Prolog
「ただいま」
すっかりボロボロになった裏口を隠す元屋根だったものを退けて、そのまま地下に続く階段を降りる。
そして部屋の四隅と、真ん中に括りつけた懐中電灯が照らす薄暗い地下に辿り着く。
ここが私とお兄ちゃんの家。
そして、今住んでいるグループの家でもある。
「「お帰りなさい」」
入って早々に出迎えてくれた顔も声もそっくりな女の子が2人。
亜麻色の腰まである長いストレートヘアが特徴的の
同じく亜麻色の髪で肩上までのボブショートが似合う空音ちゃんの双子の妹
年齢は私の二つ下で二人とも16歳。
2人とはいわゆる幼なじみという関係で、家が近いのもあってよく公園で示し合わせもないのに出会っては3人で遊んでた。
「うん、ただいまー。はい、これ今日の調達品」
そう言って私はコンビニエンスストアだった所から貰ってきた缶詰等を2人に渡す。
2人にはこのグループの食糧管理係を任せている。
「いっぱいあるね」
「重くなかった?」
袋の中の食料を見て、再び顔を上げるタイミングまでも同じ。一人の人に聞かれたような感覚。
あまりのそっくりさにたまにドキッとするのは内緒。
「大丈夫、お兄ちゃんがほとんど持ってくれたから」
お兄ちゃんが迎えに来てくれたんだから羨ましいでしょ!って意味を込めて胸を張って二人に言ったとき
「いやー、ない胸張ったって意味ねぇって」
失礼極まりない茶化すような声が私の耳に入った。
彼の名前は
染められた明るい茶髪。
軽薄な声音。
お兄ちゃんの高校時代からのお友達で、こんな軽い見た目だけどお兄ちゃん同様文武両道。
もちろんお兄ちゃんの方が全てに置いて格上だけど!
「空音ちゃん、天音ちゃん。光一さん今日ご飯いらないってー」
2人にそう声をかけると、2人はいたずらっ子のような笑いを小さく浮かべ全く同じタイミングで頷いた。
「!? いやいやいる!ごめんって、許してみっちゃん!」
「うむ、許してしんぜましょう」
双子と私の様子に慌てて早々に謝罪をしてきて、
私のふざけたような答えで安心した素振りに分かりやすく変わる光一さんが面白くて思わず笑いが零れた。