空を泳ぐ鯨 2.


 何もかも任せてしまおうと思うと、一気に快感が巡り身体の支配を始めた。その感覚が恐ろしく愛おしく、そして気持ちがイイ。
 身体を這う勇作の手も、熱い舌の感触も何もかもに快感が含まれていて、逆に戸惑ってしまうくらいだ。
 しかしそんな尾形を置いておいて、勇作の愛撫はさらに熱が入っていっているようで、触れる手も舌の動きも激しさを増し、尾形を追い詰めてくる。
 悩ましいカーブを描く腰のラインを丁寧に撫で、薄く腹筋が浮き出た凹凸を舌でなぞる。一体何処でこんなことを覚えてきたのだろう。
 薄っすらとそう思ったが、それは思っただけに終わりへそにも舌が入って唾液が溜まるほどにぺちゃぺちゃと音を立てながらしっかりと愛撫される。こういうところも、絶対に忘れが無い。
「ん……はあっ、はあっ……兄様の、おへそ美味しい。肌がもう美味しい。さらさらしてて、しっとりしてて、気持ちイイ……もっと触れたい」
 情熱的に勇作が独り言のように呟き、その手はとうとう尾形の弱い乳首に辿り着いてしまう。
 服は首までたくし上げられており、おそらく上半身は丸見えだろう。
 するすると勇作の手がそこかしこを這い回りながら悪戯に小さな乳首を突いたり、指の腹で撫でてきて、そのたびに快感で身体がピク、ピクと動いてしまう。
「ん、ちょっ……ソコッ……!」
「兄様、胸すごいきれいですね。ちっさい乳首。キレーな色してる……食べたい」
 妙な言い方をしたと思ったら、本当に口のナカに乳輪共々入れてしまい、真空状態の咥内で乳首がしゃぶられる。初めに感じたのは猛烈な熱さだった。次いで快感が一足遅れてやってくる。
 尖らせた舌先で突いてきたり、舐めたり、時にはこりこりと噛んで刺激を与えられ、そのたびに身体が勝手に跳ねてしまう。
 特に噛まれると痛いのもあるが、不思議な快感もあって痛みと同居したその快楽は尾形をトロトロに蕩かしていく。
 乳輪も余すところなく愛され、縁を尖らせて固くした舌先でぐるりと辿られたり、ふかふかの柔らかな舌で大きく舐められたりと、これで本当に初めての愛撫かと疑うほどの優しくも熱の入った勇作のテクニックに驚くと同時に、これ以上ない幸福を感じる。
 気づけばかなり呼吸が上がっていて、必死になって胸を上下させて荒く息を吐くと、さらに勇作の舌の動きに熱が入ったようで丁寧に優しく、こりこりと乳首を噛まれ舐められる。
「うぁっ……!! そ、ソレ、ソレ止めてもらってもっ、い、いやだ感じるっ……!!」
 勝手に跳ね上がる腰の動きを何とか鎮めようとしながらそう勇作に頼むが、どうやらこの責めに尾形が弱いと悟ったのだろう、さらにかりかりと少し力を入れて噛まれてしまい、思わず歯を食いしばる。
「うううっ……!! はあっはあっ、うっくぅっ……!!」
 噛み締めた歯の間から漏れる呻きのような声に、勇作も思うところがあったのか、手が伸びてきて指の腹で唇をなぞられ、そのまま指は歯を割って咥内へと入り込み、指をバラバラに動かすことでそれもまた新たな刺激になり、苦しさも混じっているが確かに感じる気持ちよさに溢れ出る唾液を必死で飲み下す。
「んんっ、んぐうっ、ふっふっ、あがっ……!! んっく、はあっはあっ、はっぐうっ!!」
 胸と口のナカの二点責めはかなりキく。快感でぼんやりとする頭の中、翻弄されている自分の姿を何となく想像し、顔に血を上らせてしまう。
 はしたなさすぎる。
 だが、気持ちイイ。それは初めての性的快感で、誰も尾形にそんなことをしては来なかったのもあり、胸が勝手に熱くなる。
 欲しがられるのは、きらいじゃない。寧ろ好きだ。ずっと手に入らなかったものが、自分の身体を愛撫している。愛してくれている。
 何だか泣きたくなってくる。勇作の愛情の深さが愛撫に出ているようで、好きにされるのもまた自身の悦びだ。
 手が口から出て行き、濡れたその指先を勇作が口に含みさも美味そうに舐める姿を見てさらに欲情が募る。
「兄様の唾液、甘い……すっごく甘くて、クセになる感じ……好き。大好き、兄様」
 一本一本の指をしゃぶり、笑んでくる勇作の顔は破壊力抜群なほどに色っぽく、何だか訳の分からない羞恥心が湧いてくる。
「やっ……あ、はあっはあっ、んっ……!」
 はあはあと甘い息を吐きつつ背を反らすと、勇作の顔がまるきり見えなくなる。それはいけなかったのか、咎めの言葉が入った。
「兄様、こっち見て。自分の乳首が舐められてるとこ、ちゃんと見てください。ほら、こうやって……美味しくてかわいい乳首が、ね?」
 ちろっと舐められ、思わず背中をベッドにつけて下を見ると、そこには上目遣いで真っ赤な舌を晒し、自分の乳首を突きながら舐めている勇作の姿が眼に入る。
「は、はあっ、ゆ、ゆうさくっ……ん、あっ……」
 美麗な顔に淫猥を描き尾形の身体を愛撫する勇作の姿は艶めかしく、それでいて何処かきれいでもあってつい見惚れてしまうと「くすっ」と勇作が笑い、右乳首をべろっと乳輪ごと大きく舐め、左は指で抓み、紙縒りを作るかのように捻ってくる。
「んん……あにさま、気持ちイイ? イイからそんな色っぽい声出すんですか? やらしい人……でも、そういうとこも好き……好き、大好き」
「そういうこと言うの、や、だっ……!」
 すると、またこりこりと小さな音を立てて乳首を噛まれ、思わずビグンッと身体を跳ねさせてしまうと、丁寧に噛んだ乳首を舐めながら勇作が笑う。
「だって、好きなのだから仕方がないでしょう? やらしい兄様が、私は大好き……かわいくて、好きですよ。ほらこっち見て、噛みますよ、舐めますよ。ちゃんと見て」
 息が上がって仕方がない。
 肩で息をしても胸を激しく上下させても快感は逃げてはくれず、胸から感じる快楽が強すぎる所為で、ペニスも痛いほどに勃起している。
 思わずもじっと腰を動かすと、勇作はどうやら気づいたようだが無視をすることに決めたようだ。
 さらに乳首の愛撫に力を入れる様子で、一番先の尖りを前歯で噛まれ、あまりの痛みに身体が勝手に逃げようとするが許されず、半泣きになって歯を食いしばるとまるで謝るかのようにふわふわの舌が噛まれ過ぎて膨らんだ乳首をこれ以上なく優しく舐めてくる。
「あっ……はあっはあっ、うっく、んっく、ふっはあっ……はあっ、も、痛いのは、いやだっ……!!」
「でも兄様、痛いの好きでしょう? 痛くされた後に優しくされるの、すごく好きなんでしょう? 止めてあげない。未だ愛し足りないんですから、もっと噛みますし舐めます。しゃぶりつくしてから……次へ行きましょうね」
 明るい笑顔を晒した勇作だが、すぐに淫猥な笑みに移り変わり早速宣言通り、今度は犬歯を使って乳首を噛み始めた。
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