炎のゴブレット編
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ついに、この日が来てしまった・・・。
最初の感想はそれだった。『印』つまり「闇の印」のことだろう。周りにいた3人も息をのむ。
「先ほどアーサーから連絡が来た。クィディッチ・ワールドカップに死喰い人が現れ、『それ』が打ち上がった。」
ダンブルドアの簡潔な状況説明に、マクゴナガルは質問した。
「けが人は?うちの生徒は巻き込まれていませんか?」
そう問う姿は教師としてあるべき姿だろう。隣にいたルーピンも心配そうな顔をしている。この1年という短い時間ではあったが、そこで教えた生徒の無事を思っているのだろう。対してスネイプは、初めこそ息をのんでいたが、すぐに無表情を貫き、状況を静観している。
「まだ情報が錯綜しておるが、けが人はおらんようじゃ。」
それを聞いてサクラを初め、マクゴナガル、ルーピンは胸をなで下ろした。ここまでの話では、今のところサクラの知っている話と同じである。まさか、アーサーが事件当日の夜更けにダンブルドアと情報交換をしていたとは、本では語られていないことだ。しかし、ダンブルドアの先を見通す力は、このような情報収集力も起因しているのだろう。本の裏側で、こうやって動いていたのだ、と知ると、場違いではあるが一読者だった身としては感慨深い。
ダンブルドアは言葉を続けた。
「しかし、問題がひとつある。『闇の印』を打ち上げた杖がハリーのものであった。」
「まさか!ハリーがそんなことをするわけがない!」
語気を強めるルーピンは、あの優しい少年がそのような悪に荷担するとは想像もしたくないようで、ダンブルドアの声を打ち消すように声を荒げた。
「ハリーは勇敢で、優しい子です。そんな子が敵に荷担するような行動をするはずがない。」
それに今まで沈黙を守ってきたスネイプが馬鹿にしたように小さく笑った。
「あやつが勇敢・・・?父親ゆずりのヒーロー気取りで目立ちたがり屋の悪い癖で、騒動に首を突っ込んだのではないのかね。」
「君は本当にあの子を見てそんな言い方するのかい?」
「この3年間、事あるごとに事件に首を突っ込んでいるところをいやと言うほど見てきましたからな。貴様こそ、『大親友』の面影を追って、あやつを見ているのではないか?」
スネイプの言葉にルーピンの表情が険しくなった。人の痛いところを的確についてくるのはスネイプの特技なのだろうが、この場でそんなやりとりをされても、関係が悪化するだけだ。スネイプもジェームズにはひどい仕打ちをされた過去がある。やはり、ハリーの自身を案じて守っているわけではないのだ、との会話からもひしひしと感じる。しかし、だからといって、ルーピンを傷つけていい理由にはならないだろう。ましてや、夜更けにダンブルドアが緊急招集をかけた意味をしっかり理解してもらいたい。
「お二人とも落ち着いてください。ダンブルドア校長はハリーが杖を使ったとは一言もおっしゃっていません。」
「左様。セブルス、お主「闇の印」は死喰い人にしか出せないことは知っておろう。」
まったく・・・。と、言葉で表さずとも、ダンブルドアは肩を落としてそれを示した。
「アルバス。では、一刻も早く手を打たなくては。わたくしは、その情報がどう扱われているか探りを入れてきます。」
「リータ スキーターの記事がどうなっておるか、心配じゃ。そちらはミネルバに任せよう。」
マクゴナガルはこの緊急招集の意味をいち早く理解し、行動にうつした。タンブルドアから言質を取ると、すぐさま猫の姿に変わり、校長室を駆けていった。
「このことについて魔法省がどう動くか。動いてくれるかも・・・定かではない。」
「『例のあの人』は死んだこととして処理しておきたいはずでしょうな。」
「しかし、奴らが動き出したことはみな肌で感じているはずです。自身を倒したといわれる少年をみすみす生かしてはおかないでしょう。ハリーを守らなければ。」
「ルーピン、その通りじゃよ。再び、メンバーを集めねばならぬやもしれん。」
