空を泳ぐ鯨 2.
涙を浮かべながらこくこくと何度も頷いて見せる。
「わ、分かった。聞く、なんでも言うこと聞くから、い、イかせてっ……!! も、いやだあっ!!」
腰を震わせながらそう喚くと、勇作がカウパー液と唾液でてかてかに光る先端にちゅっとキスを落とし、愛おしげに手の中のモノに頬ずりを始める。
「ああ、やっぱり兄様はかわいいなあ……! 本当にかわいい。なんでそんなにかわいいかなあ……!! もっとひどくしてあげたくなっちゃうけど、おねがい聞いてくれるって言ってくれたし。イかせてあげましょう。では兄様、覚悟は?」
「で、できてるから早くっ……! 早く早くッ!! もっ、限界っ……!!」
「そうやって急かす兄様も、かわいい。では、いかせていただきます。ちゃんと精子、飲んであげますね。兄様のはどんな味でしょうか。……ふふ、愉しみ!」
「い、いいから早くッ!! 早く咥えろッ!! はあっはあっ、勇作ッ!!」
尾形が必死になって強請ると、流石に名前の呼び捨てには驚いたらしい。勇作の眼が一瞬丸くなるが、すぐに弧を描いて頬をますます赤く染め、手のナカでビンビンに勃起したペニスにキスを落としながらうっとりとこんなことを言った。
「呼び捨ても、いいなあ……! 兄様はなんでもいい。なんでもかわいくて、なんでも愛しい。手の中のコレも……すっごくでっかくなって、エッチな汁がたくさん漏れてて……かわいいから、食べちゃう!」
ぱくっと亀頭だけを口に含み、カリに唇を引っ掛けた状態でどうやら、フィニッシュを迎えさせてくれるらしい。
亀頭は尾形が一番弱い場所だ。尾形がというよりも、男全般弱いだろうソコをいじられるのは正直、とても嬉しい。
これで最高のイキを愉しめることがほぼ約束されたも同じこと。
現に、ただ口に含まれただけでイキそうになるのを必死にこらえるのが精一杯で、腰を捩りながら勇作の口淫に夢中になって啼いてしまう。
「はあっ!! あはあぁっ!! んっ、んっんっんっんっんっん、ああっ、あっああっああっああっ!! んっあっ、やっあっ、気持ちいっ、気持ちいっ!! やあああ気持ちイイイイイイイッ!! だめ、だめイクッ、イキそうイクッ!! やっ!!」
すると舌は亀頭を縦横無尽に這い回り、割れ目の部分やカサの部分も丁寧に舐めしゃぶってきて、またしても悶絶してしまう。
素早い動きで亀頭を嬲られしゃぶられ、あっという間に強烈なまでの射精感が襲い掛かってきて、先ほどと違うのは射精を遮る根元を握られていないこと。
ということは、気持ちよくイってしまえるということだ。
勇作の舌の赴くがまま、快感に身を任せるとさらに快感が輪をかけて尾形の身体に染み渡り、そしてイキを促してくる。
勇作も、暗にイけと言っている気がする。
「はあっはあっ、んあああああああ!! はっはあっ、だめ、だめイクッ!! ホントにッ……ああああイクううううううっ!! イック、イック、イック、イック、イックうううっああああああああー!!」
勝手に腰が跳ね上がり、足も同じように跳ねて身体は戦慄くように震え出す。
もうすぐ射精するという身体からの合図だ。
だが、なにか刺激が足りない。あと一歩のところで、強烈な刺激がもらえるともうイけるというのに。そう思ってペニスの快感に身を委ねているとそれが勇作にも伝わったのだろう、徐に亀頭をしゃぶっていた舌が動きを止め、その代わりに尖った犬歯が鈴口に差し挿れられたことで痛烈なまでの痛みと快感が噴き出し、あられもなくイってしまう尾形だ。
「うあああああああっ!! あああっ、ああああああああー!! うあああうううううイック、イック、イックうううううっ、イクイクイクイクイクイクイク、イックううううっあああっああっあああー!!」
