空を泳ぐ鯨 2.
その柔らかさたるや相当なもので、まるでふかふかの綿のようなものを押しつけられている気分だ。
けれど綿は熱くないし、ぬるついてもいない。紛れもない舌だが、あり得ないほどに柔らかなそれは尾形の心と身体をケアし、一気に性的快感へと押し上げられてしまい、ますますペニスに痺れが走り、イってしまいたい感覚が強くなる。
しかし、これで初めての愛撫とは驚きだ。勇作はエロスの権化ではなかろうか。我が弟ながら呆れてしまうほどに駆け引きが上手い。もっと言えば上手すぎる。
「ん、んっ……はあっ、あっや、あっあ……はあっはあっ、んっんっ! んんっンッ!! は、はっ……い、イキそうっ。下きついっ……汚れ、汚れるっ!! イクと汚れるっ!!」
やはりザーメンで濡れた下着を身に着けるのはいやで、つい口から出てしまうと、ゆっくりと勇作が離れていってその手は尾形の気ているセーターにかかり、無理やり服を剥いてくる。
その強引さについ戸惑うと、勇作が緩く笑いながら頬を赤くしてさらに服を引っ張ってくる。
「忘れてました、脱ぎましょうね、服全部。……そしたら、兄様のきれいな身体を見ることができる。うっかりしてました。さあ兄様、脱いでください」
「あっあっ、ちょ、あっ……!!」
あっという間にアンダーシャツごとセーターが首から引っこ抜かれ、上半身を晒してしまったら次は下穿きのボタンに勇作の手が絡み、無理やりボタンがぶちっといった音と共に外され、下着ごと下穿きを引っ張ってくる。
「早くっ……脱いでっ、脱いでください裸が見たい!!」
その焦ったような声に、実は勇作は思っているよりもずっと、余裕がないのではないかといった考えに落ち着いた。
落ち着き払っているように見えるが、実は案外と尾形の痴態に煽られて限界が近いのかもしれない。だから手順を間違えるし、こんなにも性急にコトを進めようとしてくる。
そう考えれば辻褄は合う。
そこまで考えたところで、ずるっと思い切り下穿きをずらされてしまい、その際勇作の爪が皮膚を引っ掻いたその所為で下着だけが身体に残り、パンツは剥ぎ取れてしまう。
すぐに勇作の視線は股間へといって嬉しそうに笑んで頬を真っ赤に染めた。
「わ、兄様のすごく勃ってる……。おっきいんですね、兄様の……」
徐に勇作の手が伸び、先端をすりっと撫でてくる。
「んっ……!! あぁっ……!!」
暫くすりすりと手のひらで撫でると、だんだんと暗色の下着の先端にできたシミが拡がっていくのが分かる。カウパー液が漏れ出しているのだ。
それに羞恥を覚えながら勇作の手を動きを見ていると、だんだんと顔が股間に寄って行ったと思ったら、いきなり下着の上からペニスの先端を舐められ、舌の熱さと布越しの刺激に勝手に腰が跳ねてしまう。
「あぁっ……!! ううあっ!! や、ちょ、なにしてっ……!!」
「ここ、すっごくエッチなにおいと味がする……兄様のコレ、私は好きです。やらしいにおい……もっと舐めたい味わいたい」
「えっ……ちょっと、待っ、あっあぁっ!!」
制止する間もなく、下着の上から何度も勇作の舌が這い、先端に布越しに犬歯を突き立てたりもして尾形を追い詰めにかかってくる。
そのうちに尾形の分泌したカウパー液と勇作の唾液で下着がびっしょりと濡れそぼり、いやらしいシミが拡がっていく。
だんだんと羞恥心が増していく。
確かにペニスも愛して欲しいが、一度でいいから乳首でもイってみたいと実は愉しみにしていたのに、勇作は忘れてしまったのだろうか。乳首でイかせてくれるということを。
不満は声に出て、つい腰を揺らしてしまう。
「っん! ち、乳首でイキたいっ!! ち、チンポでもイキたいけど乳首が……それに、よ、汚れるっ! パンツが……」
すると漸く顔を上げてくれた勇作はポカンとした間抜けな表情をしていて、だんだんと顔が赤く染まっていって、照れ笑いのような、そんな笑顔を浮かべて早速、尾形の下着に手をかけた。
「ああ、すみません。あんまりにも兄様の陰茎がかわいくて、つい夢中になってしまいました。そうですよね、確かにパンツが……ぐしょぐしょですね。じゃあ、脱がします」
腰を上げて勇作を助けると、するりっと足から下着が抜けて、とうとう全裸を晒すことになる。
そこで何処とない羞恥を感じてしまい、慌てて両脚を閉じるが膝に勇作の熱い手が乗りものすごい力で割り開かれ、そこで見えてしまうだろう何もかもに顔を真っ赤に染め上げるが、勇作は口をポカンと開けて顔を熟れた林檎のように赤くして尾形をじっと見つめている。
見つめられ過ぎて、視線が痛い。
「あ、あの、ゆ、勇作、殿……? 何か、おかしいですか。俺の裸……」
「……兄様、きれい……改めて見てみると、思っていたよりもずっとずっと、すっごくきれいだ……!! 肌も、すごくきれい真っ白。たまらない身体してるっ……!! あ、あに、あにさま、兄様っ!!」
がばっと抱きつかれ、荒く呼吸を繰り返す口は先ほどと同じく乳首を口に含んでしまい、愛撫にも力が入り、舌を優しく柔らかく使い、そして確実に尾形を追い上げてくる。
乳首は先ほどよりもさらに敏感になっているようで、ペニスへの愛撫も効いたのか身体全体が性的な快感に対して過敏になっているような気がするのだ。
こうして勇作に乳首を舐められると、痛めつけられた乳首は少しだけ痛さを潜め、ただただ尾形に快感を送りつけてくる。
それでも痛いことには変わりなく、痛みと快感が同居した乳首への愛撫に興奮が止まない。
「あっ、はあっはあっはあっはあっはあっはあっ、んっ、んっんっんっ、ああっ、あんんっ!!」
勝手に息が上がってくる。次いで甘い声ものど奥から漏れ出てしまい恥ずかしくなるが、勇作はどうやらそんな尾形の様子にだいぶ興奮しているようで、尾形と同じく勇作の息も上がっている。
「んん、はっはあっはあっはあっ、ゆう、さくっ……気持ちいっ、気持ちいっ!! ああっああっ、イキそうに気持ちイイ……!!あっあっ、イイッ、イイッ!! はっはっ、勇作も、脱いでください。服脱いで、裸見せて。勇作殿の裸が見たい。見て、興奮したい」
息も荒くそう言っておねがいすると、勇作が身体を起こして唇を舌でぺろりと舐めた。
「はあっはあっ、兄様も興奮したい? いいですよ、私の身体でよかったら……見てください。私のすべては兄様のモノですから」
肩で息をしながら早速、セーターに手をかけて脱ぎ、次いで白色のシャツも一つ一つボタンを外して脱ぎ捨て、最後にアンダーシャツを脱ぐと上半身丸出しの勇作のできあがりだ。
その肌は透けるように白く、けれども病的なのではなく健康的な真っ白さでほんのり桃色に染まっているのがさらにそそられる。
乳首も肌の色が白いからか薄桃色をしていて、乳輪も同じくかなり色素が薄い。
晒された上半身は程よく筋肉がついており、一目見てもきれいな身体つきをしていることが分かる。