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第十一章 犬と狐


 特務部隊の拠点からロックとレイルが出ると、そこにはクリスとルークが待っていた。
 相変わらずの機械的な光を浴びて、二人の色白の肌は薄くオレンジ色に照らされている。
 シャワーを浴びて着替えも済ませてご機嫌なレイルの腰に手を回しながら、ロックは愛するリーダーとルークに向かって「お待たせー」と笑って見せる。
「遅えよ」
 べつに怒ってもいないだろうにルークがそう冗談だとわかる口調で返してきたので、「わりいね」とロックもあくまでも軽く対応してやった。
 拠点を出たのはロック達が最後だ。そしてここは拠点唯一の出入り口の真ん前。なので絶対に、これまで他の人間の出入りがあったはずだ。だが、この二人はきっと、その者達の視界に入ることはなかっただろう。
「んで? リーダーはこの都のどこに行きたいわけ?」
 クスクスと笑うようにレイルが尋ねる。まるでデートの行き先を問うようなその言い方に、クリスがふっと小さく笑ってから答える。
「この都で唯一の図書館に向かう」
「うはー、やっぱデートだぜこれ」
 げんなりした声でそう零したレイルの表情は――早くも狂犬の目をしていた。
「ヤートさんのゼウスでも“駄目”だったわけだ?」
 都に向かう直前に仕掛けた“攻撃”は、やはり無意味だったのだろう。
「ああ。この都の情報に紛れて『到着時に直接都から情報を抜き取る』プログラムをゼウスに読み込ませていたんだが、空振りだったようだ」
「それは“どっち”の守りが固かったんだろうなー?」
 ロックの問い掛けにクリスはさあなと肩をすくめた。さすがのリーダーにもわからない分野もあるようだ。もちろんロックにだって、空振りの原因がゼウスのセキュリティなのかルナールのセキュリティなのかはわからなかった。
 とにかく、この都には外部から探られたくない秘密があるのだ。それがこの国に古くから伝わる伝承に起因していることは、ここにいる全員が理解していた。
「図書館はこの都の中心部にある。当然、『機械的』なセキュリティに守られているはずだ。チャンスは一度だけだと覚悟しておけ」
 リーダーの言葉には作戦の説明なんてものはない。それで良い。ここにはもう、作戦内容を知らない者はいないのだから。
 了解と答えた三人を見、クリスは満足そうな笑みを浮かべた。
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