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「マクゴナガルに捕まって、罰則よ!」
名無し先輩の風船ガムがパチンと弾けて、口の周りにべたっとガムが張り付いた。
「制服くらいまともに着たらどうですか?」
窓枠に三角座りで腰かけている先輩の短いスカートから出る長い足をなるべく見ないように僕はため息をついた。
「こっちのソックスのが足が長く見えるでしょ?」
先輩はわざとスカートを少したくし上げて僕の反応を楽しんでいる。
「興味ありません。」
「セブルスの嘘つき。」
ガムの包み紙を丸めて僕に投げてくる。
「…早く行かないと罰則の罰則になりますよ。」
「それは困る。じゃ、行ってきます!」
先輩は窓枠からピョンと飛び降りると、啓礼して部屋を出ていった。
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「失礼しまぁす~。マクゴナガルせんせぇ…」
私は変身術の教室のドアを開けた。
「遅いですよ、Ms名無し。」
マクゴナガル先生がジロリと私を睨んだ。
「何度言ったらわかるんですか!その制服!!!」
杖を一振り私に向けると、シャツのボタンが一番上まで止まりネクタイがギュっと私の首を絞める。
ぐえっとなって、私は舌を出した。
「まったくあなたたちは何故自分たちが罰則を受けているのか理解していないようですね!!」
あなたたち?
はて?
「先生、借りてきました。」
背後の扉が開いて、掃除道具を抱えた生徒が入ってきた。
その顔を見て私はしかめ面をした。
「名無し先輩!!」
私を見てびっくりした後、嬉しそうに笑うシリウス・ブラックがそこにいた。
「ここの掃除とか…嫌がらせ以外の何物でもないわね。」
「それな。ここ、絶対使わない教室だろ。」
開かずの間のような古びた教室の拭き掃除をしながら私たちはため息をつく。
全部終わったら帰ってよろしいと言い残して、マクゴナガル先生はさっさと出て行ってしまった。
「あー!ネクタイがイライラするっ!」
私はいつものようにネクタイを緩めて、ボタンも外す。
「制服ぐらい好きに着させろよな。」
そう言ったブラックと私の目が合う。
女子が騒いでいる通り、ブラックはとっても美しい顔をしている。
精悍な眉毛にきれいな瞳、すっと通った鼻筋に口元も上品で笑顔がまぶしい。
少しウエーブのかかった長髪もつやつやとしていて美形の彼に似合っている。
背がとても高くて、手足も長い。
「まぁ…制服のおかげで先輩と二人っきりになれましたけど。」
ブラックが私を見てニヤリと笑う。
「…私、君のこと苦手」
私はブラックに思ったことを言ってやる。
「どうしてですか?俺のこと知らないでしょ?」
「私の後輩をいじめてるのは知ってる。」
ブラックに背を向けて、拭き掃除に戻る。
「名無し先輩、スニベルスと仲良しなんですか?」
「その言い方も嫌い!」
私の勢いにブラックは黙り込む。
「楽しい悪戯は好きだけど、人が傷つく悪戯は嫌い!」
ブラックを振り返って睨んでやった。
「…悪戯は好きなのかよ!」
ブラックが声を出して笑う。
「俺たち今いろいろ悪戯考えてて、さり先輩もなんかアイデア無い?」
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「ラッキースケベ的な悪戯がいいわね!」
さり先輩は胡坐をかいて俺の横に座る。
ラッキースケベって…先輩が可愛くて俺は笑ってしまう。
「偶然を装って着替えシーンに突入できる魔法ってないかしら…」
「見たいのかよ!」
「見たい。」
真剣な顔で俺の目を見つめて先輩が頷く。
「シリウスも見たいでしょ、女子の着替え。」
いつのまにかシリウス呼びになっていて、女の扱いには慣れている俺なのにふわふわした気分になる。
「さり先輩の着替えなら見たいなぁ…」
「アバダされたい?」
先輩が俺をジト目で見る。
ふざけたしぐさでポケットを触ると、リーマスがくれたチョコレートに気づいた。
「先輩、チョコ食べる?」
「いるいる!!!」
先輩が身を乗り出して嬉しそうな顔をした。
「シリウスのこと誤解してたかも。ありがとうね!」
名無し先輩はチョコレートを食べながらにこにこしている。
リーマスに会ったらお礼しなきゃだな…と俺は思う。
「さっきの続きだけどさぁ…服を脱がせる悪戯呪文がいいわ。そんなのある?」
まだ続いてたのかよ!と心の中でツッコミを入れる。
「あるんじゃないですか?なんでもありでしょ、魔法って。」
たしかに!と、名無し先輩が楽しそうに笑う。
「いきなりシャツのボタンが弾けて胸が見える悪戯呪文ができたら教えて!私の十八番にするから。」
先輩が急に俺に顔を寄せて、悪戯な笑みを浮かべた。
可愛い…。
前から可愛いと思っていたけれど、実際近くで話して顔をまじまじ見ると本当に可愛い。
顔はいいけど近寄りがたいと男子どもが噂していたさり先輩。
実際話してみると、悪戯好きの少年のようで俺はますます先輩が好きになってしまった。
じっと見つめすぎたのか、んっ?という顔をして先輩が俺を見る。
そんな無防備な顔をして俺を見ないでくれ。
キスしてくれと言っているようなものだ。
キスは俺の十八番だ。
さり先輩は知らないのだろうか、俺がモテ男だということを…
その時、バンッ!と凄い音がして教室の扉が開いた。
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「迎えに来てくれたの?!」
先輩は僕を見ると嬉しそうに立ち上がってこちらに走ってきた。
「たまたま近くを通りかかったら先輩の声が聞こえたので…」
「ラッキースケベの話?」
「はぁ?!」
先輩の馬鹿話はスルーして、ポカンと座っているブラックを睨んでやる。
あまりにも先輩が帰ってこないので、僕はこっそり様子を見にきたのだ。
見に来てよかった。
まさかブラックと一緒だったとは!
「先輩、もう罰則は終わりましたか?」
「たぶんね。」
「じゃ、帰りましょう。」
「おっけぃ!」
先輩がブラックを振り返る。
「シリウス、呪文のこと忘れないでね!」
我に返ったブラックが楽しそうに笑う。
「了解です!さり先輩!」
二人して手を振りあって楽しそうじゃないか?!
僕はムカムカして、先輩を放って歩き出した。
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もう少しでキスできそうだったのに、とんだ邪魔が入ってしまった。
忌々しいスニベルスめ。
今度会ったらいじめ倒してやる。
…ラッキースケベ的な悪戯呪文をいくつか考えてまたさり先輩を誘ってやろう。
きっと先輩は大喜びして俺のところに来るだろう。
今日の罰則は俺にとってご褒美だったなとニヤニヤしながら寮への廊下を歩いた。
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「ラッキースケベの悪戯呪文考えてたのよ、シリウスと。」
「…相変わらず馬鹿ですね。」
「できたらセブルスにかけてあげるからね。」
「お断りします。」
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