このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

Prolog


ふと顔を上げると赤い空。
赤い月。

私は今日も、家へと向かう。


それは、一ヶ月程前。


この世界は突然、奇妙な生命体によって襲われた。
ゾンビらしき形をしたもの、大きな蜘蛛のような形をしたもの。
怖い話なんかで出てくるような、妖怪のようなもの。

そんな魑魅魍魎ちみもうりょうが、大きな雷が続く夜から突如現れ始めた。


最初は国が一丸となり戦った。
けれどその中の多くの人たちが為す術もなく、たくさんの死体の一部となって終わった。



「光希(ミツキ)」

大量の非常食を抱えて歩く私は、聞き覚えのある低い声に呼び止められる。


「お兄ちゃん!」

神楽井 陽成(カグライ アキナリ)。
私の五つ上の兄は二十三歳とは思えないくらい落ち着いてて、とにかくクール。
それでいて頭が良くて身長は180越え、運動も出来て、モデル並にかっこよくて……

つまり超ハイスペック。

こんなことになる前は、お兄ちゃん目当てで私の家に遊びに来たがる子が何人もいたくらいで、私の自慢のお兄ちゃん。


もちろんそんなお兄ちゃんを持つ私は自他共認めるブラコンです。

多分私が今生きていられるのはお兄ちゃんのおかげ。


俗に言う、地下の隠し部屋。
そこに隠れることで私達兄弟は生き残れた。


何かあった時のために、と作った部屋だったらしいけれど、こんな大規模な"何か"になるとは思わなかった。


最初に現れた時の大きな魑魅魍魎達の暴走から無事生き延びて以降、私たちを初めとする七人のグループはお兄ちゃんの指示やアドバイスの元私達の家で暮らしてる。



「重いだろ。少し持つ」

私の返事なんて待たないで、私の荷物を少しと言わずに半分以上持つ強引さがまたもうたまらなくかっこいい。


「ありがと、お兄ちゃん。もしかして、この為に迎えに来てくれたの?」


「ん。…それもあるけど。なんとなく嫌な予感がしたから」


昼夜関係なく町中を我が物顔であるく化け物達がいないか周りを警戒しながら静かな声でお兄ちゃんは答えてくれた。


嫌な予感がする。というのは何となく同じだった。


一ヶ月前のあの日も、同じような空と月だったから。
1/8ページ
スキ