アズカバンの囚人編
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学期末が終わり、生徒たちは家路につく。
ホグワーツは静けさに包まれていた。いつも生徒でにぎわう廊下も、大広間も、教室の授業の声も、今はしんと静まり返っていた。サクラが歩く靴の音が石畳の廊下に響いた。
フィルチとは夏季休暇中に今まで手を付けられなかった教室の清掃、故障した設備の修理をすることに決めた。教室は各教授たちで清潔に保たれているが、ここ数日はいくつかお願いされている場所の清掃にいそしんでいた。しかし、今日サクラが向かっている場所はフィルチの話とはまだ別の件だった。
大きな儂の像を見上げ、「レモンキャンディ」と唱える。すると、像が動き出し、それに合わせて床がせりあがっていった。床の動きが止まると、目の前にはたくさんの動く肖像画が壁一面に飾られた部屋が現れた。歴代の校長たちは居眠りしている者もいれば、こちらを興味深そうに見ている者もいた。
「ミスヒナタ、よう来てくれた。」
そういって奥からダンブルドアが現れた。
「ダンブルドア校長先生、おはようございます。」
あの学期末の後、しばらく、学校内の清掃にいそしんでいたサクラであったが、ダンブルドアに洋服と屋敷しもべ妖精の件のお礼を伝えに行った際、今日のこの時間に手伝ってほしいことがあるのだと伝えられた。偉大な魔法使いが手伝ってほしいこととは何かと疑問に思ったが、内容については伝えられぬままだった。そのため、清掃用具一式と動きやすい服装で来ることにした。
「先生の手伝いとは清掃でしょうか?何から致しましょう?」
「実は、今日は校長室の清掃を頼んだのではない。」
とりあえず、バケツやブラシを持ってきたが、早速それは無駄になってしまった。では、なんの手伝いなのだろう。
「まあ、もう少し時間があるようじゃ。一服付き合ってくれんかな。」
そう言って、ダンブルドアは杖を一振りすると、机にティーセットを用意した。ホテルなどのアフタヌーンティーでよく見かける3段のお皿にはサンドイッチ、スコーン、ケーキが盛り付けられていた。先ほど朝食を食べたばかりであったが、ケーキの甘さ、そして豊かな紅茶の香りが鼻をくすぐる。しかし、勤務時間が始まったばかりだ。誘いにのってもいいのだろうか…。
「しばし、年寄りのわがままに付き合ってくれんかの。」
そういうダンブルドアにサクラの足はテーブルへといざなわれた。
サクラは律儀に「失礼します」と声をかけて座った。背筋をのばし、背もたれから距離を置いて座る様子に、勤務中の緊張感は解かないという意志が見て取れた。
「仕事中ではあるが、しばし休憩にしよう。このスコーンは絶品でな。小腹がすくと屋敷しもべ妖精に頼んで作ってもらうんじゃよ。」
湯気の出ているあつあつのスコーンにたっぷりのジャムを乗せて、ダンブルドアはサクラに取り分けた。サクラはそれを受け取り、遠慮がちに口へ運んだ。
「…おいしい。」
スコーンの熱で甘さの引き立つジャムと、ほろほろした食感がたまらない。同じく用意された紅茶も香りだけでなく、舌に残る甘さを流して丁度良い渋さがあった。これならいくらでも食べてしまう。サクラは熱いうちに、もらったスコーンをきれいに平らげてしまった。
「食欲が戻ってきたようでなにより。」
ダンブルドアの言葉にサクラは驚いた。
ここ数日、学期末の後からサクラは食が細くなっていた。しかし、周りから心配されるように激減したわけでもない。そのため、周囲の教師陣から指摘されることもなく過ごしてきた。近くの席で見ていた人物ならまだしも、なぜダンブルドアが知っているのだろう。校長用の席とサクラが使っている席とでは距離がある。誰かから聞いたのだろうか。
「誰から聞いたか気になるかの。」
「周囲が気にするほど食事の量が変わったわけでもありませんし、気づかれた方というのは…マクゴナガル先生でしょうか?」
勤務初日からよく声をかけてくださる方の一人だ。まるで母のように食べ物を取り分けてくれるため、気づくのは彼女しかいまい。
「ミネルバも気づいてはいるようだが、儂に伝えたのはセブルスじゃよ。」
一瞬ダンブルドアが何を言ったのか理解できなかった。
スネイプが私を?あの歩けば嫌味しか言わないような輩が?渋い表情のサクラにダンブルドアは続けた。
「セブルスは根は優しい男でな。お主の様子の変化にいち早く気付いた。」
そのような言葉を聞いてもにわかには信じがたい。小説でのスネイプの優しさはリリーに起因するものばかりだ。誰にでも優しいわけではないと思う。何かダンブルドアの思惑があるのではないかと変に勘ぐってしまう。
「なれない環境で働き詰めでは滅入ってしまうじゃろう。今日は出かけてきなさい。」
つまり、ダンブルドアは私の食欲が減退している理由を環境の変化だと思っているのか。だから、こうしてもてなしてくださるし、休暇を与えようとしているのだな。
「つまり吾輩はこの娘の子守に遣わされたわけですな。」
「おお、セブルス来たか。」
