蝶の見る楽園 2.


 いつの間にか上手くなった勇作の愛撫で、果たして満足できるかは謎だが、されてみたいとは思う。
 勇作の本気がどんなものか、この身体で体感してみたい。そういった欲が身体と心に満ち溢れ、逆手にシーツを握って次の刺激を待つ。
 次はどんな感じることをしてくれるのか。
 勝手に心臓が早く鼓動を打ち始め、生唾をごくんと飲み下すと勇作の顔があごの下に入り、喉仏を噛んでは舐めてきて、痛みと快感が綯い交ぜになったその愛撫に勝手にのどが何度も鳴る。
 そのうちに勇作の唇はだんだんと下へと降りていき、胸の中心に舌が乗りベロっと舐めた後、左胸を揉み始め、右胸は硬くした舌先で乳輪の縁をなぞったり勃った乳首を突いてみたりと、本格的な愛撫が始まる。
 尾形はといえば、そのあまりの気持ちよさに勝手に息が荒くなり、胸を激しく上下させ、逆手に握っていたシーツを引くようにして快感に耐える。
「あ、あはっ! は、あ、ああっ、んっくう、はあっはあっはあっ、はあっ、や、気持ちいっ……!!」
 ちゅばっと音を立てて乳輪が勇作の口のナカへと消え、真空状態のソコできつく吸われたり、舌でべろべろに舐められたり、少し痛いと感じるくらいの力加減で乳首をコリコリと噛まれたりと、様々な刺激が胸に与えられ、悶絶する尾形だ。
 思わず身を捩ると、ふっと右乳首から唇が離れ、すぐに左乳首責めに切り替えたようで、勇作の熱く柔らかな舌が乳輪を舐め、そして硬くした舌先で乳首を突くように舐めたりと、右乳首と同じような愛撫を施され、あまりの快感に歯を食いしばると勇作の指が唇に触れる。
「声……出して。イイ声、聞かせてください。兄様の感じている声が聞きたい……!! 聞きたいです、兄様」
 そう言ってすりすりと唇を指の腹で撫でられ、それにも感じてしまい小さく舌を出して勇作の手を舐めると、第一関節くらいが口のナカへと入って来て、しきりに舐めるともっと口のナカへと指が入って来て、咥内を掻き混ぜられる。
「あっぐ、んぐ、んっく、んぐ、んぐううっ……あ、はあっはあっはあっはあっ、かふっ、かはっ!!」
 あまりの苦しさと快感に噎せ込むと、ゆっくりと指が口から出て行き、尾形の唾液塗れの手はいじっていない方の乳首に置かれ、唾液のぬめりを利用してぬるぬると擦ってくる。
「あ、あ、あは、あはっ! はあっはあっ、んっく、はあっはあっ……あ、はあっ」
 一体、いつからこんなに色事が上手くなったのだろう。あの拙かった勇作が、今は少し恋しくて、そして嬉しい。
 勇作をこのように淫乱に育てたのは自分だという優越感に大いに浸り、シーツから手を離して勇作の頭を抱え込むようにして撫でると、乳首を舐めながら勇作が頬を染めて嬉しそうに笑う。
 その笑顔が何だかひどく幼げで、していることは立派な大人のする愛撫なのだがそのギャップに何故だか感じてしまい、ついしゃりしゃりと頭を掻き毟ってしまうと乳首責めが苛烈なものになり、かなり力を入れてコリコリコリコリと連続して左乳首を噛まれてしまい、さすがに痛みが勝つそれだが、でも気持ちイイ。この痛みがたまらなく、心地いいのだ。
 不思議な感覚だが、いま感じていることに嘘など吐けない。
 勇作の血色がよく形のいい唇が、今は何だかべつのモノのように感じる。しきりに吸ってきては舐められた乳首は乳輪共々真っ赤に色を変え、それでも未だ勇作は許すことなく乳輪を舐めてくる。
 舐めていない方は、長い指を使って乳首を抓んできて、両乳首共に隙無く刺激を与えられる。
 感じすぎて、胸が痛い。ひりひりもするし、乳首は噛まれ過ぎて鬱血痕まで浮き出ており、勇作の本気が窺える。
 本気で、尾形をどうにかしようとしているその勇作の心の表れかもしれない。
 それに気づいた頃には乳首は完全に性感帯としていじられ続けた所為で、身体全体までもが感じるようになっていて、勇作の手が身体を這い回るたびに身体が勝手にビグビグピクピクと動いてしまう。
「あは、あは、あはぁぁぁっ!! はあっはあっ、んっんっ、か、感じるっ! あっあっ、も、もうソコはっ……!! 勇作殿ッ!!」
「未だやりますよ。兄様が何処へも行かないように……私のモノにする。挿れなくても、私のモノです、兄様は」
 勇作の独占欲を見るのは初めてではないが、こんなにあからさまにこういった言葉を聞くのは初めてかもしれない。それに似た言葉は聞いたが、こうも断固とした言葉をまさか勇作が口にするとは驚きだ。
 じんっと、胸が熱くなる。
 だったらもう二度と、離さないで欲しい。何処へも行けないように、繋ぎ止めておいてくれれば、尾形だって浮気まがいの真似などしないで済む。
 それが勇作にできればの話になるが。
「んっ……はあっ、勇作殿も、脱いで……身体が見たい。見て、興奮したい。あ、はあっ……服、脱いでください」
 するとすぐにでも勇作は自分の軍服に手をかけ、性急に脱ぎ始める。じっと見ていると、次第に真っ白な肌が露わになり、はだけたシャツ一枚にふんどしだけの姿になり、改めて覆いかぶさってくる。
「あにさま、好き」
 ちゅっと軽く唇に口づけが落とされたと思ったら、どろっと大量の唾液が勇作の口から尾形の咥内へと零れ出てきて、夢中になって受け止めつつ生温かで甘ったるい勇作の体液を飲み下す。
 少しぬるついたそれは、独特の甘さを持っていて、のどを鳴らすたびにふわっふわっと甘い味が鼻に立ち上って気持ちが良く、つい夢中になって勇作の頬を両手で包み強請ると、さらに大量の唾液が零し落とされてくる。
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