
「失礼だな。僕がいつそんなことしてたっていうんだい。」
抗議する言葉にとげはない。きっと、普段から何でも言い合える関係なのだろう。
「無自覚というのも罪だな。そうは思いませんか?」
サクラの方に涼しげな目を向けた。いきなり話を振られて驚くも「・・・相手によっては罪よね。」と無難に返す。セドリックはそのやりとりにさらに、唇をとがらせて抗議の視線をサクラにも向けた。サクラはふっと小さく笑って「ごめんなさい、セドリック。調子に乗ったわ。」と弁解した。
「二人ともひどいなあ。・・・サクラさん、アーニーとは初めて?」
「ええ、初めまして。サクラ ヒナタです。」
「こちらこそ、初めまして。アーニー マクミランです。友人がいつもお世話になっています。」
見た目に反してお茶目な人物のようだ。つかの間、3人で休暇中のことや他愛もない話をした。セドリックもアーニーも『闇の印』を見ていたようで、やはり現場で感じたものがあるのだろう。二人ともその話のときは真剣な表情でいた。しかし、サクラに気を遣って早々に話を切り上げると、お互いの旅行先での面白い話をした。二人のスマートな対応にサクラも余計なことを考えずにすんだ。
一方、そちらに目線を向ける者も多かった。見目麗しい男子と、最近、入ってきた管理人。その組み合わせに不思議そうにする者、片方にうらやましそうに目線を注ぐ者と、様々な視線が向けられていた。その中には、稲妻を額に持った男の子とその友人も含まれていた。
「ねえ、あの女の人、新しい先生かな?」
「ロンったら!夏期休暇前に来られた管理人のサクラ ヒナタさんよ。」
「あの『騒動』のあとじゃ、少しの変化じゃ気がつかないよ。ハリーは知ってたかい?」
「・・・ううん、僕もそれどころじゃなかったな。」
「二人とも本当に何も知らないのね。」
やれやれ、と肩をすくめるハーマイオニーに目を向けず、二人はサクラの方に視線を向けたままだ。
「そういえば、フレッドが美しい姫が現れた!って言ってたの彼女のことかな。ちょっとクールな感じだけどきれいだし。」
鼻の下を伸ばすロンに、少女はまた、大きく肩をすくめた。
「もう・・・これだから。」
そのような応酬があったとは露知らず、新学期は始まったのだった。
セドリックの同級生が出てきますが、年齢については創作です。御了承の上、お進みください。
新学期までの一週間はあっという間だった。日々の業務に加えて、一大イベントの準備も行っていた。サクラが行うのは2校の使用する部屋や備品など細々したものであった。教師陣は授業準備に加えて、であるからこちらも忙しくしていた。スネイプに「用意するものがあれば」と言われていたものの、魔法についてはずぶの素人であるサクラがその言葉に甘えることはなかった。その代わり、休憩の合間にマダムピンスの了解を得て閲覧禁止の図書を読みあさる日々だった。自分のようなものに閲覧禁止の図書を見せてくれるとは、マダムの信頼に少しうれしくなった。
新学期当日はバケツをひっくり返したような雨であった。この土砂降りで生徒たちは濡れ鼠で登校していた。広間では生徒たちで賑わっており、同じく床も光を反射するのではないかというほどてかてかと濡れていた。サクラは生徒たちが滑らないようにと床を磨き上げていたが、いかんせん、拭いてはそこを生徒たちが通り濡れていく。これでは埒があかないと、大きなため息をついたところで女子生徒の悲鳴が聞こえた。
見ると、ピーブスが生徒めがけて水爆弾を投げているところだった。今まで、遠目に何度か見たことはあったが、ここまで至近距離で見るのは初めてだ。ピーブスは基本的に生徒を対象にいたずらをしているため、サクラの勤務中にわざわざいたずらをしてダンブルドアを怒らせるリスクより、お手軽な相手を選んでいるのだろう。広間を飛び回りながら水爆弾を投げつけ、生徒たちは大混乱だ。サクラはなすすべもなく立ち尽くしていると、頭上に水爆弾が飛んできた。無差別のいたずらに偶然飛んできたのだろうが、このままではずぶ濡れだ。サクラせめて背中だけ濡れる方が後々処理が楽だ、と背を向けた。
ばしゃん
と音がしたが、サクラの体は少しも濡れていない。どういうことだろうと振り返ると、セドリックが代わりに被害にあったようだった。とっさにかばってくれたのだろう。自分より頭二つは高いその髪を水でしたたらせていた。水もしたたるいい男とはこのことだろう。濡れた髪をかき上げ、セドリックは心配そうにこちらを見ている。覆い被さるような体勢で、余計セドリックの熱を感じてしまいそうだ。
