コミックシナリオ原案
遠く離れた昌也の家に向かうため、良は一人で新幹線に乗る。
初めて一人で長距離を移動するというワクワクもあるが、昌也と初めて会うことへのドキドキ感の方が勝っていた。そして何より、移動中は彼と繋がれない。こんなにも長い時間、彼の声を聞かなかったことはなく、キリキリと心が締め付けられる。彼はもう、良にとっての全てと言っても過言ではない。
――会ったら、どうなるんだろう?
メッセージアプリで最低限の連絡を取る。こんな文字だけの羅列では、彼の愛を語ることは出来ない。
待ち合わせには昌也は車で来てくれるらしく、彼の愛車の写真が送られてくる。
関西到着。駅を出て指定されたロータリーに向かうと、昌也の車が既に停まっていた。
しっかりと手入れされたスポーツカー。地面スレスレまで落とされたドアが開き、そこから軽快なEDMが響く。低音が心臓まで響くようだ。車から降りてくる昌也。
日に焼けた色黒の男前。初めて見る彼の真正面からの笑顔に、良は気持ちが抑えられなくなる。でもここは外なので、なんとか我慢するが顔が歪む。そんな良を心配して、優しく抱き締める昌也。
優しい抱擁に落ち着く良だが、ここは外だと思い出し、慌てて昌也を押し戻す。
そんな良に昌也は吹き出しながら、手を差し出して車へと誘う。
持ってきた配信用の大荷物をどうしたら良いか聞くと、昌也は狭い後部座席にやや乱暴に放り込んだ。
「早く……独占させてや」
肉食獣の表情を隠せない昌也がそう言った。