ぶくぶくぶくっとペニスが膨れ上がる感覚がした後、ものすごい勢いでザーメンが勇作の咥内へと飛んでいるのが分かった。
だがそれは分かっただけに終わり、腰と身体を断続的に跳ねさせながら最高のイキの快楽に身を任せつつ、何度にも分けてザーメンを吐いてしまう。
「ああっ!! ああああイってる、イってるイってる、勇作のッ、口でイってるよおおお!! やあっ、やっあっ、き、気持ちいっ、気持ちいっ、あああああイイイイイイイイイー!! イイイイイイー!!」
一方の勇作は、大量に飛ぶザーメンを飲み込むことに必死になっているようで「ごぶっごぶっ」といった苦しそうな声が遠くで聞こえるが、今の尾形には関係がない。
身体をビグビグと跳ねさせながらイキ、だんだんと快感の波が去っていくが、それでも未だ快楽は身体に残っていて、ぼーっとする頭で顔を下へ向けると勇作と眼が合い、意地悪く口角が上がるとずるるるるるっと音を立てて亀頭を吸われたことで一気にまた快楽がペニスを包み込み、無理やりイかされる形で連続射精してしまう。
「うああっ!! あああああっ、も、イけないのにっ……!! ああああああああ気持ちイイイイッ!! イイッイイッ、イってる、イってる!! またっ、イってるううううっああああああああ!!」
そのまま心行くまでペニスを吸われ、もはやグッタリの尾形だ。
もう何も出ないと思われるまで吸われ続け、快感をしこたまぶつけられた身体は怠く、身体をヒクヒクさせながら荒く甘い息を吐いていると、身体を伸び上がらせてきた勇作の顔が思ったよりも近くにあり、思わずビグッと身体を跳ねさせるとそのまま口づけられ、両手で頬を包み込まれてしまい、逃れられないまま青臭い味のする口とキスする羽目になったが、その青臭いモノが自分の吐いた精子だと思うとなんだ複雑な気分になるが、キスは気持ちがイイ。
すぐにイイ気分になり、しきりに唇を吸ってくる勇作の唇を尾形も吸い、とうとう吸い合いにまで発展して、ちゅっちゅと音を立てさせながら啄むように唇を吸うと、勇作がのど奥で幸せそうに「ふふっ」と笑ったのが分かった。
なんだか不思議な気分になってくる。情交の最中に上げる声とは思えないほどにその声はひどく幼気で、薄っすらと眼を開けるとまず目に入ったのは細かく震える勇作の瞼だった。
長い睫毛を揺らし瞑っている眼は今は見えないが、それでいいと思う。いつだって夢中になっていて欲しい。眼を開く暇がないほどに、今この行為に溺れていて欲しい。
尾形もゆっくりと眼を閉じて舌を伸ばし、勇作の唇を舐めるとすぐにでもその舌は絡め取られてぢゅっと音を立てて吸われ、そして舐められる。
熱い舌だ。尾形の舌にまでその熱が移るのではないかと思われるほどに勇作の舌は燃えるように熱く、情熱を訴えてくる。
ゆっくりと口を開いて招くと、勇作の舌がするっと入り込んできてナカをべろりと舐められる。その舌にもやはり青臭い味が残っていて、払拭するように何度も舐めてやると「んっ……」と何とも色っぽい声が勇作が出した。
その声を聞いた途端、じんっと股間に快感が走り思わず身を捩るとその身体を掻き抱かれ、勇作の肌と密着することになり、そこでもやはり身体の熱さを実感する。
勇作は何処もかしこも熱い。身体も熱ければ手のひらも口のナカも舌も、何もかもが燃えているように熱いのだ。
尾形の体温がそこまで低いわけではないと思うのだが、勇作は熱いと思う。
その熱をもっと感じたくて勇作の舌を絡め取って自身のモノと絡め合わせると、ザーメンの味が薄れ漸く勇作の味が戻ってくる。