空を泳ぐ鯨 2.
たまらなくなって身を捩り、腰を揺らすと「くすっ」と勇作がかすかに笑ったのが分かった。
「未だですよ、兄様。ソコは、未だ。乳首をイイコイイコしてあげ足りないです。もっと、優しく愛してあげますから待っていてください。こうして、舌を乗せて……ね?」
唾液でぬるついたふわふわの舌が真っ赤に腫れ上がった乳首に乗り、ゆっくりと時間をかけて乳首を滑り乳輪の上も滑って、ちゅっと吸われた日にはもうそれだけでイってしまいそうなほどに気持ちがイイ。
反則級の快感に、最早トロトロの尾形だ。
自然、甘い声がのどから漏れ出てしまう。それに羞恥を感じる間もなく、舌は乱暴された乳首をこれ以上なく優しく、柔らかく舐めてくる。
「んんっ、ああっあっあっ、うっく、き、き、気持ちいっ……!! や、だめイキそうっ……!! ち、乳首でイクッ……!! や、だ、あっ!! そんなに、されるとイクッ……!!」
「ん? 兄様乳首でイってしまうの? いいですけど……じゃあ、もっと痛くしないと」
その言葉に、背筋がぞくっと寒くなる。これ以上の痛みはごめんだ。確かに噛まれた後の快感はたまらないが、噛まれている間はもはや地獄の責め苦といっていいほどに痛い。
「やっやっ!! ゆ、勇作殿だめです違うっ!! 痛いのはいやです、いやだ!! 勇作ッ!!」
「でも、乳首でイキたいのでしょう? だったら、痛くしないと……兄様はいやでしょう? さあ、噛みますよ。ああでも、最初は優しくしてあげないと……」
すっかりヤる気の勇作に対し、尾形は完全に逃げの体勢に入っており、何とか勇作の下から這い出ようとするが許されず、しっかりと腰を両腕で抱え込まれてしまい、逃げることもできなくなった。
「さて、兄様改めまして……乳首でイってくださいね」
「や、やっ……いやだっ、やだっ!! やっ……!! はな、離し、離せっ!! 離せ勇作ッ!!」
「脅したってだめー。兄様は、乳首でイクんです。私が決めました。兄様は、気持ちよく乳首でイってくださいね。いやがる兄様も、かわいい」
でれれっと勇作が美麗な顔を緩めて笑い、早速右乳首に舌がふわっと乗る。かなりの熱さを孕んだその舌は丁寧に乳輪ごと乳首を舐め、そして尖らせた舌先で突いてきてはぢゅっと吸ったりと、優しい愛撫で責めてくる。
だがこれに惑わされてはいけない。その後には堪えられない激痛がやってくる。逃れようとしても逃れられなかった今、覚悟を決めるしかない。
イキたかったら、もうイってしまおう。我慢せず、下着は汚れるだろうが朝にでも家に帰って洗えば済む話だ。洗濯機が後はきれいにしてくれる。
ただ、それまでは汚れた下着を穿き続けなければならない羽目にはなるが、そこは我慢しかない。
ゆっくりと胸に這う舌の柔らかさを堪能することに決めると、何だか夢見心地な気分になってくる。この後に激痛が待っていたとしても、愉しんでしまえばいい。愉しめばいいのだ。苦痛だと思うから苦痛になるわけであって、これも一つの愉しみとして捉えればまた、飴と鞭も一興なのではないか。
そう決めると気持ちも楽になり、心底から愉しむにはまずは飴を思い切り堪能しよう。
そう決め、勇作が自分の乳首をかわいがっている様をじっと見つめると、勇作も上目遣いでこちらを見てきて、互いの目線を絡ませ合いながら尾形は愛撫に溺れ、勇作は優しく乳首を愛する。
そのうちに苦痛がやってくるだろうが、それも愉しみだと思えばいい。
ふかふかの舌は柔らかく乳首を舐め責めてきて、明らかな快感が乳首から身体全体に行き渡り、早速イキたい欲がせり上がってくる。
「は、あぁっ……! ん、んンッ、ん、ん、は、あっ……! ああっ、ンッ、ン、んンッ!!」
勝手に甘い声が口から漏れ出て、それに対し勇作は口に笑みを刷きながらひたすらに乳首を柔らかく舐めてくる。
そのうちにだんだんと乳首に寄せる愛撫が輪をかけて丁寧になり、勇作は自分の舌の柔らかさを知っているのか、とにかく優しく柔らかく乳輪含め乳首を舐めては尖らせた舌で真っ赤に腫れ上がった乳首を突いてきて、ふかふかの舌を使ってしゃぶってくる。
思わず熱い吐息が漏れかけた時だった。
勇作が目を伏せたその瞬間、がりっという鈍い音と共に乳首に激痛が走り、噛まれたのだと一拍置いて気づいたが、乳首はこれ以上なく遠慮なく噛まれ、前歯でごりごりと押し潰すように小さな尖りをいじめてきて、あまりの痛みに歯を食いしばるが痛いものは痛い。
「ぐうううっ!! ううっうあっうあああああ!! あああああ痛いっ、痛いッ!! ああああ!!」
思わず叫ぶが責めは止まず、さらに厳しい痛みを尾形に強いてくる。
歯で乳首を磨り潰されているような、そんな感覚の痛みに反射で涙が溢れ、目尻に溜まった涙は重力に負けてこめかみを流れベッドに落ちるがそんなことはお構いなしに勇作はさらに強く乳首を噛み、言葉では言い表すことのできない強烈な痛みに必死で泣きながら歯を食いしばるが、歯と歯の隙間から呻きのようなものが漏れ出し、自分が泣いていることを知る。
「うううううっ、ううっ、うあああっ、ああああああああああ、ひうっ! い、たっ……!!」
それでも勇作は止まらず、今度は犬歯も使って乳首をさらに責め立てるべく、尖りを食い千切る勢いであごに力を入れて噛んでくる。
こうなると、最早後悔しか残らない。先ほどは愉しもうと思っていたが、愉しめるレベルの痛みではないのだ。
反射でぐいっと勇作の頭を押して離そうとするが離れず、さらにきつく噛まれ思わず身体がビグッと跳ねてしまう。
「うあぁっ!! ああっああっ!! いっ……痛ぁっ!!」
とうとう両眼から涙が零れるが、確かに痛みを感じているはずなのに何故だが股間に熱が集まってくる妙な感覚を感じていた。
じんわりじんわりと、下半身が熱くなりそれは股間に持っていかれ明らかに熱いと感じるほどになると、そっと歯が乳首から離れていき、硬く瞑っていた眼を開けて下を見ると勇作の真っ赤な舌が見え、ちょんっと腫れ上がった乳首を突いてきた。
だが、今は未だ痛みしか感じず突かれるたびに身体が勝手にビグッビグッと動き、詰めていた息を「はあっはあっ」と荒く吐くと、だんだんと痛みが引いてくるのが分かり、それと同時に今度は飴と鞭である飴が与えられるようで、これ以上なく優しく勇作の舌が乳首に乗せられ、ふわっと舐められたことで一気に快感が乳首に拡がり、甘く啼いてしまう。
「はあっ!! はあっはあっ、あああああああああー……!! んああっ、はあああああ……!!」
「ん、兄様イイ声……かわいい、感じてるんですね。すごくかわいい声してます。兄様はやっぱり、かわいいな。これからは優しくしてあげますね。私の舌で、愛してあげる……」
そう言った勇作の表情は優しく、先ほどのケダモノのような獰猛さは形を潜め、ひたすらに優しく痛めた乳首をふわふわの舌で舐めしゃぶってくる。