アズカバンの囚人編
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濁った雲が空を灰色に染めていく。そこに加わるように祖母を焼く煙が上がっていった。
最期の日はいつもと変わらなかったらしい。叔父夫婦の家に同居していた祖母はその日もいつも通り、なんら変わらず過ごしていたらしい。
心身ともにしっかりしていた人だった。伸びた背筋と年老いても変わらぬ強い瞳と、そのなかにある優しい色が私は好きだった。つい数週間前、お盆の頃にあったばかりだった。
「そろそろ身の回りの整理をね。」
そういって着物や宝石、絵画などの美術品をそれぞれ親族たちに渡していた。祖母の行動に、まだまだ早いと笑う親族たちであったが、まさかこうなるとは誰も思いもしなかった。もしかしたら祖母だけは己の死期を悟っていたのではないだろうか。
同じことを思う者もいるようで、似たようなセリフが聞こえてくる。しかし、誰もが冗談半分、本気で考える者はいないようだった。そういう私も例に漏れず、祖母の性格を考えても単に己の年齢と親族の集まる時期だからということであったのだろうと思う。さすがばあ様だ。という叔父の言葉にみなが祖母のことを想って柔らかく笑った。
火葬を待つ間、ロビーで紅茶を飲んで時間を潰す。自らの鞄から小さな箱を取り出してみた。すこし色あせた黒いビロードに包まれ、それは時間が経過したことがうかがえる。開けるとゴールドのリングが現れる。祖母の身の回りの整理で現れたものの1つだ。黒の宝石がはめ込まれた重厚感のあるデザインだ。それほど物に執着しない私が唯一、目に留まったものだった。祖母には「サイズを直したら付けてみるといい。それはサクラのものになったよ。」そう言われ、まだ指にはめたことはなかった。しかし最期のとき、もう触れられない祖母を思うと、代わりに身につけたくなった。少しでも祖母を感じていたかった。
唯一はいるであろう親指に指輪を通す。冷たい金属の感触とは違った冷えた空気を感じる。次に肌にピリッと電流が走るような感覚が指輪を通して全身に行き渡った。
視界が真っ白になる。視界の端に見えたのは祖母とそれに寄り添う誰かの姿だった。
最期の日はいつもと変わらなかったらしい。叔父夫婦の家に同居していた祖母はその日もいつも通り、なんら変わらず過ごしていたらしい。
心身ともにしっかりしていた人だった。伸びた背筋と年老いても変わらぬ強い瞳と、そのなかにある優しい色が私は好きだった。つい数週間前、お盆の頃にあったばかりだった。
「そろそろ身の回りの整理をね。」
そういって着物や宝石、絵画などの美術品をそれぞれ親族たちに渡していた。祖母の行動に、まだまだ早いと笑う親族たちであったが、まさかこうなるとは誰も思いもしなかった。もしかしたら祖母だけは己の死期を悟っていたのではないだろうか。
同じことを思う者もいるようで、似たようなセリフが聞こえてくる。しかし、誰もが冗談半分、本気で考える者はいないようだった。そういう私も例に漏れず、祖母の性格を考えても単に己の年齢と親族の集まる時期だからということであったのだろうと思う。さすがばあ様だ。という叔父の言葉にみなが祖母のことを想って柔らかく笑った。
火葬を待つ間、ロビーで紅茶を飲んで時間を潰す。自らの鞄から小さな箱を取り出してみた。すこし色あせた黒いビロードに包まれ、それは時間が経過したことがうかがえる。開けるとゴールドのリングが現れる。祖母の身の回りの整理で現れたものの1つだ。黒の宝石がはめ込まれた重厚感のあるデザインだ。それほど物に執着しない私が唯一、目に留まったものだった。祖母には「サイズを直したら付けてみるといい。それはサクラのものになったよ。」そう言われ、まだ指にはめたことはなかった。しかし最期のとき、もう触れられない祖母を思うと、代わりに身につけたくなった。少しでも祖母を感じていたかった。
唯一はいるであろう親指に指輪を通す。冷たい金属の感触とは違った冷えた空気を感じる。次に肌にピリッと電流が走るような感覚が指輪を通して全身に行き渡った。
視界が真っ白になる。視界の端に見えたのは祖母とそれに寄り添う誰かの姿だった。
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