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Prolog

「最近町を歩く妖達も見慣れないやつが多くなってきたからな。俺達の住む家も安全とは言えない」


あやかし


お兄ちゃんがこの魑魅魍魎達を「化け物と呼ぶのはあまりにも響きが不快だ」と決めた呼び方。


私も呼ぶようにはしているけれど、まだ慣れないままだ。


仮に呼び間違えたとしても、お兄ちゃんは自分の自己満足の呼び方だからと怒ることは無い。


ばけ……妖達にはほかの生物同様習性がある。


目や耳が悪いもの、いいもの
日差しを好むもの、嫌うもの。


お兄ちゃんが言うには、この町は昼間は人間を襲わない妖達がたくさんいて、
夜や天気の悪い日は妖たちの数こそ少ないが大型かつ攻撃的な妖が多いらしい。


昼の妖達であれば習性さえ知っていれば退けたり逃げることが可能だけど、
夜や天気が悪い時の妖には私たち人間が武器を用いようとも歯が立たないものばかりだそうだ。


だから基本的に食料調達等は昼の時間にやって天気の悪い日や夜は地下に籠る生活を繰り返してる。


「移動するのはいいけど、住む場所の目処はあるの?」

「ああ。前に三日間家を空けた時があったろ。その時に見つけてきた」

「おぉ、さすが。頼りになります。
帰ったら私からみんなに言うね」


私たちのグループのリーダー的な存在はもちろんお兄ちゃんだけど、全体に伝達したりするのは私の役割。


長く住んだ家には色々とあったからほんの少しだけ惜しい気はするけど覚悟をしていた事でもあるし、何よりお兄ちゃんがいるなら私に迷う要素はない。


「…大丈夫だ。落ち着いたら帰ってこよう」

「うん。また綺麗な星空が見たいな」


私たちの住む町の妖の最大の特徴が、火を好むこと。

前は無駄な明かりが一切なく星空が自慢だった私たちの町だったけど、妖たちがいつもどこかしらを燃やしているせいで空は昼夜変わらずいつも赤と白。


いつかまた真っ暗な夜空と広がる星空が見えるのだろうか。


ぼんやり空を眺めてると、屋根や壁が焼け焦げ半壊している家が目に入った。


私たちの住む、お家だ。
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