「では、私とシリウスでそちらの方は動きましょう。」
ルーピンはそう言うと、足早に校長室を後にした。
少しの時間も惜しいのだろう。準備は早いに越したことはない。彼らの言うメンバーは「不死鳥の騎士団」のことなのだろう、と予想をつける。騎士団はシリウスの屋敷を拠点にしていたし、メンバー集めも、名の通ったダンブルドアより、ルーピンの方が動きやすい。
後に残ったのは、スネイプとサクラだった。
「サクラ。これは『狂い』はないかね?」
ダンブルドアの半月眼鏡のふちがきらりと光った。まるで、答え合わせをするかのような。
「ええ。私の知っているところでの差異はないです。」
その答えに満足した様子でダンブルドアは頷いた。
「お主も知っておると思うが、今年は外部の魔法学校の生徒が我が校にやってくる。ハリーだけでなく、そちらの動向にも注視してもらいたい。」
このような時期に外部の者をいれることはリスクを伴う。しかし、今年の山場である「炎のゴブレット」は政府もあげての歴史的な一大行事である。そう易々と取りやめることはできない。そのなかに、たとえ「死喰い人がまじっていた」としても。
「ただの管理人ならば動きやすいでしょう。わかりました。しかし、魔法の使えない私では対処しきれないこともでてくるかと。」
いくら未来の知識を持っていても、それに対応する力がなければマクゴナガルの言うように「死にに行く」ようなものだ。
「それについては、セブルスに頼るがよい。」
ダンブルドアの提案にスネイプは「また子守りですか。」と皮肉を言っていたが、背に腹は代えられない。今、自分の状況を知っていて、動ける人物というのは彼しかいない。
「なるべくご迷惑をかけないようします。」
「ぜひ、そうしてくれ。」
そう強く言い切った姿に腹が立たないかといわれれば、嫌みのひとつでもいってやりたいが、サポートしてもらう身としては、ここでの無用な衝突は避けよう。
朝が来たら、魔法界は恐怖に包まれるのだろう。
それでも、ホグワーツに彼らは帰ってくるのだ。
稲妻の傷をもった男の子。
そして、グレーの瞳のあの青年・・・・。
私にできるのはせいぜい話の展開が変わらないよう見守るだけだ。
あの図書室での笑顔が思い出される。
私はあの笑顔を奪う未来を知っている。知っていて、『狂い』のない流れに安堵する自分もいる。
「・・・・っ・・・・サクラ、如何したかの?」
思考の海に沈んでいるところで、ダンブルドアの声で呼び戻された。
「何かあったかの?」
アイスブルーの瞳がこちらを見つめる。サクラのいつもと違う雰囲気にダンブルドアだけでなくスネイプも様子を窺っていた。
「・・・・いいえ。何でもありません。」
サクラの答えにダンブルドアの瞳がわずかに細められた。
見透かすような視線にサクラは自然と視線を外した。
「ほう・・・・ならばよい。」
そういって、視線が外れると、緊張から解放されたように、詰まっていた息を小さく吐き出した。
もう遅いから、部屋で休みなさい。というダンブルドアの言葉に従い、校長室から出て、行きと同じくスネイプと廊下を歩く。真っ暗だった廊下には薄日が差し、明け方であった。
行きとは違い、帰りはいくらか歩調が緩やかで、サクラにとって歩きやすいはずだった。しかし、それを感じることもなく、頭の中は先ほどのことを反芻しており、まさかスネイプは歩調を合わせているなどとはつゆほども感じなかった。
部屋の前までスネイプに送ってもらい、部屋に入る前に向き合った。
「送っていただいてありがとうございます。」
「ああ・・・・」
スネイプはいつもと違い歯切れが悪い。何か言いかけるような素振りを見せるも、それは言葉にならず、消えていく。
「洋服も、ありがとうございます。助かりました。」
サクラの愛想笑いに胸がちくり、とした。いつもスネイプの皮肉に対しての、嫌みを内に隠したような愛想笑いではなく、力ないその笑みは今までみたものとは違っていた。
何かを隠している。それはあのカフェでの一件から分かっているが、それを暴く糸口をこの女は見つけさせない。
何を考えている?