「濡れなかったかい?」
「ええ、あなたのおかげで私はなんともないわ。でも、セドリック。これから新学期なのにずぶ濡れにしてしまってごめんなさい。」
そう謝るとセドリックは、むっと唇をとがらせた。年相応の仕草に少し毒気が抜かれた。
「謝られるより、『ありがとう』のほうがうれしいな。」
「ありがとう。セドリック。」
サクラの言葉にセドリックはうれしそうにはにかんだ。母性本能を刺激されるというのは、このことだろう。年甲斐もなく、胸がきゅんとした。
サクラは持っていたハンカチをセドリックに渡した。
「これ、よかったら使って。あまり、効果はないかもしれないけど・・・。」
上半身がずぶ濡れでは大きなタオルの方がいいのだが、手持ちはこのハンカチだけだ。申し訳程度で濡れた顔は拭けるだろう。セドリックはきらきらと目を輝かせて、サクラからそっとハンカチを受け取った。さわやかな青年が、つぶやくように「ありがとう。」と言うのに少し違和感は感じたが、サクラは彼の表情から悪い感情ではないと感じ、それ以上は考えなかった。
その間にマクゴナガルがやってきて、事態を収束させた。
そろそろ、時間だ。サクラはセドリックと一緒に大広間に入った。
今回は5列ある机の一つで、教師と生徒が向き合うようにして座っていた。サクラが適当な席に腰を下ろすと、セドリックは自然な流れでサクラの向かいに座った。席に座る頃にはセドリックの濡れた制服はぱりっとしたシャツとローブに変化していた。サクラが歩いている間に自分で乾かしたのだろう。7年生でも無言呪文ができるとは、さすがだ。
「ハンカチなんて・・・私、魔法を使うって考えがなかったわ。恥ずかしいことしてしまったわ・・・。」
「僕はサクラさんの気持ちがうれしいんだ。あなたの優しさが感じられる。」
そういって、渡したハンカチを優しくなでる指に目が向く。まるで大切な宝物のように扱うのが、自分のハンカチだというのが無性に恥ずかしい。違う意味で顔が赤くなってきた。
「今度は、管理人さんを君の魅力で堕としてるのかい?」
セドリックの隣に、同じ学年くらいのハッフルパフ生が座った。この青年も清潔感のある髪型と制服の着こなしだ。セドリックが優しげな青年であるのと対照的に、クールな貴公子という感じだ。一見して家柄の良さが見て取れる。
「失礼だな。僕がいつそんなことしてたっていうんだい。」
抗議する言葉にとげはない。きっと、普段から何でも言い合える関係なのだろう。
「無自覚というのも罪だな。そうは思いませんか?」
サクラの方に涼しげな目を向けた。いきなり話を振られて驚くも「・・・相手によっては罪よね。」と無難に返す。セドリックはそのやりとりにさらに、唇をとがらせて抗議の視線をサクラにも向けた。サクラはふっと小さく笑って「ごめんなさい、セドリック。調子に乗ったわ。」と弁解した。
「二人ともひどいなあ。・・・サクラさん、アーニーとは初めて?」
「ええ、初めまして。サクラ ヒナタです。」
「こちらこそ、初めまして。アーニー マクミランです。友人がいつもお世話になっています。」
見た目に反してお茶目な人物のようだ。つかの間、3人で休暇中のことや他愛もない話をした。セドリックもアーニーも『闇の印』を見ていたようで、やはり現場で感じたものがあるのだろう。二人ともその話のときは真剣な表情でいた。しかし、サクラに気を遣って早々に話を切り上げると、お互いの旅行先での面白い話をした。二人のスマートな対応にサクラも余計なことを考えずにすんだ。
一方、そちらに目線を向ける者も多かった。見目麗しい男子と、最近、入ってきた管理人。その組み合わせに不思議そうにする者、片方にうらやましそうに目線を注ぐ者と、様々な視線が向けられていた。その中には、稲妻を額に持った男の子とその友人も含まれていた。
「ねえ、あの女の人、新しい先生かな?」
「ロンったら!夏期休暇前に来られた管理人のサクラ ヒナタさんよ。」
「あの『騒動』のあとじゃ、少しの変化じゃ気がつかないよ。ハリーは知ってたかい?」
「・・・ううん、僕もそれどころじゃなかったな。」
「二人とも本当に何も知らないのね。」
やれやれ、と肩をすくめるハーマイオニーに目を向けず、二人はサクラの方に視線を向けたままだ。
「そういえば、フレッドが美しい姫が現れた!って言ってたの彼女のことかな。ちょっとクールな感じだけどきれいだし。」
鼻の下を伸ばすロンに、少女はまた、大きく肩をすくめた。
「もう・・・これだから。」
そのような応酬があったとは露知らず、新学期は始まったのだった。