空を泳ぐ鯨 2.


 ものの数分で自分がこんな風になるとは思っていなかったが、ペニスは既に暴発寸前まで追い上げられており、必死に肩と胸を動かして荒く甘い息を吐きながら両手で勇作の髪を掻き毟り、快感を訴える。
 何か声でも出さないと、イってしまいそうだ。
「だ、だめ、だめだ勇作ッ!! はな、離してくれないとっ……で、出るっ!! 出るから、離しっ……ああああ気持ちイイイイッ!! だめやだっ、やだっ!! ああああああうああああああ!! イック、イック、イックううううっ!!」
 徐にぬぽんっと音を立てて勇作が口からペニスを抜き取り、舌なめずりしながら膨れ上がった亀頭へ何度もキスを落とし、妖艶に笑ってみせてくる。
「んー? 兄様もうイってしまうの? 未だだめ。えっと、男の人って裏筋って弱いんですよね。私もです。兄様も……そうだといいな。未だ兄様の陰茎をかわいがっていないし……いじめてもいない。早漏はよくありません。ね? 兄様……ほら、裏筋です。きっととても気持ちイイです。もっと良くなってくれないと……」
 そう言うなり、尖らせた舌先を使い、下から上へ裏筋を辿り始め、思わぬ快感に「ヒッ!!」と声が出てしまう。
「あ、ああっ……や、止めっ、止めてくれっ……!! ホントに、イクッ……!! ああっ、あああああああああ!! イック、イック、イックうううううっ!!」
 尾形がそう言って取り乱すが勇作の責めは止まず、タマまでもを舐め始め、興奮によりぷるんぷるんに膨らんだタマを舌先で弾くように舐めてきて、快感のあまり勝手に腰が跳ね上がってしまう。
 こんなことをこれからもっとされたら、本当にイってしまう。冗談でもなく、本気でイキたい。
 だが、そんなことは勇作には関係ないらしい。初めてだというのにこの達者な舌使いはどうだ。まるでフェラチオに慣れ切った女みたいではないか。
 勇作の顔つきを見ても完全にこの場の空気に酔ったようになっていて、真っ赤に染めた頬だけが幼さを残しなんとも色っぽい。
 この色気と幼気が同居した勇作だからこそ、視界に映るだけで尾形もソノ気になる。そういうものを、勇作は持っている。これは勇作の持ち合わせた勇作だけのモノだ。
 それが、やけに今は愛おしい。
 その勢いに任せ、少し意地悪したくなってしまった尾形は妖艶に身をくねらせ、ぐいっと腰を持ち上げてやる。すると勇作ののど奥にペニスが刺さったのだろう「ぐぶっ!!」という苦しそうな声がした後、ぎゅっと硬く目を瞑った。
 嘔吐反射でも来たか。
 だがしかし、勇作はペニスを放そうとしなかったのでさらに意地悪心が募り、両手を使って勇作の後ろ頭に乗せて押すと、今度こそ「がぼっ!!」というのどに何かが詰まったような声がして、勇作の顔が真っ赤に染まる。
 そのまま腰を小刻みに動かしてイラマチオを強要してやる。放すだろうか、ペニスから離れて息でも整えるのか。
 それでも勇作は放そうとせず、寧ろ今度はのど奥を使ってペニスを押し潰すように刺激してくる。
「ん、んむ、んむううっ!! はあっ、んンッ、んっんっんっん、ぐぶ、んぐっ……!!」
 尾形が腰を動かしてピストンするたびに勇作が声を出し、苦しいだろうに絶対にペニスから離れない勇作に驚く尾形だ。
 すぐに放して、何をするんだと怒ってくるものだと思っていたのに勇作はそうしなかった。どころか、尾形のわがままを受け入れ、従おうとしている姿に胸が熱くなる。
 それと同時に一気に罪悪感が芽生え、そっと勇作の頭から手を退かすとゆっくりと勇作が頭を引いていく。そのまま口からペニスを抜き取るモノだと思っていた尾形はじっとその様子を窺うと、瞑っていた眼を開けた勇作の視線と出逢い、その眼に獰猛な光が宿ったと思ったその瞬間、思いっ切りのど奥の奥までペニスを咥え込み、じゅぶじゅぶと音を立てさせながら激しいストロークが始まる。
