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Prolog

「…はぁ。分かったよ。移動しよう」


少しの沈黙の後、諦めのため息とともに葵さんは了承をくれた。

よかった、葵さんが万が一来てくれなければ移動が難しくなる所だった。


早速移動の準備を始める葵さんの手に握られているのは


ーーー拳銃。


どこからどう手に入れてたのか、1ヶ月前は所持することすら犯罪だった武器類を何故か葵さんは出会った時から沢山持ってた。


昼間にうろついている小型の妖には、拳銃などの物理攻撃が効くものも多くいる。

例え殺せなくても足止めを出来たりするので、葵さんにはこの居住区の防衛役をおまかせしてた。


今回は、移動の際の防衛役になるわけだけど。


「どれくらい歩くことになりそうなのかな?」

「俺が言った時は一日でした。女性と子供がいるので、一日半くらいです」


「一日半!!?」


準備をしながら尋ねた葵さんのお兄ちゃんへの質問に驚いたのは他ならぬ私だった。

そんなに歩くなんて聞いてない…!

でも確かにこの辺りのスーパーやコンビニなどのお店はもう行き尽くしたから、かなり遠くに行かないと新しい食料にはありつけないのかもしれない。


覚悟を決めなきゃ。


「とすると夜明けに合わせて出発、夕方頃にどこかで野宿かな?」

「そうなりますね。野営の場所の目星もつけてます」

「みっちゃんが辛くなったら、俺がおぶってあげるよ」


話を進めていく葵さんとお兄ちゃん。

そんな2人の輪に参加することなく、光一さんは相変わらずの軽い声音で私に話しかけてきた。


「本当ですか?でも、私よりも奏ちゃんが心配です。
あんな小さい子に丸一日半の歩きを要求するなんて…」


私は、すみっこで丸まってる奏ちゃんに目をやる。

10もいかない歳の子に、あまりにも今回の移動は酷。


男性たちがローテーションしておんぶして移動する他ない。


いや。それに関してはきっと問題ないけれど、問題は奏ちゃんの妖への耐性だ。


奏ちゃんは唯一、この地下シェルターに保護した日から外に出ていない。



さすがに健康に悪いからたまに家の出入口の所までは連れていくけれどそこから出ようともしないし、玄関ですら嫌々、といった感じだった。
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