蝶の見る楽園 3.
つい頭に手が伸びてしゃりしゃりと撫でてしまうと、それは嬉しそうに笑ってさらに舌を伸ばして乳首を舐めてくる。その素直さが、今はとてつもなく愛おしく、そして恋しい。
さらに頭を撫でてから顔を下に向かって突き出すと、その意図が分かったらしい。勇作が身体を伸び上がらせて来たので早速、唇にロックオンして狙いを定めキスしようとすると先に勇作の方から口づけられてしまい、柔らかで温かなものが唇に押し当たり、早速唇を啄むように吸う。
やはり、甘いと思う。この甘味は本当にどこから来ているのだろう。不思議に思うほど甘い。その味をさらに感じたくて何度も唇を吸うと勇作も同じように唇を吸ってきて、とうとう吸い合いになり、まるで遊んでいるように交代で吸っては唾液を啜り、そのうちになんだか笑いが込み上げてきてしまうとそれは勇作も同じのようで、二人して笑いながら口づけを交わしそして抱き合う。
「ああ、愉しい。あにさま……好き」
「俺もです、愉しいですね。とても、愉しくて気持ちイイ……勇作殿はやはり、助平ですよ。この……ド助平」
「違います! あ、兄様が相手だから……その、もっといろいろな兄様の顔が見たくて……だから助平じゃありません!!」
「そうでしょうか。充分に助平だと思いますけど。でも、きらいじゃないんですよね、助平。寧ろ、好きかも」
にまっと笑ってみせると勇作もますます笑顔になり頬ずりしてくる。つやつやの勇作の肌は熱くて心地よく、そしてしっとりとしている。極上の肌だ。
「勇作どの……」
甘えるように尾形も勇作に擦り寄ると、片頬を手で包み込まれすりすりと肌を擦られ、そのまま頭を抱え込まれてしまう。
しゃりしゃりと音を立てて頭を撫でられ、胸に抱え込まれるとふわっと勇作のかおりが鼻に掠り、温かで甘いそのにおいを堪能していると、そっと少しだけ離れたと思ったら額に一つ、口づけが落とされ、いきなり激しく掻き抱かれてしまい驚いているとそのまま布団に押し倒されてしまい、至近距離の真正面から勇作がじっと見つめてくる。
その顔は真剣そのもので、思わずのどがこくりと鳴ってしまう。
「ゆうさく、どの……?」
「私は兄様が好きです。兄様の全部を愛してる。だから……許してください。どうか、兄様を好きでいさせてください。ごめんなさい……」
突然何に対しての懺悔なのか分からないが、その言葉に対して尾形が返す言葉は一つだ。
「勇作殿の気持ち、嬉しいですよ。そうやって言ってくれるたびに、俺はいつも有頂天です。もっと、勇作殿に愛して欲しい。勇作殿の、愛が欲しい。たくさん欲しい、もっと欲しい。だから、するんでしょう……? そして今、こうしているんでしょう? ここなら誰の邪魔も入らない。許す、許さないではなく、愛することしかない世界に居ます。勇作殿がするべきことはただ一つ、俺を愛することです。簡単でしょう? そして、とても難しいこと。できますか? 勇作殿に。俺を愛せる?」
勇作は甘い吐息をつきながら、さらに迫って来てゆったりと淫猥な表情を浮かべ、言葉を紡ぐ。
「それは……息をするより簡単ですね。私にとって兄様は、そういった位置に居ます。難しくなんかない。兄様を愛するのに難しいことなんて一つもない。好きです……兄様、好き……」
そっと顔が近づき、唇に柔らかで温かな感触が拡がる。ふわっふわっと何度も真綿の口づけが落とされ、次第にそれは深さを増し啄むようなそれに代わる。
「ん、んン、ふっ、はあっ……は、あっ……ん、んむ、んっんっ、はあっあっんむっ! んっんっ!!」
薄く開けた口に舌が入り込み、ナカをべろりっと舐められる。すると感じる甘い味。官能的な味がする。他の誰にも感じたことのない味だ。不思議な、勇作だけの味が好きだと思う。
尾形からも腕を伸ばして勇作の首に絡め、さらに口づけを強請るとそれに呼応するよう、舌を柔らかく食まれ、じんっとした快感と痛みに身体を震わせていると徐に勇作の手が動き、尾形のシャツを脱がし始める。
ボタンすらもじっくりと愉しむように一つ一つゆっくりと外され、そのたびに露出する肌に指の腹が滑り、その熱さにも感じ入ってしまい、たった指だけでもこんなに感じてしまう自分に驚く。
と同時に必然のような、まるでこうなるのが当たり前のような気もしてきて、じんわりと胸に熱いものが拡がる。
そしてすべてが外されると肌の露出している面積が当然のように広くなり、勇作がほうっと熱い吐息をつきながら尾形の胸の中央をゆっくりと指の腹で撫でる。
「きれい……あにさま。あにさまは、きれいですね。すごく、そそられる……」
穴が空くほど見つめられ、逆に落ち着かない気分になってきた尾形は顔を横に向け、視線だけを勇作に寄越すと、眼があった途端急に男くさい表情に変わった勇作は、尾形の頬に口づけてきて、その唇はあごの下へと入り、喉仏を柔らかく食まれる。
硬い歯が肉に食い込む感触がやたらと今は気持ちがイイ。尾形も勇作に負けず熱の篭った息を吐き出すと、さらに歯が食い込み実際、痛いほどだがそれがまた、気持ちがイイ。
痛覚が何処かへ飛んで行ってしまったのか、結構な力で噛まれているが、痛さももちろん感じるけれどそれよりも快感の方がうんと強い。
「あ、あはっ、はあっはあっ、い、痛っ……んっ、はあっはあっ、はっ……はあぁっ!! んっ……!! ゆ、さくっ!!」
呼び捨てで名を呼ぶと、ゆっくりとのどから歯が外れ、言葉で謝る代わりに舌先が噛まれたところに這い、その緩急つけた愛撫にすっかりとやられてしまい、さらにペニスが硬くなってくる。