私が貴方を包みます! ~変異してしまった彼の腕を隠すために、恋する編み物始めました~
私のこれまでの人生の中で、ここまで真剣に取り組んだことがあっただろうか。
愛しい相手への想いこそ、この胸にはいつもあったことだが、いざそれを形にして彼に渡すということを、私は……
いつまでも、逃げていた。
そして……彼は、違う女の婚約者となった。
私の元になんて、来るはずもなかった。だって私は、何もしてなかったのだから。
『編み物はね、失敗してもすぐに直せるから、だから私、好きやねん』
その自分の言葉に、自分の心の一番醜い部分が漏れ出ていたことにはっとする。
失敗を極度に恐れる余り、彼との先に進むための関係を築くことなく、逃がしてしまうなんて。
もう、絶対にそんなことは繰り返さない。愛しい彼に、このセーターを、そして彼への想いを届けるのだ。
だから、もう――そんな辛そうに笑わないで。