開心術を使えば、ここで全て明らかになるが、それを使うのは何故か躊躇われた。
「あと一時間もすれば効果は消える。来週からは新学期だ。それまでに必要なものは準備しておけ。我が輩に頼むものがあればそれまでに報告しろ。」
分かりました、と短く答えたサクラを見届けて、スネイプは踵を返した。いらだったように足音を鳴らしながら、背を向け、歩を進めた。この苛立ちは秘密を打ち明けないサクラに対してなのか、術がなければ聞き出せない己の技量に対してなのか、スネイプ自身も判断ができなかった。ただ、さきほどの笑みは、自身の気分を下げるには十分な効果を発揮することだけはよく分かった。それを悟られないよう、足早に自室へと戻った。
最初の感想はそれだった。『印』つまり「闇の印」のことだろう。周りにいた3人も息をのむ。
「先ほどアーサーから連絡が来た。クィディッチ・ワールドカップに死喰い人が現れ、『それ』が打ち上がった。」
ダンブルドアの簡潔な状況説明に、マクゴナガルは質問した。
「けが人は?うちの生徒は巻き込まれていませんか?」
そう問う姿は教師としてあるべき姿だろう。隣にいたルーピンも心配そうな顔をしている。この1年という短い時間ではあったが、そこで教えた生徒の無事を思っているのだろう。対してスネイプは、初めこそ息をのんでいたが、すぐに無表情を貫き、状況を静観している。
「まだ情報が錯綜しておるが、けが人はおらんようじゃ。」
それを聞いてサクラを初め、マクゴナガル、ルーピンは胸をなで下ろした。ここまでの話では、今のところサクラの知っている話と同じである。まさか、アーサーが事件当日の夜更けにダンブルドアと情報交換をしていたとは、本では語られていないことだ。しかし、ダンブルドアの先を見通す力は、このような情報収集力も起因しているのだろう。本の裏側で、こうやって動いていたのだ、と知ると、場違いではあるが一読者だった身としては感慨深い。
ダンブルドアは言葉を続けた。
「しかし、問題がひとつある。『闇の印』を打ち上げた杖がハリーのものであった。」
「まさか!ハリーがそんなことをするわけがない!」
語気を強めるルーピンは、あの優しい少年がそのような悪に荷担するとは想像もしたくないようで、ダンブルドアの声を打ち消すように声を荒げた。
「ハリーは勇敢で、優しい子です。そんな子が敵に荷担するような行動をするはずがない。」
それに今まで沈黙を守ってきたスネイプが馬鹿にしたように小さく笑った。
「あやつが勇敢・・・?父親ゆずりのヒーロー気取りで目立ちたがり屋の悪い癖で、騒動に首を突っ込んだのではないのかね。」
「君は本当にあの子を見てそんな言い方するのかい?」
「この3年間、事あるごとに事件に首を突っ込んでいるところをいやと言うほど見てきましたからな。貴様こそ、『大親友』の面影を追って、あやつを見ているのではないか?」
スネイプの言葉にルーピンの表情が険しくなった。人の痛いところを的確についてくるのはスネイプの特技なのだろうが、この場でそんなやりとりをされても、関係が悪化するだけだ。スネイプもジェームズにはひどい仕打ちをされた過去がある。やはり、ハリーの自身を案じて守っているわけではないのだ、との会話からもひしひしと感じる。しかし、だからといって、ルーピンを傷つけていい理由にはならないだろう。ましてや、夜更けにダンブルドアが緊急招集をかけた意味をしっかり理解してもらいたい。
「お二人とも落ち着いてください。ダンブルドア校長はハリーが杖を使ったとは一言もおっしゃっていません。」
「左様。セブルス、お主「闇の印」は死喰い人にしか出せないことは知っておろう。」
まったく・・・。と、言葉で表さずとも、ダンブルドアは肩を落としてそれを示した。
「アルバス。では、一刻も早く手を打たなくては。わたくしは、その情報がどう扱われているか探りを入れてきます。」
「リータ スキーターの記事がどうなっておるか、心配じゃ。そちらはミネルバに任せよう。」
マクゴナガルはこの緊急招集の意味をいち早く理解し、行動にうつした。タンブルドアから言質を取ると、すぐさま猫の姿に変わり、校長室を駆けていった。
「このことについて魔法省がどう動くか。動いてくれるかも・・・定かではない。」
「『例のあの人』は死んだこととして処理しておきたいはずでしょうな。」
「しかし、奴らが動き出したことはみな肌で感じているはずです。自身を倒したといわれる少年をみすみす生かしてはおかないでしょう。ハリーを守らなければ。」
「ルーピン、その通りじゃよ。再び、メンバーを集めねばならぬやもしれん。」
「では、私とシリウスでそちらの方は動きましょう。」
ルーピンはそう言うと、足早に校長室を後にした。
