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空を見上げると大きな雲がゆっくりと動いている。
この何もない庭もよく見ると緑が美しい。
「…ダンスパーティー…リリーを誘えたらよかったのにねぇ…」
名無し先輩がぽつりとつぶやく。
「…僕は誰とも踊りたくありませんよ。
先輩は片思いの相手となら踊れますか?」
名無し先輩が僕の顔をジッと見てから、ウーンっと悩んだ仕草をした。
「私の好きな人は私と踊りたくないと思う。」
「名無し先輩に誘われて嫌がる男子はいないと思いますが…」
「……。何故そう思うの?」
光を沢山吸収してキラキラ輝いている大きな瞳で真っすぐ見つめられて、僕はたじろいた。
「何故って…先輩の話をよく聞くからです。男子寮で。」
「どんな?」
「付き合いたいとか…その…いろいろ…」
「ふーん…。」
ふたりの間に変な間ができる。
僕が何か言おうと先輩を見たら、少し悲しそうな先輩の笑顔が僕を見つめていた。
「…好きな人が踊ってくれたらいいなぁ…」
悲しそうだと思った笑顔はすぐに消えて、いつもの元気な先輩の笑顔に戻る。
「私ってそんな人気があるの?!知らなかったわ!!セブルス、おいで!」
「うわっ!!」
名無し先輩が僕の両手を掴んで自分のほうに引き寄せた。
「何するんですか!」
「好きな人と踊るときの練習!」
強く、でも優しく名無し先輩が僕の指に自分の指を絡めた。
甘いリンゴの香りがする。
そよ風が先輩の黒髪を微かに揺らすと、金色のピアスがきらりと揺れた。
「ダンスなんて全然知らなぁい」
間の抜けたセリフを言いながら、先輩がぐるぐる楽しそうに回るから世界が揺れて僕らは二人っきりになる。
「先輩!やめてくださいっ!目が回ります!!」
「あははは。」
嬉しそうに笑う名無し先輩の笑顔はとても可愛い。
名無し先輩、その笑顔を僕以外の男に向けるなんて嫌だと、誰かと踊る所なんて見たくないと言ったら駄目ですか?
「はぁ~…目が回った!」
ゆっくり動きを止めて、手は繋いだまま先輩が僕の前で目を瞑った。
「これはこっちのセリフですよ…」
目を開けて名無し先輩が悪戯っぽく笑う。
「だってダンスほんとに知らないんだ。」
「…こうやって踊るんですよ。」
えっ?という顔をする先輩の手をそっと掴んで僕はゆっくりと体を動かした。
先輩の足を踏まないように、初めてダンスを踊る先輩を優しくリードする。
背の低い先輩の頭がちょうど僕の胸のところに来て、どんな表情をしているのかわからない。
急に先輩を意識して高鳴る胸の音が聞こえてしまうかもしれない。
「名無し先輩、僕のダンスどうですか?」
恥ずかしさを隠すために僕はおどけて先輩に質問した。
「……。」
名無し先輩は何も言ってくれない。
その時突然、背中に腕が回って息が止まるほどきつく先輩に抱きしめられた。
「ウゲッ!!」
思わず変な声が出てしまう。
「男子に人気の私とダンスするなんて、セブルスの癖に生意気っ!!」
顔を上げず先輩が僕に言う。
「くるしいっ…先輩っ」
そう言ったら今度は脇をくすぐられて僕は悶絶した。
「せんぱっ…せんぱいっ…やめてくださいっ!!!わはははは」
「生意気な後輩は拷問してやるっ!!」
先輩は僕をくすぐった後、くるっと体を回転させて背中を向けた。
「…セブルスもうすぐ授業が終わるわよ。校舎まで競争!!」
そう言って先輩は振り向きもせず足早に歩き出した。
僕は慌てて名無し先輩の後を追う。
「セブルスのダンスがいつか…リリー相手に披露されることを祈ってあげる。」
僕が横に追いついたら、先輩がいつもの笑顔でそう僕に囁いた。
******************
私は部屋の窓枠に腰かけて満月を眺めていた。
頭の中でワルツの曲が流れる。
私はシルバーのドレスを着て大好きな人と一緒に踊っている。
ドレスローブに身を包んだセブルス。
花が咲き乱れ甘い香りのする噴水の公園。
セブルスが握ってくれた手に視線を落とす。
…好きな人とダンスできたじゃない。
私は小さく笑うとベッドの中に潜り込んだ。
******************
「名無し先輩、ダンス当日はどうする気ですか?」
「当然仮病よ!セブルスも一緒に仮病しましょう?私のベッドに来る?」
「…また…。そう言えば当日、ごちそうが出るらしいですが…」
「えっ?!マジで?!行きましょ!ダンスパーティー!盆踊り踊ってやるわ!!!」
「えっ?!」