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正義の定義 第1章

アリスがワンダーランド邸に来てしばらく経った。うるさい子どもたちも賢い番犬も、大好きな院長もいない広い屋敷に慣れた頃。
春休みだった。新しい学校に向けて気持ちを切り替え始めた時、信じられないことが起きる。

__ワンダーランド氏の隠し子が発覚する__

もちろんアリスはこの報せに驚くが誰よりも驚嘆したのはクリス本人。
彼は何も知らなかった。これが真実ならば大変だ。彼はすぐに動いた。
直接、その子供に会いにも行きDNA検査も行った。
結果は__
『……』

喜ぶべきなのかはわからない。
だが検査結果はその子供を彼の実子とみなした。

その子供の母親は数年前に他界していた。不運な事故死だった。
だがその子の不幸はそれだけで終わらなかった。
母親の死後にその子を引き取った者が調べ上げ、父親がクリスだと知った。何とかして後継者にさせようと彼にコンタクトを取った。
それが叶ったのはアリスが養子として迎えられてから。
もう少し、行動が早ければすべてが変わっていただろうがもう遅かった。

その子の母親はクリスと一度関係を持っただけの愛人。
だからこそ母親も隠したに違いなかった。

アリスよりもいくつか年下の女の子。

アリスにも、彼女にも幸せになったほしい……。
そう願った優しい男はその子を引き取った。面倒を見ていた家族には幾ばくかの褒賞と口止め料を渡して今後一切の関係を断った。
出自を秘密裏に隠された女の子は、世間には今まで表に出さなかっただけの子どもとした。アリスと同じ言い訳は苦肉の策だった。彼なりの優しさであった。
アリスの妹として迎えられた女の子。アリスもその子も文句はない。いや、出なかった。

「アリス。こちらは妹のマリアだ」

クリスとマリア、そしてアリス。歪で型破りな家族。

「……はじめまして……“お姉さま”」
クリスによく似たまばゆいブロンドの美しい髪。
『……よろしく』
対してアリスの髪は雪のように白かった。

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