蝶の見る楽園 3.


 これを待っていたのだ。
 せっせと優しく舐められるうち、だんだんと声も抑えきれなくなってつい、啼いてしまう。
「はあっはあっ、あっあ! あっんっんんんっ!! んんっ、んっううっ、あっあっ!! あっやっ!! は、はあっ!!」
 甘い声を発し始めたのと同時くらいに、勇作の手が不穏に動き始め、その手は下半身をまさぐるようになり、下穿きを身に着けている状態から脱がさずに手を突っ込んだり、股間を撫で擦ってきたりして、それもまた新たな快感となって尾形を襲ってくる。
 特に股間の揉み込み方が上手く、痛いと感じる一歩手前から、物足りなさを感じてしまわないように優しく揉むその緩急のつけ方が非常に絶妙で、時にはガリガリと下穿きの上から引っ掻かれたりもするがそれも、また違った快感があって気持ちイイ。
 服の上からでも股間への愛撫は嬉しい。それに、これだけ上手いと逆に信頼が生まれる。勇作ならば大丈夫と何処かで思えてしまうのだ。
 これも教えていないことだが、きっと勇作なりに考えたんだろうことは窺える。他の男とは違う、勇作だけの愛撫だ。勇作が考えた、勇作でだけしか感じられない愛撫だと思うと、さらに身体の感度が上がってしまいそうだ。
 もう強請ってしまいたい。股間が気になる。気になるどころか、直で触ってもらわないことにはこの疼きはさらに増すばかりだ。
 もじっと腰を勇作に分かるよう動かすと、どうやら尾形の意図が伝わったらしい。いやらし気な笑みを浮かべ、乳首を舐めしゃぶりながら手だけが別の生き物のように動き、上半身を撫で回し始める。
 敢えて下半身には触れず、手のひらで味わうように身体を擦られその手の熱さにも感じ入ってしまい、手が這ったところには勇作の熱が灯ったように熱くなり、優しく触れられたり時には強く擦られたりもするその緩急のつけ方がまた上手く、つい快感を感じ取ってしまい身を捩る。
「はあっ、ああっ!! あ、あっ……ん、んっ!」
「甘い声を出すんですね、兄様は。兄様のそういう声、好きです。すごく好きで……こうしたくなる」
「んっ……?」
 乳首から口を放した勇作の舌が、するすると肌を辿って胃の辺りから下腹まで行き着き、唾液の線を上半身に残したまま、口と手とで下穿きのボタンを一つだけ外す。
 そこに何の意味があるのか分からず、さらに腰を揺らしたところだった。いきなりガッとふんどしの上から股間を噛まれ、突然のペニスへの刺激に驚き、勝手に腰がビッグンと跳ね上がってしまう。
「あああっ!! うぁっ!! やっあっ!! あああああ!!」
 快楽に貪欲になっている今、この刺激は強い。
 それも、加減せず噛んでくるものだから下穿き、そしてふんどし越しでも充分に刺激を受けることができる。
 ぎりぎりぎりっと股間に歯が食い込み、膨らんでいるソコを潰されているような感触に思わず震えてしまう。
「あ、はあっはあっ、ゆ、ゆ、さくっ、勇作殿ッ!! あ、はあっ、き、気持ちいっ!!」
 尾形の訴えに気を良くしたのか、一旦歯が外されたと思ったら、今度はさらに奥まったところに噛みつかれ、ちょうど下の歯が会陰部に当たり、ぐりぐりと力を入れて噛まれてしまいもはや悶絶だ。
 まさかこんなところが感じると思ってもみなかったので驚くが、かなり快感が強い。寧ろ強すぎて、感じすぎてカウパー液が滲み出したのか、ふんどしの中が妙にしっとりとしてきた。
 羞恥と、あとは何だろうか。意味不明の感情が湧き出てきて、それがハッキリ疼きによるものだと認識した途端、一気に射精感が高まり、身体が勝手に細かく震え始めてしまう。
 身体がイキを求めて尾形に射精を強いてくる。
 だが、ここでイクのは違う気がするのだ。もっと我慢をして、我慢に我慢を重ねた上でのイキはまた、別格の快感がある。
 それに、もっと勇作に愛されたい。未だ愛され足りない。もっと愛してもらって、その上でイクならイキたい。
「はあっはあっ、ゆうさく、勇作殿ッ! ん、もっとして、いろいろして欲しいッ!! はあっはあっ、あっあっ」
 さらに強く股間を噛まれ、今度はすぐに離さずぎりぎりと歯が下穿きに食い込むくらいに会陰部含め、ペニスを噛まれ、思わず歯を食いしばってしまう。気持ちが良すぎる。
 実際は痛いほどだが、その痛みの中にも確かな快感が宿っていて、あごに力を入れられるたびにその快感が大きくなり、そして強くなって尾形に責めてくる。
 勇作には、噛み癖があるのではないか。それも、加減が分かっての噛み癖なのだから天性のものなのだろうが、噛み方が上手すぎる。
 思わず手を伸ばして勇作の頭をしゃりしゃりと掻き毟ると、やっと歯が外され一息吐いたところで勇作が身体を伸び上がらせてきて今度は唇を塞がれてしまう。
「んんっ、んんんむううっ!! んむっんっ、んむっふっはっ……は、あむっ!!」
 唇を啄むように吸われ、角度を変えてのそれは上がった尾形の息すらも飲み込む勢いで何度も成され、そのうちに呼吸をするために開けた口のナカへと舌が入り込むようになり、苦しさ半分で大きく口を開け放つとその隙を縫ってすぐさま舌が咥内へと入り込み、ナカを大きくべろっと舐められる。
「んんっ!! んっく、はっ……んあっ、んっあっんっく、はむっ!!」
 息をさせて欲しいが、勇作はそれすらも許さないとばかりに上顎を舐めしゃぶっては舌を柔らかく食み、時には優しく舌を舐めたと思ったらきつく噛んだりもしてその緩急つけた食み方にも感じてしまい、呼吸困難寸前まで追い詰められ、それに上乗せして快感までもを叩きつけられて、酸欠で頭の中がボーッとしてくる。
 気持ちよすぎて、苦しい。
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