少しの時間も惜しいのだろう。準備は早いに越したことはない。彼らの言うメンバーは「不死鳥の騎士団」のことなのだろう、と予想をつける。騎士団はシリウスの屋敷を拠点にしていたし、メンバー集めも、名の通ったダンブルドアより、ルーピンの方が動きやすい。
後に残ったのは、スネイプとサクラだった。
「サクラ。これは『狂い』はないかね?」
ダンブルドアの半月眼鏡のふちがきらりと光った。まるで、答え合わせをするかのような。
「ええ。私の知っているところでの差異はないです。」
その答えに満足した様子でダンブルドアは頷いた。
「お主も知っておると思うが、今年は外部の魔法学校の生徒が我が校にやってくる。ハリーだけでなく、そちらの動向にも注視してもらいたい。」
このような時期に外部の者をいれることはリスクを伴う。しかし、今年の山場である「炎のゴブレット」は政府もあげての歴史的な一大行事である。そう易々と取りやめることはできない。そのなかに、たとえ「死喰い人がまじっていた」としても。
「ただの管理人ならば動きやすいでしょう。わかりました。しかし、魔法の使えない私では対処しきれないこともでてくるかと。」
いくら未来の知識を持っていても、それに対応する力がなければマクゴナガルの言うように「死にに行く」ようなものだ。
「それについては、セブルスに頼るがよい。」
ダンブルドアの提案にスネイプは「また子守りですか。」と皮肉を言っていたが、背に腹は代えられない。今、自分の状況を知っていて、動ける人物というのは彼しかいない。
「なるべくご迷惑をかけないようします。」
「ぜひ、そうしてくれ。」
そう強く言い切った姿に腹が立たないかといわれれば、嫌みのひとつでもいってやりたいが、サポートしてもらう身としては、ここでの無用な衝突は避けよう。
朝が来たら、魔法界は恐怖に包まれるのだろう。
それでも、ホグワーツに彼らは帰ってくるのだ。
稲妻の傷をもった男の子。
そして、グレーの瞳のあの青年・・・・。
私にできるのはせいぜい話の展開が変わらないよう見守るだけだ。
あの図書室での笑顔が思い出される。
私はあの笑顔を奪う未来を知っている。知っていて、『狂い』のない流れに安堵する自分もいる。
「・・・・っ・・・・サクラ、如何したかの?」
思考の海に沈んでいるところで、ダンブルドアの声で呼び戻された。
「何かあったかの?」
アイスブルーの瞳がこちらを見つめる。サクラのいつもと違う雰囲気にダンブルドアだけでなくスネイプも様子を窺っていた。
「・・・・いいえ。何でもありません。」
サクラの答えにダンブルドアの瞳がわずかに細められた。
見透かすような視線にサクラは自然と視線を外した。
「ほう・・・・ならばよい。」
そういって、視線が外れると、緊張から解放されたように、詰まっていた息を小さく吐き出した。
もう遅いから、部屋で休みなさい。というダンブルドアの言葉に従い、校長室から出て、行きと同じくスネイプと廊下を歩く。真っ暗だった廊下には薄日が差し、明け方であった。
行きとは違い、帰りはいくらか歩調が緩やかで、サクラにとって歩きやすいはずだった。しかし、それを感じることもなく、頭の中は先ほどのことを反芻しており、まさかスネイプは歩調を合わせているなどとはつゆほども感じなかった。
部屋の前までスネイプに送ってもらい、部屋に入る前に向き合った。
「送っていただいてありがとうございます。」
「ああ・・・・」
スネイプはいつもと違い歯切れが悪い。何か言いかけるような素振りを見せるも、それは言葉にならず、消えていく。
「洋服も、ありがとうございます。助かりました。」
サクラの愛想笑いに胸がちくり、とした。いつもスネイプの皮肉に対しての、嫌みを内に隠したような愛想笑いではなく、力ないその笑みは今までみたものとは違っていた。
何かを隠している。それはあのカフェでの一件から分かっているが、それを暴く糸口をこの女は見つけさせない。
何を考えている?
開心術を使えば、ここで全て明らかになるが、それを使うのは何故か躊躇われた。
「あと一時間もすれば効果は消える。来週からは新学期だ。それまでに必要なものは準備しておけ。我が輩に頼むものがあればそれまでに報告しろ。」
分かりました、と短く答えたサクラを見届けて、スネイプは踵を返した。いらだったように足音を鳴らしながら、背を向け、歩を進めた。この苛立ちは秘密を打ち明けないサクラに対してなのか、術がなければ聞き出せない己の技量に対してなのか、スネイプ自身も判断ができなかった。ただ、さきほどの笑みは、自身の気分を下げるには十分な効果を発揮することだけはよく分かった。それを悟られないよう、足早に自室へと戻った。