 それに一切の容赦はなく、頭をしきりに前後に動かし舌でペニスを舐めしゃぶりながらのストロークは気持ちがよく、つい大きな喘ぎ声がのどから飛び出てしまう。
「あああああああっ!! うああああっ、ああああっ、あああああああああー!! やっ、あっ……!! やあああ気持ちイイイイイイッ!! い、やだっ!! ああっああっ、イク、イクッ!! やっ、俺が悪かったから、悪かったから!! だめっ、ああああああああああイックうううううっ!! ああああああああああ!! イック、イック、ああああイックううっ!!」
 足が勝手に跳ね上がり、腰が捩れるが勇作は構わずイクと言っている尾形のペニスの根元をぎゅっと掴み、射精させないようにして更なるストロークを繰り出してくる。
 もはや悶絶モノだ。
 ペニスは痛いほどに気持ちがよく、出し挿れされるたびに堪えられない快感が巡ってくるというのに射精は許されない。
 ある意味、例えてみれば天国と地獄の両方を味わっている気分だ。
 必死で根元を抑えている手を退かそうとするが許してくれず、今度はのど奥を使って亀頭を潰し始める。
 硬くした舌と上顎でぱんぱんに膨らんだ亀頭を押し潰されるのは今は快感が過ぎる。もうイってしまいたい。
 というより、イク。イってしまう。こんなことをされれば、男ならばいやでもイクだろう。そんなことを勇作は強いてくる。
「もっ……イクッ!! イってしまいたい!! はな、離してくださいイクッ、イクッ!! あああああイックうううッ!! うああっ、ああああ離せッ、離せぇっ!! やっだっ!! イクッ!!」
 懸命に身を捩り、何とかして勇作の手から逃れようとするがなかなか逃げ出せもせず、射精感は高まるばかりだ。そして、尾形に苦痛と快楽を押しつけてくる。与えてくる。
 限界が来ている。散々嬲られたペニスは快感に押し潰されそうになっていて、多分だがカウパー液が大量に勇作の口へ流れているはず。だがそれをもろともせずに愛し続ける勇作の根性も相当なものだ。
 頑固な点というものが、ここでも似たらしい。
 快感も、過ぎると毒になる。もう気持ちよくて苦しくてたまらない。涙が勝手に溢れてくる。
 涙ながらに懇願に入る尾形だ。もはやプライドなどそんなことは言っていられない。イかないことには何も始まらないし、終わらない。
「おね、おね、おね、おねがっ……!! も、イクッ……!! イかせてください、イク、イックッ!! ああああだめホントに、イキたいっ!! 男なら分かるでしょう!? はあっはあっ、苦しいっ……!! イかせてくれぇっ!!」
 すると今までだんまりを決め込んできた勇作が、根元は勝手に射精しないようがっしりと手で掴んだまま、ゆっくりと口からペニスを引き抜き始める。
 そこでも快楽が生じ、腰が勝手にビグビグと跳ねる。
「はあっはあっ!! ああっああっ!! き、気持ちいっ、気持ちいっ!! やっあっ!!」
 つい腰を揺らしてしまうと、勇作の顔も一緒に揺れてとうとう、ずるんっと口からペニスが抜き出され、ごぼっと大量の透明でぬるついた液が勇作の口から垂れる。
「んっ……はあっ。はあっはあっ、ん、はあっ、兄様イク? そんなにイキたいのですか?」
「さっきから、そう言って……!! 言っているでしょう!!」
「うーん……私のおねがい、一つだけ聞いてくれたらイってもいいです。イかせてあげます。兄様の精子、飲みます。おねがい、聞いてくれますか? 一つだけでいいんです。おねがい……」
 イかせてくれるなら、もう何でもいいと思った。おねがいだか何だか知らないが、今イけるのであればもはや何でもいい。
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