件の人物が入り口から現れた。そちらも先ほどのサクラと同じように渋い表情をして立っていた。
ホグワーツは静けさに包まれていた。いつも生徒でにぎわう廊下も、大広間も、教室の授業の声も、今はしんと静まり返っていた。サクラが歩く靴の音が石畳の廊下に響いた。
フィルチとは夏季休暇中に今まで手を付けられなかった教室の清掃、故障した設備の修理をすることに決めた。教室は各教授たちで清潔に保たれているが、ここ数日はいくつかお願いされている場所の清掃にいそしんでいた。しかし、今日サクラが向かっている場所はフィルチの話とはまだ別の件だった。
大きな儂の像を見上げ、「レモンキャンディ」と唱える。すると、像が動き出し、それに合わせて床がせりあがっていった。床の動きが止まると、目の前にはたくさんの動く肖像画が壁一面に飾られた部屋が現れた。歴代の校長たちは居眠りしている者もいれば、こちらを興味深そうに見ている者もいた。
「ミスヒナタ、よう来てくれた。」
そういって奥からダンブルドアが現れた。
「ダンブルドア校長先生、おはようございます。」
あの学期末の後、しばらく、学校内の清掃にいそしんでいたサクラであったが、ダンブルドアに洋服と屋敷しもべ妖精の件のお礼を伝えに行った際、今日のこの時間に手伝ってほしいことがあるのだと伝えられた。偉大な魔法使いが手伝ってほしいこととは何かと疑問に思ったが、内容については伝えられぬままだった。そのため、清掃用具一式と動きやすい服装で来ることにした。
「先生の手伝いとは清掃でしょうか?何から致しましょう?」
「実は、今日は校長室の清掃を頼んだのではない。」
とりあえず、バケツやブラシを持ってきたが、早速それは無駄になってしまった。では、なんの手伝いなのだろう。
「まあ、もう少し時間があるようじゃ。一服付き合ってくれんかな。」
そう言って、ダンブルドアは杖を一振りすると、机にティーセットを用意した。ホテルなどのアフタヌーンティーでよく見かける3段のお皿にはサンドイッチ、スコーン、ケーキが盛り付けられていた。先ほど朝食を食べたばかりであったが、ケーキの甘さ、そして豊かな紅茶の香りが鼻をくすぐる。しかし、勤務時間が始まったばかりだ。誘いにのってもいいのだろうか…。
「しばし、年寄りのわがままに付き合ってくれんかの。」
そういうダンブルドアにサクラの足はテーブルへといざなわれた。
サクラは律儀に「失礼します」と声をかけて座った。背筋をのばし、背もたれから距離を置いて座る様子に、勤務中の緊張感は解かないという意志が見て取れた。
「仕事中ではあるが、しばし休憩にしよう。このスコーンは絶品でな。小腹がすくと屋敷しもべ妖精に頼んで作ってもらうんじゃよ。」
湯気の出ているあつあつのスコーンにたっぷりのジャムを乗せて、ダンブルドアはサクラに取り分けた。サクラはそれを受け取り、遠慮がちに口へ運んだ。
「…おいしい。」
スコーンの熱で甘さの引き立つジャムと、ほろほろした食感がたまらない。同じく用意された紅茶も香りだけでなく、舌に残る甘さを流して丁度良い渋さがあった。これならいくらでも食べてしまう。サクラは熱いうちに、もらったスコーンをきれいに平らげてしまった。
「食欲が戻ってきたようでなにより。」
ダンブルドアの言葉にサクラは驚いた。
ここ数日、学期末の後からサクラは食が細くなっていた。しかし、周りから心配されるように激減したわけでもない。そのため、周囲の教師陣から指摘されることもなく過ごしてきた。近くの席で見ていた人物ならまだしも、なぜダンブルドアが知っているのだろう。校長用の席とサクラが使っている席とでは距離がある。誰かから聞いたのだろうか。
「誰から聞いたか気になるかの。」
「周囲が気にするほど食事の量が変わったわけでもありませんし、気づかれた方というのは…マクゴナガル先生でしょうか?」
勤務初日からよく声をかけてくださる方の一人だ。まるで母のように食べ物を取り分けてくれるため、気づくのは彼女しかいまい。
「ミネルバも気づいてはいるようだが、儂に伝えたのはセブルスじゃよ。」
一瞬ダンブルドアが何を言ったのか理解できなかった。
スネイプが私を?あの歩けば嫌味しか言わないような輩が?渋い表情のサクラにダンブルドアは続けた。
「セブルスは根は優しい男でな。お主の様子の変化にいち早く気付いた。」
そのような言葉を聞いてもにわかには信じがたい。小説でのスネイプの優しさはリリーに起因するものばかりだ。誰にでも優しいわけではないと思う。何かダンブルドアの思惑があるのではないかと変に勘ぐってしまう。
「なれない環境で働き詰めでは滅入ってしまうじゃろう。今日は出かけてきなさい。」
つまり、ダンブルドアは私の食欲が減退している理由を環境の変化だと思っているのか。だから、こうしてもてなしてくださるし、休暇を与えようとしているのだな。
「つまり吾輩はこの娘の子守に遣わされたわけですな。」
「おお、セブルス来たか。」
件の人物が入り口から現れた。そちらも先ほどのサクラと同じように渋い表情をして立っていた。