nightmare
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迷うことなく言い切った爆豪くんを一瞥し、死柄木は「…こっちはおちそうだな」と私に向かって話し始める。
「まあまあ、話を聞いてくれよ。…まずはさっきの続きだ!翠蒼さん、君の両親を殺した協力者。それはヒーローさ!ここまで言えば情報規制かけられてる理由だって……分かるよな?」
ヒーローが、ヒーローを。
その時、いつの間にか付けられていたテレビから、あの人の声が聞こえてくる。死柄木に囚われかけた思考がそちらに向けられる。
《この度、我々の不備からヒーロー科1年生28名に被害が及んでしまった事。ヒーロー育成の場でありながら敵意への防衛を怠り社会に不安を与えた事。謹んでお詫び申し上げます。まことに申し訳ございませんでした》
「消太…さん…」
いつもの格好じゃない、年にほんと何度かしか見ないスーツ姿。それでもすぐわかる。パシャパシャと鳴り響くシャッターの音。言わずもがな、謝罪会見。
「不思議なもんだよなぁ……何故ヒーローが責められる!?奴らはすこーし対応がズレてただけだ!守るのが仕事だから?誰にだってミスの一つや二つある!”お前らは完璧でいろ”って?だから、お前の両親のことも隠された!なかったことにされた!現代ヒーローってのは堅っ苦しいなァ。爆豪くん、翠蒼さんよ!」
フラッシュだらけでこっちまで照らすテレビの中で、頭を下げ続ける消太さんの姿が目に入る。
消太さんも今、消太さんの場所で戦ってるんだ。
同時に、ここに連れてこられる前の直前の光景がフラッシュバックする。必死に手を伸ばして、私の名前を呼んでくれた彼のこと。
…そうだ、私が今しなきゃ行けないことは、お父さん達のことをうだうだ考えることじゃない。
別のことに頭を回せ。恐怖も、震えも、飲み込んで。ごまかしでもなんでもいい。
「守るという行為に対価が発生した時点で、ヒーローはヒーローでなくなった。これがステインのご教示!!」
「人の命を金や自己顕示に変換する異様。それをルールでギチギチと守る社会。敗北者を励ますどころか責め立てる国民。俺たちの戦いは”問い”ヒーローとは正義とは何か。この社会が正しいのか1人1人に考えてもらう!俺たちは勝つつもりだ。君達も勝つのは好きだろ」
死柄木が続けて「荼毘、トゥワイス、拘束外せ」と指示する。ちらっと爆豪くんを見れば、一瞬だけ目が合った。……同じ考えだと、信じよう。バレないように、息を吐く。「は?暴れるぞ、女はともかく男が」と、荼毘と呼ばれた男が言ってるのが聞こえる。
名前知られてるし、暴れてるって…多分体育祭見られてんな。爆豪くんが連れてこられたのは、そこら辺が理由か。
私もUSJのことがきっかけで、両親のことも調べられたんだろう。それをつけばそちらに揺らぐと、隙になると思われたのか。
「スカウトだもの、対等に扱わなきゃ!…それに、この状況で暴れて勝てるかどうか分からない男でも、女でもないだろ?雄英生」
どこが対等かどうか…行動鑑みてから言って欲しいものだとは口に出さない。その間に継ぎ接ぎ男が私の拘束をガチャガチャと外していく。
「ここにいる者、事情は違えど、人にルールにヒーローに、縛られ苦しんだ。君達ならそれを………」
仮面野郎がなにかを語ってる。…ヒーローに縛られた、苦しんだ、ね。
真逆だ、爆豪くんのことも、私のことも、何一つ見てくれちゃいない。見て欲しいなんて思わないけど。
ようやく、拘束が外れた。瞬間、外していた男の顎を蹴りあげ、距離をとったあと氷壁で押しやる。横からすぐに爆発音が聞こえた。
「ヒーローがヒーローに殺された?…お父さん達を殺した時点でヒーローでもなんでもないんだよ。そんな奴に囚われてるいつまでもいわれもないし、とうに乗り越えたっつの。今更そんなことで揺らぐような気持ちで、ヒーローなんか目指せるか」
「黙って聞いてりゃダラッダラよォ……!馬鹿は要約出来ねぇから話が長ぇ!要は嫌がらせしてえから仲間になってくださいだろ!?無駄だよ。俺はオールマイトが勝つ姿に憧れた。誰が何言って来ようがそこァもう曲がらねぇ」
動かない死柄木、静まり返ったこの場で聞こえてくるのはテレビの音だけ。箱の中では記者が消太さんに問い詰めてる。爆豪くんが悪に染まったらだの、どうのこうの…ほんと、敵連合も記者も、バカばっか。
そんなやつらの言葉なんかに惑わされるな、闘え。
《行動については私の不徳の致すところです。ただ、体育祭でのソレらは彼の理想の強さに起因しています。誰よりも”トップヒーロー”を追い求め、もがいている。あれを見て”隙”と捉えたのなら敵は浅はかであると私は考えております。》
消太さんをのせたいのか何なのかしらないけど、ほんと何も分かっちゃいない。
記者はぐっと、歯を噛み締めたと思ったら次にはニヤリとした顔で、私の名前を出してくる。
《では、翠蒼さんについてはどうでしょう?彼女は、幼い頃にプロヒーローである両親を殺されている事実があります。今はなんの縁か知りませんが、イレイザーヘッド、貴方が引き取ってるそうですが……もしも彼女がヒーローを目指したのは、その復讐をする為だったら?そこをつかれて、彼女もまた悪の道に染まる可能性はないとは言いきれないのでは?》
《ありえません。彼女の人のため、仲間のために迷いなく動ける強さはヒーロー以外の何物でもありません。また体育祭での姿勢、日頃からの姿勢をみていても彼女のヒーローになるという覚悟は、敵の言葉程度で揺らぐものではないと考えてます。育ての親である私としても、彼女の担任としても、断言します》
「ハッ…言ってくれるな雄英も先生も…」
「…ほんと、ずるいっつの」
「…てめぇ、口元緩み切ってんぞきめぇ」
「そりゃあ嬉しいからね!」
迷いなく、私の憧れだってそう言ってくれたんだから。
信じてくれてる。それなら、必ずここから帰って信じてくれたことに答えなきゃ。
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