季節物短編
「彼女の願い」
七月七日は願いごとを短冊に書いて叶うことを願う七夕祭りの日だ。
神社やスーパー、学校など、この時期になるとどこを見ても短冊が掛かった景色が目に入る。
そこに掛けられた願いには、皆が皆「家族の幸せが~」だとか「恋愛が~」だとか、そんな今のままでも十分に幸せであろう叶わずとも問題のない、『願い』とは程遠い物事が書き込まれているのだ。
「……っ」
誰にでも願いを書く権利はあって、それは私の目の前に置いてある短冊にも同じことが言えて。『皆さんの願いを書いてください』と記されたテーブルの上には、このスーパーに飾る為の七夕飾りの一つとしてお客様達の願いを書いた短冊を飾る為の、短冊の形にカットされた色紙とペンが置かれていた。
私はそんな幸せの匂いがプンプンする胸糞悪いカラフルな紙切れに、敢えて手を伸ばす。ボールペンを右手に持って、『私の願い』を記入していく。
一心に願って。この願い事がどうか……どうか、必ず叶いますようにと。
『私をイジメている人間が、どうかこの世からいなくなりますように』
お祝い事のような行事には似つかわしくない願いなのはわかっている。
だが、私にとっての唯一の願いは……叶わずにはいられない願いは、この一つだけなのだ。
END
■あとがき■
今のところ、どのキャラからの視点かは伏せた状態にしておきたい、七夕の短編になります。
新作に絡む感じですね。というかまだ、このサイトには掲載もしていない(2022年七夕現在)キャラだから、伏せるもなにもないのですが。
皆さんは願い事は書きましたか? 私はまだなので、ここに「自分の作品を読んで楽しんでくれる人がもっと増えて欲しい」と書いておきますね。